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黒酢の効果とその作用

私たちのカラダをつくる必須アミノ酸や、酢酸、ビタミン、ミネラルを豊富に含む黒酢。疲労回復やダイエット、美肌効果などが期待されている食品です。調味料としても幅広い料理に使用でき、ドリンクやサプリメントでも摂取することができる、とても身近な食品です。

黒酢とはどのような食品か

黒酢というと「色の濃いお酢」という認識が一般的にありますが、もともとの黒酢とは、鹿児島県霧島市福山町で200年ほど前の江戸時代から伝統的な製法でつくられている食酢を指します。

麹・米などの原料となる素材ときれいな水(地下水)を大きな陶器の壺に入れて、ゆっくりじっくり熟成させていくことで黒酢はつくられます。発酵・熟成の過程でアミノ酸が糖と反応して褐色になり、さらに熟成させることで黒味が増していきます。[※1]

黒酢と米酢の違いといえば、まずその色です。米酢はやや黄色味をおびた透明色ですが、黒酢は琥珀色です。味は黒酢のほうが米酢に比べて、まろやかです。

この違いは、米酢の原料は精米なのに対して黒酢は玄米や大麦であること、熟成期間の長さなどが影響しています。熟成期間は製造元により異なりますが、最低でも1年以上、長いものだと10年熟成させた黒酢もあります。[※2]

また、栄養面においても、長時間熟成された黒酢にはアミノ酸が豊富に含まれているといわれます。ほかに、からだの機能の維持に欠かせないビタミンやミネラル、疲労回復に欠かせない有機酸も含まれています。

昔からの知恵によって生み出されたスローフードの代表格といえるのが黒酢なのです。

黒酢は調味料としての使用も、そのまま飲むことも可能です。ドリンクとして飲みやすくするため、リンゴ黒酢、アセロラ黒酢、梅黒酢、はちみつ黒酢などさまざまな素材とかけ合わせた商品があります。

またニンニクを黒酢でつけたニンニク黒酢や黒酢飴などの黒酢を利用した食品もあります。さらに黒酢の粉末やエキスをカプセルにした黒酢のサプリメントも販売されています。

黒酢の効果・効能

黒酢にはとても多くの効果・効能が期待されています。

■疲労回復効果

黒酢に含まれるアミノ酸や酢酸には、からだの機能を維持する作用があり、疲労回復効果が期待されています。

■脂肪燃焼効果

黒酢に含まれる必須アミノ酸のバリン、ロイシン、イソロイシンなどには、脂肪を燃焼したり、代謝をアップさせたりする作用がある[※3]ため、黒酢にはダイエット効果が期待されます。

■美肌効果

黒酢に含まれるプロリン、アラニン、グリシンなどのアミノ酸はコラーゲンの主成分です。黒酢の摂取は美肌づくりに役立つと考えられます。

■高血圧の予防

黒酢に含まれるACEという酵素には、血圧の上昇を抑える作用があるため、高血圧の予防効果が期待されます。[※4]

■抗酸化作用

黒酢には、米酢などのほかの酢と比べて、抗酸化作用が優れていることがわかっています。[※4]そのため、増えすぎた活性酸素を除去して、からだを病気や老化などから守ってくれます。

■アレルギーを抑える効果

黒酢には、アレルギーの抑制に作用する酢酸発酵細菌由来の成分があることが、研究により明らかになっています。[※5]

■血液サラサラ効果

黒酢を摂取することで、血液がサラサラになる効果が期待されています。酢はその酸っぱい味から酸性の食品と誤解されがちですが、体内では酸を中和してくれるアルカリ性食品です。

カラダは本来弱酸性ですが、乱れた食生活やストレスなどから、酸性に偏りがちです。その結果血液はドロドロになり動脈硬化などの生活習慣病の危険因子になります。

黒酢に含まれる成分とは

黒酢に含まれる成分には、9種類の必須アミノ酸
そのほかのアミノ酸
酢酸や乳酸などの有機酸
ビタミンB群
カルシウムやマグネシウムなどのミネラルなどがあります。[※1]

黒酢には体内で合成できない必須アミノ酸がバランス良く、しかも豊富に含まれています。アミノ酸がバランス良く体内に供給されると、さまざまな生理機能が活性化されます。

黒酢のもう1つの特徴は、L-アミノ酸に加えて、D-アミノ酸が豊富であるという点です。D-アミノ酸は発酵食品に多く含まれ、とくに玄米黒酢に多く含まれていることがわかっています。[※6]

アミノ酸にはL体とD体があるのですが、生体機能に関わるアミノ酸はL-アミノ酸であり、D-アミノ酸はこれまであまり注目されてきませんでした。しかし最近の研究により、D-アミノ酸にも優れた効果があることが次々とわかってきています。

またD-アミノ酸は、美肌効果に優れたアミノ酸として美容化粧品にも配合されるなど、美容のジャンルでも注目されています。

資生堂が行った研究では、ドリンクとして経口摂取したD-アミノ酸が、肌まで届いて美肌に作用することが明らかにされています。[※6]

黒酢に含まれる成分で注目されることが多いのはアミノ酸や酢酸などですが、最近では、黒酢が熟成される過程で発生する微生物由来成分の機能に着目した研究も行われています。[※7]

今後もさらなる研究によって、健康や美容に役立つ新たな黒酢の機能が発見されることが期待されます。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

日頃から疲れやすいと感じる人や、生活習慣が乱れがちな人に黒酢はおすすめです。最近調子がすぐれない、風邪を引きやすいという人は、黒酢を食事に取り入れてみましょう。

調味料やドリンクとしての黒酢は、子どもからお年寄りまで、安心して摂取することができます。[※2]

サプリメントとして摂取する場合は、商品に記載されている注意事項をよく読み、正しく使用するようにしましょう。

黒酢の摂取目安量・上限摂取量

黒酢は食品であって医薬品ではありません。1日の目安量は定められていませんので、基本的には好きなように摂取してかまわないのですが、刺激が強く胃が荒れてしまう恐れがあるため、原液での摂取はすすめられません。

黒酢製造元のホームページなどでは、1日の目安は大スプーン2杯程度の20ml~30mlとされていますので参考にしましょう。[※1][※2]

黒酢は好きな飲み物と割ってドリンクにしてもよいですし、ドレッシングや、煮込み料理・炒め物の調味料としてもおすすめです。

ドリンクで摂取する場合は、

  • 空腹時を避けて食事中や食後に飲む
  • 一気に飲もうとせず何回かに分けて飲む

などを心掛けることで、胃腸への負担が和らぎます。

黒酢のエビデンス(科学的根拠)

黒酢による生活習慣病の予防効果については、以下のヒ臨床ト試験が行われています。

昭和大学の中山貞男博士らの行った研究で、35歳以上の健康な男性20名、女性19名に玄米黒酢0.5mlを水で5~10倍に薄めて毎日6か月継続摂取させました。

玄米黒酢を毎日継続摂取し、摂取前後7回の血液・尿検査を受けた男性12名のデータを調査したところ、血清中の総コレステロールとHDL-コレステロールに変化は認められなかったものの、トリグリセリド(TG)・血糖・尿酸・AST・ALT・γ-GTPは減少傾向を示したということです。[※8]

この結果から黒酢の成分が、生活習慣病のいくつかの危険因子を改善する可能性が示唆されています。

また、ミツカンが行った臨床試験では、BMIと血中中性脂肪が平均より高めの成人男女175名を対象に、1日あたり食酢を15ml摂取するグループ、食酢を30ml摂取するグループ、プラセボを摂取するグループに分けて試験を実施。

1日あたり食酢15mlと30mlを摂取したどちらのグループでも、プラセボを摂取したグループに比べて内臓脂肪・皮下脂肪の量が有意に減少したということです。

実験に使われた食酢はリンゴ酢だということですが、有効成分は酢酸だとされているため、酢酸が含まれる黒酢でも同様の効果が得られると推測されています。[※9]

研究のきっかけ(歴史・背景)

黒酢は鹿児島県霧島市福山町で、約200年前の江戸時代後期から製造されてきました。江戸時代、福山町は多くの産物が行きかう港町でした。

福山町には黒酢づくりに必要となるたくさんのお米や陶器製のカメが集まり、天然の地下水や、温暖な気候に恵まれるなど、最適な条件が揃った土地だったのです。[※1]

近年の健康ブームで、黒酢は健康食品として注目されていきます。ところが黒酢が人気になるにつれて、色を着色して黒くしただけの粗悪品などが流通され始めます。

それを防ぐために、農林水産省は2003年に品質表示基準(JAS規格)で「米黒酢」を定義しました。現在JAS規格では、

「原材料として米(玄米のぬか層の全部を取り除いて精白したものを除く)又はこれに小麦若しくは大麦を加えたもののみを使用したもので、米の使用量が穀物酢1Lにつき180g以上であって、かつ、発酵及び熟成によって褐色又は黒褐色に着色したもの」(引用)[※10]

という定義を満たしたものが、黒酢と認められています。

専門家の見解(監修者のコメント)

2014年に開催された日本黒酢研究会による第1回学術研究会では、黒酢の新たな可能性がそれぞれの研究者によって発表されています。

九州大学大学院の佐藤匡央准教授は、黒酢の脂肪の蓄積を抑制する効果は、黒酢の機能性ペプチドの作用であることを示唆。[※11]

鹿児島大学の候徳興教授は、黒酢もろみの粉末の摂取による生活習慣病の予防効果を動物実験の結果で示し、鹿児島大学の叶内宏明准教授は、脳の認知機能を改善する可能性を示唆しています。[※11]

坂元醸造と鹿児島大学が共同で発表した論文のなかでは、黒酢について

「黒酢の発酵過程は非常に珍しく、世界でも類を見ない方法で製造されている。(中略)発酵、熟成の過程には、麹菌、酵母、乳酸菌、酢酸菌といった様々な微生物が関与している」(日本食品科学工学会誌/57 巻 (2010) 10 号「腫瘍移植マウスにおける黒酢の抗腫瘍および免疫賦活作用」より引用)[※12]

と説明しています。

坂元醸造の長野正信専務取締役も学術研究会の講演のなかで、黒酢のその独自の製法の過程で得られる微生物についての未知なる可能性を示唆。

「こうした微生物が最終的に様々な機能性物質をつくり、黒酢の機能性を発揮していると考えられる」(健康産業流通新聞/日本黒酢研究会が第1回学術研究会 長寿との関わりなど10講演(2014.2.6)より引用)[※11]

と見解を述べています。

今後の研究により、さまざまな微生物によるまだ知られていない黒酢の新しい機能や効果が明らかにされることが期待されます。

黒酢の利用法

黒酢の摂取には、そのまま飲んだり食べたりする方法と、サプリメントとして摂る方法があります。

そのまま摂取する場合、いちばんシンプルなのはドリンクとしての利用です。水で薄めるだけでもいいのですが、黒酢の味をマイルドにするには、牛乳割りがおすすめです。

■黒酢牛乳割りのレシピ

  • 黒酢・・・大さじ1
  • 牛乳・・・150cc

(お好みでハチミツなどを入れて甘さを調整してください)

また、酢には料理の味を引き立てる効果があるため、調味料としても優秀です。

おすすめレシピは、黒酢の酢豚・豚肉の黒酢炒め・鶏のさっぱり煮など。つくり方は普段使っているお酢をそのまま黒酢に変えるだけです。

塩を控えめにしても黒酢のコクと豊かな香りが味を引き立ててくれるので、健康的なメニューに仕上がります。

一方、サプリメントで黒酢を摂取するいちばんのメリットといえば、いつでもどこでも黒酢の栄養を手軽に摂取できるということです。

酢の酸味がどうしても苦手という人や忙しくてドリンクや料理をつくることができないという場合に、サプリメントが役立ちます。

相乗効果を発揮する成分

■黒酢納豆

納豆に含まれるナットウキナーゼには、黒酢と同じように血液サラサラ効果があるとされ、生活習慣病の予防や代謝アップの相乗効果が期待されます。

量は、納豆1パックに酢を小さじ1程度が目安です。納豆に入れるのは普通の酢でもいいのですが、黒酢には納豆の臭みを和らげる効果があるため、食べやすさという点でもおすすめです。

■黒酢ショウガ

新しい調味料として注目されているのが黒酢ショウガです。ショウガには血流促進や抗酸化作用などがあるとされ、黒酢との相乗効果により、生活習慣病の予防や疲労回復効果が高まります。

つくり方は簡単で、スライスしたショウガ(みじん切りやすりおろしても可)を清潔な保存容器に入れ、ひたひたになるまで黒酢を入れるだけです。

冷蔵庫で1日置けば完成で、冷蔵保存であれば1週間ほど保つことができます。黒酢ショウガは、ドレッシングなど料理の調味料に幅広く使えます。

黒酢ショウガを、肉の煮込み料理や肉野菜炒めなどに使えば、豚肉のビタミンBや鶏肉の良質なたんぱく質との相乗効果で疲労回復効果がさらに高まると考えられます。

黒酢に副作用はあるのか

黒酢は食品ですので、副作用の心配はありません。ただし、刺激が強いため、一度に大量に飲むと胃粘膜を傷つけてしまうおそれがあります。

また、黒酢に医薬品との相互作用は報告されていません。[※13]