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- 日本未病システム学会 会長 福生 吉裕 先生
第20回 日本未病システム学会会長、(財)博慈会老人病研究所 所長、日本医科大学 連携教授。1971年 日本医科大学医学部卒業。1978年 微生物免疫学にて医学博士号修得。専門領域は動脈硬化、高脂血症、膠原病、老人の臨床など。近年は未病と抗老化の研究でも実績を重ねる。「自分の身体は自分で守る」という自己管理の重要性、高齢社会における健康安心システムの維持や持続法を提唱する。
「未病」という言葉が一般的に使用されるずっと前から「未病」の重要性を訴え続けてきた福生先生。自分が自分の身体の未病の医者になること、一人ひとりがちょっとした努力を継続しながら国民皆保険制度という世界に誇れるシステムを継続させ次の世代に引き継ぐことの重要性を語る。
今年の4月に日本人間ドッグ学会と健康保険組合連合会が発表した
「基準値」の差異が話題です。どう理解すれば良いでしょうか?
これまで高血圧学会、糖尿病学会、動脈硬化学会、メタボ健診指標が提唱してきた基準値と、今回人間ドック学会が独自調査した数値の間に相違が生じたのですから、確かに大変な話題です。人間ドッグ学会が発表した数値 は150万人の受診者から何ら異常が出ず、薬も飲まず本人も自覚症状もなく健康と感じているスーパー健康人1万人を抽出し、検査を行った身体数値の結果です。今回数値に齟齬が生じた理由は「病気が発症する可能性が高まる」という起点を基準値の指標にするか、「何ら自覚症状もなく健康を謳歌する状態も検討するか」の違いが出たといえます。
具体的にはどういうことでしょうか?
そしてこの基準値の「差異」は何を指しているのですか?
つまり「病気が発症してくる起点値」なのか、「元気で健康でいられる値」を示したのか。アプローチの違いで生じてきた齟齬なのです。これらの学会のどちらも「健康」か「病気」かの二つの概念しか念頭には無かったのではないでしょうか。「健康」と「病気」は繫がっていますし、その間には「未病」の領域が存在することを認識すればこれらの齟齬は解消します。
未病とは本人の自覚症状はなくても検査をすればなんらかの異常が見つかり、病気が発症する前段階の状態を指しますが、これまで未病は数値としてはっきりしないところがありました。しかしこの「人間ドック学会のいう基準値とメタボ健診基準の差」こそ、未病の値です。血圧でいえば上の値が129・47の間が「未病の値」です。未病の見える化ですね。
では発表された基準値に安心はできないということですか?
これまで血圧の上の値が129程度でなんらかの治療をされていた方であっても、147という数値にはほど遠いから安心、治療をやめてしまおうという考え方は間違っています。引き続き未病の状態に変わりないのですから、現状維持または改善に務める必要があります。私は今回の件のおかげで、むしろこれまで曖昧であった「未病」さえ数値化され、はっきりと未病の方があぶりだされたことがとても良かったと思っているのです。血圧以外でも基準値に「差異」が生じましたが、この辺りにいる方は皆さん「未病状態」です。それがはっきりしたのです。
未病状態の方は具体的に何をすれば良いでしょう?
まさにこの未病状態にいる方こそ「予防医療」や「補完代替医療」が適した方々です。鍼灸、マッサージ療法、運動療法、心理療法、食事療法やもちろんサプリメントなども含まれるでしょう。
血圧、BMI、コレステロール……低すぎても高すぎても危険で、中庸を保ち続ける必要があります。それにはセルフコントロールが必要です。近年はICT(情報通信技術)の進化で、リストバンドで血圧や心拍数を確認できますし、心拍・心電図を測れるシャツなども登場しています。これらは自分を客観的に数値化するのに役立ちます。
なるほど。他にもできることはありますか?
自分1人で自分を律し続けることは容易ではありません。神奈川県は「未病を治す神奈川宣言」を発表し、行政で未病治療に取り組みはじめています。こういった活動に積極的に参加すればモチベーションが維持しやすいでしょうし、このような事例が各地で増えることが望ましいです。一番簡単なのは「笑うこと」でしょう。笑いは健康の一丁目一番地。楽しいから笑うというだけでなく、積極的に笑う、攻めの笑いをすることで自律神経、血圧、血糖とあらゆる方向で健康効果を発揮します。日本人の誇りの1つに国民皆保険制度がありますが、世界に誇れるこの優れた制度を和食に続く世界無形文化遺産にできればと私は考えています。この誇りと制度を後世に引き継いでいく意識も大切です。
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