名前から探す

グレープフルーツの効果とその作用

グレープフルーツは西インド諸島で発見された柑橘類です。甘酸っぱさの中に独特の苦みがある、さわやかな果実として知られています。多くの栄養素が含まれており、ダイエットの手助けや血糖値の改善に役立ちます。ここではグレープフルーツの効果・効能や副作用、エビデンスなどをまとめました。

グレープフルーツとは

柑橘類の仲間であるグレープフルーツは、ジューシーで甘酸っぱい果実です。さわやかな香りと独特の苦みがあります。果肉が黄色い「マーシュ種」と、その名の通りルビー色の果肉を持つ「ルビー種」が広く知られています。
果肉が赤い品種はルビー種以外にもスタールビー、リオレッド、フレームなどがあります。どの品種もマーシュ種より甘く、食べやすいのが特徴です。
近年ではグレープフルーツとほかの柑橘類をかけ合わせた果物も開発され、人気を集めています。

グレープフルーツはビタミンCが豊富で、果肉100gに対して36mgのビタミンCが含まれています[※1]。グレープフルーツは1個400gほどなので、1日1/2個食べれば1日に必要なビタミンCを摂取することが可能です。

ビタミンC以外にもミネラル、クエン酸、ポリフェノール類など、さまざまな成分が入っていることから、数多くの栄養を一度に摂ることができる、優秀な食べ物といえます。

グレープフルーツは食用以外にも、アロマオイルや香水として使われています。

グレープフルーツの効果・効能

グレープフルーツには以下の効果があるといわれています。[※3][※4][※5][※6][※7]

■ダイエットの手助け

グレープフルーツに含まれるナリンギンは、食欲抑制や血液内の脂肪酸を分解するはたらきがあります。また、香りには細胞内の中性脂肪を減らすはたらきがあるため、ダイエットに効果的です。

■疲労回復

グレープフルーツを摂ることで細胞内の乳酸を減らし、疲労を回復させる効果が見込めます。

■心臓疾患を予防する

グレープフルーツはカリウムが豊富で、心臓や筋肉の動きを正常にしてくれます。そのため、心臓の健康を保ち、疾患を予防することが可能です。

肝臓の機能を高める

グレープフルーツには抗脂肪肝ビタミンと呼ばれるイノシトールが含まれているため、脂肪肝 を防ぎ、肝臓のはたらきを正常に保ってくれます。

■シミの生成を防ぐ

グレープフルーツを摂ることで抗酸化作用が得られ、シミの原因となるメラニン色素がつくられにくくなります。

■リラックス効果

グレープフルーツの香りをかぐことで、リラックス効果が得られるといわれています。

ほのかな苦みとすっきりさわやかな香りは気分をリフレッシュでき中力の強化などの効果が得られます。

■集中力を高める

グレープフルーツジュースには、集中力を高める効果があることが研究でわかっています。

どのような作用があるのか

グレープフルーツにはビタミンやミネラル、ポリフェノールなどの栄養素が豊富に含まれており、体内でさまざまな作用をもたらすことが知られています。

グレープフルーツを食べることで高血糖の改善に役立つナリンギンを摂り入れられます。

ナリンギンは糖の代謝を上げて効率良くエネルギーに変える作用があり、血中のブドウ糖を減らすことが可能です。食欲を抑制する効果も知られているため、ダイエットに効果的な成分といえるでしょう。

また、「抗脂肪肝ビタミン」であるイノシトールが入っているため、体内の脂肪の流れを改善し、肝臓に脂肪がたまるのを防ぎます。

ほかにも、グレープフルーツに含まれる香り成分「ヌートカトン」には、脂肪細胞を減少させるはたらきがあるとされています。

グレープフルーツの香りをかぐことで、体内の脂肪燃焼にかかわる「UCPたんぱく質」の活動が活発になり、体内の脂肪や体重が減少する効果が期待できます。

通常、UCPたんぱく質が活発化することはあまりないとされていますが、グレープフルーツの香りによって交感神経が刺激されることでスイッチが入ってはたらくようになるのです。

また、グレープフルーツに多く含まれているカリウムは心臓のはたらきが正常化する作用をもっているため、心臓で起こる不整脈や心筋梗塞などの予防につながります。

グレープフルーツに入っているビタミンCは抗酸化作用により、細胞にダメージを与える活性酸素を除去してくれます。そのため、メラニン色素の合成を抑え、キレイな肌を保ちやすくなります。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

グレープフルーツはコレステロールや脂肪細胞の減少に役立つ成分が多く入っている[※1]ことから、太り気味の人やコレステロール値を気にしている人におすすめの食品です。

体内の脂肪を減らすだけでなく、新たに入ってくる脂質をカットするはたらきもあるため、ダイエット中の人に最適といえます。

食べるだけでなく香りをかぐだけでも効果が期待できるため、グレープフルーツの味が苦手な場合はアロマオイルや果実の香りをかぐだけでもよいでしょう。

運動や食事制限などとうまく組み合わせて、脂肪を減らすために活用してください。

グレープフルーツの摂取目安量・上限摂取量

グレープフルーツに1日の正確な摂取目安量は定められていないようです。

毎日食べるなら、およその目安としてグレープフルーツ1/2個ほどを摂取するのがおすすめです。

ただし、グレープフルーツの多量摂取は禁物です。食べ過ぎによって、体に悪影響を及ぼす可能性があります。

薬を常飲している人は、医師と相談したうえで食べるようにしましょう。

グレープフルーツのエビデンス(科学的根拠)

グレープフルーツの抗肥満効果や高血糖を改善する作用のエビデンスとして、以下の研究が発表されています。

カリフォルニア大学バークレー校の研究チームによって行われた実験では、マウスに脂肪分の多いエサを食べさせて水を飲ませた場合と、グレープフルーツの果汁を含む水を飲ませた場合の体重の変化を調べています。

100日間の実験後、グレープフルーツの果汁を含む水を飲ませたグループのマウスは、水だけを飲ませたマウスに比べて体重増加率が18%も抑えられました。

また、血糖値も17%下がっており、インスリン感受性(インスリンの働く度合い)も高くなったことから、高血糖の改善作用も期待できます。[※8]

また、山梨医科大学の村松仁(現:群馬パース大学教授) らは、グレープフルーツの香りに含まれるリラックス効果についての研究を発表しています。

20~40代の女性4名を対象に、精神に負担をかけるための作業を行ったあと、グレープフルーツの香りをかがせて脳波を測定。脳波のデータから、香りがどのような効果を及ぼすのかを調べました。

その結果、グレープフルーツの香りをかいだあとはリラックスしていることを示す脳波が出ており、対象者のストレスが軽減されたことがわかっています。この研究から、グレープフルーツの香りによるリラックス効果が示唆されました。[※9]

研究のきっかけ(歴史・背景)

西インド諸島のバルバドス島で発見されたのがグレープフルーツです。実がなる様子がブドウの房のように見えることからグレープフルーツと名づけられました。発見された当時は神話になぞらえて、禁断の果実とも呼ばれていたそうです。

グレープフルーツはイギリス人学者のグリフィス・ヒューズが発表した『バルバドスの自然史(The Natural History of Barbados)』によって広まり、1823年にはフロリダで栽培が始まりました。

初めは文旦(ブンタン)の変種だと考えられていましたが、1837年にスコットランドの学者によって文旦と区別され、Citrus paradisi(楽園の柑橘)という学名が付けられています。

1948年には文旦とオレンジの交配種であることがわかり、広く知られるようになったのです。

日本には大正時代の初めごろから伝わっていましたが、熱く湿度の高い日本の気候がグレープフルーツの栽培に向いていなかったため、広くは定着しませんでした。

その後、1970年代に大量輸入されるようになりました。1982年に日本食品標準成分表に掲載されたことで、一般家庭に普及するようになったと考えられています。[※1][※2][※3]

専門家の見解

グレープフルーツの効果は多くの研究や論文で証明されています。抗脂肪効果や血糖の改善に関して、肯定的な意見を示す専門家も多いようです。

中でも注目されている効果として「集中力を上げる」というものがあります。これはフロリダ州政府柑橘局の研究からわかった効果で、ホットグレープフルーツジュースを飲むことによって脳の活性化を促進する作用が期待されています。

研究に協力した杏林大学医学部 精神神経科学教室の古賀良彦教授は、実験の結果について以下のようにコメントしています。

「受験生が勉強前や勉強の合間にホットグレープフルーツジュースを飲むことは、集中力を高め勉強の効率を上げるという点からオススメできます」(フロリダ州政府柑橘局(FDOC)「合格フルーツ|キャンペーン|フロリダ グレープフルーツ公式サイト」より引用)[※7]

「同じ飲料でもコーヒー・紅茶の場合はカフェインによる覚醒効果が期待できますが、摂りすぎによる弊害(眠りにくくなり生活リズムに影響を与える可能性)があることを考えると、ビタミンCが豊富で低GI食品でもあるグレープフルーツを使ったホットジュースは受験生の健康をサポートするという面からも有効といえるでしょう。」(フロリダ州政府柑橘局(FDOC)「合格フルーツ|キャンペーン|フロリダ グレープフルーツ公式サイト」より引用)[※7]

古賀教授によると、グレープフルーツジュースはコーヒーや紅茶よりも健康的に集中力を高められるとのこと。カフェインと違って睡眠の習慣を妨げずに勉強に集中できるでしょう。

グレープフルーツを上手に摂取するには

グレープフルーツはそのまま食べてもおいしい食材ですが、サラダやデザートに使うことで、よりさわやかな香りや食感の良さが楽しめます。生で食べられるため、加熱調理で栄養成分を損なうことなく摂取できますよ。

果肉を加工してジャムやジュース、お酒として使うのもよいでしょう。そのままでは 酸味が強くて食べられないという人でも、砂糖を加えた加工品にすることで食べやすくなります。

また、そのままでは食べられない皮も、砂糖漬けにしてケーキやクッキー、料理に混ぜることで、味にバリエーションを出すことができます。

記憶力を高める作用があるとして報告されているホットグレープフルーツジュースも、電子レンジを使って簡単に作ることができます。

グレープフルーツの果肉をしぼり、耐熱グラスに注いで1~2分600wのレンジでチン。そのあとはちみつを溶かして出来上がりです。甘いものが好きな人は、好みではちみつの量を変えてみるといいでしょう。

 トル

相乗効果を発揮する成分

グレープフルーツと相乗効果を発揮する成分としては、コーヒーが挙げられます。

グレープフルーツの香りには抗肥満効果があることが知られていますが、研究ではコーヒーの香りと合わせることで相乗効果が得られたと報告されました。[※10]

また、アロマオイルとして使う場合、幸福感を高めるとされるサンダルウッドと混ぜて使うことで、不安な気分や憂鬱感を取り払う効果があるとされています。[※11]

グレープフルーツに副作用はあるのか

グレープフルーツには苦み成分のナリンギンが含まれています。ナリンギンは針状の結晶構造をしているため、グレープフルーツを食べたときに口の周りや舌が刺激されてヒリヒリするといった症状が出るようです。[※1]

注意すべき相互作用

グレープフルーツには飲み合わせることを禁忌としている薬があります。

高血圧の治療に使われる降圧剤の中でも「カルシウム拮抗薬」を併用すると、グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類によって、代謝酵素の「CYP3A4」が阻害される相互作用が起こります。[※12][※13][※14][※15]

酵素が阻害されて代謝がうまくいかなくなると、薬の血中濃度が上がってしまい、降圧効果や頭痛・めまいなどの副作用が強くあらわれるのです。

カルシウム拮抗薬以外に、高脂血症治療薬や催眠鎮静薬、抗てんかん薬などで同じ相互作用が起こることも確認されています。[※12]

カルシウム拮抗薬以外に、高脂血症治療薬や催眠鎮静薬、抗てんかん薬などで同じ相互作用が起こることも確認されています。[※12]

これらの薬を服用している人は、グレープフルーツの摂取を避けるのが望ましいでしょう。

「副作用はともかく、効き目が強くあらわれるのは良いことではないか」と考える人もいますが、薬の作用が強くなると体に悪影響を及ぼす可能性が高くなるので注意しましょう。

グレープフルーツの選び方・保存方法

グレープフルーツを選ぶ際は、果皮がへこんでいないキレイな形のものを選びましょう。鮮やかな色味で表面に張りとツヤがあるものがおすすめです。良い果実はずっしりと重く実が詰まっているので、購入前に同じ大きさのグレープフルーツを手に取って重みを比較してみましょう。

保存する際は香りがほかの食材に移らないよう、ポリ袋かビニール袋に入れ、冷暗所か冷蔵庫の野菜室で保管します。[※1]

基本的にグレープフルーツの 皮は厚くて中身が傷みにくいのですが、日が経ったものはカビや腐敗などに気を付けてください。
カットしたものはラップをかけて保存し、2~3日を目安に食べきるのがよいでしょう。

参照・引用サイトおよび文献

  1. 一般社団法人 日本青果物輸出入安全推進協会「グレープフルーツ | 輸入果物図鑑 | フルーツセーフティ」
  2. 【PDF】一般社団法人 日本青果物輸出入安全推進協会『果物と栄養教育』(2013年6月号 p16-25)
  3. 田中平三ほか『健康食品・サプリメント[成分]のすべて 2017 ナチュラルメディシン・データベース』(株式会社同文書院 2017年1月発行)
  4. フロリダ州政府柑橘局(FDOC)「フロリダ グレープフルーツのカラダにいい成分|美容・健康・ダイエット|フロリダ グレープフルーツ公式サイト」
  5. 三上杏平著『アロマテラピストのための最近の精油科学ガイダンス』(フレグランスジャーナル社 2008年6月発行 p69-70)
  6. 亀岡弘著『エッセンシャルオイルの科学 : 精油の正しい知識と理解を深めるために』(フレグランスジャーナル社 2008年4月発行 p134)
  7. フロリダ州政府柑橘局(FDOC)「合格フルーツ|キャンペーン|フロリダ グレープフルーツ公式サイト」
  8. Florida Department of Citrus「New study suggests grapefruit juice may help control weight gain」
  9. 【PDF】村松仁ら「精神負荷に対するグレープフルーツの香りの効果」(山梨医大紀要 第17巻 p42-47 2000年)
  10. 桜井和俊「香りの分析と香りの効果効能について」(食生活の統合研究のためのジャーナル 第21巻(2010年)第3版 p179-184)
  11. 梅原亜也子著『新版 これ1冊できちんとわかるアロマテラピー』(マイナビ出版 2016年2月発行 p127)
  12. 一般社団法人 くすりの適正使用協議会「グレープフルーツジュース | くすりと食品の相互作用」
  13. 大日本住友製薬「くすりのいろは│すこやかコンパス」
  14. 公益財団法人 日本心臓財団「注意したいお薬の飲み合わせ | 今月のトピックス」
  15. 野菜等健康食生活協議会事務局「グレープフルーツジュースが強めるのは薬の主作用?それとも副作用? - 野菜・果物を摂取するときの注意」