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ビタミンB2の効果とその作用

ビタミンB2は水溶性ビタミンの一種で、リボフラビンとも呼ばれる成分です。皮膚や粘膜を保つはたらきや食物をエネルギーに変える作用があり、健康維持には欠かせないビタミンといえるでしょう。ここではビタミンB2の効果・効能について解説。摂取目安量や専門家の見解などもまとめています。

ビタミンB2とはどのような成分か

ビタミンB2は別名リボフラビンと呼ばれる、水に溶けやすいビタミンです。代謝に不可欠なビタミンの代表選手のような存在です。ビタミンB群に属しており、黄色の色素としても知られています。ビタミン剤や栄養ドリンクなどを摂取したときに出る黄色い尿は、ビタミンB2の色によるものです。[※1]

ちなみに代謝とは、人間が活動するために必要なエネルギーを産生したり、体内のメカニズムを機能させたりするために必要な生化学反応の総称です。

ビタミンB2は酸や熱を加えても変化しにくい性質を持っていますが、光やアルカリ性の物質を加えると壊れてしまうため、保存場所は光が当たりにくい場所が最適です。[※2]

多くの栄養素を代謝するフラビン酵素を助ける役割を持ち、炭水化物やたんぱく質、脂質の代謝すべてにかかわっています。

そのため、脂質や炭水化物(糖類)を摂り過ぎると必要なビタミンB2の量も増えてしまうため、必要な分を補わないと、欠乏症を起こすおそれがあります。[※1][※2]

過剰摂取しても排出されるため問題ないのですが、不足しないように毎日摂取しなくてはいけません。また、ストレスやハードワークでも体内のビタミンB2は消費されてしまいます。忙しいときなどはとくに、ビタミンB2を欠かさない食生活を心がけましょう。

ビタミンB2の効果・効能

ビタミンB2には以下の効果があるとされています。[※3][※4][※5]

■肌や粘膜の調子を整える

皮膚や粘膜の成長を促し、肌荒れや口内炎などの症状を改善する効果が期待できます。

■疲労回復

ビタミンB2を摂取することで不足したエネルギーを補い、疲労状態を回復させられます。

■病気の予防

ビタミンB2を摂取すると栄養素の代謝が活発になることから、皮膚炎や胃潰瘍などが起こるリスクが低下します。

■抗酸化作用

ビタミンB2は紫外線やその他刺激による肌・粘膜へのダメージを軽減します。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

ビタミンB2は体内に入ると小腸で分解され、吸収されます。

吸収されたビタミンB2は代謝にかかわる物質に変換され、糖質やたんぱく質、脂質の代謝やエネルギーの生産のためにはたらきます。

栄養を代謝することで細胞の成長を促し、発育促進の効果をもたらします。また、代謝が良くなることから皮膚や爪、髪などの再生にも役立っている成分です。[※3][※6]

ストレスで大きな負荷がかかった場合、体は回復のためにより多くのエネルギーを必要とします。ビタミンB2がエネルギーの産生をサポートすることで、不足したエネルギーを補い疲労回復の効果が得られると考えられています。[※4]

また、ビタミンB2は細胞内にある抗酸化物質の手助けをする成分としてはたらきます。そのため活性酸素によるダメージが減り、皮膚や粘膜を正常に保てるのです。[※4]

この作用により、肌荒れや口内炎などの症状を改善する効果が期待できます。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ビタミンB2は皮膚の再生や栄養の代謝を担っていることから、次のような人におすすめしたい成分です。[※7]

  • 肌荒れが気になる人
  • 口内炎ができやすい人
  • 育ち盛りの子ども
  • ダイエット中の人

ビタミンB2の摂取目安量・上限摂取量

厚生労働省が定めているビタミンB2の摂取量は次のようになっています。[※8]

■摂取目安量

  • 子ども~成人...0.5mg/1000kcal(摂取カロリーにより異なる)
  • 妊婦...0.2mg/日
  • 授乳婦...0.5mg/日
  • 乳児...0.3mg/日(5か月まで)0.4mg/日(11か月まで)

■推奨量

  • 子ども~成人...0.6mg/日(平均必要量に推奨量算定係数 1.2を乗算)
  • 妊婦...0.3mg/日
  • 授乳婦...0.6mg/日

■上限摂取量

  • 約 1.1 mg/日

ビタミンB2のエビデンス(科学的根拠)

甲南女子大学看護リハビリテーション学部理学療法学科の柴田克己教授は、ラットを用いてストレス性の胃粘膜障害におけるビタミンB2の作用を調査しています。

調査では成長期のラットを5つのグループに分けて、それぞれ決められた食事で6週間飼育。その際、ビタミンB2欠乏食を与えたラットでは、それぞれ違う種類のビタミンを摂取させたグループをつくりました。

Aグループ
通常食
Bグループ
ビタミンB2欠乏食
Cグループ
ビタミンB2欠乏食+ビタミンB2
Dグループ
ビタミンB2欠乏食+ビタミンB1、B6、B12
Eグループ
ビタミンB2欠乏食+ビタミンB1、B2、B6、B12

その後、ラットを4時間水に浸してストレスを与え、ストレス性の胃潰瘍を起こさせてから、胃粘膜に生じた出血痕の長さを測定しました。

その結果、ビタミンB2が不足したエサを食べたBグループと通常食を食べたAグループでは、Bグループの出血痕が長いことがわかっています。

また、BグループとCグループで比較すると、Cグループのほうが出血痕が短く、さらに、CグループとDグループ、Eグループを比較した場合、Eグループの出血痕が短いことが報告されました。

このことから、ラットにおけるビタミンB2欠乏は胃粘膜の障害を悪化させること、ビタミンB2を補給することで症状の改善が見込めることがわかりました。

ほかのビタミンB群を補給することでも胃粘膜障害は抑えられますが、効果を得るにはビタミンB2と一緒に摂取する必要があると考えられています。[※4]

また、柴田教授はビタミンB2の補給がエネルギー代謝を改善する効果についても研究を行っています。

実験では成長期のラット20匹を4グループに分け、9日間異なるエサを与えて、代謝の指標となる「2-オキソ酸」の排泄量を調べました。2-オキソ酸はエネルギー代謝の際にできる物質で、代謝がうまくいかないと分解されず、そのまま排出されるのが特徴です。

エサの配合は以下のようになっています。

  1. 通常食
  2. ビタミンB1、B2、B6、B12低減食(ラットが正常に成長できる最小量のビタミンB1、B2、B6、B12を含む飼料)
  3. ビタミンB1、B2、B6、B12低減食14日間+(ビタミンB1、B6、B12を補給)15日間
  4. ビタミンB1、B2、B6、B12低減食14日間+(ビタミンB1、B2、B6、B12を補給)15日間

エサに含まれるビタミン量はラットの体重から換算し、フルスルチアミン塩酸塩(ビタミンB1)109.16mg、リボフラビン(ビタミンB2)10mg、ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)100mg、シアノコバラミン(ビタミンB12)1,500μgとなっています。

また、2週間ビタミン低減食を与えた3グループと4グループのラットでは、実験後にビタミンB1、B6、B12を補給させて15日間経過を見ています。

結果、ビタミンB1、B2、B6、B12の量が少ないエサを与えたラットでは、通常食のラットに比べて2-オキソ酸の排泄量が増え、エネルギーの代謝異常が起こりやすくなることが明らかになりました。

このことから、ビタミンB群を十分に摂取する必要性が示されています。

3グループと4グループのラットの実験では、エネルギーの代謝異常が起こった状態でビタミンB1、B6、B12を摂取させた3グループのラットは、2-オキソ酸の排泄量が少なくなる傾向にありました。

ビタミンB1、B6、B12に加えてビタミンB2も補給した4グループのラットでは、3グループのラット以上に2-オキソ酸の排泄量が減り、エネルギーの代謝が改善されたことが示唆されています。[※3]

研究のきっかけ(歴史・背景)

1926年にアメリカのシャーマンが動物における成長に必要な栄養素を研究しているときに牛乳から発見されたのがビタミンB2です。その発見当時は、ビタミンB2ではなく、成長「growth」の頭文字からビタミンGと呼ばれました。

その後、1927年にビタミンBと類似したはたらきを持つことから、2番目に発見されたビタミンBという意味でビタミンB2と名付けられました。

さらに研究が進み、ビタミンB2は複数の物質が結合してできていることが判明。1933年にドイツのR.クーンらによって、ネズミによるB2欠乏症を治す物質として単離され、現在知られているビタミンB2が発見されました。

専門家の見解(監修者のコメント)

東京医科大学八王子医療センター 栄養管理科の永田美和氏は、ビタミンB2のはたらきについて、以下のようにまとめています。

「ビタミンB2(別名 リボフラビン)は、成長に欠かせないビタミンで、成長(glowth)因子からビタミンGとも言われていました。皮膚や粘膜を正常に保つ働きがあり、健康な皮膚や髪、爪をつくり、成長を促します。」[※9]

「また、身体の中では、脂質、炭水化物、たんぱく質の全てのエネルギー代謝がスムーズに行えるようサポートしています」[※9]

「さらに、動脈硬化や心筋梗塞などの原因である過酸化脂質の分解にかかわり、体内での生成を防ぎ、さまざまな生活習慣病を予防します」

(東京医科大学八王子医療センター「ビタミンB2について|えいよう.com」より引用)[※9]

ビタミンB2は、体のエネルギー代謝や肌、髪、爪などの成長を促すほか、生活習慣病の予防にも効果のある重要な成分だということがわかります。

しかし、ビタミンB2は体内で小腸に分解・吸収され代謝にかかわる物質へと変換されるため、体内にためることができません。

そんなビタミンB2に関して、永田美和氏は以下のように解説しています。

「B2は体内にためておくことができないので、毎日摂ることが必要です。ストレスの多い人、脂質を摂る量が多い人などは不足しやすいため、特にしっかり摂るよう心がけましょう」

(東京医科大学八王子医療センター「ビタミンB2について|えいよう.com」より引用)[※9]

体内からビタミンB2が減ってしまうと、肌や髪のトラブルが生じやすくなるほか、口内炎や目の充血、胃腸障害、成長障害などを引き起こすおそれがあります。ビタミンB2を多く含む食品を把握して、毎日の食事に取り入れましょう。

ビタミンB2を多く含む食べ物

ビタミンB2は豚レバー・鶏レバー・牛レバー・うなぎ・牛乳などに多く含まれています。小麦胚芽やアーモンドなど植物にも入っていますが、基本的に肉類の含有量が多いようです。

いちばん含有量が多いのは豚レバーで、100gあたり3.6mgのビタミンB2が入っています。ビタミンB2の上限摂取量は約1.1g/日のため、およそ2切れほどの豚レバーを食べることで、必要な量が補える計算です。熱に強いため、加熱調理しても成分が変性することがありません。

肉や魚などの動物性食品が苦手な場合は、納豆もおすすめ。大豆にビタミンB2が多く含まれているわけではありませんが、納豆は納豆菌のはたらきによってビタミンB2が増えています。納豆1パックで1日に必要なビタミンB2の1/4量が摂取できます。

ただしビタミンB2は日光やアルカリによって分解されやすく、直射日光や紫外線を当てただけで壊れてしまう可能性があります。香りの変化や成分の分解、変色が起こるため、ビタミンB2が入っている食品を保存するときは気をつけましょう。

相乗効果を発揮する成分

ビタミンB2は、ほかのビタミンB群と合わせて摂ることで相乗効果を発揮します。

糖質や脂質、たんぱく質の分解を助けて新陳代謝を促進させることから、肌荒れやエネルギー不足に効果的。[※4]ビタミンB2だけ摂取するよりも高い効果が期待できます。

しかしビタミンB群は短時間に大量摂取すると、そのまま尿として排出されてしまいます。一日の食事でバランスよくビタミンB群を摂取するのが良いでしょう。

ビタミンB2の副作用

ビタミンB2は水溶性ビタミンで、使われなかった分は体外に排出されます。そのため、摂り過ぎによる副作用は出ていません。

ただしビタミンB2が不足すると、のどの痛みや粘膜からの出血、眼精疲労などの欠乏症が起こります。毎日の食事で摂取し、必要量を補うことが大切です。