キャッツクローは、古くからアマゾンの先住民の間で万病に効く治療薬として利用されてきた植物です。
6種類のアルカロイド(植物由来の有機化合物)や抗炎症成分を含み、関節リウマチや関節炎の改善、免疫力の増強効果が期待できます。
ここでは、キャッツクローの効果効能や作用、歴史、研究データや副作用、相互座用などの情報をわかりやすく解説しています。
キャッツクローは、ペルー原産のつる性植物で最長30mほどに成長するハーブです。中南米の標高800mの高地にのみ自生しており、育つ本数も少なく貴重な植物でしたが、近年ペルーで栽培されるようになってきています。
葉の付け根にネコの爪のような形のトゲがあることから、キャッツクロー(ネコの爪)と呼ばれています。
キャッツクローの樹液は、インカ帝国の時代から消化器の病気やリウマチなどの治療薬として利用されてきました。
近年では、抗がん作用やHIVへの効果の研究が進み、キャッツクローのさまざまな病気に対する効果が実証されつつあります。
キャッツクローは、次のような効果効能があるといわれています。[※1]
■関節リウマチ、関節痛の改善
キャッツクローに含まれるアルカロイドが、関節リウマチや関節痛を和らげます。
■免疫力の増強
アルカロイドが免疫のはたらきを活性化し、免疫力を高めるといわれています。
■抗炎症作用
アルカロイドが免疫機能のバランスを整えることで、炎症を抑える効果が得られます。さらに、植物ステロール(植物ホルモンの一種)やキノビック酸グルシドという成分にも炎症を抑えるはたらきがあり、抗炎症作用が期待できます。[※1]
そのほかにも、アルカロイドの持つ免疫の活性化作用・免疫バランスの調整により、次のような効果が期待できます。
キャッツクローには6種類のアルカロイド(イソテロポディン、ミトラフィリン、リンコフィリン、テロポディン、イソリンコフィン、イソミトラフィリン)が含まれています。[※1]
免疫システムは、細菌やウイルス、がん細胞などから体を守るためのしくみです。免疫のバランスが崩れると、アレルギー症状や生活習慣病、がんなどさまざまな病気を引き起こします。
キャッツクローに含まれるアルカロイドが免疫組織を刺激すると免疫機能が活性化され、体内に侵入してきた細菌やウイルスなどを排除します。また、これらのアルカロイドが相互に作用することで、免疫機能のバランスを整え、偏った免疫反応をもとに戻すはたらきもあります。
免疫力が強化されることで、風邪などの感染症から体を守ることができます。
ほかにも関節リウマチのような免疫異常が原因で起こる炎症や痛みを抑えることが可能です。[※1]
キャッツクローは、リウマチや関節炎で悩んでいる人の痛みを緩和してくれる可能性がありますので、そのような悩みを抱えている人は試してみるとよいでしょう。
また、キャッツクローを摂ることで、免疫力アップが期待できます。そのため毎日を健康に過ごしたい人やウイルスに負けない体づくりをしたい人におすすめの植物といえるでしょう。
加えてキャッツクローに含まれるアルカロイドには、血圧を下げるはたらきがあります。血圧が高めの人、生活習慣病が気になる人もキャッツクローを摂るとよいでしょう。
キャッツクローは、エキスやフリーズドライエキスとして摂取します。用法用量は、次のとおりです。
■関節炎
キャッツクローフリーズドライエキスを1日当たり100mg摂取します。
■関節リウマチ
四環系(注1)オキシインドールアルカロイドという化学物質を含んでいないキャッツクローエキス20mgを1日3回摂取します。[※1] [※2]
(注1)四環系オキシインドールアルカロイドは、もともとキャッツクローに含まれている成分ですが、関節リウマチに効くほかの成分のはたらきを弱くすると考えられています。
ひざの関節炎に対するキャッツクローの有効性と安全性について、ペルーのサン・マルコス大学医学部のPiscoya J教授らは次のような研究結果を発表しています。
ひざ関節炎の患者45人を対象に、キャッツクローの乾燥物と偽薬を飲むグループに分けて摂取してもらい、効果を調べました。
患者のうち30人にキャッツクローの乾燥物を、15人に偽薬を、それぞれ1日あたり100mgを4週間摂取してもらいました。
その結果、偽薬を摂取したグループに比べ、キャッツクローの乾燥物を摂取したグループでは、ひざを動かしたときの痛みが緩和されたことがわかりました。これらの効果は、すべてキャッツクローを摂取してから1週間以内にあらわれています。
しかし、動かしたときの痛みは緩和されましたが、安静時や夜間の痛みについてはあまり変化が見られませんでした。この結果から、キャッツクローは骨関節炎の治療に一定の効果があると示されました。[※3]
キャッツクローを皮膚に塗って使用した場合の抗腫瘍効果については、鈴鹿医療科学大学保健衛生学部の山下剛範教授と純真学園大学保健医療学部の具然和教授が、次のような研究結果を発表しています。
背中に発がん剤を塗り、がんを発生させたマウスを以下の3つのグループに分けて研究を行いました。
※マウスは各グループ10匹ずつ
3グループともキャッツクローを塗ってから 1週間後にさらに発がん剤0.2ml、キャッツクローを溶かした水15mgを週2回23週間塗って効果を調べました。
この結果、Aグループのマウスは11週目からがんを発症し、16週目にはCグループのマウスと比較して約15倍のがんが発症しているという結果が出ています。
また、Cグループのマウスはがんの発症率が低く、最もがんの発症率が下がっていることがわかりました。また、腫瘍の発生を抑えるメカニズムを調べるため、23週目のマウスの皮膚を調べました。
マウスの皮膚のMDAレベル(脂質が酸化することで作られる物質マロンジアルデヒドがどれくらいあるか)を調べ、酸化によって細胞が傷つけられた度合いを測定しました。この結果、CグループのMDAレベルがAグルーブの約半分となり、細胞の酸化が進んでいないことがわかりました。また、Bグループと比べてもCグループのほうが酸化が少なく、抗酸化効果と腫瘍の発生を抑える効果が関連していることがわかりました。
このことから、キャッツクローには腫瘍の発生を抑える効果があり、さらにキャッツクローの持つ抗酸化作用ががんの抑制に影響を与えたことが示されました。[※4]
キャッツクローは、インカ文明の時代からアマゾンの熱帯雨林に暮らす先住民の間で、リウマチや胃腸の病気、月経不順などの治療薬として利用されてきました。
約2000年もの間、中南米で利用されてきたキャッツクローが、欧米諸国に紹介されたのは1960年代のこと。ヨーロッパやアメリカの大学教授らは、キャッツクローの伝統的な使い方を記録・収集し、有効成分の調査をはじめました。
1980年代には、オーストリアの民俗学者の研究によって、キャッツクローの持つアルカロイドの抽出方法と免疫を強化する作用に関する特許が取得されることとなり、世界に注目されるようになりました。
その後、1994年にWHOが副作用なく炎症を抑える効果があるハーブとして認め、キャッツクロー効果が世界中で認められました。[※1]
ところが、世界中でキャッツクローの人気が出たことにより、ペルー産のキャッツクローの伐採が進み、自生するキャッツクローが激減しました。
当時のペルー大統領フジモリ氏は、1995年に「キャッツクロー保護法」を定め、キャッツクローを植栽する事業を行いました。このプロジェクトは「フジモリ計画」と呼ばれ、キャッツクローの育成法が研究開発されたことにより、栽培が進んでいきました。[※1]
現在では、がんやアルツハイマー病に関する新しい研究への取り組みや、関節リウマチへの効果の大規模な試験などが実施され、今後さらにこの分野で研究が進むことが期待されています。[※5]
キャッツクローの持つアルカロイドについて、聖マリアンナ医科大学難病治療研究センターの檜垣惠 助教授は、次のように説明しています。
「キャッツクローに含まれるアルカロイドには、イソテロポディンのように免疫力増強作用を持つものもあります。(中略)免疫というのはバランスが大切なのです。免疫反応が弱くなるとウイルスや細菌にやられてしまうし、逆に強すぎるとアレルギーやリウマチといった病気になってしまいます。
これらアルカロイドには弱まった免疫を増強し、過剰になった免疫を抑制する免疫調整作用があると考えられます」
(講談社『医療従事者のための[完全版]機能性食品ガイド』より引用)[※1]
また、関節リウマチへの効果について次のように解説しています。
「特にリウマチの場合は、関節のマクロファージが抗原をうまく食べられないために炎症が引き延ばされてしまうのです。(中略)マクロファージの機能を強化して消化不良を起こさせなければ、炎症を早く終息させることができるのですね。
このように、キャッツクローには生体内の免疫のバランスを調節する役割があるようです。偏った免疫反応をもとに戻してやるという意味では、マイルドに作用する健康食品がいいのかもしれません。薬ではどうしても偏った強い作用が出る場合もありますからね」
(講談社『医療従事者のための[完全版]機能性食品ガイド』より引用)[※1]
※マクロファージとは、免疫細胞のひとつで、体内の細菌やウィルス、死んだ細胞などを食べてきれいにしてくれるはたらきを持っています。
薬は症状を抑えるためには効果的ですが、体質改善にはサプリやハーブティーも有効活用すべきであると考えて良さそうです。
さらに、今後の研究について次のようにコメントしています。
「日本で使える抗リウマチ薬は種類が限られていますし、効果があるといわれている新しい生物学的製剤は高価です。ですから、キャッツクローをはじめとする植物のアルカロイドの中から、抗リウマチ効果があるものを探していきたいですね」
(講談社『医療従事者のための[完全版]機能性食品ガイド』より引用)[※1]
さらに研究が進み、リウマチや関節痛に悩む人の生活の質が向上していくことが期待されています。
キャッツクローは、ハーブティーで摂ることで、効率よく成分を摂取できます。ハーブをブレンドして楽しむレシピを紹介します。
■キャッツクローのハーブティー(1人分)免疫力アップに
<作り方>
関節炎やリウマチの改善に用いるときは、グルコサミン、コンドロイチン硫酸と同時に摂ると効果的です。[※1]
グルコサミンは、軟骨をつくる成分を補い、関節の動きをサポートして痛みを抑えます。
コンドロイチン硫酸は、関節の潤滑油のはたらきをするプロテオグリカンという成分の分解を抑えます。
これらの成分と一緒に摂ることで、関節の痛みや動きを改善し、関節炎やリウマチの解消に効果を発揮するとされています。
適切な量を短期間摂取する場合、副作用はほとんど報告されていません。ただし多量に摂ることで、頭痛やめまい、吐き気などが起こる可能性があります。 [※3]
中南米では古くから利用されてきたキャッツクローですが、日本では食経験があまりないハーブです。体質によっては合わない場合がありますので、摂りすぎることがないよう用法用量を守って使用しましょう。
また、次のような人は摂取を避けたほうがよいとされています。
■妊娠中や授乳中の人、3歳以下の子ども
かつて避妊薬として使われていたことから、妊娠中の人は摂取を避けましょう。また、十分な研究データがない授乳中の人や子どもは摂取は控えたほうがよいでしょう。
■免疫系の疾患を持つ人
キャッツクローは免疫系を刺激する可能性があるため、全身性エリテマトーデス(SLE)など、免疫系の疾患を持つ人は必ず医師に相談をしてください。
■白血病治療中の人
キャッツクローの成分が疾患を重くすることがあるため、摂取を避けたほうがよいでしょう。[※2]
■手術を受ける前
手術中の血圧コントロールを妨げる可能性があるので、手術前2週間は摂らないようにしましょう。[※2]
キャッツクローと併用することで相互作用が起こる可能性がある以下のような医薬品を服用している人は、医師に相談してからキャッツクローを摂りましょう。
■降圧剤を服用している人
キャッツクローを摂ると血圧を下げるため、降圧剤を飲んでいる人は低血圧を起こすおそれがあります。
■肝臓で代謝される薬を服用している人
キャッツクローは、肝臓の代謝機能を弱め、薬の作用や副作用を強くする可能性があります。
抗凝固薬、抗血小板薬を服用している人
キャッツクローは、血液が固まるのを抑える可能性があり、人によっては紫斑(内出血によるあざ)や出血が多くなります。