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セサミンの効果とその作用

ゴマに含まれる注目の成分として、抗酸化作用による若返り効果が期待されるセサミン。代謝や解毒の要となる肝臓ですばらしいパワーを発揮することで、コレステロールの低下や二日酔いの予防、加齢やストレスによるさまざまな不調に役立つことが期待され、いまでも研究が進められている成分です。

こすぎレディースクリニック 椎名 邦彦先生監修

セサミンとはどのような成分か

セサミンは、おもにゴマの種子に含まれるゴマリグナンのひとつで、脂溶性の抗酸化物質です。リグナンとはポリフェノールの一種。ゴマに含まれるリグナンなので、ゴマリグナンと呼ばれています。

ゴマリグナンの50~60%を占めるセサミンですが、このほかのゴマリグナンには、セサミノールやセサモリンなどがあります。

セサミンはじつは、日本で最初に発見された成分です。昔から健康よいものとして知られてきた身近な食材のゴマですが、セサミンの健康効果の研究が進むとともに、あらためてゴマの健康食品としての機能が注目されるようになりました。

セサミンはその抗酸化作用が有名ですが、なんとセサミン自体にもともと抗酸化作用はないのです。体内で代謝される過程で、抗酸化物質に変換されるという特徴があり、このことにより優れた抗酸化作用が発揮されると考えられています。

セサミンはゴマ1粒にわずかしか含まれないため、セサミンを効率的に摂取するための食品が多数開発されています。

サプリメントの成分としても、非常にポピュラーな存在です。

セサミンの効果・効能

セサミンには、以下のような効果効能が知られています。

■アンチエイジング効果

セサミンは、抗酸化作用によるアンチエイジング効果が期待されています。私たちのからだは運動やストレス、環境汚染、紫外線などにより活性酸素という物質が常に体内に発生しています。

この活性酸素はウイルスや細菌を取り除く効果がある反面、過剰に発生することで正常な細胞を傷つけるため、老化を進める原因にもなるのです。酸化した細胞は、細胞そのものが持っている働きをじゅうぶんに発揮できません。

セサミンは、この酸化の原因となる過剰な活性酸素を取り除く働きがあるため、「細胞が錆びる」、すなわち老化を防止するのに効果があるとされるのです。[※1]

■コレステロールを下げる効果

ラットを用いた実験でセサミンには血清コレステロールを低下させる作用があることが報告されています。[※2]

血清コレステロール値が減少すれば、動脈硬化のリスクも減るため、セサミンの摂取は生活習慣病の予防にもつながります。

■二日酔いを予防する効果

セサミンには肝機能を高める作用があり、アルコールの中間代謝物質であるアセトアルデヒドの毒性を減らして二日酔いや悪酔いを防ぐうえ、アルコールを解毒するさいの肝臓の負担を軽減する働きがあるとされています。

また肝臓での脂肪の代謝をサポートして、脂肪の蓄積を防ぐ効果も期待されます。ラットを使った実験でも、セサミンの摂取によりアルコールの代謝が促され、また脂肪の蓄積量も減少したという結果が得られています。[※2]

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

セサミンには、ほかの抗酸化成分との大きな違いがあります。食べ物から摂取されたセサミンは、胃や腸では分解されず、門脈(腹部の内臓から血液を集めて肝臓に送る静脈)を通じて肝臓に運ばれます。そして肝臓で抗酸化物質に変換され、初めてそのパワーを発揮するというメカニズムがあるからです。

多くの抗酸化物質は水溶性のため、肝臓に届く前に分解されてしまったり、酸化してしまったりして、肝臓で抗酸化作用をじゅうぶんに発揮できないことがあります。

肝臓は代謝や解毒の要となる臓器で、活性酸素の発生しやすい場所です。カラダの酸化を防ぐためには、肝臓で抗酸化作用が発揮できることが大切なのです。

セサミンは、肝臓に届いてから抗酸化物質に変性するため、肝臓で活性酸素を除去する役目をきちんと果たせるのだと考えられています。[※1]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

セサミンは増えすぎた活性酸素の害からからだを守る作用が期待される成分ですので、乱れた生活習慣を送っている人・ストレスを感じている人などに摂ってほしい成分です。

肝機能を高める効果も期待されるため、お酒を飲む習慣のある人の健康もサポートしてくれるでしょう。

私たちのからだはもともと抗酸化力を持っていますが、その力は年齢とともに弱まってしまいます。そのため、低下した抗酸化力は食事などから補う必要があります。したがってセサミンの優れた抗酸化作用は、中高年の健康維持のためにも注目されています。

コレステロール値を減らすことから生活習慣病の予防にもおすすめされますが、ゴマやゴマ油は油分の多い食品なので、食べ過ぎて太ることがないようにも注意が必要です。

セサミンの摂取目安量・上限摂取量

セサミンはもともと体内にある成分ではなく、また、ビタミンやミネラルなどといった必須栄養素とも異なるため、必要量を定めるのは難しい成分です。

サプリメント販売元のサイトなどでは「1日の摂取目安量10mg」などと紹介しているものも多く見られますが、あくまでも目安であり、不足したからと言って健康に悪影響が起こるという報告もありません。

摂り過ぎによる副作用などの報告は今のところありませんが、ゴマやゴマ油による脂質の過剰摂取は、肥満やメタボリックシンドロームを引き起こす恐れがあります。

そのため、セサミンの効果を実感したい場合には、サプリメントなどを利用するのもひとつの方法です。

セサミンのエビデンス(科学的根拠)

マウスを使った動物実験での結果では、さまざまな健康に役立つ効果が認められている[※2]セサミンですが、ヒト試験においては、以下のような報告がされています。

サントリー健康科学研究所が行った実験では、疲労を感じる健常人をプラセボ群と、セサミン10mg・ビタミンE55mg・トコトリエノール2mgを含有する食品を摂取する2つのグループに分け、毎日8週間継続摂取させました。

実験前後にアンケート調査と血液検査を実施した結果、アンケートでは、プラセボを摂取したグループに比べてセサミンを含有する食品を摂取したグループに、疲労や美容・睡眠に明らかな改善が認められました。

また、血液検査でも、血液中のLDLと呼ばれるたんぱく質が酸化されるまでの時間が長くなり、抗酸化力が高まることが示唆されたということです。[※3]

また、激しい運動をすると体内で活性酸素が生じ、血漿中の脂質が酸化されてしまいますが、セサミンには血漿中の脂質の酸化を抑制する作用があるとの実験結果が得られています。

健康な成人男性6名を対象に行った実験では、激しい運動をする2時間前にセサミン36mgを含有するカプセルを摂取させるグループと、プラセボを摂取するグループに分け、運動後、血漿中の過酸化脂質濃度を測定。

プラセボ群と比べて、セサミンを摂取したグループでは、明らかな過酸化脂質上昇の抑制が認められたということです。[※2]同様の結果は、水泳で疲労したマウスにおける実験からも得られています。[※2]

これらの実験から、セサミンには体内の活性酸素による酸化を予防する効果が示唆されています。

ただしヒト試験においては、被験者の人数が小規模であったり、セサミンと一緒にほかの成分を使用していたりと、科学的根拠とするにはじゅうぶんであるとは言えません。

今後の研究により、さらに根拠となる明確なエビデンスが示されていくことが期待されます。

研究のきっかけ(歴史・背景)

セサミンはサントリーの創業者である鳥井信次郎氏の研究から発見された成分です。

鳥井氏は1984年に京都大学との共同プロジェクトとして、健康に役立つ油についての研究を始めました。翌1985年には油の中の有効な健康成分であるアラキドン酸の産生に関わる微生物を発見。アラキドン酸を増やすために、さまざまな油を用いて実験を繰り返しました。

すると、さまざまな種類の油の中でも、“ゴマ油”を入れたときだけ、アラキドン酸がまったく増えないということに気づきます。アラキドン酸の産生の意味では失敗と言える実験でしたが、これを機に、ゴマ油には何かしらの秘密があるのではと考え始めます。そして研究を進めた結果、セサミンの発見に行き着くのです。[※2][※4]

1988年、研究チームはセサミンのベースとなる研究成果を学会で発表。九州大学の菅野名誉教授から、セサミンは「自然からの贈り物」と称賛され、1989年よりセサミンの共同研究が始められます。[※4]そしてセサミンは近年の健康ブームで、サプリメントとしての人気を確立していきます。

さらに最近の研究では、セサミンについての新しい成果も得られています。2016年に筑波大学の研究チームは、セサミンを分解する細菌を自然界から世界で初めて見出し、セサミンをより強い抗酸化活性物質(サミンモノカテコール、セサミンジカテコール)に変換する酵素“SesA”を発見したことを発表しました。[※5]

この発見により、セサミンからより強力な抗酸化物質を大量に生産できる可能性が開かれ、この技術が今後食品や医療などの幅広い分野に応用されていくことが期待されています。

専門家の見解(監修者のコメント)

スポーツ医学を専門とする京都大学大学院人間・環境研究科の森谷敏夫助教授は、運動により発生した活性酸素を抑えるための研究の中で、ゴマに含まれるセサミンにたどりついたと言います。森谷氏は、ある企業の機関誌のインタビューの中で

「セサミンのほかにも酸化を防いでくれる物質には、ビタミンEとかCなどがよく知られていますが、これらは水溶性で、血液に溶けて血中の活性酸素を除去するため肝臓までは届きません。ですから、肝臓まできちんと届くセサミンは、これら以上に効果絶大です。」

(at home教授対談シリーズ こだわりアカデミー1999年10月号より引用)[※6]

と語っています。

また、サントリーセサミンの初代研究者で農学博士の新免芳史氏は、

「昔から、ゴマは体によいと言われてきましたが、その担い手の一つがセサミンだと、断言してもよいくらい、何を調べてもよい結果が出るので驚きました。昔の人たちは、ゴマパワーのよさを体感していたのでしょう。」

(サントリーウエルネス Online セサミンの歴史 実験の失敗から発見-セサミンの働き- より引用)[※7]

と、研究を進めるほどに明らかになるセサミンの驚くべきパワーについて述べています。

セサミンを多く含む食べ物

セサミンはおもにゴマや、ゴマ油・ゴマペーストなどのゴマの加工品に含まれています。

セサミンはゴマリグナンの中の成分ですが、ゴマリグナンはゴマ1粒に対して約1%しか含まれていません。さらにその中のセサミンとなると、ほんの少量です。

実験などは1日10mg以上のセサミンが用いられていますが、仮にゴマから10mgのセサミンを摂取するとなると、何千粒という量が必要になり、普段の食事からと考えるとあまり現実的ではありません。そのため、セサミンのパワーを体感したい場合、サプリメントが選択肢のひとつになるでしょう。

また、ゴマの殻は食物繊維でできているうえとても固く、そのままでは効率的に吸収できません。[※6]ゴマからセサミンを上手に摂取したいのであれば、粒のままではなく、すりつぶしてから食べるようにしましょう。すりつぶすのが手間だと感じる場合は、ゴマペーストが重宝します。

ゴマを利用した献立にはヘルシーなものが多くあります。野菜や豆腐などの植物性タンパク質にゴマを加えるとコクが出て満足感が高まるので、ゴマ和え、胡麻豆腐、ゴマドレッシングなどはダイエットを意識したメニューでもおなじみです。

また、セサミンは1日で体外に排出されてしまうこともわかっています。そのため、セサミンの効果や効能を期待して摂取するのであれば、毎日続けて摂ることがポイントとなります。

ゴマは料理のバリエーションが多い食材でもあるので、毎日のメニューに気軽に摂りれてみるとよいでしょう。

相乗効果を発揮する成分

セサミンは抗酸化作用が有名ですが、セサミンだけでなく、ほかにも抗酸化作用を持つ成分はたくさんあります。

代表的なもののひとつがビタミンEです。ビタミンEは別名「若返りのビタミン」とも呼ばれ、ゴマにはもちろん、ナッツ類やかぼちゃ、うなぎなどに多く含まれます。

セサミンとともに摂取することで、相乗効果により、抗酸化作用が高まることが期待できます。

セサミンに副作用はあるのか

セサミンの摂取で、今までに副作用が起きたという報告はありません。市販されているセサミンのサプリメントもゴマから抽出している天然成分ですので、通常摂取するぶんには恐らく安全だと言えます。

ただし、セサミンのサプリメントには別の成分が一緒に配合されいるものが多くあります。そのためほかの成分による副作用が起こる可能性はゼロではありません。

サプリメントを選ぶさいには、一緒に配合されている成分もよく確かめたうえで、自分に必要なものを選ぶようにしてください。