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フェニルアラニンの効果とその作用

このページでは、アミノ酸のフェニルアラニンについて効果・効能をまとめています。フェニルアラニンは、魚介類や大豆・チーズ・卵などから摂取することができ、体内に入ると肝臓でチロシンという物質へ変化。

さらに代謝されると、神経伝達ホルモンやメラニンへと変化していきます。いってみれば、フェニルアラニンは体の材料のようなもの。生活するうえで欠かせない成分の1つです。

フェニルアラニンとはどのような成分か

フェニルアラニンの特徴を見ていきましょう。[※1]

フェニルアラニンは、人間が体内で合成できない必須アミノ酸の1種。卵や大豆・魚・肉などのたんぱく質に含まれています。アミノ酸のなかでも構造が似ているチロシンと合わせて「芳香族アミノ酸」とも呼ばれています。

フェニルアラニンは、構造の違いから3種類に分けられます。それぞれ、D-フェニルアラニン・L-フェニルアラニン・DL-フェニルアラニンと呼ばれます。

このうちL-フェニルアラニンは人間にとって欠かせない必須アミノ酸ですが、D-フェニルアラニンは必須ではありません。DL-フェニルアラニンはこの2つが結合したものとなります。

L-フェニルアラニンは神経伝達物質の代謝を促すチロシンの材料となるもの。フェニルアラニンが体内に入ると、酵素のはたらきによりチロシンへと変化します。

その後、フマル酸やアセト酢酸といった物質になる経路と、チロシンが酵素によってメラニンになる経路があります。

D-フェニルアラニンは体内に入ると、フェネルチアミンという神経伝達物質に変わり、脳内ホルモンの分泌を促します。

DL-フェニルアラニンは鎮静剤として使われている成分です。月経前症候群の気分の浮き沈みに有効とされています。

また、フェニルアラニンは糖新生という性質を持っています。体内でエネルギーが枯渇したときに、糖に変わりエネルギーを発するはたらきです。糖分の摂取が不足したときに起こります。

フェニルアラニンの効果・効能

フェニルアラニンには、以下のような効果があるとされています。[※1][※2][※3]

■白斑の改善

フェニルアラニンは、肌の色が抜けてしまう白斑に対して有効な作用があるとされています。

■鎮痛効果

フェニルアラニンには、中枢神経に作用して慢性化した痛みを緩和する効果があります。

■うつ病の改善[※4]

フェニルアラニンが神経伝達を助けることから、うつ病の症状の改善が期待されています。

■パーキンソン病の治療

パーキンソン病の治療にもフェニルアラニンが使われています。運動神経への情報伝達を助けるとされていますが、研究段階です。

■アルコール依存症の禁断症状

アルコールが欠乏したときに起こるイライラや手足の震えを抑えるといわれています。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

L-フェニルアラニンは、中枢神経系に作用するチロシンをつくる成分です。チロシンは、ドーパミンやノルアドレナリン・アドレナリンなど興奮作用のあるホルモンの材料になります。甲状腺ホルモンなどにもチロシンが必要です。また、メラニンを生成し肌を紫外線や刺激などから守るはたらきもあります。

そのため、材料であるフェニルアラニンが不足すると、チロシンがつくられなくなり、神経伝達やメラニンの生成に異常があらわれるとされています。

パーキンソン病や白斑の治療にフェニルアラニンが使用されるのは、チロシンをつくる作用があるためです。フェニルアラニンがチロシンに代謝されず体内に蓄積してしまう先天性疾患のフェニルケトン尿症の症状として、知的障害や頭髪や肌の脱色があらわれるのもこのためとされています。

フェニルアラニンを材料とする神経伝達物質には、以下のような作用があります。[※5]

  • 血圧の上昇
  • 鎮痛作用
  • 脳機能の向上

D-フェニルアラニンは、体内に入るとフェニルエチルアミンという物質に変わり、ドーパミンやノルアドレナリンなどのホルモンに似たはたらきをします。

L-フェニルアラニンは体内に入るとチロシンになり、神経伝達物質ではなくメラニンとなるルートもあります。

メラニン色素がきちんとはたらくことで、肌の色が出たり、紫外線から真皮を守ってくれたりします。

白斑にフェニルアラニンが有効とされているのは、メラニンをつくるために欠かせない成分だからといえるでしょう。

フェニルアラニンが代謝されず、体内に蓄積してしまう先天性疾患のフェニルケトン尿症という疾病もあります。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

フェニルアラニンは、以下のような人におすすめです。

  • 物忘れしやすい人
  • 気分が落ち込みやすい人
  • 筋肉の動きを改善したい人

フェニルアラニンの摂取目安量・上限摂取量

フェニルアラニンの摂取量は、代謝後の成分チロシンと合わせた芳香族アミノ酸というくくりで設定されています。[※6]

WHO(世界保健機関)などが提唱している芳香族アミノ酸の1日の摂取目安量は、体重1kgあたり25mg。体重50kgの人の場合、1日1250mgの芳香族アミノ酸が必要となります。

たんぱく質1gあたりのフェニルアラニンとチロシンの含有量は約38mgなので、体重50kgの人は1日32gほどのたんぱく質を摂取することが目安となります。

フェニルアラニンのエビデンス(科学的根拠)

フェニルアラニンと紫外線に白斑改善効果があるかを調べた研究があります。

アテネ大学の皮膚科クリニックのAntoniou C らが行った試験では、フェニルアラニンを経口摂取して紫外線を照射するグループと、クリームを塗布して紫外線を照射するグループに分け、白斑に対して改善効果を示すどうかを調べました。

結果、どちらのグループも白斑が改善されたことがわかりました。特にフェニルアラニンを塗布したグループで良い結果が得られました。また、副作用は見られなかったとようです。[※7]このことから、フェニルアラニンは白斑の治療に有効だとされています。

慢性的な痛みに対するD-フェニルアラニンの効果を確かめた実験があります。Walsh NEら は30人の被験者に対してD-フェニルアラニンと偽薬を4週間摂取させ、痛みの度合いを測定。

すると、D-フェニルアラニンを摂取していたグループは、痛みの度合いが軽減しました。[※8]このことから、D-フェニルアラニンには、鎮痛作用があるとされています。

同様に、鎮痛効果を調べた実験があります。大阪医科大学の北出利勝医師らとカネボウ薬品の篠原昭二氏らによる麻酔針とフェニルアラニンについての実験です。

この実験では、針麻酔を打つ前にフェニルアラニンを摂取すると、鎮痛効果が延長することがわかったとされています。[※9]

研究のきっかけ(歴史・背景)

フェニルアラニンが原因の疾病「フェニルケトン尿症」には、以下のような歴史があります。[※10][※11]

フェニルケトン尿症は、体内に入ってきたフェニルアラニンを分解する酵素を生まれつき持っていない先天性の疾患です。

この疾患を持って生まれた子は、知的障害を持っていたり、頭髪や皮膚の色素減少が見られたりするといいます。

また、体内のフェニルアラニンが無くならないことによる症状も出てしまいます。

1934年にノルウェーにあるオスロー大学に連れてこられた子どもが、フェニルケトン尿症を発症していました。フェニルケトン尿症が初めて見つかった事例です。

それから1947年に、病気を発症したヒトの血液を調べたところ、フェニルアラニンの代謝物であるチロシンが少ないことがわかりました。

1951年になると、フェニルアラニンの摂取量を減らす治療法が開発されました。しかし、先天性の疾患であるため早期に治療を開始できない場合、症状が進行してしまうという難点がありました。血中のフェニルアラニン濃度の測定は、当時とても難しいことだったのです。

1957年にアメリカの微生物学者であるガスリー博士が、微生物を使い、フェニルケトン尿症かどうかを診断する方法を開発しました。この方法は、新生児の血中フェニルアラニン濃度を測るのに使われ、疾患の早期発見ができるようになったのです。

現代の日本では、新生児マススクリーニングという検査を通して、フェニルケトン尿症をはじめ先天性の疾患を早期に発見できます。日本では1977年から行われている検査です。

フェニルケトン尿症は根治治療法がまだ確立していませんが、食事療法やフェニルアラニンを代謝する酵素を摂取したりすることで、症状を抑制することが可能です。[※12]

専門家の見解(監修者のコメント)

フェニルアラニンにおいて、活発に議論されているのが人工甘味料アスパルテームの安全性についてです。

日本コカ・コーラ株式会社が運営するサイトの飲料アカデミーに、食品毒性学者のBernadene Magnuson氏のインタビューがありました。そこで彼女は、以下のように答えています。

「大量のアスパルテームを使用した優れた研究では、一貫して神経機能に影響を与えることはないことが示されています。

学習および行動に関する動物実験では、最大で食事の9%の量にあたるアスパルテームを動物に与えました。

これは、ヒトが摂取する平均的な量の約1,000倍です。しかし、このように大量に摂取したにもかかわらず、学習または行動の神経機能に影響を与えないことが一貫して示されたのです」

[コカ・コーラ株式会社 「飲料アカデミー アスパルテームについて、医療と栄養の専門家が知っておくべきこと。著名な毒性学者Bernadene Magnuson先生のインタビュー」より引用][※13]

Magnuson氏は、アスパルテームは安全な人工甘味料といいます。市場に出回る前に繰り返し行われてきた実験や、危険性を示した確かなエビデンスは無いというのが根拠になっているようです。

反対に、アスパルテームは危険であるという意見もあります。日本アンチエイジングフード協会に所属する看護師の荒納里美氏は、アスパルテームについて以下のように述べています。

「化学合成物質なので、人間が摂取しても、消化酵素によって分解できません。なので、体内で代謝されず、「異物」として全身をめぐり続けます。

異物となったものは、臓器や組織に蓄積され、細胞や遺伝子に作用し、その機能を低下させたり、がん化させたり、ホルモン系、免疫系、神経系などを攪乱することもあると言われています」

[社)日本アンチエイジングフード協会 「”アスパルテーム”カロリーゼロでも脳には毒! パーキンソン病や躁鬱、知能低下の恐れも」より引用][※14]

人工的に合成されているため、人の体でうまく対処できないとする考えです。荒納氏は蓄積されたアスパルテームがさまざまな疾病をまねくとしています。

このように、アスパルテームについては、両極端な意見が出ています。今後さらに議論や研究が進んでいくでしょう。

フェニルアラニンを多く含む食べ物

フェニルアラニンは以下の食べ物に多く含まれています。[※15]

フェニルアラニン含有量が多い食品

食品名 成分量100gあたり
メレンゲパウダー 5100mg
乾燥かずのこ 3700mg
とびうおの煮干し 3200mg
かつお節 3100mg
湯葉 3000mg
かたくちいわしの煮干し 2600mg
パルメザンチーズ 2400mg
ビーフジャーキー 2200mg
きな粉 2100mg
するめ 2100mg
乾燥大豆 2000mg
ゼラチン(豚由来) 2000mg
うるめいわしの丸干し 1900mg
乾燥パセリ 1800mg
いかなごの煮干し 1700mg
エダムチーズ 1700mg
くるま麩 1700mg
エメンタールチーズ 1700mg
さらしあん 1600mg
豚のヒレ、赤肉、焼き 1600mg
しらす干し 1600mg
脱脂粉乳 1600mg

人工甘味料のアスパルテームは、L-フェニルアラニン化合物と表記されています。アスパルテームは食品表示基準で表記が義務付けられているため、フェニルケトン尿症の人やフェニルアラニンの摂取制限がある人は、この表示を確かめるようにしましょう。

アスパルテームは人工甘味料のため、知らないうちに口にしてしまうことがあるので、注意が必要です。

相乗効果を発揮する成分

体内に入ったフェニルアラニンが使われるには、酵素をサポートするビオプテリンという物質が必要です。

ビオプテリンはレバーやハチミツ・ローヤルゼリー・牛乳などに含まれている成分です。

ビオプテリンが不足するとフェニルアラニンが体内で分解されず、さまざまな不調や異常を引き起こすとされています。ビオプテリンはサプリメントや処方箋として、補給することが可能です。

フェニルアラニンを摂取するときは、一緒に摂るようにすると良いでしょう。

また、フェニルアラニンを含む必須アミノ酸類は相互に作用しているため、バランスの良い食事をすることが望ましいとされています。

フェニルアラニンに副作用はあるのか

摂取による副作用があるか見ていきましょう。[※1]

フェニルアラニンは自然界や体内に存在するアミノ酸の1種のため、食品から摂取しても副作用はないだろうとされています。

しかし、フェニルアラニンには明らかになっていない作用もあるため、注意が必要です。食品だけでなく人工甘味料としても使われているため、過剰摂取にならないようにしましょう。

妊娠中や授乳中の過剰摂取は、胎児や子どもに異常があらわれる可能性があります。

また、以下の疾病がある人は摂取しないようにしてください。

  • フェニルケトン尿症やアルカプトン尿症
  • フェニルアラニンの代謝経路に異常がある人は、フェニルアラニンの摂取は控えましょう。
  • 統合失調症

フェニルアラニンが統合失調症のなかの運動障害を悪化させるおそれがあります。

注意すべき相互作用

フェニルアラニンには以下のような相互作用が確認されています。[※1]

レボドパ(L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)
パーキンソン病の治療薬として使われる成分です。フェニルアラニンとレポドパを併用すると、パーキンソン病を悪化させるおそれがあります。
モノアミン酸化酵素阻害薬
フェニルアラニンが体内のチラミンという物質を増加させます。チラミンは血圧を上げるはたらきを持つ物質。通常は体外へ排出されるのですが、モノアミン酸化酵素阻害薬を服用していると、チラミンの排出が阻害され、危険な高血圧をまねくおそれがあります。
向精神薬
クロルプロマジン塩酸塩やクロザピン・フルフエナジンなどの一部の向精神薬には、筋肉のはたらきを阻害する副作用が確認されています。フェニルアラニンと一緒にこれらの向精神薬を使用すると、副作用が強くなるおそれがあります。

サプリメントやハーブなどとの相互作用は報告されていません。

参照・引用サイトおよび文献

  1. 田中平三ほか『健康食品・サプリメント[成分]のすべて 2017 ナチュラルメディシン・データベース』(株式会社同文書院 2017年1月発行)
  2. Antoniou C, Schulpis H, Michas T, Katsambas A, Frajis N, Tsagaraki S,Stratigos J. Vitiligo therapy with oral and topical phenylalanine with UVA exposure. Int J Dermatol. 1989 Oct;28(8):545-7. PubMed PMID: 2583897.
  3. Walsh NE, Ramamurthy S, Schoenfeld L, Hoffman J. Analgesic effectiveness of D-phenylalanine in chronic pain patients. Arch Phys Med Rehabil. 1986 Jul;67(7):436-9. PubMed PMID: 3524509.
  4. Birkmayer W, Riederer P, Linauer W, Knoll J. L-deprenyl plus L-phenylalaninein the treatment of depression. J Neural Transm. 1984;59(1):81-7. PubMed PMID:6425455.
  5. オーソモレキュラー.jp 「必須アミノ酸と非必須アミノ酸」
  6. 【PDF】厚生労働省 「2 たんぱく質」
  7. Antoniou C, Schulpis H, Michas T, Katsambas A, Frajis N, Tsagaraki S,Stratigos J. Vitiligo therapy with oral and topical phenylalanine with UVA exposure. Int J Dermatol. 1989 Oct;28(8):545-7. PubMed PMID: 2583897.
  8. Walsh NE, Ramamurthy S, Schoenfeld L, Hoffman J. Analgesic effectiveness of D-phenylalanine in chronic pain patients. Arch Phys Med Rehabil. 1986 Jul;67(7):436-9. PubMed PMID: 3524509.
  9. 北出 利勝, 南川 正純, 縄田 隆生, 篠原 昭二, 兵頭 正義, 細谷 英吉, フェニルアラニンによるハリ麻酔増強効果についての実験的研究, 自律神経雑誌, 公開日 2011/05/30, Online ISSN 2185-9442, Print ISSN 0387-0952,
  10. 【PDF】一般社団法人日本家族計画協会 「遺伝のはなし11.」
  11. 母子健康協会 「母親たちの奮闘と医学の進歩」
  12. 難病情報センター 「フェニルケトン尿症(指定難病240)」
  13. コカ・コーラ株式会社 「飲料アカデミー アスパルテームについて、医療と栄養の専門家が知っておくべきこと。著名な毒性学者Bernadene Magnuson先生のインタビュー」
  14. 社)日本アンチエイジングフード協会 「”アスパルテーム”カロリーゼロでも脳には毒! パーキンソン病や躁鬱、知能低下の恐れも」
  15. 文部科学省 食品成分データベース 「食品成分ランキング」