花粉症に良いサプリメント成分について解説します。病気の原因や症状、対策方法まで、健康づくりに役立つさまざまな情報など。

気になる病気や症状がある場合は調べてみましょう。

【花粉症に良いサプリメント成分】

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■花粉症にサプリメントを活用したほうが良い理由とは?

花粉症の症状があらわれたときに不足している成分は、人それぞれ異なります。一番良いのは生活習慣や食事の栄養バランスを見直すことですが、仕事の忙しさや食の好み、生活時間帯などから、習慣をなかなか変えられない人もいるでしょう。また、花粉症に良いとされている成分の中には、調理方法によって失われてしまうものや毎日摂取するのが難しいものもあります。そんなとき、不足している栄養素だけを効率よく補えるのがサプリメントです。


■花粉症がツラくなる前に活用したいサプリメント成分まとめ

花粉症をはじめとするアレルギー反応は、主に私たちの身体を守っている免疫細胞(ヘルパーT細胞)の暴走によって起こります。3種類あるヘルパーT細胞(Th1、Th2、Th3)は、バランスを保ちながら身体を守っていますが、どれか1つが強くなるとバランスが崩れてさまざまな問題が発生してしまいます。花粉症をはじめとするアレルギー反応が起こりやすいのは、Th2が強いときです。

Th2が強くなるとIgE抗体というたんぱく質が過剰生成され、IgE抗体は目や鼻の粘膜にある細胞(マスト細胞)と結びついてアレルギー反応のスイッチをONにします。すると花粉を身体の外へ放り出すために化学物質が分泌され、くしゃみや鼻水、涙などの症状が起こる仕組みになっています。

花粉症の症状をやわらげたい人は、Th2やマスト細胞の暴走、IgE抗体の過剰生成を止めてくれる成分について知っていきましょう。

乳酸菌

花粉症に効果的なのはヒト由来の乳酸菌

乳酸菌は、糖類を分解してエネルギーを生み出してくれる細菌の総称です。ヨーグルトをはじめとする発酵食品のほか、私たちの消化管にも存在します。花粉症に良いとされているのは、人の身体から発見された「LGG乳酸菌」と「TMC0356菌」です。どちらも胃酸や胆汁酸に負けることなく、生きたまま腸に届いて定着します。

LGG乳酸菌は腸内の免疫器官(パイエル板)に入り込み、IgA抗体を増やしてくれる乳酸菌。IgA抗体とは粘膜の免疫力を高める免疫物質で、粘膜(口・鼻・目など)から花粉や細菌が侵入するのを防いでくれます。

TMC0356乳酸菌は免疫細胞(ヘルパーT細胞)のバランスを整えてくれる乳酸菌です。Th2細胞の暴走を制御する働きがIgE抗体の過剰生成防止につながるため、花粉症への効果が期待できるとされています。

また、2009年に神奈川県のスギ花粉症患者を対象として行われた実験では、LGG乳酸菌とTMC0356乳酸菌に相乗効果があると報告されました。調査期間は10週間。LGG乳酸菌とTMC0356乳酸菌入りのヨーグルトを食べたスギ花粉症患者のグループと2種類の乳酸菌が入っていないヨーグルトを食べたスギ花粉症患者のグループの花粉症症状を比較する内容です。実験の結果、スギ花粉症による鼻づまりが改善したのはLGG乳酸菌とTMC0356乳酸菌入りのヨーグルトを食べたグループでした。

花粉症による鼻づまり症状にお悩みの方は、LGG乳酸菌とTMC0356乳酸菌が配合されたサプリメントを活用してみると良いでしょう。[※1]

プロポリス

アレルギー症状を軽減が期待できる

プロポリスとは、ミツバチが巣の材料としてつくりだした天然の産物です。抗菌作用をもつ樹液や樹脂、ミツロウなどで構成されており、巣の隙間に塗ることで細菌が侵入したり繁殖したりするのを防いでいます。プロポリスの抗菌作用は古くから注目されており、一部の国では医薬品に応用されてきました。

さらに、プロポリスは花粉症をはじめとするアレルギー症状を軽減することが確認されています。山田養蜂場の研究グループは、スギ花粉症患者から採取した免疫細胞にスギ花粉とプロポリスを与えて、炎症関連物質の放出量を調べる実験を行いました。その結果、プロポリスに含まれる複数種類のフラボノイドが、炎症・鼻づまり・気管支ぜんそくなどを引き起こす物質(ロイコトリエン)の放出を抑制したと報告されています。また、高濃度のプロポリスを与えることで、赤みやかゆみなどのアレルギー症状を引き起こす物質(ヒスタミン)の放出も抑えられると確認されています。

実際にスギ花粉症患者30人を対象としたプロポリスの実験データがあります。実験では、対象者を2つのグループに分けて、片方にはプロポリスエキスを300g含む錠剤を、もう片方には偽薬を摂取してもらいました。摂取期間中、両方のグループの花粉症治療薬の使用頻度を毎日記録したところ、プロポリスを含む錠剤を摂取していたグループのほうが、花粉症治療薬を使う量が少なかったという結果になっています。また、別の実験ではプロポリスを450mg摂取した結果、花粉症による鼻づまりが軽くなったと報告されています。[※2]

ポリフェノール

花粉症の症状に対する研究がすすむトマト・お茶・ミカンのポリフェノール

ポリフェノールとは、植物に含まれている苦み・色素成分の総称です。その種類はなんと5,000種類以上にものぼります。その中から、花粉症の症状をやわらげる研究データがあるポリフェノールを3種類ご紹介します。

・ナリンゲニンカルコン

花粉症に良いとされているのは、トマトの皮に含まれる「ナリンゲニンカルコン」というポリフェノールです。主に、ケチャップやジュースに利用される品種のトマトに含まれています。しかし、ナリンゲニンカルコンを含むトマトの皮は製造過程で除かれてしまうため、ケチャップやジュースから摂取することは難しいのが現状。また、一般的に売られている生食用トマトに関しても、品種が異なるためナリンゲニンカルコンはほとんど含まれていません。ナリンゲニンカルコンだけを効率よく摂取するには、サプリメントの利用がおすすめです。

ナリンゲニンカルコンが花粉症の症状をやわらげるメカニズムが解明されたのは2007年。比較的症状が軽いスギ花粉症患者21名を対象として、花粉が飛び始める1週間前からトマト抽出物360mg(ナリンゲニンカルコンを含む)を毎日摂取する実験が行われました。1か月にわたり実験を行った結果、I型アレルギー症状(花粉症・かゆみ・アトピー性皮膚炎など)によって増える好酸球の値が低下したと報告されています。花粉症による鼻炎やかゆみなどを軽減したい人は、ナリンゲニンカルコンを360mg程度含むサプリメントを活用してみると良いでしょう。[※3]

・カテキン

カテキンは、主にお茶の葉に含まれているポリフェノールです。茶葉の種類によってさまざまなカテキンが存在しますが、花粉症への効果が確認されているのは「紅富貴(べにふうき)」というお茶から発見されたメチル化カテキン。鼻水やのどのイガイガ、目のかゆみや涙などの症状に悩まされている人におすすめです。

炎症やくしゃみなどのアレルギー症状は、花粉に反応して分泌される物質(ヒスタミン)によって引き起こります。そんなヒスタミンの放出量を抑えるのがメチル化カテキンの作用です。

メチル化カテキンの花粉症への効果は、スギ花粉症患者を対象とした実験で確認されています。スギ花粉症患者を2つのグループに分け、2種類のお茶を飲んでもらう実験です。片方のグループにはメチル化カテキンを34mg含むお茶、もう片方のグループにはメチル化カテキンを含まないお茶を毎日摂取してもらいました(それぞれ飲んでもらうお茶の種類は伏せられています)。対象者らが日誌に記録した花粉症の症状を日本アレルギー協会の研究に基づいてスコア化した結果、鼻かみの回数やのどの痛み、目のかゆみといった症状の改善が確認されています。

また、バラ科の甜茶(てんちゃ)に含まれるGODポリフェノールも、アレルギー症状を引き起こす物質(ヒスタミン)を抑える作用があります。ただし、花粉症の症状を軽減する具体的な研究データは報告されていません。[※4][※5]

・ノビレチン

ノビレチンとは温州みかんやシークヮーサーなどの皮に含まれるポリフェノールの一種です。花粉症患者は、アレルゲン(花粉や細菌)が身体に侵入するとリンパ球や白血球に電気信号を送り、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状を引き起こす物質(ヒスタミン)を放出します。ノビレチンには電気信号の刺激を抑制する作用があるため、ヒスタミンの放出を抑えられるという仕組みです。

ノビレチンは実の部分にはほとんど含まれていないため、食べたりジュースにして飲んだりしてもなかなか摂取できません。ノビレチンが配合されたサプリメントを活用することで、効率よく摂取できるでしょう。

ちなみに、ノビレチンは牛乳に含まれるβラクトグロブリンという成分と一緒に摂取することで相乗効果が期待できる成分です。2014年に行われたノビレチンとβラクトグロブリンの研究データをご紹介します。研究の対象となったのは、スギ花粉症のモデルマウスです。体重10kgにつき10mgのノビレチンを与えるグループ、体重10kgにつき10mgのβラクトグロブリンを与えるグループ、そしてノビレチンとβラクトグロブリンを混ぜたものを与えるグループの花粉症症状を比較したところ、もっともくしゃみの回数が少なかったのはノビレチンとβラクトグロブリンを混ぜたものを与えたグループでした。花粉症によるくしゃみに悩まされている方は、ノビレチンとβラクトグロブリンが一緒に配合されたサプリメントを探してみてはいかがでしょうか。[※6]

EPADHA(α-リノレン酸)

不足しがちな青魚由来の成分を補って花粉症を予防

青魚の油に含まれているEPAとDHAは、アレルギー反応を引き起こす物質(アラギドン酸)が過剰生成されるのを抑えてくれる成分です。普段あまり魚を食べない人は、EPAとDHAを摂取するだけで花粉症の症状がやわらぐ可能性があります。

アレルギー反応を引き起こすアラギドン酸を多く含むのは動物性の油です。また、ドレッシングやマヨネーズ、スナック菓子などに含まれる「リノール酸」という油を摂り過ぎると体内で過剰生成されます。さらに、リノール酸を摂り過ぎると炎症を引き起こす物質(プロスタグランジン)も生成されるため、花粉症の症状が重くなる傾向があります。

普段からお菓子や加工食品、ファーストフードや肉中心の食生活を送っている方は、不足しているEPAとDHAを補って花粉症に備えましょう。また、えごま油やあまに油に含まれるα-リノレン酸を摂取するのもおすすめ。α-リノレン酸は肝臓で吸収された後にEPA・DHAに変換されます。[※7]

ビタミンD

免疫力の低下を防ぐ必須ビタミン

ビタミンDは免疫細胞にはたらきかけ、身体に侵入した異物(アレルゲンや細菌)から身体を守る力をキープしてくれる成分です。ビタミンDが花粉症の症状をやわらげるというよりは、ビタミンDが不足すると、免疫力が低下して花粉症の症状が重くなりやすい、といったほうが適切かもしれません。ビタミンDは日光を浴びることで生成されますが、日中外に出る機会が少ない人や紫外線を極端に避けている人は、ビタミンDが不足してしまいます。ビタミンD不足の身体は花粉症だけでなく、さまざまな感染症にかかりやすくなってしまうため注意が必要です。

ちなみに、厚生労働省が定めている1日あたりのビタミンD摂取目安量(成人)は、男女ともに5.5μgでした。普段しっかりと日差しを浴びている人なら、イワシ10g程度、またはブリ1切れ程度、または干ししいたけ6~7枚で補える量です。しかし、普段日光を浴びていない人は体内のビタミンD量が不足しているため、5.5μg以上摂取する必要があります。仕事が夜勤の人、魚やきのこ類が苦手な人はビタミンDが含まれるサプリメントを活用すると良いでしょう。[※8][※9]

プラセンタ

美容だけでなく免疫細胞の働きを整える働きも

プラセンタとは、赤ちゃんを育てる胎盤のことです。赤ちゃんに必要な成長因子、たんぱく質やミネラル、ビタミンやアミノ酸など、栄養素が豊富に含まれており、美容に良いとされています。また、免疫力をコントロールする作用があり、免疫力低下によって悪化する花粉症、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などにも役立つ成分です。

ただし、プラセンタには注意すべき点もあります。現在プラセンタと呼ばれているのは、哺乳類の胎盤(人、馬、豚、牛、羊など)、魚の卵巣膜、果実の種周辺にある繊維などですが、成長因子を含んでいるのは哺乳類のプラセンタのみ。その中で、サプリメントに配合されるのは馬、豚、牛、羊由来のプラセンタです。ヒト由来のプラセンタは医薬品成分とされているため、食品には配合されません。

もし、馬、豚、牛、羊のいずれかのアレルギーをもっている人は、プラセンタサプリメントを摂取することで花粉症の症状が悪化してしまう可能性があります。サプリメントでプラセンタを摂取する場合は、必ず事前にプラセンタの原料を確認してから購入しましょう。[※10]

<参考文献>

  1. ※1 タカナシ乳業LGGラボ.jp 「花粉症における2つの乳酸菌の働き」
  2. ※2 みつばち健康科学研究所 「医薬品医療機器総合機構 「プロポリスのスギ花粉症軽減作用」
  3. ※3 kikkoman 「トマト果皮ポリフェノール(ナリンゲニンカルコン)」
  4. ※4 CiNii 「べにふうき'緑茶抽出条件の違いによるメチル化カテキン含量及びフェオホルビド生成量の変動」
  5. ※5 厚生労働省 「花粉症の民間医療について」
  6. ※6 産総研 「温州ミカン果皮を用いた抗アレルギー機能性食品の開発」【PDF】
  7. ※7 NIKKEI STYLE 「花粉症緩和に効果 魚成分、上手に摂取 DHAやEPA」
  8. ※8 日経サイエンス 「ビタミンDの多彩な効用 がんや感染症にも」
  9. ※9 厚生労働省 「1─6 ビタミン」【PDF】
  10. ※10 yomiDr. 「[プラセンタ]摂取する意味、冷静に判断を」

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