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MSMの効果とその作用

MSM(メチルサリフォニルメタン)とは、皮膚や関節、髪や爪などに必要な「コラーゲン」をつくるサポートをしてくれる成分です。研究データはまだ少ないものの、健康効果と美容効果をあわせもつ成分として各国から注目されています。ここでは、MSMの効果効能や作用機序、研究データや副作用、相互作用などの情報をわかりやすく解説しています。

MSMとはどのような成分か

MSMとは、さまざまな生物に含まれている有機硫黄化合物です。学名はメチルサリフォニルメタン(Methylsulfonylmethane)。MSMは略称です。英名でメチルスルフォニルメタンとも呼ばれます。

MSMは、もともと海水や大気に含まれるDMS(ジメチルスルフィド)からつくられます。DMSは毒性の強い成分ですが、酸化すると毒性の低いDMSO(ジメチルスルホキシド)になります。毒性の低いDMSOが動植物に吸収されて、代謝されてできたものがMSMです。

そのため、MSMは私たち人間や動物の体内、穀物や野菜などにも含まれています。

MSMには、毒性がほとんどありません。そのうえ、人の体に欠かせないコラーゲンづくりのサポートをするはたらきがあり、美容業界や健康業界の注目を集めています。[※1]

これまでには、関節痛や筋肉疲労を緩和する効果、美しい爪や髪をつくる美容効果などが確認されました。日本では、2001年よりMSMの健康食品への利用が認められています。[※2]

MSMの効果・効能

MSMには次のような効果効能があります。[※3][※4][※5][※6]

■関節の健康維持

MSMは、関節軟骨の擦り減りを修復する成分を保ち、関節痛や関節炎(リウマチ)などの症状をやわらげます。

■関節痛の緩和

MSMは、関節をなめらかに動かす潤滑液の主成分をつくることで、関節同士の擦れを減らし、関節痛をやわらげます。

■運動後の疲労回復

MSMは、運動後に発生する疲労物質の排出をサポートするはたらきがあるため、運動後の疲労回復に役立ちます。

■皮膚・爪・髪の健康維持

MSMに含まれるミネラルは、丈夫な皮膚・爪・髪をつくる材料となります。

■アレルギー症状の緩和

MSMは、体に侵入したアレルギー物質を排出するはたらきがあるため、アレルギー症状の緩和に役立つと考えられています。

そのほか、研究段階でデータは不十分ですが、次のような症状への効果が期待されています。[※4][※7]

  • 目の腫れ
  • 便秘や下痢
  • 血行不良
  • 高コレステロール血症
  • 気管支喘息
  • 2型糖尿病
  • カンジダ菌症
  • 目の炎症

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

MSMは体内でどのように作用するのか、わかりやすく解説していきます。[※3][※4][※5]

MSMに含まれる硫黄には、体内のコラーゲンをつくるはたらきがあります。コラーゲンは人の中で2番目に多い成分(※1番は水分)で、骨や細胞繊維をつくる重要な役割をもっています。硫黄によってつくられたコラーゲンは肌に弾力を与え、関節軟骨を修復します。

また、MSMに含まれる硫黄には、関節をなめらかに動かす潤滑液の主成分・コンドロイチン硫酸をつくるはたらきがあります。コンドロイチン硫酸が増えると潤滑液が増え、関節同士が直接ぶつかって擦り減るのを防げます。

そのため、MSMを摂取することで関節痛や関節炎の症状がやわらぎ、骨の健康を維持できるといわれています。

また、MSMには、細胞膜の透過性(栄養素や毒素が細胞膜を通り抜けられる性質)を高める作用があります。

細胞膜の透過性が高まると、体外から摂取した栄養素を細胞に届けやすくなり、体に溜まった毒素を体外に排出しやすくなります。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

MSMはふしぶしの痛みが増える40代以降の男女におすすめの成分です。起き上がったり歩いたりすると関節が痛む人や階段の昇り降りがつらい人は、関節軟骨を修復させるMSMを積極的に摂取しましょう。

MSMの摂取目安量・上限摂取量

MSMの摂取目安量や上限量はとくに設けられていません。MSM配合サプリメントを調査したところ、1日あたりの摂取目安量に含まれるMSMの平均量は1~3gでした。したがって、MSMを摂取する場合は1~3gを目安にするとよいでしょう。

MSMは水溶性で体内に溜めておくことができないため、体外から定期的に摂取する必要があります。[※1]

MSMのエビデンス(科学的根拠)

変形性関節症と季節性アレルギーに対するMSMの研究報告をご紹介します。

サウスウエスト大学のKim LSらは、2005年にヒトを対象とした実験を行い、MSMが関節痛を緩和する効果のエビデンスを報告しています。

実験の対象となった変形性関節症患者らは2つのグループにわけられ、片方には3gのMSMを 1日2回、もう片方にはプラセボ(偽薬)を1日2回投与されました。

投与開始から12週間後に、変形性関節症の痛みを指すスコア(指標視覚アナログスケール)と体の健康状態を指すスコア(全般的健康関連QOL)の数値を測定して比較する実験を実施しました。

実験の結果、MSMを投与したグループは、プラセボを投与したグループよりも変形性関節症の痛みを指すスコア(指標視覚アナログスケール)と体の健康状態を指すスコア(全般的健康関連QOL)の数値が改善しました。また、この実験を通して有害事象は報告されませんでした。

このことから、変形性関節症患者におけるMSM治療(MSM3gを1日2回、計12週間摂取)は安全性が高く、変形性関節症の痛みや不快感を緩和する効果が期待できることが示唆されています。[※8]

また、2011年にはイスラエルの医療センターに所属するDebbi EMらが変形性ひざ関節症に対するMSMの効果を調査しました。

実験の対象となったのは45~90歳の変形ひざ関節症患者49名です。

対象者らはランダムに2つのグループに分けられ、片方には1.125mgのMSMを1日3回、もう片方にはMSMグループと同じ頻度でプラセボ(偽薬)を継続摂取してもらいしました。

摂取開始から12週間後には、ひざ関節の痛みや硬直具合を指すスコア(WOMAC)を測定・比較しています。

実験の結果、プラセボ(偽薬)を摂取したグループよりもMSMを摂取していたグループのほうが、ひざ関節の痛みやWOMACスコアが改善したと報告されています。[※9]

そのほか、アメリカの統合治療センターに所属するBarrager Eらは、季節性のアレルギー症状に対するMSMの有効性を調べる実験を行いました。

実験では50名の被験者に対して、1日あたり2,600mgのMSMを継続的に経口摂取してもらいました。

摂取開始から30日目には、血液中に含まれるアレルギー反応を誘発する物質(IgEやヒスタミン)も測定しています。また、季節性アレルギー症状に関するアンケートを実施して、呼吸器症状や体力の変化を調べています。

実験の結果、アレルギー反応を誘発する物質(IgEやヒスタミン)の変化は認められませんでした。しかし、アンケートでは季節性アレルギーによる呼吸器症状や体力の改善が認められました。

このことから、MSMは季節性のアレルギー症状に対する効果が期待できることがわかります。

ただ、たしかな有効性や作用のメカニズムを解明するには、今後も研究の余地があるとされています。[※10]

研究のきっかけ(歴史・背景)

MSMを発見したのは、アメリカにある総合製紙・林業会社「クラウン・ゼラーパック社」です。

クラウン・ゼラーパック社は、紙の製造過程でクラフトパルプ廃液から見つけたDMS(ジメチルスルフィド/含硫黄有機化合物)の研究を行い、DMSが酸化するとDMSO(ジメチルスルフォキシド)になることや、DMSOが代謝されるとMSMになるプロセスを明らかにしました。

その後、クラウン・ゼラーパック社のロバート・ハーシュラー博士が約35年の月日をかけて、MSMが人体へ与える効果・効能を行い、MSMの特許を取得しました。

世界にMSMの存在を広く知らしめたのは、MSMの関節炎治療効果を主唱したオレゴン・ヘルスサイエンス大学のスタンリーW.ジェイコブ博士です。ジェイコブ博士は13,000人の臨床試験を行い、MSMの効果と安全性を調査しました。[※5]

日本では、2001年より厚生労働省の通達(医薬品の範囲に冠する基準改正について)で、MSMの健康食品への使用が認められました。

ただし、MSMを健康商品へ使用する条件として、厚生労働省の通達には「医薬品的効能効果を標榜しない限り」と記載されています。 [※2]

専門家の見解(監修者のコメント)

福山中央病院の院長・大森隆史医師は、MSMに期待できる美容効果について自身の著書で次のように解説しています。

「MSMは、松の樹液から作られる無臭の白い結晶で、『有機硫黄』と呼ばれ、体内で密度の高いコラーゲン生成に必要な栄養素です。コラーゲンを束ねて肌に弾力性を出したり、ヒアルロン酸とともに保水力を高める効果が確認されています」

「MSMに含まれる硫黄は、おもに爪や毛髪を形成するケラチンと、たんぱく質や皮膚を形成するコラーゲンを生成するのにも大切な役割を果たします」

(東洋経済新報社『「重金属」体内汚染の真実[プレミア健康選書]: 本当のデトックスのすすめ』より引用)[※1]

MSMに含まれる硫黄は、新しい肌や爪、髪を形成するのに必要なコラーゲンとケラチンをつくるサポートをする成分です。さらに、保水力を高める効果によって、潤いのある肌・爪・髪へと導いてくれます。

また、大森医師はMSMに期待されている健康効果についても解説しています。

「MSMは体外から補うと、関節炎やリュウマチなどに効果が期待されています。また、体内に侵入した毒素などの解毒に使われるので、シックハウスや環境ホルモン問題など、広い範囲で効果が期待できます」

(東洋経済新報社『「重金属」体内汚染の真実[プレミア健康選書]: 本当のデトックスのすすめ』より引用)[※1]

シックハウスとは、新しい家を建てる際に使用された接着剤や塗料に含まれる化学物質が部屋の空気を汚染した結果、居住者に体調不良や呼吸器疾患が起こることです。

MSMは体に有害な物質が体外に排出されるのをサポートしてくれるため、環境汚染物質による健康被害を予防するのに役立つでしょう。

MSMを多く含む食べ物

MSMは、特定の食品に多く含まれているわけではなく、穀物や豆類、牛乳、コーヒーやお茶など、さまざまな食品に少量ずつ含まれている成分です。くわえて、MSMは熱で壊れてしまう性質があるため、加熱調理するとほとんど摂取できません。[※1][※2]

そのため、食品だけで毎日1~3gのMSMを摂取するのは困難です。MSMを含む食品の摂取で足りない分は、MSM配合のサプリメントで補うことをおすすめします。

相乗効果を発揮する成分

MSMと一緒に摂ることで相乗効果を発揮する成分はグルコサミンです。

グルコサミンは 、MSMと同じく関節軟骨を修復する作用をもっているため、一緒に摂ることで関節機能を高める効果が増強します。[※6]

グルコサミンはおもに甲殻類の殻に含まれているため、食事で摂取するのは難しいでしょう。MSMとあわせて摂取したい人はサプリメントで必要量を補ってください。

また、MSMとビタミンAを一緒に摂取すると粘膜の免疫力を強化する作用が高まり、花粉や細菌、ウイルスなどの侵入によるアレルギー反応を抑えられます。[※1]

MSMの副作用

MSMは適量かつ短期間の使用であれば安全な成分です。ただし、大量または長期間摂取した場合、吐き気や下痢、頭痛や疲労感、不眠や集中力の欠如、下腹部の張りなどの副作用があらわれる可能性があります。

まれに発疹やアレルギー症状があらわれる場合もあるため、摂りすぎに注意してください。

注意すべき相互作用

医薬品との相互作用に関する研究データは不十分です。

服用中の薬がある場合は、MSMを摂取する前に必ず医師に相談をしましょう。

参照・引用サイトおよび文献

  1. 大森隆史著『「重金属」体内汚染の真実[プレミア健康選書]: 本当のデトックスのすすめ』(東洋経済新報社 2010年8月発行)
  2. (株)東洋発酵「メチルサリフォニルメタン(メチルスルフォニルメタン)」
  3. (株)CiCフロンティア「MSM」
  4. 副腎疲労専門カイロプラクティックCHIROPRATICA「毎日摂ろう!MSM(メチルスフォニルメタン)」
  5. 有限会社・駿河会「MSM について アメリカ事情」
  6. ノウハウバンク(株)「原料・受託バンク|グルコサミンの最高のパートナーは、MSM :(株)CICフロンティア」
  7. 田中平三ほか『健康食品・サプリメント[成分]のすべて 2017 ナチュラルメディシン・データベース』(株式会社同文書院 2017年1月発行)
  8. Kim LS, Axelrod LJ, Howard P, Buratovich N, Waters RF.Efficacy ofmethylsulfonylmethane (MSM) in osteoarthritis pain of the knee: a pilot clinical trial. Osteoarthritis Cartilage. 2006 Mar;14(3):286-94. Epub 2005 Nov 23. PubMed PMID: 16309928.
  9. Debbi EM, Agar G, Fichman G, Ziv YB, Kardosh R, Halperin N, Elbaz A, Beer Y,Debi R.Efficacy of methylsulfonylmethane supplementation on osteoarthritis ofthe knee: a randomized controlled study.BMC Complement Altern Med. 2011 Jun 27;11:50. doi: 10.1186/1472-6882-11-50.PubMed PMID: 21708034; PubMed Central PMCID: PMC3141601.
  10. Barrager E, Veltmann JR Jr, Schauss AG, Schiller RN. A multicentered,open-label trial on the safety and efficacy of methylsulfonylmethane in the treatment of seasonal allergic rhinitis. J Altern Complement Med. 2002 Apr;8(2):167-73. PubMed PMID: 12006124.