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コンドロイチンの効果とその作用

グルコサミンとともに関節の痛みをやわらげる成分として知られるコンドロイチン。水分をたくわえる性質を持ち、医薬品や食品添加物、化粧品など幅広く利用されています。ここでは、コンドロイチンの効果・効能についてまとめました。専門家の見解やエビデンス、副作用や相互作用などについても説明しています。

コンドロイチンとはどのような成分か

コンドロイチンとは生体内に含まれるプロテオグリカン(多糖類とたんぱく質が結合した物質)で、水分をたくわえる成分です。コンドロイチンとは略称で、正式にはコンドロイチン硫酸といいます。

コンドロイチンは体内の粘液に多く含まれており、軟骨や筋肉で物理的な刺激をやわらげる物質として作用する成分です。[※1]

そのため、コンドロイチンが不足すると軟骨や細胞組織から水分や弾力性がなくなり、関節炎や肌荒れなどを引き起こしやすくなるといわれています。

第3類医薬品として販売されているコンドロイチン硫酸は、関節痛・腰痛・五十肩を軽減する効能があります。

軟骨の主成分を占めることから、コンドロイチンにナトリウムを結合させた安定的な「コンドロイチン硫酸ナトリウム」が、注射や内服薬、外用薬として関節の治療に使われています。

そのほかにも骨の形成を助けたり動脈硬化や高血圧を予防したりするといわれ、サプリメントや化粧品などにも配合されていることが多い成分です。

ただし、軟骨成分の中でもコンドロイチンやグルコサミンの割合は少ないという研究が出ており、コンドロイチンを摂取しても関節炎が改善されるわけではないという否定的な意見もあります。

コンドロイチンは体内で作り出される成分ですが、年齢とともに生成量が減少していくことがわかっています。特に、中高年では体に必要な量の20分の1程度しか産生できないというデータもあります。

肌や軟骨の水分量を保持するためにも、十分な量のコンドロイチンを補わなくてはいけません。

コンドロイチンの効果・効能

コンドロイチンには以下の効果・効能が期待されています。[※2][※3][※4][※5][※6]

■関節炎の改善

経口摂取することで、変形性関節症や関節炎の症状を軽減できるといわれています。ただし臨床研究のデータは結果がバラバラであるため、ハッキリとした効能は明らかになっていません。

■関節の痛みをやわらげる

抗炎症薬と併用することで、変形性関節症が原因で起こる股関節および膝関節の痛みをやわらげる効果をサポートしてくれます。

■ドライアイの改善

コンドロイチンの化合物とヒアルロン酸ナトリウムを配合した点眼薬が、ドライアイ改善の薬として処方されています。

また、以下の症状に対して改善効果があるといわれていますが、科学的なデータは不十分です。[※3]

  • 心臓発作
  • その他の心疾患
  • 骨粗鬆症
  • 高コレステロール症

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

コンドロイチンの作用として、最も知られているのが関節痛の軽減です。

グルコサミンや炎症を抑える薬と併用することで、すり減った軟骨の成分を補い、摩擦を軽減して痛みをやわらげるといわれています。[※3]

ただし臨床データは研究によって結果が異なっており、確実に効果があるかはわかっていません。

また、長期間摂取することで骨の隙間が小さくなるのを防ぎ、変形性関節症を予防する効果が期待できます。研究によってこの効果は確認されていますが、劇的な効果を発揮するものではないことから、長期にわたり継続摂取する必要があるようです。

[※6]

コンドロイチンにはムコ多糖類として水分を保つはたらきがわかっており[※3]、ヒアルロン酸とともに目薬やクリームなどに保湿成分として配合されています。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

コンドロイチンは関節炎や関節痛を軽減する効果があることから、膝痛、関節痛、変形関節症の人が使うべき成分といえます。

点眼薬として利用されているため、ドライアイや白内障の術後処置にも適しています。

また、コレステロール値が気になる人や骨粗しょう症の予防がしたい人にも良いといわれていますが、科学的なデータは明らかになっていません。

コンドロイチンの摂取目安量・上限摂取量

コンドロイチンには、以下の摂取目安量が設定されています。[※3]

■変形性関節症の治療薬

1回200~400mgを2~3回摂取、または1000~1200mgを1日1回摂取します。

■再発性心筋梗塞の予防

1日10gを3回に分けて3か月摂取。その後、状態を維持するために1日1.5gを3回に分けて服用します。

また、コンドロイチン硫酸ナトリウムとしてビタミンB1製剤に配合される場合、一日の目安量は180mg、上限量は900mgとなっています。[※2]

コンドロイチンのエビデンス(科学的根拠)

コンドロイチンの効果を示すエビデンスとして、いくつかの研究報告があります。

明治薬科大学セルフメディケーション学講座所属の和田佳子らは、膝関節の関節症に関するコンドロイチン硫酸塩の有効性について、既存の研究からまとめています。

和田氏が調査した研究内容によると、コンドロイチンの研究はデータにばらつきがあったものの、1~3年の期間で摂取すると膝関節の隙間が狭くなるのを抑制していました。結果的に変形性関節症の予防につながることが示唆されています。 [※6]

ほかにも、新潟大学の杉山清佳准教授らは、脳内のコンドロイチン硫酸の量で神経回路の成長度が変化すると報告しています。

実験では脳内のコンドロイチン硫酸をわざと減らしたマウスと正常なマウスを使い、神経回路のはたらきを比較。

その結果、コンドロイチン硫酸をわざと減らしたマウスでは、脳のブレーキ機能ともいえる抑制系の神経細胞が成長しにくくなるという結果が得られました。抑制系の神経細胞が成長しないと神経回路がうまくつくれず、弱視や精神疾患になる可能性があります。

このことから、脳の正常な成長にはコンドロイチンがなくてはならない成分であることがわかります。[※4]

研究のきっかけ(歴史・背景)

コンドロイチンは、19世紀半ばに動物の軟骨が研究され始めたことをきっかけに発見された物質です。

研究の際に軟骨から発見されたため、ギリシャ語で「軟骨のもと」といわれるコンドロイチンと名付けられました。

コンドロイチンが実際に使用されるようになったのは1930年代後半。当時は抗潰瘍剤や片頭痛を止める薬として利用されていたことがわかっています。研究で化学構造が明らかになったのは1946年です。

日本では1950年代後半からコンドロイチンの抽出と精製を行っており、医薬品として利用されてきたようです。1980年代後半には関節炎の改善を期待して、健康食品の素材に使われることが多くなりました。

研究・臨床試験も多く実施されているため、医薬品・食品添加物として長い歴史を持っている成分だといえるでしょう。

現在もコンドロイチンの薬効について研究が進み、さまざまな報告が挙がっています。

専門家の見解(監修者のコメント)

コンドロイチンは効果の有無が議論されている成分で、臨床データもさまざまなものがあることから多くの専門家が異なる見解を述べています。

宮城大学食品機能研究学教授の西川正純氏は、コンドロイチンの効果について以下のようにまとめています。

「昨年、NIHが中心となって実施したコンドロイチン硫酸、グルコサミンの変形性関節症に対する1500人を超える大規模臨床試験(GAIT研究)の結果が論文として報告された」
「中等度以上の重症患者では、コンドロイチン硫酸とグルコサミン併用群がプラセボ(偽薬)群に比べ有意に鎮痛効果を認め、コンドロイチン硫酸の関節痛に対する有用性が改めて示された」
(ゼリア新薬「専門家に聞く - INTERVIEW No.7|Chondroitin Web:コンドロイチン情報」より引用)[※7]

コンドロイチン硫酸を用いた変形性関節症の試験結果では、中等度以上の患者がコンドロイチンとグルコサミンを併用すると、痛みが改善されることがわかっています。このことから、コンドロイチン硫酸は関節痛に有効ではないかと考えているようです。

しかし、一方でコンドロイチンは効果がないとする意見もあります。

武蔵国分寺公園クリニックの名郷直樹院長は、コンドロイチンの効果に否定的なコメントをしています。

「グルコサミン、コンドロイチンが軟骨の成分であるのは事実ですが、サプリメントとして経口摂取しても軟骨は再生しません。グルコサミンやコンドロイチンは、糖やアミノ酸からできており、体内に入ると分解される。それが、再びグルコサミンやコンドロイチンに再合成され、膝の軟骨になるとは考えづらい」
(講談社「ダマされるな! 飲んでも効かない「サプリ」一覧 えっ、あれも…?(週刊現代) | 現代ビジネス」より引用)[※8]

このように肯定的・否定的な意見が飛び交っているコンドロイチンですが、健康食品に使われていることもあり、一般的には効果のある成分とされています。

ただしコンドロイチンを含むサプリメントを摂るだけでは、関節痛や関節炎などの予防につながりません。

東京薬科大学の名誉教授を務める岡希太郎氏は、サプリメントの摂取以外にも大切なことがあると述べています。

「もう1つ大事なことは、膝関節に運動刺激を与えることで、軟骨合成の切っ掛けを作ってあげるということです」
「毎日続けて関節に刺激を与えていなければ、いくら栄養補給をしてみても、無駄に終わってしまいます。」
(クラフト株式会社「第19話 コンドロイチン硫酸/グルコサミン/MSM」より引用)[※9]

関節を健康に保つためには、栄養を摂るだけでなく刺激を与えるのが重要とのこと。使っていない部分は消費されないため、関節に刺激を与えて軟骨の合成を促す必要があるようです。

コンドロイチンは臨床試験によってその結果に差があるため、効果の実証がしきれていない部分もあります。しかし、摂取することで症状が改善された人がいることも事実。

ひざを動かす運動を継続しながら、効果があるかないか、自分で体感してみると良いでしょう。

コンドロイチンを効率よく摂取するには

コンドロイチンは主に動物の軟骨に含まれる成分で、フカヒレや山芋、オクラなど粘性のある食べ物に多く含まれています。

体内への吸収率は動物性の食品のほうが高いといわれていますが、フカヒレやうなぎ、ナマコなどを日常的に摂取するのは困難です。

効率よく必要量を摂取するためにはサプリメントなどを活用するのが一般的です。食事を変えることなく、コンドロイチンだけを補給することができます。

ネバネバした食べ物が苦手な人や食生活をできるだけ変えたくない人は、試してみると良いでしょう。

相乗効果を発揮する成分

コンドロイチンは関節痛や関節炎の症状をやわらげる成分として知られており、似た効果を持つグルコサミンを一緒に摂ることで相乗効果が得られると考えられています。

また、山田養蜂場の研究によると、コンドロイチンとグルコサミン、酵素分解したローヤルゼリーを併用することで、骨の形成が促されるという相乗効果が示唆されています。[※10]

コンドロイチンの副作用

一般的には安全だといわれていますが、体質によっては胃痛や悪心が起こる可能性もあります。まれに下痢や便秘、まぶたの腫れ、不整脈などの副作用が出ることもあるようです。[※3]

これらの症状が出た場合は服用を止め、すぐに病院を受診してください。

また、以下の病気を患っている人は、症状の悪化や副作用を引き起こすかもしれません。服用の際は注意が必要です。

  • 気管支喘息(症状を悪化させる懸念があります)
  • 前立腺がん(がん細胞の増殖・がんの再発を引き起こす可能性が示唆されています)

また、高齢者が使う場合は分解・代謝などの生理機能が低下していることも考え、使用量や回数を減らすことが求められます。

妊娠中・授乳中の人、小児の使用にかんしては十分なデータがないため、副作用のリスクを避けるためにも服用を控えてください。[※11]

サプリメントを飲む場合、副作用を引き起こしやすい成分を含んでいる製品もあるため、成分表示をきちんとチェックしたうえで購入するのが望ましいでしょう。

注意すべき相互作用

コンドロイチンとの相互作用が懸念される医薬品は、抗血栓薬であるワルファリンカリウムです。

ワルファリンカリウムは血液を固まりにくくする効果を持っている薬ですが、グルコサミンやコンドロイチンを摂取することで効果が高まったとの報告があります。[※3]

血液が固まりにくくなると出血や青あざ(内出血)を引き起こすため、ワルファリンカリウムを使用している人はコンドロイチンを摂取しないでください。

コンドロイチンと軟骨基質の関係

コンドロイチンはムコ多糖類と呼ばれる、糖類とたんぱく質が結合した物質の一種です。軟骨を構成する「軟骨基質」として、関節の健康にかかわっています。[※2]

軟骨基質はいくつか種類があり、中にはコンドロイチンと併用される成分や相乗効果を持つ成分もあります。
ここでは広く知られているグルコサミンやヒアルロン酸との関係をまとめました。[※2][※12]

■グルコサミン

グルコサミンは動物の皮膚や軟骨などに存在するアミノ糖(糖の一部がアミノ酸の構造に置き換わったもの)です。

関節をスムーズに動かす手助けや関節痛の改善に役立つ効果が期待されていて、似た効果を持つコンドロイチンと一緒に配合されることが多い成分です。

コンドロイチンと混同されがちですが、構造や含有する食品が異なるため、摂取するときには間違えないように注意しましょう。

■ヒアルロン酸

ヒアルロン酸とコンドロイチンは同じムコ多糖類で、真皮にあるコラーゲンの隙間に入り込み水分を保持しています。そのため、肌のうるおいを保つ効果が得られるのです。

ヒアルロン酸とコンドロイチンはどちらも保湿成分として、目薬や保湿クリームに配合されています。

さらにエイジングケア用のサプリメントとして、コンドロイチン・ヒアルロン酸・グルコサミンを配合した製品が売られているようです。

参照・引用サイトおよび文献

  1. マルハニチロ株式会社 中央研究所「コンドロイチン硫酸」
  2. 【PDF】独立行政法人国民生活センター「関節に良いとされる成分を含む『健康食品』」(2008年7月 p2)
  3. 田中平三ほか『健康食品・サプリメント[成分]のすべて 2017 ナチュラルメディシン・データベース』(株式会社同文書院 2017年1月発行 p418-419)
  4. 【PDF】新潟大学「《コンドロイチンが大脳の柔軟性を制御する》-脳内コンドロイチンによる神経回路の成長促進-」(新潟大学研究成果 2017年10月)
  5. 【PDF】ゼリア新薬「コンドロイチン硫酸ナトリウムの変形性膝関節症患者に対する臨床効果について」(日本関節病学会発表 2011年11月)
  6. 【PDF】和田佳子ほか「関節痛に対するコンドロイチンおよびグルコサミンの有効性」(日本地域薬局薬学会誌 Vol.3, No.2, p20-33 2015)
  7. ゼリア新薬「専門家に聞く–INTERVIEW No.7|Chondroitin Web:コンドロイチン情報」
  8. 講談社「ダマされるな! 飲んでも効かない「サプリ」一覧 えっ、あれも…?(週刊現代) | 現代ビジネス」
  9. クラフト株式会社「第19話 コンドロイチン硫酸/グルコサミン/MSM」
  10. 【PDF】みつばち健康科学研究所「グルコサミン、コンドロイチンと酵素分解ローヤルゼリーの併用で骨形成促進~組み合わせによる相乗効果を確認!~」(山田養蜂場プレスリリース 2014年8月)
  11. KEGG「医療用医薬品 : コンドロイチン」
  12. 新井佑朋著『登録販売者試験対策 必修ポイント450』(秀和システム 2010年発行 p85-87)