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サイリウムの効果とその作用

サイリウムは、インド発祥のオオバコという植物です。90%が食物繊維で構成されており、便秘薬やダイエット食に用いられています。

効果や効能、ほかの食物繊維との違いや作用のメカニズム、摂取目安量や摂取方法などの情報をまとめています。また、気になる副作用や安全性、医薬品との相互作用なども分かりやすく解説しています。

サイリウムとはどのような植物か

サイリウムの正式名称は、プロンドサイリウム。世界中に200種類以上[※1]存在する、オオバコ科オオバコ属の植物です。

主にインドで栽培されているため、「インドオオバコ」とも呼ばれています。インドでの名称はイサゴール、学名はプランタゴオバタ。日本で栽培されているオオバコとは違い、種子が大きくて収穫しやすいのが特徴です。

種子を覆う半透明の白い膜はサイリウムハスクと呼ばれており、食物繊維が豊富に含まれています。この食物繊維の整腸作用を活かし、インドでは古くより便秘用の民間薬として利用されてきました。最近では、腹もちの良さを活かしてダイエット食品として用いられています。

また、薬局方には利尿作用のある「車前子(シャゼンシ)」の類似生薬と記されています。[※2][※3]

サイリウムの効果・効能

サイリウムには以下のような効果効能があります。[※3][※4]

■ダイエット効果

腹もちがいいサイリウムハスクを摂取することで、空腹感による間食を我慢しやすくなります。また、食物繊維が脂肪の吸収を抑えてくれるので、太りにくくなる傾向があります。

■お通じを良くする効果

サイリウムハスクは粘着性のある食物繊維。水分を吸収すると大きく膨らんで、停滞していた腸のぜんどう運動をサポートしてくれます。また、腸内環境を整えるビフィズス菌を増殖させる働きもあるので、お通じが良くなるでしょう。

■生活習慣病リスクを下げる効果

粘着性と吸着性をあわせもつサイリウムハスクは、高血糖や高血圧、高脂血症や動脈硬化などの予防に繋がる成分です。血液の流れを穏やかにしながら、コレステロールや糖類、脂肪など、生活習慣病のもととなる成分を吸着。消化吸収の速度を緩めてくれます。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

サイリウムは、水溶性と不溶性の食物繊維をあわせもつ珍しい植物です。

水溶性食物繊維の特性は、水分を吸収するとゲル状になること。この特性によって血液の流れは穏やかになり、食事の消化・吸収のスピードはスローになります。すると急激な血糖値上昇や、インスリンの大量分泌などを抑制でき、糖尿病予防に繋がるという仕組みです。

血液中の脂肪量を指すコレステロール値の上昇も抑えられるため、高脂血症や動脈硬化の予防にも繋がります。水溶性食物繊維の作用が生活習慣病リスクの低減という効果を生んでいるのです。

不溶性食物繊維の特性は、水分に溶けないこと。水分を吸収して30~40倍に膨れ上がります。これがサイリウムの腹もちの良さの秘密です。また、膨らんだ食物繊維の影響によって腸のぜんどう運動が活性化され、便秘が改善します。

膨らんだ食物繊維によって、胃は満腹感を持続でき、間食を防げるという仕組みです。[※3][※4]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

サイリウムは、食生活が乱れがちな人が食前に摂るべき成分です。菓子パンやドーナツ、クリーム系のスイーツなど、間食が多い人は脂肪分の摂取量が多いため、サイリウムに含まれる食物繊維の満腹感で間食を減らしましょう。[※4]

脂肪分の多い食生活を続けていると、肥満や高脂血症予備軍になってしまうので注意が必要です。

脂肪吸収率を抑えながら腸内環境を整えてくれるサイリウムを摂れば、脂肪や老廃物、ガスなどが溜まったぽっこり下腹がスッキリし、健康的な細さを手に入れられるでしょう。

サイリウムの摂取目安量・上限摂取量

サイリウムを摂取する際は、サイリウムハスク3~5gまたは種子7gに対して、240ml以上の水が必要です。水を用意せずにサイリウムを摂取すると、副作用やアレルギー症状が起こる可能性があります。

目安量としては、便性に関する実験で有効性が認められた「4~8g[※5]」を摂取すると良いでしょう。

サイリウムの上限量に関しては、とくにデータがありません。海外の研究では、サイリウムを最大20.4g摂取しても副作用がなかったという報告があります。[※6] 水と合わせて摂取する場合、20g以内であれば安全性は高いといえるでしょう。

ただし、オオバコアレルギーの人は、アナフィラキシーショックを起こす可能性があるため、注意が必要です。事前にアレルギーの有無を確認してからサイリウムを摂取してください。サイリウムを積極的に摂取すべき人の摂取目安量は以下です。[※3]

■悩み別に見るサイリウムの摂取目安量(1日あたり)[※3]

  • 便秘…7~40gを2~4回
  • 下痢…7~18gを2~3回
  • 過敏性腸症候群…10~30gを2~3回
  • 高脂血症…3.5gを3回
  • 2型糖尿病…15gを3回
  • 末期腎疾患…8.7g
  • 高血圧症…15g

サイリウムのエビデンス(科学的根拠)

サイリウムに関する研究データは少ないのが現状です。現在までに確かな効果が認められているのは整腸作用と血糖値に関する研究データのみ。

1992年には、SD系雄ラットにオオバコ由来の食物繊維を3週間与え続けた実験にて、整腸作用が確認されました。[※6]

ヒトを対象とした研究が進められたのは1999年。研究を手掛けたのは実践女子大学生活科学部の中川靖枝氏らです。

20歳以上のお通じが正常な女性を対象に、サイリウムの摂取量を変化させる実験を実施したところ、4g以上の摂取で排便量の増加、8gの摂取で排便回数の増加が認められました。[※5]

血糖値に関する研究を実施したのは、アメリカ・ミシガン大学の食品栄養学部。45人の2型糖尿病の成人を対象にした研究にて、サイリウム入りのシリアルを食べるグループの血糖値と一般的な朝食を食べるグループの血糖値を比較しました。

研究の結果、サイリウム入りのシリアルを食べたグループの血糖値、インスリン、遊離脂肪酸に好影響を与えることが明らかになりました。[※7]

そのほか、エイズ患者を対象とした脂肪再分布症候群、一部のがん、皮膚疾患などとサイリウムに関する研究が進められていますが、科学的根拠はわかっていないようです。[※3]

研究のきっかけ(歴史・背景)

サイリウムの研究が始まった詳しい時期は、残念ながら明らかになっていません。

発祥はインドという説が有力。学名の「プランタゴ」は、インドで用いられるラテン語で「足跡」を意味する言葉が由来だと言われています。[※8]これは、サイリウムの大きな葉が足跡のように見えるためです。

インドやヨーロッパ、中国などでは薬草・生薬として用いられてきた歴史がありますが、日本でサイリウムの研究が進められたのは1990年代なので、まだまだ歴史が浅い成分。今後、さらなる効果や作用が発見される可能性を秘めているといえるでしょう。

専門家の見解(監修者のコメント)

アメリカでサプリメントや栄養学などを学び、博士号や臨床栄養士などの資格を取得した佐藤章夫氏は、自身の著書「読めばトクするサプリメントガイド」にて以下のように語っています。

「食物繊維はビタミンやミネラルの吸収を抑制します。ビタミンやミネラルはサイリウムの摂取後1時間以上たってからとりましょう。」(「主婦の友社/読めばトクするサプリメントガイド」より引用)[※9]

これは、サイリウムが消化・吸収をスローにする働きによって、ビタミンやミネラルの効果が抑制されないための摂取方法です。佐藤氏のコメントから、体に良い成分を積極的に摂るのはもちろん、サイリウムの特性を理解したうえで摂取時間を決めることが大切だとわかります。

サイリウムを多く含む食べ物

サイリウムは粉末で水分にトロッと溶けてくれるので、食品や飲み物に混ぜて摂取するのが一般的です。

お茶や水、ジュースに溶かしたり、ゼリーやサプリメントなどのダイエット食品に配合されていたりします。そのため、自分の好きな飲み物に溶かせばオリジナルドリンクをつくれます。 飲料に溶かす際には、サイリウム粉末3~5gに対して240ml以上の水分が基本です。[※3]

乾燥させたサイリウムは、漢方で摂取できます。種を乾燥させたものは「車前子」、全草を乾燥させたものは「車前草」です。どちらの漢方にも、咳や下痢をとめる作用や炎症抑制作用、腸の働きを助ける作用などがあります。[※10][※11]

一緒に摂りたい成分

サイリウムをはじめとする食物繊維と合わせて摂取したいのは「乳酸菌」です。[※12]乳酸菌は善玉菌を増やして、悪玉菌を退治してくれます。食物繊維を餌に活動しており、腸内環境を整えてくれます。

サイリウムと乳酸菌を合わせて摂取することで、腸に潜む悪玉菌の繁殖を防げる仕組み。また、綺麗な腸内環境は生活習慣病の予防にも繋がると考えられています。

サイリウムに副作用はあるのか

これまでに、サイリウムの重篤な副作用は報告されていません。ただし、一日10g以上摂取すると整腸作用が強すぎてお腹をくだしたり、胃痛が起こったりする可能性があります。

また、顔面紅潮やかゆみ、腫れなどのアレルギー反応が起こるケースもあるので、過剰摂取には注意しましょう。[※3]

注意すべき相互作用

サイリウムを摂取する際に注意するべき、医薬品や成分との相互作用をご紹介します。

サイリウムは消化・吸収速度を緩める食物繊維なので、以下のような医薬品と併用すると効果を阻害してしまいます。[※3]

■カルバマゼピン(てんかんの薬)

カルバマゼピンの吸収を阻害して効果を弱める可能性があります。

■ジゴキシン(心不全治療薬・ジキタリス製剤)

サイリウム摂取の1時間前、または4時間後の服用が推奨されています。

■リチウム(抗精神病薬・気分安定薬)

サイリウム摂取の1時間以上前の服用が推奨されています。

■鉄

鉄分の服用は、サイリウム摂取の1時間前、または4時間後に行いましょう。

■糖尿病治療薬(血糖値降下薬)

サイリウムには、糖の吸収を抑えて血糖値を下げる働きがあるため、糖尿病治療薬と併用すると血糖値が下がり過ぎてしまいます。該当する糖尿病治療薬は以下です。

  • グリメピリド
  • グリブリド
  • インスリン
  • ピオグリタゾン
  • ロシグリタゾン
  • クロルプロパミド
  • グリピザイド
  • トルブタミド

参照・引用サイトおよび文献

  1. よくわかるOTC薬の服薬指導(秀和システム 2009年 p169)
  2. 笹塚クリニック 予防医療専門内科「野菜だけで足りている?食物繊維の働きを利用して、健康レベルを上げよう」
  3. 健康食品・サプリメント〈成分〉のすべて ナチュラルメディシン・データベース(一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター 2012年 p277-280)
  4. 一般社団法人 日本サプリメント協会「サイリウム(オオバコ、プランタゴオバタ)」
  5. JSTAGE「成人女性に対するサイリウム粉末飲料の摂取による便への影響|中川 靖枝」1999年【PDF】
  6. Anderson,J.W. et al., Am. J. Clin. Nutr., 71:472-479, 2000
  7. European Journal of Clinical Nutrition volume 60, 2006「Effects of breakfast meal composition on second meal metabolic responses in adults with type 2 diabetes mellitus」(p1122–1129)C A Clark, J Gardiner, M I McBurney, S Anderson, L J Weatherspoon, D N Henry & N G Hord doi:10.1038/sj.ejcn.1602427
  8. わかさの秘密「サイリウム」
  9. 読めばトクするサプリメントガイド(主婦の友社 2005年 p19)
  10. 公益財団法人 額田医学生物学研究所 額田医学生物学研究所附属病院「オオバコ」
  11. 世界で使われる256種ハーブ&スパイス事典(誠文堂新光社 2013年 p66)
  12. 国立がん研究センター東病院 栄養管理室「下痢・便秘がある方のお食事」2017年【PDF】