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ピクノジェノールの効果とその作用

ピクノジェノールは、フランスの海岸松の樹皮から採取される成分ですが、アメリカで商標登録された成分名です。海岸に生息する松は世界各国にありますが、フランスのボルドー地方の海岸松から抽出されるものが有効成分を豊富に含んでいることが知られています。女性特有の悩みに対する効果や美容効果など、その強力な抗酸化作用がどのようなものなのか、詳しく説明しています。

M’sクリニック 伊藤 まゆ先生

ピクノジェノールとはどのような成分か

ピクノジェノール、またはフラバンジェノールとはフランス海岸松の樹皮から抽出された「樹皮抽出エキス」のことで、「ピクノジェノール」という名前も「フラバンジェノール」という名前も登録商標名称です。[※1]

古代より松はさまざまな部位が民間療法や薬用に利用されてきた植物のひとつです。海岸松は世界各国に存在していますが、なかでもヨーロッパで栽培されている松の樹皮中の抽出物に注目が集まっています。

特にフランス南西部に生育する海岸松は、強い紫外線と強い海風、寒暖の差が激しい過酷な条件下で育つため、例えば日本の海岸松と比較しても樹皮が非常に厚く、色味も強い赤味を帯びており、見るからにフラボノイドやポリフェノールが含まれている印象を与えるものです。

そしてこの南フランスの海岸松の中でも、フランス南西部、ボルドー地方とビレネー山脈の間の大西洋岸に生息する海岸末の中で、樹齢30〜50年以上のものから抽出されるエキスが「ピクノジェノール」です。

現在までにプロシアニジンを中心に40種類以上の有機酸が含有されていることが解明されています。[※2]

この海岸松に含まれる有効成分は1947年に、フランスの抗酸化研究の世界的権威であるマスケリエ博士によってピーナッツの薄皮から発見され、当時成分そのものはOPCと呼ばれていました。

その後、1960年代にスイスの医薬品メーカーであるフォーファー・リサーチ社が、海岸松樹皮の抽出物が持つ優れた抗酸化作用に着目し「ピクノジェノール」と名付け登録商標を行ったことで一躍有名になりました。

日本に輸入・販売されるようになったのは1996年のことです。ちなみに日本では(株)東洋新薬によって「フラバンジェノール」と名づけられ商標登録を行っています。

それぞれは抽出方法や製法が違うと話していて、名称で呼び分ける場合もありますが、基本的には成分そのものは同じと考えて良いでしょう。[※3]

ピクノジェノールの効果・効能

ピクノジェノールには次のような効果・効能が期待されます。[※1] [※2] [※3]

■優れた抗酸化作用

ピクノジェノールの「抗酸化作用」は、ビタミンEのおよそ170倍、ビタミンCのおよそ340倍〜600倍もの力と言われています。[※3] [※4]

■血流改善作用

ピクノジェノールには動脈の緊張を和らげるため、血流を促進・改善する作用があることが報告されています。この作用により、むくみ・冷えの解消、血圧の改善、心臓や循環器系の臓器へのサポートなども期待されます。[※5]

■美肌作用

ピクノジェノールにはコラーゲンやヒアルロン酸の生成を促進する作用が報告されています。また強い抗酸化作用で、活性酸素による肌へのダメージを低下させることが報告されています。

■抗炎症作用

ピクノジェノールには抗炎症作用が報告されており、関節の痛みなどを和らげる可能性があることが期待されています。

■眼精疲労抑制効果

ピクノジェノールは目の毛細血管を強化したり、健康な視力を維持したりするのに役立つという研究成果が報告されています。[※6]

■PMSや月経痛を緩和する効果

ピクノジェノールには痛みや炎症を起こす酵素の働きをブロックするため、鎮痛剤と同様にPMSや生理痛を緩和する効果が報告されています。[※7]

■アレルギー症状の緩和

ピクノジェノールには抗ヒスタミン作用によるアレルギー緩和作用が報告されています。[※8]

■血糖値コントロール作用

ピクノジェノールは炭水化物の吸収を遅らせるため食後血糖値の上昇を抑えることが報告されています。[※9]

■高めのコレステロール値の低下作用

ピクノジェノールは血管を拡張する一酸化窒素の合成をサポートし、コレステロールを低下させ、高めの血圧を低下させることが報告されています。[※5]

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

ピクノジェノールには天然の有機酸や生理活性物質が豊富に含まれています。

ピクノジェノール単体でも、強い抗酸化作用を持ち、体を活性酸素の害から守る役割を果たすことがわかっていますが、ビタミンCやビタミンEといった他の抗酸化成分を活性するのにも役立ちます。

つまり、単体としてはもちろん、他の抗酸化成分と合わせて摂取すれば、相乗効果によって各種炎症や活性酸素の悪影響から体を守ってくれるのです。

またピクノジェノールには細胞内の抗酸化酵素やグルタチオン(細胞が生き延びるため物質)を増加させる作用も報告されています。

さらに、ピクノジェノールはアルギニンが一酸化窒素を産生する働きを促進させる役割も果たしており[※5]、これが血流を促進させるメカニズムの鍵となっています。

ピクノジェノールに認められるさまざまな効果効能も、これらの複数のメカニズムが多角的に働くことによって得られると考えられています。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ピクノジェノール抗酸化作用が期待できる成分ですので、年齢を重ね、アンチエイジングが気になりはじめた人には特におすすめです。

さまざまな効果効能が報告されていますが、中でも女性特有の悩みに関する研究報告が多くなっています。

お肌の老化現象が気になりはじめた方、生理痛やPMSの問題を抱えている方、やはり女性に多い冷えやむくみが気になる方にも良いでしょう。

もちろん女性にだけ有効という成分ではありません。男性にとっても生活習慣病の予防や男性機能の低下などに有効という報告も多数あります。

ピクノジェノールはさまざまな抗酸化成分の中でも特に優れた抗酸化物質ですから、40代以降のエイジングサインが現れたすべての人に特におすすめの成分といえるでしょう。[※10]

ピクノジェノールの摂取目安量・上限摂取量

ピクノジェノールの摂取量の目安や上限摂取量は特に定められていませんが、体重1kgあたり1mgの摂取が目安とされています。体重50㎏の人であれば、50㎎の摂取が望ましいということになります。

しかしそれ以下の摂取だから作用しないということもないようで、あくまでも目安量となります。

また現在国内では、機能性表示食品としてフラバンジェノールが採用された商品がいくつか登場しています。

機能性関与成分としては「松樹皮由来プロシアニジン(プロシアニジンB1)」と表記され、機能については「総コレステロールや悪玉コレステロールを低下させる機能がある」と書かれています。

ほとんどの商品が1日の含有量を2.46mgで設定しています。この程度の量でも継続摂取で効果が見られることがわかります。[※11]

ピクノジェノールのエビデンス(科学的根拠)

ピクノジェノールの効果効能については、世界各国で多数の論文、エビデンスが報告されています。[※1]

■むくみに関するエビデンス

松樹皮抽出物を100~120 mg×3回/日、3~12週間摂取させると、静脈不全症患者における下肢の痛み、だるさ、浮腫を改善したことが報告されています。

■更年期障害症状の改善に関するエビデンス

台湾では、閉経期前後の女性170名を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験が行われ、松樹皮抽出物30 mg×2回/日を3か月間摂取させたところ、更年期症状の評価指数が改善されたことを報告しています。

■脳機能改善に関するエビデンス

オーストラリアでは、高齢者101名 (60~85歳)を対象とした二重盲検プラセボ比較試験によって、松樹皮抽出物150 mg/日を、3か月間摂取させたところ、作業記憶の改善が見られたことを報告しています。

■変形膝間接症に関するエビデンス

アメリカで行われた、変形性膝関節症患者37名を対象とした無作為化二重盲検比較試験において、松樹皮抽出物を50 mg×3回/日、3か月間摂取させた試験では、膝関節痛の評価スコアが改善されたことが報告されています。

■運動能力向上に関するエビデンス

日常的にスポーツをしている人 (20~35歳) を対象とした試験において、松樹皮抽出物200 mg/日を30日間摂取させたところ、トレッドミル (ベルトコンベア式装置) における走運動能力が向上したという報告があります。

研究のきっかけ(歴史・背景)

ピクノジェノールがはっきり健康食品として登場するのは、16世紀に活躍したフランスの探検家、ジャック・カルティエ率いる探検隊の航海日誌にまでさかのぼります。

1535年、航海中に探検隊のメンバーたちが壊血病にかかり危険な状態に陥った時、現地のインディアンに松の樹皮と針葉を煎じたお茶を飲むよう教えられ、命が助かったという記録が残されています。この記録が、後のピクノジェノール発見のきっかけです。

400年後の1950年代に、ジャック・マスケリエ教授がフラボノイドの供給源を求めて多くの植物を研究していた際にこの記録を知り、そこからフランス南西部のボルドー地方とピレネー山脈の間の大西洋沿岸に生息する松の樹皮にたどりついたのです。[※12]

専門家の見解(監修者のコメント)

ピクノジェノールを推奨している専門家はたくさんいますし、日本でも研究が進んでいます。

金沢大学大学院の鈴木信孝教授は、2005年にお台場で開催された「日本補完代替医療学会」で、月経困難症の女性105人を対象にしたピクノジェノールのサプリメントに関する研究結果を報告しています。

この研究では、1日60mgのピクノジェノールサプリメントをのむ群とプラセボ服用群の2群にわけ、月経1、2周期目を何ものまない期間とし、2周期目の8日目からサプリメントを服用、4周期目の7日目までのみ続ける、という方法で行われました。

5周期目まで経過観察した結果報告によれば、ピクノジェノール群では、月経期間中に服用する鎮痛薬の量が約5錠から半減し、鎮痛薬をのむ期間も短くなった、としています。

鈴木教授は、

「ピクノジェノールの血流改善効果や、子宮筋の緊張をとる働きによって、月経痛が緩和したのではないか」[※13] (日経メディカルより引用)
と報告しています。

ピクノジェノールに含まれる主成分

ピクノジェノールは現在のところサプリメントでの摂取が一般的です。

ピクノジェノールの主成分は「プロアントシアニジン」というポリフェノールですが、プロアントシアニジンは松の樹皮の他にブドウ種子やカカオ、小豆や黒豆の皮などにも含まれます。

相乗効果を発揮する成分

ピクノジェノールはビタミンCやビタミンEの働きを助けるため、これらとの成分と一緒に摂ると良いです。

そのほかにもコエンザイムQ10、亜鉛、L−カルニチン、アルギニンといった抗酸化成分などとも相性が良いことが知られています。

ピクノジェノールに副作用はあるのか

ピクノジェノールはカプセル状の形態が多いため、薬と同じような期待や不安を持たれる方が多いですが、形態に関わらずピクノジェノールは健康食品に過ぎません。

副作用の報告はほとんどありませんが、過度に期待して過剰摂取することはやめましょう。そして万一体調に変化が現れた場合は使用を中止しましょう。

また薬を服用している人は医師に相談してから摂取するようにしてください。

特にピクノジェノールには免疫機能を高める働きが報告されているので、この作用によって免疫抑制剤の効果を低下させる可能性があります。

ほかのハーブ、健康食品、サプリメントとの相互作用については明らかになっていません。

また妊娠中や授乳中の使用も控えましょう。一部の研究によれば妊娠中の摂取は問題ないと報告されていますが、完全なエビデンスとは言えません。

当然、松アレルギーのある方も使用は避けましょう。