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フェンネルの効果とその作用

フェンネルはアロマテラピーやハーブの世界ではよく知られる植物で、欧州では古くから食用や薬用、魔除けなどにも使われています。

また中国では漢方薬にも配合され、インド料理ではスパイスとして使われています。抗菌作用やエストロゲンに似た働きなどが注目されている植物です。

フェンネルとはどのような成分か

フェンネル(ウイキョウ)はセリ科ウイキョウ属の植物です。フェンネルは古代ギリシャのローマ時代から栽培され、使われてきた記録が残っています。原産地は南ヨーロッパで、古くから食用や薬用として、用途が幅広いハーブです。

フェンネルの形はセリ科のディルとよく似ており、大型の多年草で草丈は2mまで育ちます。先端には黄色の小花が多数咲き、傘を広げたような見た目が特徴です。[※1]

フェンネルの葉や茎には香りがあり、欧米では魚料理によく用いられる植物です。ディルと同様「魚のハーブ」とも呼ばれ[※2]、緑色の葉は魚料理との相性がよく、若い葉はそのまま食用としても食べられます。[※1]

種はピリッとした風味とほのかな甘い香りが特徴で、プチプチとした食感があるのが特徴です。こちらも食用としてよく用いられるため、葉のフェンネルと区別する目的で、種はフェンネルシードと呼ばれることがあります。

インドでは食後のにおい消しに噛むことがあるハーブです。[※3]また種は、ハーブティーやお菓子にも活用されているほか、漢方薬で用いられる場合には胃薬として使用されます。

その他の活用例として、種からは精油がつくり出され、その香りを使った石鹸や歯磨き粉など、アロマセラピーやハーバルセラピーをしている方から人気が高いアイテムになっています。[※1]

品種としては、葉が銀色になり観賞用としても用いられるブロンズフェンネルや、一年草の野菜として栽培されるスイートフェンネルなどがあり、栽培する人も多い植物です。[※1]

フェンネルの効果・効能

フェンネルの種は漢方薬にも用いられており、葉や種から取り出される精油にもさまざまな効果・効能が期待できます。

■健胃整腸効果

フェンネルの種は茴香(ういきょう)と呼ばれ、安中散(あんちゅうさん)、暖肝湯(だんかんとう)、枳縮二陳湯(きしゅくにちんとう)、茘枝散(れいしさん)などの漢方薬に含まれています。

胃腸を整える働きや、生理痛の対策として、さらに香りのよさから歯磨き後のガムとしても活用されているハーブです。

また、神経性胃炎や慢性胃炎、胃酸過多症にも使用されており、女性の生理痛の不快感への対策にもなるハーブです。[※4]

授乳期には、母乳の出をよくするとも言われていますが、フェンネルは子宮を刺激するともいわれているため、妊娠中の使用は控えましょう。[※5]

■ダイエット作用

フェンネルはギリシャ語でマラスロンとも呼ばれており、この言葉は「痩せる」という意味を持ちます。このことからわかるように、古くから女性のダイエット食として活用されてきました。[※5]

実際にフェンネルには、発汗作用や新陳代謝の活発化といった作用があるため、痩せやすい体作りに役立つ食品です。さらに、香りは食欲を抑える働きがあったり、体の中の水分を排泄したりする作用もあるため、ダイエット中に摂り入れるのに相性のよいハーブ(スパイス)と言えるでしょう。[※6]

■咳止め効果

フェンネルの精油は咳止め薬としても使われています。[※5]ドイツでは子どもの咳止めシロップとしても処方されているハーブです。ハーブティーとして飲むなら、ハチミツを加えると飲みやすくなります。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

フェンネルの主成分は香りの成分でもあるアネトールで、50~60%程度を占めます。そのほかにはアラキド酸ドコシル、ピネン、リモネン、アニスアルデヒド、エストラゴールが含まれます。[※4]

フェンネルの香り成分であるアネトールは、咳止めや抗菌剤としても使われるものです。この抗菌作用は、天然素材の抗菌性抗生物質となる可能性が示されている成分で、真菌をはじめとする様々な微生物に対し抗菌作用を持ち、ほかの薬剤と併用することで効果が高まることが報告されています。

さらにアネトールには病原性真菌に対し活性酸素産生を誘導することがわかっています。将来は抗菌剤、抗ガン剤、医薬品などへの活用としても期待されている成分です。[※7]

アネトールには女性ホルモンのひとつエストロゲンと似た働きがあることが大きな特徴です。フェンネルの精油はすでに月経前症候群の民間療法としても用いられており、一定の効果が示されています。

様々な効果が期待される精油は、脂質親和性で皮膚からの浸透力が高く、皮膚から成分を吸収させることができることも特徴です。

また、吸入して口や鼻の粘膜から成分を取り込むこともできます。脂質親和性の特徴を持つため、中枢神経のような脂質性の組織とも相性がよくなっています。[※8]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

フェンネルは食用にもできるハーブで、魚料理のにおい消しに使われることも多いです。添え物としても有用で、食後の口直しにも利用できるでしょう。インドレストランに行くと食後にはローストしたフェンネルが出されることが多いので(あるいはレジのそばにも置いてあります)、口直しの効果を体感したことのある人は多いのではないでしょうか。

また、胃薬や咳止めとしても効果が認められるため、風邪気味や体調不良の時には、摂取がおすすめです。漢方薬として、販売されているため求めやすいのも利点でしょう。

フェンネルシロップやハーブティーとして飲んでも、咳止め効果が期待できます。

フェンネルに含まれるアネトールには女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをすることから、月経前や更年期障害対策としてもおすすめです。

米国更年期学会の研究では、フェンネルが更年期障害のほてり、不眠、不安の症状に効果があると発表しています。

更年期障害では治療にホルモン補充療法が用いられていますが、フェンネルもエストロゲンと同じ作用があることから、同様の効果が期待されます。[※9]

フェンネルの摂取目安量・上限摂取量

フェンネルは食用に用いられるハーブで、推奨摂取量は定められていません。

漢方薬として摂取する茴香(ウイキョウ)に関しては、用量が定められています。茴香は1日1~3gにとどめておく必要があり、0.1~10gが基準量です。

茴香を漢方薬として服用する場合は、煎じて飲む方法も採られますが、栽培などをして収穫したものを使う場合には、その日のうちに飲み切れる量を煎じるようにします。

服用は効果を持続させるためにも1日の量を3回に分けることがおすすめです。食前や食間に服用しましょう。

粉末状のものは少量のお湯とハチミツを加えて練り状としてから、そのまま飲んで咳止め薬としても使うことが可能です。[※10]

もちろん漢方薬も医薬品ですから、服用の際は専門医に相談してください。

フェンネルのエビデンス(科学的根拠)

フェンネルは古くから薬用として使われてきた植物で、漢方薬の茴香にも活用されています。薬用として使用されるのは主に種で、内服は胃腸の調子を整える薬として、外用では洗浄剤としても活用されてきました。[※1]

フェンネルに対する更年期障害の研究は、米国更年期学会による発表データがあります。研究チームは、45~60歳の女性79人を対象に、フェンネルと更年期障害の関係性を調べました。

79人を2グループに分け、片方にはフェンネル100mgを含むカプセルを、もう一方にはプラセボを1日2カプセル飲ませる内容で8週間続けられました。

その結果、フェンネルを飲んだグループは、飲まなかったグループと比べ更年期障害の症状が緩和していることがわかりました。

副作用を感じることもなく続けられたため、更年期障害の治療薬の代わりとしてフェンネルは期待されています。[※9]

研究のきっかけ(歴史・背景)

フェンネルは古代ギリシャのローマ時代から食用として使われてきました。薬用としての利用も古く、「フェンネルを見ても摘もうとしない者は悪魔だ」という言葉があったといいます。[※2]

よく使われるようになったのは中世以降で、外用として用いて目の洗浄液としてや、お風呂に入れて使われていたようです。民間療法として咳止めや消化剤としても用いられています。

日本にも中国から薬用として伝わり、古くから用いられてきました。[※5]

専門家の見解(監修者のコメント)

フェンネルに含まれるアネトールは植物由来成分で安全性が高く、研究により抗菌作用が認められている成分です。

そのため、研究では安全でありながら効果も期待しやすいものとして注目を集めているほか、古くからの利用があるため普及もしやすいのではないかということが示唆されています。

「アネトールは植物由来成分であり、すでに甘味料や香料として食品や歯磨き粉などに添加され、ヒトへの安全性は確認されている。

従って、食品や化粧品への添加、医薬として臨床開発される場合、その期間や費用を削減できる可能性が高い。(大阪市立大学 大学院理学研究科 准教授 藤田 憲一「薬剤耐性を抑制する薬剤」より引用)」[※7]

また、気軽に栽培できることもあり、民間レベルでの使用にも期待があります。上述の通り、研究次第で幅広く活用がされる可能性があるでしょう。

フェンネルを多く含む食べ物

フェンネルには観賞用のブロンズフェンネルと、野菜として栽培されるスイートフェンネルがあります。フェンネルの種を乾燥させたものを茴香と呼び、漢方薬としても用いられている植物です。

茴香には大茴香という八角と呼ばれるものもあります。八角は中国料理によく用いられている香辛料の一種で身近な食材といえます。小茴香がフェンネルと呼ばれるもので、アロマセラピーや食用ハーブなどにも使われています。

小茴香は薬用として用いられ、大茴香はスパイスとしての利用が多い傾向です。どちらも分類上違うものですが、アネトールが含まれている点は共通。さらに欧州で薬用に用いられるアニスという植物にも、アネトールは含まれており、同様の効果が期待されます。[※11]

相乗効果を発揮する成分

フェンネルを風邪対策として使うなら、ジャーマンカモミールと組み合わせることで相乗効果が期待できます。ジャーマンカモミールも薬用に活用されるハーブの一種で、風邪予防にも使われてきました。

このカモミールは、抗炎症作用があるカマズレン、アピゲニンを含んでおり、ドイツでは治療目的の使用が認可されているほどです。

ジャーマンカモミールは甘い香りがするハーブで、ハーブティーとしても飲むことができます。ただし、キク科の植物にアレルギーがある方は飲む量を少なめにしましょう。[※12]

フェンネルを更年期障害の対策として使うのであれば、ハーブをブレンドしたハーブティーの活用もよいでしょう。

ホップフラワーは落ち着かなさや不安感を解消するために使われています。セントジョーンズワートも、落ち着かなさや不安感に使われるハーブです。

動悸息切れを感じる方にはホーソン、汗が出て止まらない方にはセージが活用されています。[※13]

フェンネルに副作用はあるのか

フェンネルに含まれるアネトールには、弱い毒性があることが報告されています。同成分を利用した内服薬では、少ない例ですが便が緩くなるといった症状が確認されているため、過剰な摂取は控えましょう。[※14]

また妊婦、乳幼児も使用を控えるべき、とされています。