ビタミン、ミネラル、食物繊維などを豊富に含むプルーンは、さまざまな生理機能性をもつ理想的なドライフルーツです。「便秘に効く」「ダイエットによい」などの口コミが広がり、日本ではシロップ状の商品が発売された1970年代あたりから注目されるようになりました。
近年では、高い抗酸化作用をもち生活習慣病の予防や骨粗しょう症の予防にも効果があることがわかり、人気が再燃しています。
プルーンとはスモモの近縁種であるセイヨウスモモの総称です。ほとんどが半生状のドライプルーンや、ピューレ状に加工された状態で流通・消費されています。
アメリカ合衆国のカリフォルニア州が一大生産地として知られ、全米生産量の99%、世界のプルーンの生産量の41%がカリフォルニアの農場で作られています。[※1]
小ぶりな楕円形で紫色の果皮をまとった果実は、完熟するとスモモ同様に濃厚な甘酸っぱさが味わえます。
旬は7~9月。国内では長野県、北海道、青森で栽培されており、そのほとんどが生食用です。[※2]
みずみずしいおいしさを味わうなら生食ですが、健康補助食品としては、乾燥して成分が濃縮されたドライプルーンやエキスに軍配が上がります。
以下は加工された健康食品としてのプルーンについて解説します。
プルーンには次のような効果・効能があるといわれています。
プルーンは不溶性食物繊維だけでなく水溶性食物繊維のペクチンを豊富に含んでいます。100g中に不溶性食物繊維3.8g、水溶性食物繊維3.4gを含み、プルーン4~5粒(約40g)で、日本人成人の摂取目安量の約15%を摂ることができます。[※3]
2種類の食物繊維をバランスよく含むことから、整腸効果や便秘の解消だけでなく、ナトリウムやコレステロールを体外に排出して高血圧や動脈硬化を予防する[※4]、大腸がんのリスクを軽減する[※5]、といった食物繊維のもつさまざまな健康効果を期待することができます。
また、プルーン由来のペクチンには腸管上皮細胞にはたらきかけてポリアミンという物質の合成を促進させる作用があることがわかりました。
ポリアミンは成長因子の1つで、細胞の新陳代謝を促進して老化を防止し、炎症を抑制する作用があります。このことから、プルーンのペクチンは、腸内の健康維持や生活習慣病やがんの予防により有効なはたらきをしているのではないかと考えられています。[※5][※6]
プルーンはGI値が29しかなく、食後血糖値の上昇を抑えるすぐれた低GI食品です。その理由に、食物繊維が多いことと、ソルビトールという糖アルコールを多く含んでいることがあげられます。
ソルビトールはリンゴやナシに含まれる天然の甘み成分で、リンゴの「蜜」の部分に多く含まれている物質です。[※7] 体への吸収がおだやかで血糖値を上昇させにくい性質を持っており、糖尿病患者用の甘味料としても利用されています。
プルーンに含まれる甘み成分は半分以上をソルビトールが占めているため、食後の血糖値の上昇を抑えることができるのです。[※8]
ソルビトールは保水力にすぐれた成分で、便の水分量を増やしてやわらかくし、便通をよくするはたらきがあります。また、口腔内で有機酸をほとんど生成しないため、虫歯になりにくいというメリットもあります。[※9]
さらにルーンには高い抗酸化作用をもつポリフェノールも多く含まれています。その代表がネオクロロゲン酸です。ネオクロロゲン酸はフェノール類の一種で、フリーラジカルを除去し、LDL(悪玉)コレステロールの酸化を阻止する強力な作用をもっています。
ボストン・タフツ大学で行われた研究によると、野菜や果物22品目の抗酸化作用を測定した結果、プルーンがもっとも高い抗酸化作用を示すことが報告されています。[※10]
また、抗酸化作用がもっとも高いのは果皮であることがわかっており、果皮に含まれるアントシアニンも抗酸化作用を高める要因となっているようです。[※11]
プルーンには血圧を下げ、筋肉のはたらきを調整するカリウムをはじめ、各種ミネラル類が豊富に含まれています。骨に関わる成分も多く、近年ではそれらの相互作用によって、骨の形成を促進し、骨粗しょう症を予防する効果があることがわかってきました。
カルシウム、マグネシウム、リンは骨の材料となります。銅は骨形成に必要な酵素を活性化させるのに不可欠なミネラルです。亜鉛は骨の形成を促進します。ホウ素はカルシウムの排泄量を減らして骨を丈夫にするはたらきがあります。プルーンの多く含まれるビタミンKも骨の形成を促し、骨を強化します。[※12][※13]
さらに、プルーンに含まれる有機酸がミネラルの吸収を高めるため、骨の形成が効率的に行われるようサポートしてくれる食品ともいえます。[※12]
プルーンにはカロテノイドの一種であるβ-クリプトキサンチンも100g中220mg含まれています。[※14] β-クリプトキサンチンは、閉経女性の骨粗しょう症を予防する効果が認められ近年注目されている成分です。[※15]
これらのことからプルーンは、骨の健康改善に大きく寄与する食品であると考えてよいでしょう。
プルーンの果肉やエキスをほかの食材と混ぜることによって抗菌効果が得られることもわかっています。[※16][※17] 家庭の調理や外食産業などで、プルーンの抗菌効果が活躍するシーンが今後増えてくるのではないでしょうか。
便秘を解消したいかた、ダイエットをしたいかたにはおすすめの食品です。β-カロテンやビタミンEなど各種ビタミン多く含むので、ニキビや肌トラブルなどを抱えているかたの症状改善に効果が期待できます。GI値が低いため太りにくく、食物繊維による整腸効果もあります。
血圧や血糖値、コレステロール値が高めな生活習慣病予備軍のかたにも健康効果が期待できます。骨の形成や強化にはたらく成分を多く含むので、高齢者の骨粗しょう症予防にも役立ちます。
カリフォルニアプルーン協会によると、プルーンの本場であるアメリカでは、1日ハーフカップ(約40g、4~5粒)を目安に食べられているそうです。
40gのプルーンには、食物繊維約3g(1日目標量の15~18%)、カリウム293mg(1日目安量の12~15%)など多くの機能性成分がふくまれています。最近の研究では、1日4~5粒を日常的に食べれば、加齢による骨量の減少を抑制する可能性が示唆されています。[※18]
プルーンに含まれるソルビトールには緩下作用があるので食べすぎは禁物です。最初は1日2~3粒くらいを目安に摂取してみてはいかがでしょうか。
2011年、アメリカ・フロリダ州立大学が発表した研究レポートでは次のようなことが報告されています。
閉経後の女性100人を対象に、12か月、毎日カルシウム500mgとビタミンD10μgを摂取してもらい、55人には1日100gのプルーン、45人には100gの乾燥リンゴを食べてもらうという比較実験を行いました。
その結果、どちらも骨密度は向上していましたが、プルーンを食べたグループは乾燥リンゴを食べたグループに比べて、尺骨と脊椎の骨密度が有意に増加していることがわかりました。調査の結果、その原因はプルーンが骨の再吸収(骨の分解)を抑制しているからではないかという結論に至りました。[※18]
また、サンディエゴ州立大学が行った調査によると、1日に摂取するプルーンの量を50gにしても、同じように骨量の減少を抑制する効果が認められることが報告されています。[※18]
サンディエゴ州立大学の別の研究者が行った研究では、プルーンを食べたあとは、喫煙による好中球エラスターゼ(肺炎症のマーカー)が有意に減少することがわかりました。このことにより、プルーンの抗酸化作用によって、肺が保護されている可能性が示されました。[※19]
プルーンの歴史は紀元前にさかのぼります。原産地はコーカサス地方で、古代ローマ時代にはすでに食用にされていたようです。この地から乾燥プルーンが隊商の携帯食として西に渡り、ヨーロッパ各地に伝わりました。[※2][※20]
アメリカでの栽培が盛んになったのは1800年以降です。1856年、フランスの植木職人ルイ・ペリエがカリフォルニアにプルーンを移植。その後、品種改良が繰り返され、現在のプルーンが作られました。
日本にプルーンが伝えられたのは明治初期のことです。プルーンは雨に弱く、成熟期が梅雨と重なる日本では、なかなか栽培が進みませんでした。現在では品種改良が進み、長野県、北海道、青森県などで栽培が行われています。[※2]
プルーンは栄養価の高い食品で、健康に有効な機能性成分を多く含んでいます。調理をせずにそのまま食べられ、いつでもどこでも簡単に栄養補給ができる利便性は、栄養学の専門家からも高い評価を受けています。
ピッツバーグ大学メディカルセンターのスポーツ栄養学ディレクターであり、ピッツバーグ・パイレーツのチーム栄養士でもあるレスリー・ボンチ氏は次のように語っています。
「私はずっと、プロや大学生のアスリートやその他の人々から栄養の相談を受ける際に、プルーンを勧めてきました。ほかの食材をプルーンで簡単に置き換えられるということは知られていますが、人々は料理においてどれほどメリットがあるかについては気づいていません。
加えて、私は袋から出してそのまま食べています。プルーンは手ごろで手軽で持ち運びしやすく、いつでも手に入れられます。この自然がくれた一口サイズの滋養の塊にまさるものはありません」[※21]
また、震災時の栄養食や宇宙食[※22]としても注目されています。消化器内科医・松生クリニック院長の松生恒夫先生は、プルーンがストレスや運動不足から起こる「震災便秘」の解消の強い味方になると述べています。
「果物の食物繊維を効率よく摂取する食品として、ドライフルーツは有効と言えます。その中でも『プルーン」(乾燥プラム)は、食物繊維が大変多く含まれます。特に水溶性食物繊維が非常に多く含まれ、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の比率も1:1とバランスが良いため、便秘解消食としては最適と言えます。朝食や夕食のときにプルーンを数個ずつ食べると、『震災便秘」の解消に役立つと考えられます。
また、プルーンは食物繊維以外の栄養価も非常に高いため、被災地で生活される方や、震災後の食生活が少し乱れてしまった関東首都圏の方の栄養不足を補う効果も期待できるでしょう」[※23]
機能性のある食品は「どのような効果や効能があるか」ばかりに目が行きがちですが、「どういうシーンで活用できるか」という視点も大切です。
プルーンは今後、こうした制約の多い環境や行動中の栄養補給源としても活用されていくことでしょう。
酸味が少なくすっきりした甘さが特徴のプルーンは、そのまま食べるだけでなく、料理やデザートの材料として使うこともできます。
刻んでヨーグルトやシリアルに混ぜて食べたり、赤ワインで煮込んでジャムにしたりすれば、1日の目安とされる4~5粒はあっという間に摂取することができます。
肉類との相性もよいので、一緒に煮込んだり、ソースにしたりすることもできます。種をとってピューレ状にしたものは、バターやオイルの代替品として、低カロリーのパンや焼き菓子を作る材料にも使えます。[※24]
ネットではプルーンを使ったさまざまなレシピが公開されているので、ぜひ参考にしてみてください。下記はその一例です。
■COOKPAD「プルーンで♪ビューティー&ヘルシーレシピ講座」
https://cookpad.com/pr/lessons/7
■カリフォルニアプルーン協会「プルーンピューレレシピ」
http://www.prune.jp/recipes/puree/
骨を健康にしたいのであれば、カルシウムを含む乳製品などと一緒に摂るのがおすすめです。プルーンに含まれるカルシウム量はそれほど多くはありませんので、それを補うことで、骨の形成や強化をより効率的に行うことができます。
腸の働きを活発化したいのであれば、乳酸菌やオリゴ糖など、腸内の善玉菌を増やす食品と組み合わせてみてはいかがでしょうか。食物繊維のもつ整腸作用を効果的に引き出してくれる相性のよい組み合わせです。
ソルビトールに緩下作用があるため、摂りすぎると便が緩くなることがあります。1日4~5粒を目安にとるようにしましょう。
またカリウムの含有量が多いため、腎臓疾患のあるかたは、医師に相談してから摂るようにしてください。