テアニンの効果とその作用

お茶を飲むとほっとする、その化学的根拠となる成分がテアニンです。テアニンには脳や体をリラックスさせ、ストレスを軽減させる作用があります。睡眠の質を改善する快眠サプリとしても人気です。集中力を持続させ、記憶や学習能力を高めたり、脳の機能低下を防いだりする「脳に効く成分」としても注目されています。テアニンのもつ多様な効果効能についてまとめました。

テアニンとはどのような成分か

テアニンはお茶に含まれるアミノ酸の一種です。お茶にはアスパラギン酸やグルタミン酸など数多くのアミノ酸が含まれていますが、そのなかでもっとも多いのがテアニンで、全アミノ酸の約50%を占めています。[※1]

正式名称はグルタミルエチルアミド。グルタミンサンの誘導体で、お茶の旨みや甘みを引き出す成分として知られています。

テアニンは、茶葉を生産するチャノキとごく一部の植物だけに含まれる特有のアミノ酸で、発見当時のお茶の学名“Thea sinensis(テア・シネンシス)”にちなんで“Theanine(テアニン)”という名前がつけられました。[※2]

チャノキの根の部分で生成されたのち葉に蓄えられ、日光が当たると渋み成分であるカテキンに変化します。カテキン同様、さまざまな保健作用のある機能性成分として注目されています。サプリメントなど機能性表示食品では、L-テアニンという成分名で表記されます。

テアニンの効果・効能

テアニンには次のような効果・効能があるといわれています。テアニンが配合された機能性表示食品もあるほど、さまざまな作用が確認されています。

■リラックス効果

α波を増やし気分をリラックスさせる効果があります

■集中力を高める効果

リラックスすることで緊張を緩和し、集中力を持続させます。

■ストレスの緩和

自律神経へはたらきかけ緊張やストレスを緩和します。

■睡眠改善効果

脳の興奮を抑えて寝つきをよくし、熟睡を促す効果があります。

■冷え性の改善

末梢血管の血流をよくし、冷え性を改善します。

■血圧を下げる効果

末梢血管を拡張させるため、血圧を下げる効果があります。

■PMSや更年期障害の症状軽減

PMS(月経前症候群)や更年期障害などの不快感を軽減します。

■認知症の予防

脳神経細胞を保護する作用があるため、認知症を予防し、症状の悪化を防ぐ効果が期待できます。

■保湿効果

ケラチンとの親和性が高く、毛髪の保湿などに効果があります。[※3] [※4]

どのような作用があるのか

テアニンにはカフェインの興奮作用を低減させる作用があることが以前から知られていました。緑茶1杯には15~30mgのカフェインが含まれています。

これは本来ならかなり強い興奮作用を示す量なのですが、実際には頭がスッキリする程度の穏やかな作用にとどまり[※3]、逆にほっこりと気分が和らいだりもします。

テアニンのもっとも特徴的な作用は、このように興奮を鎮め、心と体をリラックスさせることです。テアニンには2つの大きなリラックス作用があります。

1つは脳内にα波の生成を促進させる作用です。α波は心の安静度の指標となる脳波で、これが引き出されることによってリラックスした気分を感じるようになります。カフェインとテアニンを同時に摂取する実験では、α波を引き出すだけでなく、β波(興奮時に出現する脳波)を抑制する作用があることもわかりました。[※2]

もう1つは交感神経の活動を抑え、副交感神経のはたらきを活性化させる作用です。これにより、緊張やストレスから解放され、体がリラックスした状態になります。[※4]

この2つの作用は、単に心身をリラックスさせるだけではなく、ほかにもさまざまな健康効果をもたらします。

単純作業を続けるストレスを抑制することから、集中力を持続させ、勉強や仕事の効率をアップさせます。[※5]また、緊張を緩和する作用はプレッシャーによる失敗を防ぎ、スポーツなどのパフォーマンスを向上させます。[※6]

テアニンは睡眠サプリとしても知られており、睡眠改善に高い効果を発揮します。脳の興奮状態を鎮めて体を緊張状態から解放することから、スムーズな入眠を可能にするのです。

統計の結果、寝つきがよくなるだけでなく、途中覚醒がなく熟睡でき、起床時の疲労感が軽減するなど、睡眠の質を改善する効果があることもわかりました。[※7]

そのほか、副交感神経のはたらきで末梢血管が拡張するため、冷え性を改善する効果があることも報告されています。[※8]

テアニンは血液脳関門を通過できるため、いくつかの脳内物質のはたらきにも影響を与えています。

テアニンを摂取すると、脳内のGABA(gamma amino butyric acid:γ-アミノ酪酸)やグリシンといった睡眠に関する神経伝達物質が増えることが報告されており、これが前述の睡眠改善の手助けをしていると考えられています。[※9]

また、ドーパミンの放出量を増加させて記憶・学習能力を向上させたり、セロトニンの分泌に関与して高血圧を改善させたりする作用があることも確認されています。[※10]

最近の研究では、血流の低下などから起こる脳神経細胞のダメージを抑制することや[※11]、神経細胞の新生を促進することがわかり[※12]、認知症の予防や症状の軽減に期待がもたれています。

テアニンはこのように数々の機能性をもつ健康成分ですが、美容面でもその有用性が注目されています。ケラチンとの親和性が高く、長時間にわたって水分を保持してくれます。髪の修復を助ける保湿剤や、肌なじみのよいパウダーをつくるためのコーティング剤として製品開発が進められています。[※13][※14][※15]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

テアニンには優れたリラックス作用や抗ストレス作用があります。仕事や対人関係でストレスをためやすい現代人にとっては、まさに救世主のような健康成分といえるでしょう。

仕事や勉強で集中力を高めたいとき、プレゼンやスポーツの試合など「ここぞ」という本番にのぞむとき、テアニンは力強い効果を発揮してくれるはずです。

また睡眠の質を改善する効果もありますので、寝つきの悪い人、熟睡できず夜中に何度も目が覚めてしまう人、寝起きの悪い人などにおすすめです。

テアニンのリラックス効果は、PMSや更年期障害など女性特有の悩みも解消します。精神的な不快感を緩和するだけでなく、頭痛や腰痛などを軽減するなど身体的症状の改善にも役立つことがわかっています。[※16]

髪の傷みが気になる人や、ふんわり薄づきで落ちにくいパウダーファンデーションを探している人は、テアニン配合のヘアケア・スキンケア製品を試してみてはいかがでしょうか。

テアニンの摂取目安量・上限摂取量

テアニンはさまざまな機能性をもつ有用なアミノ酸ですが、体の形成や代謝に必須とされる成分ではありません。そのため、1日の摂取目安量は特に決められていないようです。市販の機能性表示食品の多くは、1日の摂取目安量を200mgとしています。

テアニンを含む健康食品の安全評価試験によると、1日2500mgのテアニンを4週間連続で摂取しても安全性に問題がないことがわかりました。[※17]

テアニンのエビデンス(科学的根拠)

テアニンの機能性に対する研究はかなり進んでおり、動物だけでなくヒトに対する実験結果も数多く発表されています。たとえば、脳波に関する研究では次のような結果が報告されています。

健康な被験者と不安を感じやすい被験者のグループに、ただの水、テアニン50mg、テアニン200mgを含む水を飲んでもらい時間の経過とともに脳波を測定したところ、ただの水は飲んだ直後一時的にリラックスするもののすぐ元に戻ってしまうのに対し、テアニン200mgを含む水を飲むと約40分後以降α波が顕著に発生することがわかりました。

テアニン50mgを含む水の場合は、健康な被験者ではほとんど変化が現れなかったのに対し、不安を感じやすい被験者は200mgのテアニンを含む水を飲んだときと同じようなα波が観測されました。[※18]

このことからテアニンには脳に対するリラックス作用があること、そして、不安を感じているほど、少ない量でも高い効果が得られることがわかりました。

また、睡眠に関する研究データも発表されています。20~36歳の健康な男性22名に、テアニン50mgを含むサプリメントを6日間、就寝する1時間前に摂取してもらい睡眠の状態がどう変わったから比較。

すると、テアニンを摂取したグループは「起床時の眠気」「入眠と睡眠維持」「夢み」「疲労回復」「睡眠時間」というすべての項目に対して改善されたと感じていることがわかりました。[※19]

脳内物質に関する機能性については、まだ動物実験の段階ですが、今後ヒトに対する臨床試験の結果が増えれば、より高機能な機能性表示食品や医薬品の開発につながるでしょう。

研究のきっかけ(歴史・背景)

テアニンは日本の研究者によって発見された成分です。1950年、京都府立農業試験場茶葉研究所(現在の京都府農林水産技術センター農林センター茶業研究所(宇治茶部))の所長、酒戸弥二郎氏は玉露からテアニンを初めて分離精製することに成功しました。

1900年代は、グルタミン酸やイノシン酸など旨み成分に関する研究が進んでおり、緑茶に含まれる旨み成分の探索が続けられていたのです。[※2]

その後、1964年には食品添加物として指定されました。研究の結果、リラックス作用や睡眠改善効果、健脳効果など数多くの健康機能性が明らかになってきています。

専門家の見解(監修者のコメント)

現代人にとってストレスは、さまざまな疾患の原因となっています。静岡県立大学の海野けい子先生はストレスが体に与える影響について次のように指摘しています。

『過度なストレスや長期にわたるストレスは、「うつ」や心血管系疾患、糖尿病、胃・十二指腸潰瘍、気管支喘息、アトピー性皮膚炎など様々な疾患の発症や経緯に関与していると考えられています。
脳も例外ではなく、ストレスの標的となります。強いストレスを多く感じていた人ほど、脳が萎縮していることが報告されています』[※20]

こうした現代人のストレスを軽減してくれるテアニンの抗ストレス作用に、多くの専門家が注目しています。海野先生は、手軽にテアニンを摂取できる方法としてお茶の飲用が有効だとコメントしています。

『同じようにストレスを受けていても、テアニンを摂取していた場合は、ストレス による寿命の短縮や脳の老化の促進が抑えられることが見出されました。このようなテアニンの抗ストレス作用は、緑茶に含まれるカテキンやカフェインによってある程度打ち消されてしまうのですが、テアニンを多く含むお茶を飲むことによって、テアニンの抗ストレス効果が発揮されることもわかってきました。美味しいお茶を毎日飲むことにより、知らないうちにストレスに打ち勝つ力も身につくと考えられます』[※21]

テアニンを多く含む食べ物

テアニンは緑茶特有の成分です。日光に当たるとカテキンに変化することから、碾茶(抹茶用の茶葉)や玉露、かぶせ茶のように、おおいをして日光をさえぎるように育てたお茶に多く含まれます。湯のみ1杯(80ml)に含まれるテアニンの量は、抹茶36mg、玉露34mg、煎茶10mg、番茶3mgといわれています。[※7]

一般的に摂取目安量とされている200mgをお茶だけでとろうとすると、煎茶なら20杯を飲まなくてはいけません。お茶だけでなく、サプリメントなどを上手に利用して効率よく摂取するのがよいでしょう。

相乗効果を発揮する成分

睡眠効果を高めたいなら、GABAを一緒に摂取するとよいでしょう。テアニンは睡眠やストレス低減に関わる脳内物質であるGABAのはたらき活性化させます。[※22]

また、シスチンとテアニンを同時に摂取すると、免疫力がアップし、風邪やインフルエンザにかかりにくくなったり、運動後の筋肉の炎症が抑えられたりすることがわかっています。[※23]

リラックス効果を妨げるカフェインも、テアニンと一緒に摂取することで、体重の増加や内臓脂肪の蓄積を抑制するという実験結果が報告されました。[※24]

テアニンに副作用はあるのか

国内で1964年に食品添加物として指定されてから現在までに、重篤な健康被害などの報告はありません。米国食品医薬品局(FDA)においても2006年に「一般に安全と認識される食品」(GRAS)に認定され、十分な安全性が確認されています。[※25]

参照・引用サイトおよび文献

  1. 日本精神神経学会 精神神経学雑誌 第117巻 第10号(2015)「精神医学のフロンティア 健常者の感覚運動フィルター機構に対するL-テアニンの影響」【PDF】
  2. 京都府農林水産技術センター農林センター茶業研究所 平成21年度茶業試験研究成績報告会「テアニン発見60年」【PDF】
  3. 伊藤園 お茶百科「お茶の成分と健康性 アミノ酸(テアニン)」
  4. 日経グッデイ「お茶は『ストレス』『不眠』にも効果あり!緑茶パワーをフルに活かす“いれ方”とは?」
  5. 太陽化学株式会社 健康のおはなし「テアニン 集中力を持続できますか?」
  6. 太陽化学株式会社 健康のおはなし「テアニン 気合いをいれすぎて失敗した経験はありませんか?」
  7. 太陽化学株式会社 ニュースリリース「お茶のアミノ酸『テアニン』自律神経系への効果(冷え性改善)を確認 第61回日本栄養・食糧学会大会で発表」
  8. シーエムシー出版 バイオテクノロジーシリーズ「眠りの科学とその応用―睡眠のセンシング技術と良質な睡眠の確保に向けての研究開発―」監修:本多和樹
  9. 産業技術サービスセンター「食品機能性の科学」編集:食品機能性の科学編集委員会 監修:西川研次郎
  10. 伊藤園 ニュースリリース「緑茶の旨み成分『テアニン』による脳神経細胞保護作用のメカニズムを解明」
  11. 伊藤園 ニュースリリース「緑茶中の『テアニン』が神経細胞の新生を促進するとともに、テアニンを多く含んだ緑茶抹の継続的な摂取が軽度認知症患者の症状悪化を和らげる可能性があることを確認」
  12. シーエムシー出版 CMCテクニカルライブラリー「機能性化粧品の開発Ⅲ」監修:鈴木正人
  13. ホーユー株式会社 最新情報「テアニンに毛髪のダメージに対する補修効果を発見」
  14. コーセー 研究開発 研究発表「ふんわりとした仕上がりなのに、触っても落ちにくい化粧膜をつくる『テアニン処理パウダー』を開発」【PDF】
  15. 日本女性心身医学会雑誌 6巻(2001)2号「PMSと健康食品:L-テアニンの月経前症候群改善効果に関する研究」【PDF】
  16. 健康・栄養食品研究 9巻3/4号「健常成人に対するL-テアニン含有錠剤の過剰摂取の安全性
  17. 日本農芸化学会誌 72巻(1998)2号「L-テアニンのヒトの脳波に及ぼす影響」【PDF】
  18. 日本生理人類学会誌 9巻(2004)4号「アクチグラフを用いたL-テアニンの睡眠改善効果の検討」【PDF】
  19. 太陽化学株式会社 メールマガジン「ストレスから脳を守るテアニンの役割」
  20. 公益社団法人静岡県茶業会議所「知らなきゃソンするお茶のこと10のひみつ お茶の効用を科学する(最新版)」【PDF】
  21. キッコーマン ニュースリリース「キッコーマンから、機能性表示食品「からだ想い ピースナイト」発売!~起床時の疲労感を軽減する“テアニン”と、ストレスによる気力低下を軽減する“GABA”を配合~」
  22. 味の素株式会社 いきいき健康研究所「アミノ酸“シスチン”と“テアニン”」
  23. 静岡県立大学短期大学部浜松校特別研究報告書平成11・12年度「生体内の脂肪蓄積に対する緑茶成分の抑制効果」【PDF】
  24. 太陽化学株式会社 メールマガジン「L-テアニンと睡眠」