米山公啓事務所 米山 公啓先生

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脳の機能を鍛えれば脳も若返る

医学博士 米山 公啓 先生

経歴

1952年甲府生まれ。聖マリアンナ大学医学部卒業。医師兼作家。神経内科を専門とする一方、老人医療や認知症問題にも積極的に取り組む。1998年に聖マリアンナ医科大学第二内科助教授の職を辞し、診療を続けながらも執筆活動を行う。医学実用書、医療エッセイ、医学ミステリーなど幅広く執筆。著作は280冊を超える。

インタビュー

うつ病や認知症など脳と関連する病気が増加している本当の理由や、脳の健康を保ち、脳をアンチエイジングすることが「毎日のワクワク」「仕事の効率化」「笑顔」「チャレンジ精神」といったことにつながるということを優しく教えてくれた米山先生。先生自身もクリニックの診療や執筆活動といった仕事だけでなく、旅行やクルージング、海外ドラマ鑑賞と多岐に渡る趣味で積極的な毎日を送り続けている。

うつ病や認知症の患者さんが増加傾向にあるといいますが
背景にはどんな問題があるのでしょうか?

うつ病に関して言えば、ストレス社会が原因で増えているという報道がありますが、実は根拠がありません。かつて神経症などで精神安定剤を処方されていた人でも、現在は抗うつ剤のほうがよく効くため、今ではうつ病と診断されていることもあります。つまりうつ病は過去にもありましたが、いまは広く診断されるようになったということです。一方、認知症については確実に増加しています。原因は明らかで、長寿になっているからです。日本人は今や誰もが長寿を目指せる時代になりましたが、それは誰もが認知症のリスクを抱えていると言い換えられます。

まずはうつ病についてですが
うつになる原因はわかっているのですか?

明らかになっていることとして、脳の神経伝達物質であるセロトニンの量が減少することが「うつ」の発症につながることがわかっています。しかしこれが100%の原因ではなく、わからないことも多いのです。ただ約8割は抗うつ薬を使えば症状が改善され、治る病気といえるでしょう。問題は「難治性うつ病」と呼ばれるタイプです。薬を使ってもなかなか改善せず、他の病気が紛れ込んでいる場合もあります。

また頭痛やめまいといった身体症状が現れるタイプですと、まさか自分がうつ病だとは思わないケースも多いですね。このタイプの人は病院にもなかなか行かない、行くとしても内科など別の科に行ってしまうことで発見が遅れるという問題があります。いずれにせようつ病は社会的に理解され受け入れられるようになってきているので早期発見早期治療が大切です。

認知症については原因や予防方法はあるのでしょうか?

認知症は増加していますが、歳を取れば誰もが認知症になるということでもありません。90歳を超えても脳機能が衰えていない方もいます。あと数年で認知症の治療薬が開発されると見られていましたが、残念ながら臨床試験で失敗しており、今のところ進行を遅らせる薬が4〜5種類あるだけです。また認知症の原因として脳内にβアミロイドという物質が増えることが指摘されていますが、βアミロイドを減らしただけでも治るとは限らず、まだまだわからないことが多いのです。早期発見早期治療は大切ですが、実は生活習慣病を予防することが認知症の予防になることはあまり報道されていません。

生活習慣病の予防が認知症予防になるのですか?

認知症全体の約3割は脳梗塞が原因の血管性認知症となっていますから、高血圧を改善することを中心に生活習慣病を予防することは認知症の予防かつ脳のアンチエイジングになるといえます。
脳トレドリルを一生懸命やるよりも、喫煙習慣のある方はまず禁煙すること。そして生活習慣病全般を予防することのほうが認知症予防に効果的です。アメリカのアルツハイマー協会は「脳を守る10の方法」の1つに「1日30分のウォーキング」を提唱していますが、適度な有酸素運動は脳の老化防止に役立ち、もちろん生活習慣病の予防にもなります。

脳のアンチエイジングは可能なのでしょうか?

脳に刺激を与えることで脳が活性することは科学的に立証されています。生活習慣病予防は具体的にできる脳のアンチエイジング法の1つですが、もう1つは「ちょっと難しいことに挑戦し続ける」ことです。脳は反復によって効率性を高める側面と、常に新しいことに挑戦したいという側面を持っています。加齢と共に失われるのは後者です。例えば旅行もツアーで連れて行ってもらうのではなく、自分で計画した旅をしてみる。新しいことを勉強してみる。大勢の人前で意見を発表する……。このように少し面倒に感じることにチャレンジすることで効果的な刺激を与えることができるのです。特に自分の好きなことや得意なことを徹底的に追求することで、挑戦する気持ちが失せることなく、脳を活性し続けることができます。脳の予防医学や意識についてはまだまだ遅れていますが、脳の病気こそ発症してからでは遅いので予防が大切です。

基本情報


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