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ビタミンB6の効果とその作用

ビタミンB6は、水溶性ビタミンの1種です。多くの食べ物に含まれるため比較的摂取しやすい栄養成分になります。私たちの腸内からも生成されます。このページでは、ビタミンB6の効果や作用、摂取目安まで、様々な視点から「ビタミンB6」について解説します。専門家によるビタミンB6の研究報告や、科学的根拠まで掲載しています。

ビタミンB6とはどのような成分か

ビタミンB6は水溶性ビタミンで、多くの食品に含まれています。

また、ビタミンB6の活性を持つ6つの化合物の総称でもあり、アルコール型のピリドキシン、アルデヒド型のピリドキサール、アミノ基をもつピリドキサンとそれぞれに対応する5‘リン酸エステル型があります。

ビタミンB6は、胎児期および乳幼児期の発達や免疫機能にも関与しています。

[※1]

ビタミンB6は食品中からのたんぱく質からエネルギー産生、血液・筋肉が生成する時に働く成分なので、激しい運動をする子ども/プロスポーツ選手にとっては欠かせない成分となっています。[※2]

ビタミンB6の効果・効能

ビタミンB6の効果・効能は次のようなものがあると言われています。

■成長促進作用

ビタミンB6をしっかり摂取することで、たんぱく質の代謝がスムーズに行われます。その結果として、皮膚や粘膜の生成につながります。健康な髪、歯、爪を生成する助けになります。[※1]

■がん予防

血漿ビタミンB6の低値と、ガンのリスクに関連性があると言われています。ビタミンB6摂取量が低い人とそうでない人を比較した場合、大腸がんのリスクが20%低いことが示されています。[※1]

■認知機能

ビタミンB6には、高齢者に起きる認知機能低下に役立つと言う仮説もあります。高齢の男性に血清ビタミンB6の注射を打ったところ、記憶テスト高スコアを出したという研究がありますが[※3]ビタミンB6を単独で用いたエビデンスが少ないため、現在は可能性があるということになります。今後、研究が進めば、認知症にも効果があることが期待されます。

■妊婦中の悪心・つわり改善

妊娠初期に経験するつわりを改善させる働きがあるとも言われています。つわりがある妊婦にビタミンB6とドキシラミンの併用したところ、70%が改善し、退院することができた。という報告があります。 [※1]

これ以外にも、現在ビタミンB6の働きとして期待されているものがあります。しかし、エビデンスが少なく検証段階なので、精査が必要です。

■心血管疾患

ビタミン群の1部が、ホモシステイン濃度を下げることによって、心血管疾患リスクを低下させる仮説が立てられています。[※4]

しかし、現在まだビタミンB6だけでは心血管疾患の予防につながることは証明されていないので、今後の研究結果によっては、効果が証明されるかもしれません。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

ビタミンB6は、アミノ基転位反応、脱炭酸反応、ラセミ化反応に関与する補酵素として働いています。

この補酵素は、ビリドキサール5‘-リン酸(PLP)として働いています。

また、ビタミンB6が欠乏すると、ビタミンB6欠乏症に陥り、体にわかりやすい症状があらわれます。

代表的なもので、口唇症を伴う皮膚炎、うつ、免疫低下などがあげられます。

また、腎機能障害のある人や、アルコール依存患者は、ビタミンB6が不足している状態に陥りやすいと言われています。

体内に不足していると、皮膚から体内の機能まで低下してしまう可能性があるので、適した量を摂取する必要があります。[※5]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ビタミンB6は、エネルギーを生成する上で必要な栄養成分なので、次のような方におすすめします。

  • たんぱく質を積極的に摂取する人
  • 抗生剤を長期間飲んでいる人
  • 肌荒れや口内炎が気になる人
  • 脂漏性皮膚炎、角化異常、蕁麻疹
  • 成長期の子供
  • liMSがつらい人
  • 手根管症候群の痛みがある
  • 血液検査でGPT低値の人[※6]

また、これ以外にも、ビタミン欠乏症に陥りやすい次のような人も摂取した方が良いでしょう。

  • アルコール依存症
  • 肥満
  • 妊婦
  • セリアック病
  • クローン病
  • 潰瘍性大腸炎
  • 腎機能障害がある
  • 自己免疫疾患

これらの症状に該当する人は、共通して血漿PLP濃度が低いという傾向があります。[※1]

ビタミンB6の摂取目安量・上限摂取量

米国科学アカデミー医学研究所の食品栄養委員会(FNB)が定めた食事摂取基準(DRI)には、ビタミンB6の摂取量が定められています。

  • 生後0〜6ヶ月 0.1mg
  • 生後7〜1ヶ月 0.3mg
  • 1〜3歳    0.5mg
  • 4〜8歳    0.6mg
  • 9〜13歳   1.0mg
  • 14〜18歳  男性1.3mg 女性1.2mg
  • 19〜50歳  男性1.3mg 女性1.3mg
  • 51歳以上  男性1.7mg 女性1.5mg

※    妊婦は、1.9mg 授乳婦2.0mg必要です[※1]

この数値は、推奨栄養所要量(RDA)と言われ、1日に摂取して良い量になります。

■過剰摂取によるリスク

今のところ、過剰にビタミンB6を過剰に食品から摂取したことで、体に異常をきたした例は報告されていません。

しかし、サプリメントであるビタミンB6を過剰に摂取した場合は、運動失調を特徴とする重度の進行性の感覚ニューロパチーに陥る可能性があると言われています。

その他の影響として、皮膚病変、光線過敏症、消化器症状(胸焼け、気持ち悪さ)があります。

また、妊婦が過剰に摂取したことにより、先天性欠損症が現れたケースもあるので、過剰に摂取をする。特に食品ではなくサプリメントでの摂取には気をつける必要があります。

これらのことから、FNBでは摂取量の上限を設定しています。

  • 1〜3歳 30mg4〜8歳 40mg9〜13歳 60mg
  • 14〜18歳80mg
  • 19歳以上 100mg

病気の治療によって、ビタミンB6を投与されている人もいますが、そのような場合では医師の監督が必要になります。[※1]

ビタミンB6のエビデンス(科学的根拠)

ビタミンB6は、大腸がんを予防する効果があると言われています。

マウスに低ビタミンB6食を与えた群と、ビタミンB6を与えた群とに分け、大腸腫瘍の誘発実験を5週間で行いました。その結果、低ビタミンB6の餌を食べたマウスのグループに対して、ビタミンB6が加えられた餌を食べたグループでは、大腸の前がん病変であるAberrant crypt foci(ACF)と上皮細胞の増殖が著しく抑制されていることを見出しました。[※7]

しかし、現在は大腸がんの発現の抑制であり、その他のがん(乳がん)には抑制効果は見られるものの、発現抑制にはつながっていないので、今後の研究にも注目する必要があります。

研究のきっかけ(歴史・背景)

ビタミンB6は、1934年抗皮膚炎因子として発見されて以来、その薬理作用について臨床医学的に広範囲に追求され、多岐にわたった疫病に関する治療、予防に効果的であることが明らかにされてきています。

近年では、ビタミンB6特にその作用本態であるPAL—Pの生命現象への関与の機作が酵素化学的レベルで急速に解明されつつあると言われています。[※8]

専門家の見解(監修者のコメント)

公益財団法人東京都医学総合研究所の総合失調症プロジェクト 新井誠プロジェクトリーダーによると、

人の体の中には、カルボニルストレス* の状態を整える働きをするタンパク質(グリオキサラーゼ)があります。統合失調症の患者さんの中にはこのグリオキサラーゼの働きが弱く、体の状態を整えることが難しい方がいることがわかってきました。体の状態を整えることが難しいと、体内には「ペントシジン」という終末糖化産物が蓄積してきます。患者さんの体にとってあまり良くない状態なので、ビタミンB6によって解毒をする結果、体内ではビタミンB6が減少していました。このような患者さんのことを私たちは、「カルボニルストレス性統合失調症」と呼んでいます。私たちは、「ペントシジン」が増えて、「ビタミンB6」が減少した状態が、統合失調症の発症や症状と密接に関係しているのではないかと考えて研究を続けています。

*カルボニルストレス

生体内の糖や脂質、タンパク質などが反応性に富んだカルボニル化合物と反応(酸化ストレスなどが影響する)して産生される最終糖化産物(ペントシジンなど)が蓄積した状態のこと。[※9]

と総合失調症プロジェクトのホームページでコメントをしています。

ビタミンB6を多く含む食べ物

ビタミンB6を多く含む食べ物として、かつお、まぐろといった魚類があげられます。他にもレバー、肉にも多くふくまれていますが、基本的に広範囲の天然食品に含まれている食べ物です。

また、バナナにも1本あたり0.34mg含まれているので、果物からも摂取でき、アスリートは、運動の合間に摂取することで、効率よく補給することができます。[※2]

一緒に取るべき成分

ビタミンB6と一緒に取るべき成分として、ビタミンB1、ビタミンB12と一緒に取ることで、より良い作用が期待されている。

ビタミンB1、B6、B12の複合体が、末梢神経および筋受容器の再生に影響があるという実験結果があります。[※10]

ビタミンB6単独の摂取でも問題ありませんが、ビタミン群で摂取することで、より効果的な作用があることがわかったので、積極的に摂取するようにしましょう。

ビタミンB6の副作用

ビタミンB6は、特定の薬物との相互作用があるので、気をつけなければいけません。一部の薬物は、ビタミン濃度に影響を与え、中には、ビタミン欠乏症を招くものもあります。[※1]

注意すべき相互作用

■サイクロセン

結核の治療に用いる広域スペクトル抗生物質であるサイクロセンは、ビタミンB6と併用すると、痙攣と神経毒性が増加する恐れがあります。

■抗てんかん剤

バルプロ酸、カルバマゼピン、フェニトンなどは、ビタミンB6ビタマーの異常代謝を増大させ、てんかん発作と脳卒中などのリスクを高める可能性があります

■テオフィリン

喘息、慢性気管支炎、肺気腫等を予防するテオフィリンは、血漿PLP濃度の低下をきたし、中枢神経系の副作用をおこす可能性があると言われています。[※1]