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ヤーコンの効果とその作用

日本各地で栽培されているヤーコンは、サツマイモのような塊茎(かいけい)を持つ植物です。研究によって、整腸作用や血糖値を安定させる作用などが報告されています。ここでは近年わかってきたヤーコンの効果・効能について、論文や専門家の見解などを交えて解説しています。

ヤーコンとは

ヤーコンは南米原産の野菜です。主な生産地はベネズエラからアルゼンチンにある標高2,000m程度の場所ですが、適応性が高くどんな場所でも栽培できるのが特徴。

種や苗、塊根(養分を蓄えてふくらんだ根)から育てる方法があり、育て方によって枝分かれや茎の盛り上がり方などの違いが見られます。日本各地でも栽培されていますが、しっかり育てるならやや涼しい地域のほうが適しているようです。

ヤーコンは、地下にさつまいもとよく似た塊根(養分を蓄えてかたまりになった根)をつくることが知られています。塊根はさつまいもとよく似た大きさ・形で、1個につき50~1,000gほど。1株あたり2~6kgの塊根がついています。

塊茎にはビフィズス菌のエサになるフラクトオリゴ糖が豊富なほか、ポリフェノールやカリウムなども含有。[※1][※2] [※3]

ただしデンプンやたんぱく質はほとんど入っておらず、全体の85%は水分、残りはフラクトオリゴ糖やビタミン、ミネラルなどで構成されています。食物繊維が多く低カロリーの野菜なので、ダイエット食品としても注目されているようです。

ヤーコンの効果・効能

ヤーコンには以下のような効果・効能が報告されています。[※1][※4][※5][※6]

■便秘の解消

ヤーコンの葉や塊茎には整腸作用を持つフラクトオリゴ糖や食物繊維が含まれていて、便秘解消に役立ちます。

■ダイエット効果

ヤーコンの葉に含まれる物質は、中性脂肪やコレステロールを減らす効果が期待できます。また、低カロリーで消化しにくいことから、ダイエットに効果があると考えられています。

■血糖値を安定させる

ヤーコンの葉を抽出した液体には、糖の分解・吸収を阻害して血糖値の上昇を抑える働きがあります。また、血中の糖を必要以上に減らさないため、血糖値が安定します。

■がんを抑制する

ヤーコンには強い抗酸化作用を持つクロロゲン酸やフラボノイドなどのポリフェノールが多く含まれており、活性酸素を除去してがんを抑制する効果が期待できます。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

ヤーコンの作用として広く知られているのは、難消化性のオリゴ糖である、フラクトオリゴ糖による整腸作用です。

フラクトオリゴ糖が善玉菌のエサになることで腸内の善玉菌が増え、腸内環境を整えられます。加えてフラクトオリゴ糖は胃や腸で消化されにくいという性質を持っているため、排泄を促して便秘を解消する効果が見込めます。

ヤーコンに含まれる食物繊維にもフラクトオリゴ糖と同じ性質があり、相乗効果で便秘の解消を手助けしてくれると考えられています。

また、ヤーコンの葉には天然のインスリンとも呼ばれるほどの血糖降下作用を持つイヌリン(フラクトオリゴ糖が複数くっついたもの)が含まれています。

イヌリンは食後の血糖値の上昇を抑える働きがあり、糖尿病のリスクなど一般的に問題ないとされる値まで、血糖値を下げてくれます。そのため糖尿病のリスクを低下させる作用が期待できます。

最近の研究ではヤーコンの葉を熱湯で煮出した液体をウーロン茶エキスと合わせて摂取することで、中性脂肪や血中コレステロールを減少させると報告されました。そのため、ヤーコンには脂質の代謝を改善する作用があると考えられています。

脂質の代謝を改善するうえ難消化性の成分を多く含むことから、カロリーを抑えて体脂肪を減らせるとして、ダイエット効果が期待されているようです。

強い抗酸化作用を持つポリフェノールが多く含まれているのもヤーコンの特徴。抗酸化作用によって増えすぎた活性酸素を減らし、細胞がダメージを受けるのを防いでくれます。そのため、細胞の異常で起こるがんを抑制する効果があるといわれています。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ヤーコンには善玉菌のエサになるフラクトオリゴ糖と、腸の働きを活発にする食物繊維が含まれています。そのため、便秘気味の人が摂るべき食材といえるでしょう。

また、デンプンがほぼ含まれておらず低カロリーなことから、ダイエットしているときにも最適です。ヤーコンの葉を使ったお茶には脂質の代謝を改善する作用も期待できるので、ダイエットに励んでいる人は一度試してみてください。

ヤーコンの摂取目安量・上限摂取量

ヤーコンは食品のため摂取目安量は定められていませんが、フラクトオリゴ糖を含むため、多量に摂取するとおなかが緩くなります。

特定保健用食品(規格基準型)制度で定められたフラクトオリゴ糖の1日摂取目安量は3~8g。[※7]ヤーコン100g中には8.0gのフラクトオリゴ糖が含まれているため、食べる場合は100gまでにしておくのが無難です。

ヤーコンのエビデンス(科学的根拠)

ヤーコンは糖の吸収を抑える効果や抗炎症作用が研究によって証明されています。

東海大学大学院農学研究科の上田裕人 らは、ヤーコンの葉から抽出した物質は糖の分解酵素の働きを阻害すると報告しています。

実験ではヤーコン葉抽出物と糖の分解を抑制する糖尿病治療薬のアカルボースを使い、糖と分解酵素が入った試料に混ぜて糖が分解されるかどうかを観察しました。その際、濃度を少しずつ変えています。

結果として、ヤーコン葉から抽出した物質は濃度が上がるにつれて、糖の分解を防ぐ作用を強めることがわかりました。その分解作用は医薬品アカルボースの0.638倍であることが示されています。

糖は分解されることで体内に吸収されやすくなるため、糖の分解を阻害するヤーコン葉は、結果的に糖の吸収を抑制することが示唆されました。[※8]

東海大学総合農学研究所の永井竜児教授らは、ヤーコンの抗炎症作用について実験を行いました。

永井教授らは実験でヤーコンの茶葉を熱湯で抽出した液体を用い、炎症の発生にかかわっているリポキシゲナーゼという物質の作用を抑制するか調べました。

その結果、濃度によって差はあるものの、ヤーコンの抽出物がリポキシゲナーゼの働きを阻害することがわかりました。このことから、ヤーコン茶葉を熱湯で抽出した液体にはリポキシゲナーゼがきっかけで起こる炎症を抑制する作用が期待されています。[※9]

研究のきっかけ(歴史・背景)

ヤーコンは2000年以上前からアンデス~アマゾン間の中央アンデスの山で栽培されていたことがわかっています。

日本に持ち込まれたのは1984年で、ニュージーランドで栽培されていたペルー系統の品種です。

栽培が始まった当時は育て方や塊茎(養分をため込んでふくらんだ根)の成分など不明点が多い作物でした。それでも目新しさに興味を抱いた農家たちが作付けを開始。どこでも栽培できる適応性の高さと、害虫被害が少なく農薬も不要ということもあって、全国各地で栽培されるようになりました。[※3]

しかしいまでも国や地方自治体にヤーコンの栽培地や栽培面積などの統計データがほとんどないといった課題もあるようです。今後は新規事業の一つとしてヤーコン栽培の現況調査が予定されています。

専門家の見解(監修者のコメント)

ヤーコンはまだまだ研究が進められている段階の植物ですが、現在わかっている効果にかんして見解を述べている専門家もいます。

京都の高尾病院に勤める江部康二医師は、自身のブログでヤーコンについてこう答えています。

「ヤーコンは、食物の中でもっとも多くのフラクオリゴ糖を塊根と塊茎に含んでいます。芋の成分の組織は、芋の成熟によって変化しますが、成熟につれて果糖、ブドウ糖の単糖や蔗糖が減少し、フラクトオリゴ糖の割合が多くなります」(ドクター江部の糖尿病徒然日記「糖質制限食とヤーコンそして松茸」より引用)[※7]

「フラクトオリゴ糖は、人間の消化酵素では分解されないので、吸収されることなく消化管を通過し大腸に達します。すなわちフラクトオリゴ糖は栄養源にはなりませんし、血糖値を上げることもありません」(ドクター江部の糖尿病徒然日記「糖質制限食とヤーコンそして松茸」より引用)[※7]

江部医師の見解では、ヤーコンはフラクトオリゴ糖を多く含むことから、体内に吸収されずに排出されるとのこと。そのため、栄養源にならず血糖値が上がらないのです。

江部医師は、1日1gのフラクトオリゴ糖でビフィズス菌を増やすことができ、3g以上摂取すると整腸作用が得られるとしています。

しかし、ヤーコンにはフラクトオリゴ糖以外の糖質も含まれていることから、大量に食べるのは良くないようです。

「一方、少ないとはいえ、ヤーコン100g中に合計約5gの<果糖、ブドウ糖、蔗糖>という血糖値を上昇させる成分が含まれているので、大量に食べるのは少し困ります」(ドクター江部の糖尿病徒然日記「糖質制限食とヤーコンそして松茸」より引用)[※7]

フラクトオリゴ糖は血糖値を上げない作用を持っていますが、果糖やブドウ糖などは体内で消化・吸収されるため、血糖値に影響を与えます。大量に食べるとそれらの糖類も一緒に摂取してしまうため、結果的に血糖値を上げてしまうと考えられます。過剰摂取による副作用もあるため、効果を感じたいならなるべく適量の摂取に留めるのが良いでしょう。

ヤーコンを使ったレシピ

ヤーコンは主に塊茎の部分を食べる野菜ですが、最近は茎や葉をお茶として楽しむこともあるようです。ここではヤーコンを使ったレシピをいくつか紹介しています。

■ヤーコンのツナすりごまサラダ

【材料】

  • ヤーコン芋1本
  • ツナ缶(ノンオイル)1缶
  • 白すりごま大さじ2
  • マヨネーズ大さじ2
  • 塩コショウ少々

【調理法】

  1. ヤーコンの皮をむき、アク抜きしてから3mm幅の短冊切りにする
  2. ボウルにツナ缶、すりごま、マヨネーズ、塩コショウを入れ、混ぜたらできあがり。

好みでレタスやトマトを添えると彩りが良くなります。

■ヤーコン茶

【材料】

  • ヤーコンの葉

【お茶のいれかた】

  1. きれいに洗ったヤーコンの葉を蒸し、2日ほど天日干しにする
  2. 葉を160℃のオーブンでカラカラになるまで焼く(目安は15分ほど)
  3. 手でもんでバラバラにする
  4. できた茶葉を茶こしに入れ、熱湯で煮出す。

煮出すときにあまり長く葉を浸けると苦みが出てくるため、ほどほどにしましょう。

収穫してすぐに食べられるヤーコンですが、1か月ほど熟成させるとオリゴ糖が増えてより甘味が増し、おいしくなります。ただし生で食べる際は変色しないよう、皮をむいたら早めにアク抜きしましょう。

相乗効果を発揮する成分

ヤーコンには整腸作用を持つフラクトオリゴ糖が含まれているため、同じく整腸作用を持つ食物繊維と一緒に摂ると胃腸に溜まった老廃物を排出してくれます。

ヤーコンにも食物繊維は含まれていますが、ヤーコンの可食部100gに対して0.9gと少ないのです。したがって、キノコやごぼうなどの食物繊維が豊富な食べ物と合わせて食べると、相乗効果が発揮されることでしょう。

ヤーコンに副作用はあるのか

ヤーコンに含まれるフラクトオリゴ糖は消化しにくいという性質を持つため、大量に摂るとおなかが緩くなるおそれがあります。ほかの食品から摂取することも考え、適切な量を食べるようにしてください。

ヤーコンの選び方・保存方法

ヤーコンを選ぶときは、表面に傷やひび割れがないものを探すのがおすすめです。傷ができていると栄養成分が外に出てしまっている可能性があります。また、ヤーコン芋は鮮度が落ちると柔らかく感じる場合があるため、張りがあって重たいものを選ぶと良いでしょう。

■保存方法

丸ごと購入した場合は、乾燥しないよう新聞紙に包んでポリ袋に入れてから冷暗所で保存しましょう。料理に使って残ったものはラップにくるんで冷蔵庫で保存してください。

貯蔵すると甘味は増しますが、フラクトオリゴ糖が減るので、栄養素を余さず摂取したい人は早めに食べきりましょう。

生のヤーコンは傷みやすく腐るまでが早いため、長期保存は向いていません。長期保存する場合は、日持ちしやすい切干しに加工することをおすすめします。