中国の南西部に自生しているトチュウ目トチュウ科の植物である杜仲。昔から滋養強壮や血圧降下、利尿作用などがあることが知られており、中国では五大漢方薬のひとつとして使用されてきました。日本でもさまざまな効果・効能から、杜仲の葉は健康食品、樹皮は生薬として利用されています。
ここでは、そんな杜仲茶の特徴や効果・効能、作用のメカニズムなどを解説しています。副作用や注意すべき相互作用などをまとめているほか、杜仲茶のエビデンスや専門家の見解もご紹介しています。
杜仲茶とは、杜仲と呼ばれる植物の葉を煎じたお茶です。
杜仲は中国原産で、ほかに近似種がなく1種類しか存在しない非常に珍しい植物です。
大昔には、杜仲はさまざまな種類が存在していたとされ、もっとも多く繁殖していたとされるのが恐竜時代末期の6000万年前頃~600万年前だといわれています。しかし、氷河期に大部分が絶滅したといわれており、現在残っている種が1種類のみとなっています。恐竜が生きていた時代から現在まで生命をつないできた非常に生命力が強い杜仲は、「生きた化石植物」と呼ばれています。[※1]
杜仲は成長すると約15~20mにまで達する落葉高木で、木に咲く花は緑がかった白色、葉は楕円形をしています。杜仲の大きな特徴は、葉っぱを裂いたり樹皮をはがしたりすると、ゴム状の糸を引きながら白い乳液があらわれること。[※2]この乳液は杜仲ゴムと呼ばれるゴム質の成分となります。
この杜仲ゴムの効果により害虫がつきにくいため、農薬が必要ないとされています。[※3]
杜仲には、血圧を下げる効果があるゲニポシド酸や脂肪燃焼をサポートするアスペルロシドなどが豊富に含まれています。[※1]そのほかにも、たんぱく質やカルシウム、カリウム、鉄分、亜鉛、リンなどの成分が含有しています。
杜仲の葉や樹皮はそれぞれ異なった使われ方がされています。葉から抽出・精製された杜仲葉エキスから製造された飲料は、高血圧予防として血圧が高い人に適した食品として販売されています。[※4]
杜仲の樹皮はリグナン化合物が含まれており、血圧を下げる作用や滋養強壮、抗ストレスなどに有用なことが証明されています。中国では昔から杜仲の樹皮は五大漢薬として利用されており、日本でも医薬品として指定されています。[※1]
杜仲茶には、以下のような効果・効能があげられます。[※5][※6][※7]
■内蔵脂肪を減らす
杜仲茶に含まれる成分・アスペルロシドを摂取することで、代謝をあげて内蔵脂肪を減らしてくれます。
■高血圧予防
杜仲茶の有効成分であるゲニポシド酸が血圧を下げてくれます。
■利尿効果
体内のイオンバランスを調整して、老廃物を体外へ排出してくれます。
■便通改善
成分のはたらきによって腸のはたらきを促進して、体内の余分なものを排出してくれます。
ほかにも、肩こりや冷え症の改善、抗ストレス、滋養強壮などの効果があります。
杜仲茶には、杜仲葉配糖体としてゲニポシド酸、ピノレジノール・ジグルコサイドなどと呼ばれる成分が含まれていますが、これらの成分を摂取することにより、副交感神経に刺激を与えます。この刺激により血管が広がり、血流が改善。血圧の上昇を抑制してくれます。
このはたらきにより高血圧の予防や改善にもつながるほか、血行が良くなることで、腰痛や肩こり、冷え症の改善も期待できます。[※4]
また、杜仲茶にはアスペルロシドと呼ばれる成分が含まれています。このアスペルロシドを摂取することで小腸にはたらきかけ、胆汁酸の分泌を増加させるはたらきがあります。胆汁酸の分泌が盛んになると、肝臓や筋肉、褐色脂肪細胞のはたらきを高め、基礎代謝が向上。基礎代謝がアップすることで体内の脂肪が燃焼され、最終的に内臓脂肪の減少につながります。[※8]
ほかにも、杜仲葉のエキスには血中脂質や内臓脂肪の蓄積、肥満などを改善する作用があることから、メタボリックシンドロームへの効果が期待されています。[※9]
杜仲茶は、以下のような人におすすめです。該当する人は、普段の生活から杜仲茶を取り入れるとよいでしょう。
日本杜仲研究会によると、杜仲茶葉の1日あたりの摂取目安量は6gだといわれています。[※7]目安は3gの茶葉を1Lの水で煮出す[※4]となっていますが、あまり多く飲めない人や濃さにこだわりがある人などはお好みで煮出す量を調節してください。
葉の摂取目安量の6gは、杜仲茶の効果のもとである杜仲葉配糖体のゲニポシド酸85mg、アスペシルド30mg相当となります。
小林製薬株式会社中央研究所が行った研究によって、アスペルロシドを含む杜仲茶は内臓脂肪と体重を低減することが報告されました。
調査では内臓脂肪断面積が100cm2以上の27名を対象に、杜仲茶エキスが配合されていない食品を摂取するグループと杜仲葉エキスを配合した食品を摂取するグループ2つに分類。
杜仲葉エキスを配合した食品を摂るグループには、1日に1回杜仲葉エキスを配合したサプリを摂取してもらいました。
2か月間の調査を行い、調査前との内臓脂肪断面積と体重の変化を調べました。
その結果、杜仲葉エキスを配合した食品を摂取したグループのほうが内蔵脂肪や体重の減少がみられたことがわかりました。これにより、杜仲茶には抗肥満作用があると報告されました。[※10]
また、鈴鹿医療科学大学鍼灸学部講師である張文平氏による、杜仲茶エキスにおける閉経後の骨密度減少抑制効果についての研究が行われました。
健常なラット、閉経したラット、杜仲葉エキスを投与した閉経ラットにわけて、12週間後に骨密度と大腿骨の骨重量を測定して比較しました。その結果、閉経したラットは大腿骨の骨重量と骨密度が低下していたのに対し、杜仲葉エキスを投与したラットには大腿骨の骨重量と骨密度の増加がみられました。
このことから、杜仲茶エキスによって女性閉経後に生じる骨粗しょう症予防につながるのではないかと考えられました。[※11]
杜仲は、中国でもっとも古い薬物書といわれる「神農本草経」で、無毒かつ長く飲み続けたり多く服用したりしても安全(上品)として紹介されています。[※1]
また、中国の明時代ごろに李時珍により記された「本草綱目」という薬物書には、肝機能や腎機能の改善、滋養強壮、鎮痛などへの有効性が書かれています。昔からその効果・効能が知られていた杜仲は、中国で現在でも五大漢方薬のひとつとして利用されています。
日本では奈良時代~平安時代にかけて渡来してきたとされています。杜仲の樹皮は医薬品、葉は食品として利用されてきました。1970年代には杜仲の葉を煎じた杜仲茶が販売され、杜仲という名前が知られるようになりました。[※3]
現在では杜仲茶の効果・効能の有効性が研究などで証明され、特定保健用食品としても利用されています。[※12]
新渡戸文化短期大学(現・新渡戸文化短期大学)の学長を務める医学博士の中原英臣氏は、杜仲茶の効果について自身の著書で次のように解説しています。
「杜仲茶に含まれるミネラル成分の『カリウム』には体内の内臓脂肪を分解して燃焼させる働きがあり、血液をサラサラにしてくれるという触れ込みで、高脂血症、高血圧、高血糖などに効き目があるとされています。
メタボの代表的な症状に効果があるというわけです」
(『こんな健康法はおやめなさい あなたもうっかり騙されている: あなたもうっかり騙されている』より引用)[※13]
高カロリーな食事や運動不足でメタボリックシンドロームになると、血中コレステロール値や血糖値が上がり、病気のリスクが高まります。内臓脂肪を分解するカリウムを含む杜仲茶は、メタボリックシンドロームの人にとって強い味方といえるでしょう。
ただし、中原氏は杜仲茶を飲むことによって別の病気のリスクが高まるケースもあると、以下のようにコメントしています。
「しかし、肝臓が弱っている人の場合には、排出が十分にされずにカリウムが体内に蓄積されてしまう可能性があります。そうなると、高カリウム血症で手足のしびれや吐き気などを起こしかねません」
(『こんな健康法はおやめなさい あなたもうっかり騙されている: あなたもうっかり騙されている』より引用)[※13]
肝臓が弱い人は、杜仲茶によって高カリウム血症を引き起こすおそれがあります。肝臓が弱ると食欲が低下して、脂っこいものやお酒を口にしなくなります。
また、足がむくんだり、お腹がはったりしている場合も肝機能が低下している可能性があります。心あたりがある人は杜仲茶の飲用を避けて、肝臓の検査を受けましょう。
杜仲茶の入れ方は、基本的に紅茶や中国茶などと同様です。
■杜仲茶の入れ方
やかんで杜仲茶を入れる場合、水1Lに対して杜仲の茶葉を大さじ1~2杯を煮出し用のパックに入れ、やかんに入れます。火をかけて沸騰したら弱火にして7~8分ほど煮出します。濃いめのほうが好きな人は煮詰める時間を増やすとよいでしょう。[※14]
さっぱりとした味わいの杜仲茶は、温かいままでも冷やしてでも美味しくいただけます。普段飲んでいる水やお茶を杜仲茶に変えて飲むことで、継続して取り入れることができますよ。[※15]
杜仲茶と相乗効果を発揮する成分は報告されていません。
杜仲茶にはカフェインが含まれていません。そのため、子どもから妊婦、高齢者まで安心して飲むことができます。[※15]
ただし、杜仲茶はカリウムを含有しています。
腎臓病の人はカリウムが十分に排出されず体内に蓄積し、高カリウム血症を引き起こすおそれがあるため、摂取量に気をつける必要があります。[※13]
杜仲の葉の有効性や安全性から、血圧が高い人に適した食品として特定保健用食品に使用されている杜仲茶。[※16]ただし、摂取する際に、併用することで相互作用を引き起こす医薬品があるので十分に注意しましょう。
たとえば高血圧治療薬。杜仲茶と高血圧治療薬は同じ血圧を下げる作用があります。併用することにより、その降圧作用を強めてしまうおそれがあります。
また、カリウム製剤やカリウム保持性利尿薬との併用にも気をつけましょう。杜仲茶にはカリウムが含まれており、これらの医薬品と併用することで体内にカリウムが過剰に蓄積し、血清カリウムの値を上昇させる可能性があります。
腎機能が低下している人や高齢者の場合、血清カリウム値が上昇することで、吐き気や嘔吐、不整脈など高カリウム血症を引き起こす可能性があります。[※17]