名前から探す

カルダモンの効果とその作用

「世界で最も古いスパイス」や「スパイスの女王」と呼ばれるカルダモン。レモンに似た柑橘系の複雑でスパイシーな香りが特徴です。紀元前から人々の暮らしと共にあったといいます。スパイスとしてだけではなく、薬としても用いられてきました。そんなカルダモンの、効果効能や作用のメカニズム、副作用などについて解説します。

カルダモンとはどのような植物か

カルダモンはショウガ科の多年草で、和名はショウズク(小荳蒄)といいます。高さ2~3mほどに育ち、実がなるまで4~5年もかかる植物です。長い時間や手間がかかることから、高級なスパイスとしても知られています。

果実の中には黒色の種が20個ほど入っており、乾燥させてスパイスとして使うほか、果実部分を生薬として使用することもあります。

原産国はインド・スリランカ・マレー半島と広く、それぞれ品種が異なっているため、マイソール・マラバール・セイロンと品種名で呼び分けたり、ブラック・グリーン・ホワイト・ミックスと加工の工程で変わる種子の色で呼び分けたりしています。

カルダモンは、スパイスとして肉の臭み消しに使われるほか、お菓子やパンに混ぜたり、ハーブティーとして飲まれたりしてきました。[※1]精油はアロマや香水などに利用されています。

ショウズクとして日本薬局方に収録されており、[※2]「香砂養胃湯」という胃弱や食欲不振に効くとされる漢方薬に使われています。

カルダモンの効果・効能

カルダモンは種がスパイス、果実が生薬、精油がアロマやチンキなどに使われます。

■消化促進や駆風作用

唾液や胃液を分泌させ、消化を促進します。薬として、健胃作用や腸内ガスが溜まるのを予防する効果もあるとされていますが、科学的なデータは不十分です。[※3]

■口臭予防

カルダモンに含まれるシネオールが作用し、アルコール臭を消してくれます。北欧では、お酒を飲んだ後にカルダモンの実を噛んで、口臭ケアをする風習があるようです。

■リラックス効果

カルダモンの香りは、気持ちの高ぶりや生理前のイライラを鎮めてリラックスさせてくれます。緊張をほぐす効果で疲労回復にもつながるとされています。

■抗炎症作用

体内の免疫を活性化させるため、炎症を抑える効果があるとされています。[※5]抗炎症作用により胃潰瘍の予防に役立つと考えられています。[※4]

■利尿作用

カルダモンの香りには利尿作用があるため、むくみ解消につながります。[※6]

■体温調節

暑いときには発汗を促して体温を下げ、寒いときには血流を促進して体温を上げる働きがあります。[※7]

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

カルダモンは生薬のショウズクとして、漢方薬に用いられます。以下に生薬としてのショウズクについて解説していきます。

ショウズクはカルダモンの果実を乾燥させたもの。このカルダモンをチンキ剤(生薬やハーブをエタノールなどに浸して作る液状の薬)にして、芳香性健胃薬として使用します。健胃薬とは、胃の機能を健全化させる薬のことで、慢性的な消化不良や食欲不振などに用いられるものです。

またショウズクは「香砂養胃湯(こうしゃよういとう)」という漢方薬の材料のひとつでもあります。香砂養胃湯はショウズク同様、健胃作用があります。

カルダモンには下記のような成分が含まれています。[※9]それぞれの成分がもつ作用についてもまとめました。

■シネオール

食品添加物としても認められている成分です。シネオールには消臭作用や[※10]抗炎症作用などがあるため、カルダモンは口臭予防や炎症抑制などの効果が期待できます。

■α-テルピニルアセテート(アルファ-酢酸テルピニル)

テルピニルアセテートは胃液分泌の抑制し、胆汁分泌を促進する作用があり、消化を助けてくれます。[※11]

■リモネン

カルダモンに含まれる芳香成分です。マウスを使った実験で睡眠作用があったことから、安眠効果が期待されています。[※12]

■サビネン

コショウにも含まれる辛味成分のひとつ。カルダモンのピリッとくる辛さはサビネンによるものです。抗炎症作用や抗ウイルス、鎮静作用があるとされています。[※13]

■ボルネオール(竜脳、ボルネオショウノウ)

抗ウイルスや殺菌作用があると考えられている成分です。免役調整の作用もあります。[※13]フタバガキ科の竜脳樹(リュウノウジュ)という常緑大高木から採取した樹液(ボルネオールを含む)は、古くは頭痛や眼病、歯痛の薬として利用されていました。

■カンファー

クスノキにも含まれる芳香成分。別名は樟脳(しょうのう)です。カンファーはかつて強心剤として使われていましたが、現代では血流促進や消炎鎮痛作用のある成分として用いられています。

「事業発展のカンフル剤に・・・」などという表現のカンフルは、このカンファーが由来ともいわれています。弱った体を復活させるという作用を比喩的に表現したものという説が有力です。[※13]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

効果効能[※3][※4][※5][※6][※7]から、カルダモンは下記のような症状や悩みがある人におすすめです。

  • 胃の調子が悪い人
  • 口臭予防をしたい人
  • 体の調子を整えたい人
  • リラックスしたい人

カルダモンの摂取目安量・上限摂取量

カルダモンには、国によって定められた上限や目安量はありません。スパイシーな香りが特徴の刺激が強いスパイスなので、摂取する際は一度に大量に摂取しないようにしましょう。

生薬の場合は医師や薬剤師の指示にしたがって、処方どおりに服用するようにしましょう。

カルダモンのエビデンス(科学的根拠)

インドのニューデリーで、ラットを人工的に胃潰瘍にして行われた実験では、アスピリンおよびエタノール誘発胃潰瘍のラットにカルダモンを摂取させたところ、症状が緩和。このことから、カルダモンには、抗炎症作用や胃潰瘍の予防効果があるとされています。[※14]

また、森永製菓株式会社研究所の橋爪秀一氏らによる研究では、カルダモンの成分をでんぷんペーストに混ぜ、ストレス改善効果を確かめた実験が実施されました。水を摂取した場合との差を検証しています。

抹茶あるいはカルダモンを摂取した場合に、瞳孔ストレス強度判定において有意差がみられました。さらに、キャンディーにカルダモンを練りこんで摂取した場合にも、有意差がみられたことから、ストレス改善効果が期待できます。[※15]

九州大学大学院の川端二功助教授らによって、カルダモンに含まれるシネオールに体温調節作用があるという研究結果が報告されました。熱い温度を感知する受容体(TRPV1)や冷たい温度を感知する受容体(TRPM8、TRPA1)が、スパイスによって活性化することで起こる作用だとされています。[※7]

シャルジャアメリカン大学芸術学部生物学科で、黒コショウとカルダモンの免疫調整効果について調べた研究があります。両者の水生抽出物を使った実験です。

両者はヘルパーT細胞である、ウイルスや細菌に対応するTh1細胞やアレルゲンに反応するTh2細胞の働きを、活性または抑制する作用がみられました。また、同実験では免疫細胞のマクロファージの働きを活性化・抑制する作用も確認されました。

このことから、カルダモンには免疫調整や抗腫瘍作用があり、がん治療に活かせる可能性があるとされています。[※16]

カルダモンの歴史

カルダモンは、キリストの生まれる紀元前から使用されてきたスパイス。原産国はインドやスリランカ、マレー半島です。古代エジプトでは「聖なる香煙」として神殿で炊かれ、バビロニア王国の庭園で栽培されていたともいわれています。

実がなるまで4~5年かかり栽培も容易でないことから、高級なスパイスとして珍重されていました。

現在カルダモンは、カレーパウダーやガラムマサラ、プディング、アイスクリーム、チャイなどさまざまな料理やデザートなどに使われています。

アラブ諸国では客人をもてなすためにカルダモンコーヒーを淹れ、スカンジナビア諸国ではパンケーキの生地にカルダモンを練りこんで焼き上げます。[※17]

北欧諸国では、バイキングがカルダモンを持ち帰ったことから、広く使われるようになりました。パンやお菓子の風味づけに使われ、クリスマスシーズンには町中がカルダモンの香りに包まれるそうです。

専門家の見解(監修者のコメント)

テレビやラジオで活躍中のスパイスライフアドバイザー大平美弥氏は、カルダモンについて以下のように述べています。

「カルダモンの効果についてお話しすると・・・。
医薬として芳香性健胃、駆風剤に用いられています。強い矯臭力もあるので、口腔清涼剤にも用いられます。体温を下げる効果もあります。これは夏の暑い日に特に必要です。カルダモンの油にはシナオールという成分多く含まれているため、防腐効果があるとも言われています!という事は、朝にもってこいです!!」
[スパイスライフアドバイザー大平美弥の「みやぞう天国」 【掲載いたしました!】朝バナナ&カルダモンドリンク より引用][※18]

ハーブの効果効能については、歴史的に使用されてきた実績はあれど、科学的根拠が明確でないものもあります。しかし、アロマセラピストとして活動している人だからこそ、その効果をより実感しているのかもしれません。

カルダモンの香りについて、アロマセラピストの服部仁美氏は以下のように語っています。

「とても強い香りがあるため、香り成分による効果・効能が得られやすく、カルダモンの精油には内面の強さを必要としている時や、心と身体を温めたいときに、肉体的にも精神的にも強くなりたいときにオススメの香りです」
[FELICE 最古のスパイス「カルダモン」って?知っておきたい効果・効能とその使い方 より引用][※19]

アロマとしてカルダモンを取り入れてみたい人は、どんな時に使用したらよいかの参考にしてください。香りが強すぎる場合は、別の精油とブレンドすると良いでしょう。

カルダモンを摂取するには

カルダモンはスパイスとして食べて摂り入れるだけでなく、アロマとして香りを摂り入れることも可能です。

カルダモンはカレー料理や肉料理、ケーキやパン、ドリンクのフレーバーなど幅広く利用されており、比較的摂取しやすいスパイスです。

「砂糖1カップ」と「カルダモン小さじ1」の割合で混ぜるだけでつくれるカルダモンシュガーは、いろいろな用途で使えます。[※9]

お菓子やドリンクに振りかけたり、混ぜたりするだけで手軽にカルダモンを摂取できます。インスタントコーヒーにカルダモンシュガーを入れれば、カルダモンコーヒーを楽しめます。

また、芳香成分だけを取り入れることも可能です。アロマテラピーでカルダモンの香りを楽しむには、精油を購入しましょう。熱い湯に精油を1~2滴たらして蒸気を吸い込む芳香浴、アロマポットやディフューザーを使って香りを楽しみます。

一緒に摂りたいハーブ・精油

カルダモンは独特の風味がある植物。ハーブティーにするなら複数のハーブと合わせると飲みやすくなります。

消化促進効果を目的とするなら、カルダモンにシナモンとフェンネルを合わせると良いでしょう。

疲労回復を目的とするなら、カルダモンにシナモンとハイビスカスをブレンドするのがおすすめです。

カルダモンと相性が良いとされる精油は以下の通り。香りをブレンドすることで、さまざまな相乗効果が期待できます。[※6]

■コリアンダー

アドレナリンの分泌を促し集中力を高めてくれます。また、健胃作用があります。

■ジュニパー・ベリー

利尿作用が高いのが特徴。分娩促進の効果もあるため、妊娠中の使用は控えましょう。

■ゼラニウム・ブルボン

不安の解消や、むくみ・更年期障害に良いとされる香りです。

■パイン

気持ちをリフレッシュさせてくれる香りです。呼吸器系に作用し、鼻づまりや息切れを改善してくれます。

■マートル

イライラを抑えてくれます。肺の不調和や鎮静作用による安眠効果が期待できる香りです。

■レモン

循環器系の機能を活性化させるほか、気持ちを落ち着ける作用があります。

■ローズウッド

気持ちを穏やかにしてくれます。また、免疫力向上の作用が期待できる香りです。

カルダモンに副作用はあるのか

カルダモンの安全性に関しては、科学的なデータが不十分な状態です。しかし、過剰に摂取したり体調に合わないまま使い続けたりしない限り、大きな問題はないとされています。

ただし、胆石のある人、妊娠中・授乳中の人はカルダモンの摂取を控えましょう。

アレルギー体質、または服用中の薬がある場合は、医師に相談したうえでカルダモンを摂り入れてください。[※3]

ショウズク(カルダモンの果実を使った生薬)を使用した漢方薬の香砂養胃湯には、以下の禁忌があります。[※20]

  • アルドステロン症
  • 低カリウム血症
  • ミオパシー

注意すべき相互作用

『メディカルハーブ安全性ハンドブック第2版』(東京堂出版刊)によれば、カルダモンの安全性は以下のようになっています。[※21]

  • 安全性クラス : 1
    適切に使用した場合、安全だとされています。
  • 相互作用クラス: A
    臨床データが足りないため、思わぬ相互作用が起こるかもしれません。

参照・引用サイトおよび文献

  1. 日経Goodey 「カルダモン」
  2. 第十七改正日本薬局方 「 通則~医薬品各条(生薬等) ショウズク」(厚生労働省 通則~医薬品各条(生薬等) ショウズク p1828-1829)【PDF】
  3. 「健康食品・サプリメント成[成分]すべて ナチュラルメディシン・データベース」 (一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター編 同院書院 2012年10月 p170「カルダモン」)
  4. Jamal A, Javed K, Aslam M, Jafri MA. Gastroprotective effect of cardamom, Elettaria cardamomum Maton. fruits in rats. J Ethnopharmacol. 2006 Jan 16;103(2):149-53. Epub 2005 Nov 17. PubMed PMID: 16298093.
  5. Majdalawieh AF, Carr RI. In vitro investigation of the potential immunomodulatory and anti-cancer activities of black pepper (Piper nigrum) and cardamom (Elettaria cardamomum). J Med Food. 2010 Apr;13(2):371-81. doi: 10.1089/jmf.2009.1131. PubMed PMID: 20210607.
  6. アロマテラピーのきほん事典 カルダモン(西東社 2010年04月 52p)
  7. 日本調理科学会誌 スパイスの化学受容と機能性 川端二功 「4) スパイスによる体温調節作用」【PDF】
  8. 漢方薬のきぐすり.com 「漢方薬・生薬大辞典 小豆蔲」
  9. 80のスパイス辞典 「14 カルダモン」 (フレグランス ジャーナル社 2001年6月10日 p38-39)
  10. 大迫政浩,西田耕之助 「芳香系消臭剤の感覚的消臭機構に関する研究 芳香成分の中和・相殺効果およびマスキング効果:芳香成分の中和・相殺効果およびマスキング効果」 NAID:130003870585
  11. 養命酒 元気通信 「生薬百選 78 小豆蔲(ショウズク)」
  12. do Vale TG, Furtado EC, Santos JG Jr, Viana GS. Central effects of citral,myrcene and limonene, constituents of essential oil chemotypes from Lippia alba(Mill.) n.e. Brown. Phytomedicine. 2002 Dec;9(8):709-14. PubMed PMID: 12587690.
  13. きほんのアロマテラピー(主婦の友社 2016年 p56-57)
  14. Jamal A, Javed K, Aslam M, Jafri MA. Gastroprotective effect of cardamom, Elettaria cardamomum Maton. fruits in rats. J Ethnopharmacol. 2006 Jan 16;103(2):149-53. Epub 2005 Nov 17. PubMed PMID: 16298093.
  15. 橋爪 秀一「食品素材のストレス改善効果(第29回生命情報科学シンポジウム)Journal of International Society of Life Information Science 13419226 国際生命情報科学会」 NAID:110007612619
  16. Majdalawieh AF, Carr RI. In vitro investigation of the potential immunomodulatory and anti-cancer activities of black pepper (Piper nigrum) and cardamom (Elettaria cardamomum). J Med Food. 2010 Apr;13(2):371-81. doi:10.1089/jmf.2009.1131. PubMed PMID: 20210607.
  17. 世界で使われる256 ハーブ&スパイス事典 「カルダモン」 (誠文堂新光社 2013年12月23日 p43)
  18. スパイスライフアドバイザー大平美弥の「みやぞう天国 「【掲載いたしました!】朝バナナ&カルダモンドリンク」
  19. FELICE 「最古のスパイス「カルダモン」って?知っておきたい効果・効能とその使い方」
  20. 漢方ライフ 漢方薬辞典 「香砂養胃湯」
  21. メディカルハーブ安全性ハンドブック 第2版 (東京堂出版 2016年3月23)