うつ病に良いサプリメント成分について解説します。病気の原因や症状、対策方法まで、健康づくりに役立つさまざまな情報など。

気になる病気や症状がある場合は調べてみましょう。

【うつ病に良いサプリメント成分】

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■うつ病対策にサプリメントが良い理由

神経伝達物質のバランスの崩れが原因とされるうつ病。人は強いストレスを感じ続けることにより、神経伝達物質が減少して精神の状態が不安定になります。

ストレスを溜めないことが一番の予防策ですが、日々のストレスをコントロールするために神経伝達物質をサポートする成分を摂取することも効率的です。うつ病にアプローチできる成分は野菜や魚といった食材から摂取できますが、効率よく摂取したい場合はサプリメントを利用すると良いでしょう。持ち運びが簡単なうえ、魚や野菜が苦手な人でも気軽に摂取しやすいのがポイントです。


■うつ病に効くサプリメント成分まとめ

トリプトファン

炭水化物や魚など、さまざまな食材に含まれる必須アミノ酸

神経伝達物質であるセロトニンが不足することで引き起こされるうつ病。体内で生成できない物質のため、セロトニンを作るトリプトファンの摂取が必要となります。

トリプトファンは必須アミノ酸の一種で、魚やチーズなどに含まれる成分です。アメリカのイェール大学で行われた研究では、体内のトリプトファン濃度が減少した際にうつの症状が強くなると研究結果を発表しています。

トリプトファンは、ごはんやパンといった炭水化物と一緒に摂取することで、吸収率が上昇。またビタミンB6や鉄分と一緒に摂取すれば、トリプトファンのセロトニン合成を促進できます。炭水化物にもトリプトファンが含まれており、食事から摂取することが可能です。炭水化物、魚、肉、野菜など、それぞれのバランスが取れた食生活であれば、セロトニンが大きく減少することはないでしょう。

忙しくて食事に手間をかけられない場合は、サプリメントでの摂取がおすすめです。日光を浴びることでもセロトニン合成が促されるので、晴れた日は外に出て運動するのも良いでしょう。ただし、トリプトファンは過剰に摂取すると血圧や心拍数に影響を及ぼす可能性があります。取り過ぎには気を付け、専門医に摂取量を確認するなどして対処してください。

ビタミンB6

魚やレバーに含まれている、ビタミンB群の1つ

魚やレバーに多く含まれているビタミンB6。神経伝達物質であるGABAの合成に必要な成分で、GABAが不足するとイライラを抑えにくくなります。寝つきが悪くなり睡眠の質が低下する恐れもあるので、ビタミンB6は精神安定のためにも必要な成分です。

また、ビタミンB6はGABAの合成だけでなく、トリプトファンのセロトニンとナイアシン合成を促進する作用もあります。セロトニンとナイアシンは精神安定に必要な成分なので、ビタミンB6が不足すると2つの神経伝達物質も不足する事態につながりかねません。

ほかにもタンパク質や脂質の代謝をサポートしてくれるうえ、赤血球に含まれるヘモグロビンの合成や免疫機能の維持など、複数の作用があります。心身ともに健康を保つためにも、ビタミンB6の定期的な摂取が必要です。

トリプトファンと同じく、ビタミンB6はバナナに含まれています。またマグロからも摂取可能。1日の摂取量は18歳以上の女性で1.2mg、男性で1.4mgです。過剰に摂取した場合、手足の痺れや痛みを感じる可能性も。神経障害や腎臓結石の原因にもつながるため、あまり取り過ぎないようにしましょう。

EPADHA

うつ病との関連性が研究で証明されている成分

魚の油に多く含まれており、オメガ3脂肪酸とも呼ばれるDHA・EPA。くるみからも摂取できる成分です。

DHA・EPAにうつ病の改善効果が期待できると分かったのは1999年。ハーバード大学のストール博士が証明しました。ストール博士が行った研究では、うつ病患者を対象にオメガ3脂肪酸を摂取するグループとプラセボを摂取するグループに分けて実験を開始。結果として、オメガ3脂肪酸を摂取したグループのほうに改善効果が多く見られたと報告されました。

ほかにも国立研究開発法人による実験では、DHA・EPAが含まれる魚介類の摂取量をグループごとに分けてうつ病のリスクがどれほどあるか調査。1日に魚介類を57g食べるグループよりも、1日111g食べるグループのほうがうつ病のリスクが低下したと報告しています。

DHA・EPAはうつ病以外にも、冷え性や動脈硬化の改善も望める成分です。ただし副作用も。EPAには血液の粘度を下げて血が固まる働きを抑制するため、出血した際に血が止まるまでに時間がかかります。

目安量に関しては、2015年に厚生労働省が定めた「日本人の食事摂取基準」で設定されています。1日の目安量は成人女性で1.6~2g、成人男性で2~2.4gです。

マグネシウム

お酒を飲みすぎる人は不足しやすい?骨を作るうえでも大切な成分

マグネシウムは骨を作るうえで必要な成分です。神経の興奮を抑える作用があるとされており、体内のマグネシウムが減少すると精神機能に影響を及ぼすおそれがあります。マグネシウムを投与されたうつ病患者は、症状に対して有効性が認められたという報告もあります。

マグネシウムは穀物や魚など、さまざまな食べ物に含まれているのが特徴です。バランスの取れた食生活を普段から送っていれば、不足する可能性は少ないでしょう。しかし、過度なアルコール摂取や利尿剤の使用を長期間続けることにより、マグネシウムは尿と共に排出されてしまいます。お酒を多く飲む人や利尿剤を利用している人は要注意です。ストレスによる負荷がかかることでも尿中に含まれるマグネシウムが増加するので、精神的負担が続くとマグネシウム不足に拍車がかかります。

マグネシウムが不足するとうつ病だけでなく、不整脈や骨粗しょう症などのリスクも上昇。マグネシウムはホウレンソウや玄米などに多く含まれているので、意識して摂取することを心がけると良いでしょう。

過剰に摂取した分は尿から排出されますが、サプリメントで過剰摂取した場合は下痢になる可能性があります。サプリメントから摂取する場合は、1日の目安量は必ず守ってください。

ナイアシン

体内で分解され、毒性代謝産物の増加を抑えるビタミンB3

ビタミンB3であるナイアシンはニコチン酸とニコチンアミドの総称で、ビタミンB6と同じくビタミンB群の1つです。体内ではトリプトファンにより合成されます。トリプトファンが合成により変換する際、ナイアシンが不足している状態だと神経に毒性代謝産物が増加。倦怠感や苛立ちが抑えられない、不安を感じるといった症状を引き起こすリスクが高まります。

うつ病だけでなく口内炎や皮膚炎、下痢などナイアシン不足で複数の症状が出ることも。症状の予防・改善をするためにも、普段から食事やサプリメントで摂取する必要があります。

ナイアシンはマグロやカツオといった魚やタラコなどに多く含まれており、調理・加工時に分解。ナイアシンは分解されると、動物性食品の場合はニコチンアミドに、植物性食品ならニコチン酸に変わります。分解した後もうつ病にアプローチ可能です。野菜や刺身など生で摂取した場合は消化管で分解されて、ニコチンアミドになります。

1日に必要とされる量は成人女性で10~12mg、成人男性で13~15mgです。過剰に摂取してしまうと消化不良や下痢、肝機能低下など消化器や臓器に影響を与える可能性があります。1日100mg以上を摂取すると皮膚が赤くなりかゆみが出る「ナイアシンフラッシュ」といった副作用もあるので、1日の摂取量は100mg以下に抑えると良いでしょう。

セントジョーンズワート

サプリメントとして気軽に摂取できる、植物由来の成分

別名をセイヨウオトギリソウと言い、ヨーロッパでは痛風やリウマチなどの薬としても利用されている植物です。

医療政策を行うコクラン共同計画が2008年10月に行った研究結果では、うつ患者にセントジョーンズワートを摂取させたところ、標準的な抗うつ剤と同程度の効果があったと発表されました。

セントジョーンズワートがうつ病に効くとされる理由の1つは、神経伝達物質を分解するモノアミン酵素の働きを抑制する作用をもつためです。神経伝達物質は複数あり、全体のバランスが崩れることでうつを発症。セントジョーンズワートは神経伝達物質のバランスを崩しかねないモノアミン酵素を抑制してくれるので、うつ病改善が望めます。

神経伝達物質の1つであるセロトニンがほかの細胞に吸収されることも防いでくれるなど、2つの作用で神経のバランス維持をサポートします。

セントジョーンズワートはエキスを抽出したサプリメントが販売されているので、気軽に摂取が可能です。ただし、一部の抗うつ剤と併用することによりセロトニンが増加すると、命に関わるセロトニン症候群を引き起こす可能性があります。強心薬や鎮痛薬との併用ではくすりの効き目を弱くするため、セントジョーンズワートは摂取する前に一度医師へ相談しましょう。

GABA

興奮状態を抑えてくれる神経伝達物質

人や動物など、哺乳類の脳やせき髄にある抑制性の神経伝達物質です。

ストレスによる興奮やアドレナリンの分泌を抑える作用を持ち、精神がリラックスした状態を保つのをサポート。抑制性とは逆の興奮性伝達物質もあり、そのうちの一つであるグルタミンからGABAは作られます。

GABAは強いストレスを感じることで消費されるため、ストレス過多な状態が続くと不足してバランスが崩れます。興奮性物質が過剰に分泌され、落ち着いた状態を保ちづらくなる結果に。そのため精神が不安定になり、うつ病のリスクが高まります。

また、GABAは脳と血液の間にある血液脳関門を通ることができないため、食事やサプリメントなど外から摂取した場合は直接脳で作用することはありません。しかし、GABAが血管を通ることで血管の収縮を緩和。血圧を上昇させるノルアドレナリンの分泌を抑制するため、血圧上昇による興奮状態を抑える効果が期待できます。

脳で生成されるGABAを増やしたい場合は、ビタミンB6の摂取がおすすめです。ビタミンB6はGABAの生成に必要不可欠で、カツオやマグロに多く含まれています。食生活のバランスを整えるか、サプリメントから摂取すると良いでしょう。

ウコン

うつ病以外の症状にもアプローチ可能な成分が含む野菜

ショウガの一種であるウコンにはクルクミンと呼ばれる成分が含まれており、脳を活性化させる効果が期待できます。

動物実験ではストレスを抱えているラットにクルクミンを投与したところ、うつの症状が緩和されたという結果が報告されました。2017年には海外の国立大学でクルクミンの解析が行われるなど、新しい抗うつ剤として注目が集まっています。

クルクミンには肝機能の向上や美肌効果なども望めるのが、嬉しいポイントです。肝臓の解毒作用や胆汁の分泌を促し、たんぱく質と脂質の消化をサポート。抗酸化作用があるため、肌の老化の原因となる活性酸素の働きを抑制する作用もあるのが特徴です。

しかし、肝機能を向上させる一方で短期間に何度も摂取するのは大きな負担になります。結果として肝機能の低下を招いてしまうおそれがあるため、過剰摂取は良くありません。C型肝炎や非アルコール性脂肪性肝炎を患っている方が過剰に摂取した場合は、肝臓が縮小・硬化する肝硬変を発症する可能性があります。

肝臓障害を抱えている方はウコンの摂取を控え、肝臓障害がない人も期間を空けて摂取してください。

【参考文献】

  1. 医師・医療従事者向け医学情報・医療ニュースならケアネット「うつ病患者の食事療法、ポイントは「トリプトファン摂取」」
  2. 神戸心理カウンセリングオフィス「心の栄養療法・ビタミンB群」
  3. 神戸心理カウンセリングオフィス「心の栄養療法・オメガ3脂肪酸」
  4. 健康長寿ネット「ビタミンB6/B12の働きと1日の摂取量」
  5. 健康長寿ネット「マグネシウムの働きと1日の摂取量」
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  7. 国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ「魚介類・n-3不飽和脂肪酸摂取とうつ病との関連について」
  8. サラサラ生活向上委員会 | ニッスイ「動脈硬化にEPA 血管年齢を若く保つ!」
  9. 疑似科学とされるものの科学性評定サイト「DHA・EPA」
  10. グリコ「マグネシウム」
  11. MAG21研究会「マグネシウム投与による大うつ病の早期回復」
  12. IME 特定非営利活動法人 医療教育研究所「マグネシウムと精神機能」
  13. オーソモレキュラー栄養医学研究所「栄養素の説明 - ミネラル マグネシウム」
  14. [PDF]たかはしクリニック「ナイアシン」
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  16. 「統合医療」情報発信サイト 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業「コミュニケーション」
  17. 「統合医療」情報発信サイト 厚生労働省 「統合医療」に係る情報発信等推進事業「海外の情報」
  18. あしび薬局「「セイヨウオトギリソウ」って、なに?」
  19. [PDF]J-STAGE「うつ病態を改善する天然生理活性物質」
  20. わかさの秘密「クルクミン」
  21. わかさの秘密「ウコン」
  22. 医師・医療従事者向け医学情報・医療ニュースならケアネット「クルクミン、うつ病治療への可能性」

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