イタドリは、日本全土に生息するタデ科の多年草で、日当たりの良い場所に自生している野草です。生命力が強く高さ2m近く生長するとされるイタドリには、さまざまな成分が含まれており、利尿作用や便秘解消、抗酸化作用などの効果が期待されています。
ここでは、イタドリの詳しい効果効能やエビデンス、副作用、摂取目安量などをまとめています。
イタドリは、日当たりの良い路傍や土手などの場所に生育しているタデ科の多年生植物です。北海道西部以南の日本、中国、台湾、朝鮮半島などに分布しています。[※1]
茎には赤い斑点があり虎斑模様で、アスパラガスのような形状をしており、中は竹のように節があるのが特徴です。生命力が高く、草丈は2m程度まで生長するとされています。
日本ではイタドリは山菜として扱われていて、古来より山間部の家庭の食卓によく並び食べられてきました。また、戦時中にはタバコの葉の代用品としても使用されていました。[※2]
食べ物や嗜好品として利用されていたイタドリですが、民間では咳止めや鎮静、止血の薬としても使用。名前の由来として、若葉をもんで傷口にあてると血が止まって痛みが和らぐことから、痛取(イタドリ)と名付けられた説があります。[※3]
枯れたイタドリの根を乾燥させたものは虎杖(こじょう)、虎杖根(こじょうこん)と呼ばれ、生薬としても使用されています。虎杖根には、緩下作用や利尿作用、月経を促す作用があります。
イタドリに含まれている成分によってさまざまな効果が期待されています。その効果・効能を見ていきましょう。
■利尿作用
イタドリの根茎に含まれているアントラキノン誘導体のポリゴニンには、体内にある余分な水分を排出する利尿作用があります。そのため、膀胱炎などの予防として利用されています。[※4]
■便秘解消
イタドリには、エモジン(エモディン)と呼ばれる成分が含まれています。このエモジンには緩下作用があり、腸のぜん道運動を促進してくれます。その結果お通じが良くなるため、便秘の解消効果が期待できます。
■抗酸化作用
イタドリに含まれるレスベラトロールは、抗酸化作用を持っています。そのため、生活習慣病の予防に効果を発揮するほか、しわやたるみといった肌の老化を抑制する効果も期待できる成分です。[※5]
ほかにも、イタドリには以下のような症状に効果があるとされています。[※6]
イタドリには、ポリゴニンやエモジン、レスベラトロール、タンニンなど、さまざまな成分が含まれています。
そのなかでも特徴的な成分なのがレスベラトロールです。レスベラトロールはポリフェノールの一種で、ブドウの皮や赤ワイン、ピーナッツの渋皮などに多く含まれている成分です。[※7]
レスベラトロールは強力な抗酸化作用を持っているうえに、誰もが生まれたときから持っている「サーチュイン遺伝子」のスイッチを入れ活性化させる働きがあることが分かっています。
普段は眠っていて働いていないサーチュイン遺伝子を、レスベラトロールを摂取することで活性化させることが可能。サーチュイン遺伝子の活性化で、老化を抑え若々しさを維持する効果が期待されているのです。
イタドリにはそのレスベラトロールが含まれていますが、その量は赤ワインよりも多いと言われています。[※3]レスベラトロールは抗酸化作用以外にも、抗炎症作用や抗動脈硬化作用などがあります。
ただし、日本ではイタドリの抽出物は医薬品(漢方薬の虎杖根)扱いとなるため、サプリメントや食品に用いることは認められていません。
イタドリ由来のレスベラトロールはブドウ由来のレスベラトロールに比べて高濃度なうえに安価なので海外のサプリには配合されていますが、日本では薬機法に違反する製品となるので注意が必要です。[※8]
イタドリには緩下作用があるため、便秘で悩んでいる方は積極的に摂取すると良いでしょう。
また、イタドリの成分にはポリゴニンが含まれており利尿作用があるので、膀胱炎の予防をしたい方におすすめです。
抗酸化作用によるデトックス効果が期待できるほか、リウマチや関節痛などにも効果を発揮。したがって膝や関節を痛めやすい更年期の人に向いている成分です。[※4]
漢方の虎杖根にはアントラキノン誘導体が含まれています。アントラキノン類には緩下作用があり、過剰に摂取するとお腹がゆるくなるおそれがあります。そのため、摂取目安量を守って飲用する必要があります。
摂取量は、根に換算すると一日8~10g程度。摂取するときは虎杖根を刻み、8~10gに水を約500ml加えて煎じます。そして、水が半量になるまで煮詰め、一日3回に分けて食間に飲用すると、便秘などに効果的だとされています。[※1]
ただし日本では漢方として処方されますので、医師の指導にしたがって服用するようにしてください。
近畿大学薬学部と近畿大学東洋医学研究所によって、イタドリの根に含まれる抗菌性成分の調査が行われました。[※9]
イタドリの根に含まれる抗菌性成分レスベラトロールを調査した結果、皮膚病の原因である白癬菌や水虫などに特に強い抗菌性を示した結果が出たと報告されています。
このエビデンスは、昔からイタドリの根に抗菌作用があるとして、民間的に水虫などの治療薬として使用されてきたことの妥当性を裏付ける結果となったとしています。
また、イタドリに含まれるレスベラトロールの研究では、肌の老化予防に効果的だと発表されています。[※10]
培養皮膚線維芽細胞において、レスベラトロール単独、またはアミノ酸の一種であるN-アセチルシステインと組み合わせて投与することで、コラーゲン分解酵素の作用を抑えることがわかりました。
このことから、レスベラトロールにはコラーゲンの分解を抑制し、肌の老化予防効果が予測されると結論づけられました。
イタドリは昔から治療薬として使用されてきました。紀元前の中国の辞書に「虎杖」の名が記されているほか、日本では「日本書紀」以来、さまざまな書物にその名が登場しています。
江戸時代に記されたとされる『和漢三才図会』という本には気奔(きほん)、いわゆるじんましんの治療に虎杖を使用したと記録されています。[※11]
19世紀前半には、シーボルトによって九州からオランダへとわたり、19世紀中頃にはイギリスに鑑賞植物として導入されました。その後イギリスでは1886年に初めて本雑草の野外繁殖が記録され、それ以降欧州全土にわたってイタドリの分布が急速に広がっていったとされています。
繁殖力の強いイタドリによって生物の多様性を損ねる結果になったり、コンクリートやアスファルトを割って芽を出し繁殖したりといった問題が次々と発生。被害が深刻になったイギリスでは、現在イタドリを「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定されています。[※12]
イタドリに含まれているレスベラトロールにはさまざまな効果があることがわかっています。
内科医である土井里紗医師は、次のようにコメントしています。
「レスベラトロールは抗酸化作用や発がんの各段階を抑制することでがん予防効果も注目されていますから、取り入れて頂きたい成分の一つです」(内科医による健康創造BLOG~未来の健康をクリエイトする為に~/話題のレスベラトロール嘘と本当 より引用)[※13]
レスベラトロールの抗酸化作用によって生活習慣病だけでなく、がんの抑制や抗がん剤治療の副作用を軽減する働きもあることがわかっています。
昔から山菜として食べられてきたイタドリですが、多くの研究機関での調査によって、さまざまな効果があることが報告されてきました。そのなかでも、イタドリに含有する成分・レスベラトロールのがんの抑制や抗がん剤治療における副作用を軽減する働きには、医師たちが大きな期待を寄せているようです。
枯れた根茎を日干ししたものは生薬として利用されるイタドリですが、茎が若いときや若芽などは山菜として食べられます。
食用としては、皮をはいで熱湯で茹でた後に流水にさらしてから調理。酢味噌和えや酢の物、煮物、油炒めなどにして食べられます。
茎がやわらかく水分が豊富なイタドリは生のまま食べることが可能ですが、成分にはシュウ酸を多く含んでおりアクが強いためえぐみがあります。そのため、水にさらしてアクを抜いてから調理すると食べやすくなるでしょう。[※4]
地方によっては、小川でイタドリを1~2日間ほどつけておき、水気を切った後は塩漬けして冬場の山菜料理として食べているところもあります。
■イタドリの新芽や葉を使ったレシピ
ここでは、簡単に調理して食べられるイタドリの新芽や葉を使った天ぷらのレシピをご紹介します。
用意するのは以下です。
1. 流水でイタドリを洗います。
2. 天ぷら粉に水を入れてかき混ぜ、衣を作ります。
3. イタドリを衣につけて、約170~180度の油でさっと揚げます。
4. 器に盛りつけて軽く塩を振ると出来上がりです。
イタドリには鎮咳効果があるとされていますが、甘草と呼ばれる生薬を2~3g加え煎じて飲むと効果が高まると言われています。[※14]
また、抗菌作用があるイタドリにプラスして治療を行うケースも。火傷を負った箇所に、イタドリの根茎から作られた虎杖の粉末を食用油やお茶と混ぜて練ったものを患部に湿布する治療が報告されています。
ほかにも、若葉や新芽の汁をはちみつと混ぜて服用することで、リウマチや解熱の効果を上げることもわかっています。[※15]
昔から生薬や漢方として使用されてきた植物成分のイタドリは、摂取することで重篤な副作用が起きることはないとされています。
ただし、もともと緩下剤として使われていたこともあり、多量に摂取することで吐き気や嘔吐、下痢などの副作用を引き起こすおそれがあります。
また、イタドリにはシュウ酸が多く含まれており、過剰に摂ってしまうと尿路結石や腎結石などの原因となる可能性があるため、摂取する量には注意が必要です。[※3]
妊娠中・授乳中の女性に対する安全性に関しては、現在のところ信頼できる情報が十分見つかっていないため、摂取は控えた方が良いでしょう。