順天堂大学大学院 白澤 卓二先生

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アンチエイジングのオピニオンリーダー

順天堂大学大学院 加齢制御医学講座 白澤 卓二 先生

経歴

1958年生まれ。順天堂大学大学院 加齢制御医学講座教授。医学博士。日本抗加齢医学会理事。千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局し、同大学大学院医学研究科修了。東京老人総合研究所の老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダーを経て現職。専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝学、アルツハイマー病の分子生物学、アスリートの遺伝子研究。

インタビュー

数々のベストセラーを発表しメディアでも大活躍の白澤先生。健康で長生きするために特別に難しいことをする必要はなく、「食事・運動・生きがい」という3つのことを少し工夫し、継続して実践するだけだと、そのコツを優しく教えてくれた。老化による心身の衰えを積極的に防ぎサクセスフルエイジング(=健康長寿)を目指してほしいと語る。

誰もが健康で長生きしたいと望んでいますが
そのためには何を意識すれば良いのでしょうか?

毎朝鏡を見る時に、10年後あるいは20年後の自分を想像してみてはいかがでしょう。もし10年後に歩けなくなっていたら?自分の頭で考えられなくなったら?そこを考え、日々の生活でエイジングケアすることが大切で、それがアンチエイジングです。自分の頭で考えて、自分の足で歩くことのできる自立した高齢者を「サクセスフルエイジング」といいますが、日本には100歳以上の方が約5万人いて、そのうちサクセスフルエイジングの人は約18%程度と僅かです。ではサクセスフルエイジングのグループに入るためには何をすればいいのか?それが「食事・運動・生きがい」の3つです。

「食事・運動・生きがい」のなかでも特に重要なことはありますか?

やはり食事については特に注意が必要です。「たくさん食べなさい、おかわりしなさい」と教育されてきた人たちにはショックかもしれませんが、アンチエイジングのための正しい食べ方は「食べ過ぎない」「腹七分でやめておく」ということです。また内容としてはカロリーのある炭水化物・タンパク質・脂質よりカロリーのないビタミン・ミネラルなどをどれだけ多く摂るかがポイントです。

アメリカのウィスコンシン大学の研究では、成長期まで同じ餌で育てたアカゲザルを2群に分け、一方は普通食を、もう一方にはビタミン・ミネラルの量は減らさずにカロリーの部分を70%にした餌を与え観察したところ、17年後、カロリー制限をしたグループのサルは、見た目はもちろん、運動能力も維持され、前頭葉の萎縮も起こっていませんでした。「老化のスピード」が確実に遅くなっていたのです。

「腹七分目でやめておく」というのは簡単なようで難しい印象があります。

確かにファミリーレストランやコンビニエンスストア、スーパーでも加工食品が占めていて、高カロリーなものが増えています。自然素材のものを丸ごと食べようと思っても選択の余地がないほどです。しかし、先の実験からも食生活を見直すだけで多くの病気の発症リスクが低下することは明らかです。「食べ過ぎや食べる物が老化のスピードや病気の発症を左右する」もっといえば「食べ過ぎは要介護になる」と自覚し、10年後、20年後の自分を想像しながら食生活を見直す必要があるでしょう。特に「砂糖」「白米」「小麦」の中毒になっている人が少なくありません。

「食べ過ぎない」ためのコツはありますか?

正しい食事方法を毎日継続して習慣にしてしまう必要があります。サクセスフルエイジングの人が増えないのは3日坊主になるからです。「今日くらいはいいだろう」と油断すると崩れやすいのです。
継続するコツは4つです。1つ目が野菜から食べること。厚労省が推奨する1日350gの野菜と200gの果物は、3回にわけても相当量があります。2つ目がよく噛むこと。咀嚼は脳のアンチエイジング効果もあります。3つ目が3食規則正しく摂ることで、どか食いを防ぐ、血糖値対策をすること。4つ目が食べ放題・飲み放題の店には行かず、一人前ずつ食べることです。

最後に読者へメッセージをお願いします。

運動や生きがいもアンチエイジングに大切な要素です。いろいろな運動をすることも含まれますが、刺激のある「豊かな環境」で生活をすることは脳の幹細胞を増やすことにもつながります。テレビを見てじっとしている生活では決して豊かとはいえません。生きがいを持って積極的に行動し続けることが脳にも体にも良い刺激となるのです。これまで世界で最も長生きしたフランス人の女性は「長生きをする秘訣」について「病気にならないこと」と答えています。「予防医学」という言葉が日常的に使われるようになりましたが、病気にならないように予防し続けることが非常に重要なのです。そのために難しい医学は必要ありません。「適切な食事・運動・生きがい」というシンプルな心がけが、老化のスピードを抑制させること。それはいくつになって始めても遅くはないのです。

基本情報

  • 所属順天堂大学大学院医学研究科
  • 所在地東京都文京区本郷3-3-10 御茶ノ水吉田ビル2F
  • 最寄り駅お茶の水
  • TEL03-3814-1134
  • ホームページhttp://www.shirasawa-acl.net/

著書