クローブの効果とその作用

クローブは漢方としても利用されるスパイスの一種です。鎮痛作用や局所麻酔作用が知られており、歯科治療にも用いられています。ここではクローブの効果や作用、摂取目安量などについて、科学的な根拠と一緒に紹介。クローブの研究報告や専門家の見解などもまとめて掲載しています。

クローブとはどのような成分か

クローブはフトモモ科チョウジノキのつぼみを乾燥させたスパイスの一種。別名丁子とも呼ばれ、漢方薬の素材として利用されています。麻酔や抗菌の作用が知られており、痛みの軽減や消毒に役立つ成分です。[※1]香りが強く、薬用以外にも料理や香油として用いられています。

生薬としてのクローブには、胃を温め、停滞しているものを動かす作用があります。そのため、香りを利用した健胃作用や食欲増進などの効果を得ることが可能。[※2]

クローブを使った漢方には丁香茯苓湯(ちょうこうぶくりょうとう)や丁香柿蔕湯(ちょうこうしていとう)などがあります。

クローブの効果・効能

クローブは次のような効果効能が知られています。

■鎮静作用・局所麻酔作用

クローブの鎮静作用・局所麻酔作用は広く知られており、クローブの主成分であるオイゲノールは歯痛・歯槽膿漏薬などに使用されています。また、歯が痛いときにクローブを噛むと、痛みが緩和されることがわかっています。[※1][※3] [※4]

■抗菌作用

クローブには抗菌作用があり、ハーブティーを摂取することで口内を清潔に保てます。マウスウォッシュとして使われることもあります。[※1][※3] [※4]

■健胃作用・消化促進

漢方薬やハーブティーにして飲むことで、健胃作用や消化促進の効果が期待できます。[※1][※2]

■消臭効果

ピリッとしたスパイスのフレーバーとバニラに似た甘い香りを合わせもつクローブは、料理や飲み物などに適量使うことで臭み消しの効果を得られます。[※1]

■体を温める効果

クローブをお茶や薬膳酒にして飲むことで、体を温める効果が期待できます。[※1]

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

クローブを摂取すると、香り成分であるオイゲノールによって、感覚神経の末端にあるTRPV1受容体が活性化されます。

TRPV1受容体は主に口腔内の感覚神経と温度、痛みにかかわっている物質で、辛味成分や温度の高い食べ物を摂取すると機能し始めます。[※5]

オイゲノールの香りによってTRPV1受容体が刺激されると、健胃作用・消化促進作用などが得られることがわかっています。

また、マウスの実験では歯科鎮痛剤に利用されているオイゲノールが、炎症反応の重要な要素であるサブスタンスPを反応から切り離すことがわかりました。[※6]

サブスタンスPを反応の部位から離すことで炎症および痛みを引き起こす反応が鈍くなり、鎮痛効果が得られると考えられています。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

クローブは歯科治療剤として使われている成分を含有する[※1][※3] [※4]ことから、虫歯を治療している人は一度試してみると良いと思います。

また冷え性の人、消化器系が弱い人、疲れ気味の人などに適しているスパイスです。料理の下ごしらえや飲み物に使い、積極的に摂取しましょう。

クローブの摂取目安量・上限摂取量

クローブ単体での摂取目安量はとくに定められていません。

ただしクローブから抽出した精油については、7ヶ月の男児に500mg/kg(ティースプーン 約1杯分)を与えた事例で、嘔吐や中枢神経の抑制などの症状が報告されています。[※7]

そのため、クローブ油を摂る場合は数滴に留めてください。

また、クローブに含まれるオイゲノールは1日の最大許容摂取量が5mg/kgとなっています。[※7]

クローブの80%はオイゲノールで構成されているため、クローブを2~3個食べるだけでオイゲノールの最大許容摂取量を超えてしまうおそれがあります。

そのため、クローブは直接摂取するのではなく、あくまで料理の香りづけなどに使うのが良いでしょう。

クローブのエビデンス(科学的根拠)

クローブは食品や漢方など幅広い用途で使われている成分で、多方面で研究が進められています。ここではクローブのエビデンスとして、効果について研究されたものをまとめました。

農林省食品総合研究所のHoque Md.M.らはシナモンとクローブをエタノールで抽出した液体を使い、21種類の食中毒菌に対する抗菌作用を調べています。

それぞれ濃度や温度などを変えて分析したところ、pH5.0で両方のハーブに、大腸菌やサルモネラ菌などへの抗菌効果が示されました。

別の食中毒菌であるL. monocytogenes(リステリア・モノサイトゲネス)菌には、pH7.0で最大の抗菌効果が得られることがわかっています。

また、Hoque Md.M.らは食中毒菌を加えた複数のひき肉にそれぞれシナモンとクローブを足し、細菌の増殖数を観察しました。

その結果、クローブを足したひき肉は1日で菌株を減少させたことがわかっています。この実験から、クローブの抗菌作用が明らかになりました。[※8]

駒沢女子短期大学教授の下橋淳子らは、粉末クローブとクローブのエッセンシャルオイルをハイリノール型(リノール酸含量が多い)サフラワー油にそれぞれ加えたものを対象に実験を行いました。35℃でどのくらい酸化するのかを測定し、抗酸化作用を調べています。さらに、粉末とエッセンシャルオイルを添加したサフラワー油を酢と2:1で混ぜ、油脂の酸化状態も測りました。

測定結果でクローブ粉末には抗酸化作用が見られませんでしたが、エッセンシャルオイルには明確な抗酸化効果が認められました。

また、酢を加えたエッセンシャルオイル+サフラワー油では酸化が見られなかったことから、酸化を早める成分を加えても、クローブの抗酸化作用は働くと考えられます。[※9]

八戸工業高等専門学校の斎藤孝之らが行った抽出実験では、液体の二酸化炭素で抽出したチョウジ(クローブ)油の成分を分析しました。加えて細胞に添加したときの紫外線照射で起こる遺伝的な毒性の抑制効果について実験しています。

実験の結果、チョウジ(クローブ)油は成分の変化を引き起こしにくく、しかも紫外線の細胞DNAを傷付ける作用を抑制するという結果がわかりました。

また、チョウジ(クローブ)油を添加した細胞の生存率が、チョウジ(クローブ)油を加えていない細胞より高いことも明らかになっています。

このことから、超臨界二酸化炭素によって抽出されたチョウジ(クローブ)油には、細胞のDNAが損傷することで起こる発がんを抑制する効果があるという結果が示唆されました。[※10]

クローブの歴史

クローブの歴史としてわかっているなかで、もっとも古い記録は中国の前漢時代に宮廷で長官達が工程との謁見時に用いたというものです。口内を清めるために口に含み、口臭の改善効果を得ていたことがわかっています。

その後はスパイスやハーブとして交易でやり取りされるようになり、日本に伝わりました。

現在は食品や生薬としてクローブが利用されることも増え、研究がどんどん進められています。

医療分野では、歯科治療にクローブが用いられています。歯科治療では、歯がミュータンス菌によって溶け始める「う蝕」を抑制するために使用。

消炎・鎮痛作用の強いクローブ配合の歯科用セメントを虫歯の部位に詰めることで、鎮痛効果を発揮します。[※11]その鎮痛効果の持続期間から、歯科治療の指標としても利用されています。

専門家の見解(監修者のコメント)

クローブは鎮痛・麻酔作用があることで知られています。その効果から歯科治療の現場で利用されており、歯科医師から肯定的なコメントもある成分です。

八千代歯科クリニックの千葉栄一先生は、クローブの効果についてこう述べています。

「1000年以上も前に、う蝕治療に最適な薬剤を見出し、う蝕に苦しむ患者をそれだけ多く救ってこられたということにもなろう」(「クローブ(ユージノール)の歴史/日本歯科医史学会会誌 第27巻第1号通巻102号 2007年」より引用)[※12]

「もしクローブが存在しなかったら、あるいは薬効を発見できなかったらと考えると恐ろしいものがある。」(「クローブ(ユージノール)の歴史/日本歯科医史学会会誌 第27巻第1号通巻102号 2007年」より引用)[※12]

クローブは虫歯の初期に起こるう蝕を抑える効果がある成分として、歯科治療のセメント剤に使われています。発見されたのが1000年以上前という点に驚きを感じます。

現在もさまざまな研究が進むクローブは、今後の研究報告や測定によってもっと多くの専門家から意見が出てくることが期待できます。

クローブの効果を効率良く得るには

クローブは丸ごと使用する場合とパウダー状で使用する場合では、使い方が異なります。

つぼみを丸ごと乾燥させたホールのクローブは、煮込み料理や肉料理などに利用。調理前の肉や野菜に刺しておくことで香りが付きやすくなります。

ただし食材に刺したままだとそのまま食べてしまう可能性があるので、料理した後は取り除きましょう。クローブは刺激性が強いスパイスなので、直接食べると過敏反応や炎症を起こす可能性があります。

パウダー状のものは、お菓子や肉料理との相性が良く、料理にそのまま混ぜて使えます。甘くスパイシーな香りなので、紅茶やチャイなどの飲み物に混ぜて飲むとおいしく摂取できます。毎日の食事に少しずつ摂り入れて、継続的に効果を得るのがおすすめです。

相乗効果を発揮する成分

クローブはほかのスパイスやエッセンスと一緒に使うことで、香りを高める相乗効果があります。[※1]シナモンやナツメグ、アニスなどとミックスすると、より良い香りを楽しめるでしょう。

クローブはバニラに似た香りをもつため、バニラエッセンスと合わせて焼き菓子に入れると香りがより高まります。ただし加えすぎると薬のような香りが強くなるため、使用量には注意が必要です。

クローブの副作用

クローブは乾燥したものを摂取する場合、ほとんどの人に安全だと考えられています。ただしクローブの過剰摂取には副作用の危険性があるため、クローブ本体を直接摂取することは厳禁です。

人によっては過敏反応や炎症が起こり、歯の組織を損傷させることもあります。また、呼吸困難や肺感染症などを引き起こす可能性がある[※13]ので、吸入するのは危険です。

手術前にクローブを摂取すると血が止まりにくくなるため、手術の2週間前から摂取を控えてください。

子どもや妊娠中の人への安全性は確立されていません。とくに子どもが摂取した場合は、けいれんや肝障害などの副作用を起こすことがあるため注意が必要です。[※7]

妊娠中の人は香りづけに使用する程度なら問題ありませんが、クローブが配合された医薬品の摂取は避けましょう。

注意すべき相互作用

クローブに含まれるオイゲノールには、血液の凝固を抑制する効果があると考えられています。そのため、血液凝固抑制薬を服用している人がクローブを摂取すると血液の凝固抑制作用が強まり、出血や紫斑が出やすくなる可能性があります。[※13]

アスピリンやクロピドグレルなどの抗血液凝固薬とは併用しないようにしてください。

参照・引用サイトおよび文献

  1. 『80のスパイス事典』(フレグランスジャーナル社 武政三男著 2001年発行)
  2. タケダ「チョウジ(丁子)の成分・特徴 生薬・漢方事典 | タケダ健康サイト」
  3. 伝統医薬データベース「丁子 生薬学術情報」
  4. 特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会「Medical Herb 26」【PDF】
  5. スパイスの化学受容と機能性(日本調理科学会誌 Vol. 46,No. 1,1~7 2013〔総説〕)【PDF】
  6. フェノール性歯髄鎮痛薬のサブスタンスPを中心とした作用機序(Jpn.J. Oral Biol.,36:49-59, 1994)【PDF】
  7. 公益財団法人日本中毒情報センター「オイゲノール」【PDF】
  8. シナモンとクローブ抽出物の食中毒菌・腐敗菌に対する抗菌活性およびこれらハーブ由来の製油を用いた鶏挽肉中の接種Listeria monocytogenesの不活化(食品総合研究所研究報告 72号, p9-21 2008-03)
  9. 茶葉、柑橘類、クローブ含有成分のハイリノール型サフラワー油に対する抗酸化効果(駒沢女子短期大学研究紀要 31, 37-47, 1998-03-03)
  10. チョウジ油の超臨界二酸化炭素による抽出とDNA修復効果(日本食品化学学会誌、Vel.10(1),4045 2003)【PDF】
  11. スワンデンタルクリニック「歯医者さんのニオイ 歯医者独特の消毒薬のニオイは何?」
  12. クローブ(ユージノール)の歴史(日本歯科医史学会会誌 第27巻第1号通巻102号 2007年)【PDF】
  13. 『健康食品・サプリメント〔成分〕のすべて―ナチュラルメディシン・データベース―』(一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター 2012年発行)