イミダペプチドの効果とその作用

「渡り鳥はなぜ何千キロも飛び続けられるのか」[※1]という疑問を解決してくれたのが、このイミダペプチド、別名イミダゾールジペプチドでした。1年間に数万キロも異動する渡り鳥の翼の付け根の筋肉(胸肉)には、抗疲労物質と呼ばれる有効成分、イミダペプチドが豊富に含まれています。

イミダペプチドとはどのような成分か

イミダペプチドとは、2つのアミノ酸が結合した成分の総称で、有効性で特に知られているのが、アンセリンとカルノシンという成分。2つのアミノ酸が結合した分子のことを“ジペプチド”というため、正式名称は「イミダゾールジペプチド」といいます。イミダペプチドは経口摂取後2つのアミノ酸に分解されますが、体内に吸収されると再合成されるという大きな特徴があります。 人間を含むあらゆる動物の体内にイミダペプチドは存在しますが、その含有量が特に多いのが渡り鳥やマグロ、カツオといった活動量の多い生き物です。渡り鳥や大型回遊魚にイミダペプチドが豊富に含まれることから、抗疲労成分や抗酸化成分としての有用性を検証する研究が進められました。

イミダペプチドの効果・効能

イミダペプチドには次のような効果・効能があるといわれています。

■抗疲労効果(肉体疲労・精神疲労)

生活しているなかで体力的ストレス、すなわち仕事や育児、過度な運動などにより生じる疲労の原因は活性酸素。この活性酸素によって細胞が傷つけられ、疲労がたまります。

イミダペプチドは活性酸素を除去する効果があることがわかっており[※2]、ヒト臨床試験でもその効果が確認されています。この作用は肉体疲労だけでなく、頭脳労働による精神疲労にも効果を発揮すると考えられています。

■抗酸化作用

酸素を吸って生きている人間は、つねに酸化ストレスにさらされています。その原因物質が先ほども述べた活性酸素などのフリーラジカル(不安定な分子でさまざまな病気を引き起こす物質)。

活性酸素はフリーラジカルのひとつですが、イミダペプチドには活性酸素を緩和させる効果がある[※2]ため、摂取することによって疲労を抑制する機能があることが確認されています。

■睡眠の質を改善

肉体的・精神的疲労が蓄積すると睡眠の質が落ち、人間が本来持っている回復能力が発揮できなくなってしまいます。こうなると人間は活性酸素のえじきです。

イミダペプチドは活性酸素を除去し、負のスパイラルを断ち切る作用があります。この作用により、自律神経が優位になった状態から副交感神経が優位な状況に誘引。良質な睡眠がとれるようになるとされています。

■運動機能向上作用

イミダペプチドには疲労を抑制する効果だけでなく、運動機能を有意に向上させる作用もあることがわかっています。[※3]イミダペプチドを摂取させたマウスやラットによる動物実験や、健常男性に摂取させ高負荷をかけたヒト試験により確認されています。

■アルツハイマー型認知症の予防・改善効果

2014年3月に「イミダゾールジペプチド(イミダペプチド)には、記憶に関する脳部位の萎縮を抑制し、神経心理機能を改善する作用がある可能性がある」(東京大学 大学院新領域創成研究科 「鶏肉のイミダゾールジペプチドの脳老化改善効果を発見」から引用)という驚くべき発表がありました。このエビデンスは『2014年農林水産省研究成果10大トピックス』[※4]に選ばれています。

■尿酸抑制効果(痛風予防)

イミダゾールジペプチドの一種であるアンセリンには、血液中の尿酸値を下げる作用があることがわかっています。[※5]

過剰に作られた尿酸の体外への排泄を促進する作用および尿酸の過剰な産生を抑制すると考えられています。さらに腎機能の低下、高血圧、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を予防する効果もあると考えられています。[※6]

どのような作用があるのか

イミダペプチドは経口摂取されたあと、いったんはβアラニンとヒスチジンというアミノ酸に分解されますが、合成酵素の働きで再合成されるというメカニズムがあります。

またイミダペプチドは人間を含め動物の体内で合成されるアミノ酸ですが、合成を促がす酵素(合成酵素)が動物の種類ごとに異なる、もっとも消耗が激しい部位にイミダペプチドの合成酵素が多く存在しています。[※7]

たとえば鳥であれば羽を動かす胸の筋肉に豊富に含まれますし、大型回遊魚であれば尾の付け根。 強い負荷のかかる部位にイミダペプチド合成酵素を多く配置することにより、疲労物質の蓄積を抑制したり、疲労からの回復はやめたり、運動機能を向上させたりするという仕組みです。

人間も疲労が溜まりやすい体のパーツや脳などには、イミダペプチドの合成酵素がたくさん存在しています。イミダペプチドを摂取することによって、ピンポイントで活性酸素を除去する抗酸化作用が機能するため、抗疲労効果をはじめとするさまざまな効果が発揮され、体感しやすいのではないかと考えられています。[※7]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

抗疲労効果があることから仕事で肉体を酷使する人、筋トレなど高負荷がかかる運動をしている人、脳疲労が強いと感じる人、受験生など体力を消耗する人など、疲労を抑制したい、回復力を早めたいと感じている人が摂取すべき成分のひとつです。 また酸化ストレスによる不眠や睡眠の質を向上させたい人や生活習慣病を予防した人にも向いています。

アルツハイマー型認知症や痛風にも効果があるとされていますが、医療機関で治療を受けている人の場合は、専門医と相談の上、摂取するとようにしましょう。

また自律神経が乱れがちな人、首・肩がつねに凝っている人、眼精疲労が強い人も試してみる価値はあります。[※8]

ただし即効性のある成分ではありませんので、継続していくことが大切。いきなりサプリメントを購入するのではなく、まずはイミダペプチドを多く含む鶏の胸肉などを日常の食事に取り入れてみてください。

イミダペプチドの摂取目安量・上限摂取量

サプリメントの場合製品によって含有量が異なりますが、飲料タイプの製品などを参考にすると、1日200㎎から400㎎を摂取するのが適量のようです。

厚労省による食事摂取基準や上限摂取量は特に定められていませんが、1日の摂取目安量(400mg)の3倍の量(1200mg)を摂取しても副作用などの有害な影響が出ていないという臨床試験の報告があります。[※9]

ただしサプリメントによっては「イミダゾールジペプチド含有チキンエキス」などとイミダペプチドをほんの少ししか含有していない(実際には20mg~30mg程度)も製品もあるため、商品説明に惑わされないように注意してください。

イミダペプチドのエビデンス(科学的根拠)

産学官共同研究も行なわれているイミダペプチドのエビデンスについては、大阪市立大学の研究チームがヒト臨床試験を行ない、「イミダペプチドには有意な抗疲労効果が認められる」ことを発表しました。

イミダペプチドを4週間毎日摂取後、4時間の自転車こぎ運動を行ない、未摂取群と摂取群の疲労度や疲労回復度を測定。

4時間自転車をこぐという高負荷運動直後の疲労感は、未摂取群の疲労が摂取群の1.5倍、実験が終了してから4時間経過した後再度測定すると、約2倍の差がありました。[※10]

イミダペプチドはすでに平成27年には機能性成分として消費者庁にも届出されており、一般消費者向けに「機能性表示食品の科学的根拠等に関する基本情報」が公開されています。[※9]

またアルツハイマー型認知症に関するヒト試験では、中高齢者に長期間摂取させた結果、未摂取群と比較して脳のMRI画像検査と心理機能検査をしたところ、摂取群に明らかに有意な差が生じたという試験結果が発表されています。[※4]

研究のきっかけ(歴史・背景)

1991年に厚生省(現在の厚労省)研究班が3年間をかけて「慢性疲労症候群」について分析、さらに1999年からは文部科学省研究班が「疲労と疲労感に関する分子神経メカニズム」という研究を6年間実施しました。

その結果就労人口の約60%もの人が疲労を自覚、さらにその半数以上が慢性的な疲労に悩んでいることが判明したのです。

これを受けて2003年に産学官連携の「抗疲労食薬開発プロジェクト」が発足。文科省、大阪市、大阪市立大学など5つの大学、医薬品メーカー、商品メーカーが連携して研究が進められました。

専門家の見解

前述した「抗疲労食薬開発プロジェクト」の代表でもある大阪市立大学特任教授・梶本修身氏によれば、

「1日200ミリグラムの摂取で2週間、また1日400ミリグラムの摂取で1週間、イミダペプチドを摂取し続けていると、75%の人が「疲れにくくなった」と自覚するという結果が出ています」(『JB PRESS 疲れには栄養ドリンクより鶏の胸肉だ/疲労研究者に聞く「食と抗疲労」』 より引用)[※12]

とメディアのインタビューに答えています。梶本教授によれば、

1日200mgの量を2週間摂取した後、1日400mgのイミダペプチドを1週間摂取した試験で、75%もの人が抗疲労効果を実感したという結果が出た
と説明しています。[※12]

イミダペプチドを多く含む食べ物

イミダペプチドが豊富に含まれ、毎日の食事に応用しやすいのは、鶏の胸肉です。生の鶏胸肉100gに含まれるイミダペプチドは200mg。1日の推奨摂取量が200mgから400mgなので、3食のうちどれかで鶏肉料理を食べるとよいでしょう。

イミダペプチドは熱に強い成分なので、このような調理法で料理しても、有効成分の機能を失うことがありません。

ただしイミダペプチドは水溶性の成分なので、鶏肉からスープや汁に溶け出てしまいます。煮物など味付けの濃いものは汁ごと食べるわけにはいきませんので、焼いたり揚げたりする以外は、スープで摂るのがおすすめです。

鶏肉のほか、牛肉や豚肉にも含まれますし、マグロやカツオ、鯨といった大型の回遊魚にもイミダペプチドが多く含まれます。毎日鶏肉ばかり食べるとあきてしまうので、ローテーションを組んで工夫してみると良いでしょう。

相乗効果を発揮する成分

大阪市立大学医学部疲労医学教室による調査では、ビタミンCをイミダゾールジペプチドと一緒に摂取した結果、単独摂取よりも疲労回復効果を文字回帰管理栄養士で体感することができたという実験結果が出たそうです。[※2]

イミダペプチドに副作用はあるのか

消費者庁に提出された「安全性評価シート」[※13]を参照してみると、1日の摂取目安量であるイミダゾールジペプチド400mgの3倍、1200mgを摂取しても有害事象(摂取することによって予想外の症状や病気などを引き起こすこと)は認められなかったそうです。

また12週間、毎日800mgのイミダゾールジペプチドを摂取するテストを二重盲検法によって長期摂取。その結果、被験者全員に健康上の異変や副作用などは出ませんでした。

二重盲検法とは別名ダブルブラインドテストといい、新薬などの有効性や作用を調べるための比較試験の方法。

被験者も研究者もだれがどちらを摂取しているかわかりません。そのため心理的な影響を受けにくく、正確な試験結果が得られる検査法。

その意味ではイミダペプチドには副作用の心配はないといっていいと思います。