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バナジウムの効果とその作用

バナジウムは「バナジウム天然水」と書かれたミネラルウォーターだけでなく、マッシュルームやパセリなどにも含まれる超微量元素です。いろいろな化学形態で存在していて、硫酸バナジウム、メタバナジン塩酸などがよく知られます。バナジウムの健康作用については、複数の俗説がありますが、現段階で断定できるものはありません。

バナジウムとはどのような成分か

超微量元素であるバナジウムは地中や海中など、どこにでも存在する灰色が買った銀白色の金属です。原子番号は23、元素記号は「V」です。いろいろな化学形態があり、硫酸バナジウム、メタバナジン塩酸、オルトバナジン塩酸といったものが知られます。またバナジウムの中でも五酸化バナジウムは毒性があることが指摘されています。

そもそもバナジウムは、カルシウムやナトリウム、鉄、亜鉛といった他のミネラル同様、私たちの体に微量ですが含まれています。にもかかわらず、私たちに不可欠なミネラルとは認められていません。しかしながら、酵素の構成などに関与している可能性も指摘されており、一部の生物(脊柱動物)では何らかの必要性がある可能性が高いとされています。

最初にバナジウムが発見されたのは18世紀ごろですが、健康効果が見直されるようになったのはここ100年くらいです。現在では医薬品への可能性が注目されており、健康食品としてミネラルウォーターやサプリメントなどで、バナジウムを含んだ商品が売られています。

バナジウムは灰色かかった銀白色で、美しい色を持つことから、スカンジナビア神話に登場する愛と美の女神「バナジス(Vanadis)」にちなみ、バナジウムと命名されました。バナジウムは製鋼添加材としての活用法が多く、強度を持たす目的で活用されています。チタン合金は航空用として開発されたもので、ミサイルやジェットエンジン、原子炉などに用いられている金属です。日本の産出量は少なく、ほとんどが輸入によるものです。[※1]

バナジウムの効果・効能

バナジウムには次のような効果・効能がうたわれていますが、ヒト試験によって明確にエビデンスが裏付けられているものはありません。

■血糖値を下げる可能性

バナジウムにはインスリンと似た働きがある、とよくいわれますが、ヒト試験による明確なエビデンスには裏付けられていません。

■動脈硬化を予防する、とも言われることが

バナジウムには脂質の代謝を促進し、コレステロールの生成を抑制する働きがある、と主張する研究者もいます。そのため、バナジウムを摂取することで、動脈硬化の予防ができるという説があります。[※2] 

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

バナジウムがもたらす作用で注目すべきなのは、血糖値を下げる働きがある、とされることです。

しかし結論からすると、バナジウムが血糖値の低下やⅡ型糖尿病に有効と断定できる研究は1つもありません。

ただし、バナジウムによる糖尿病予防効果は古くから示されており、1985年には糖尿病治療効果を有するという発表がありました。これは、糖尿病ラットに経口投与したところ、血糖値の低下や心機能改善効果が確認された、というものです。さらにバナジウムと糖尿病改善の関係性は、ヒト試験も行われています。バナジウム含有量が高い天然水を飲んでいる地域で行われた調査によると、血糖値の低下やHbAlcの低下が認められた、というのです。しかしそれでも、バナジウムが強力な血糖値低下作用はもたらすとはいえる研究報告ではありません。むしろ天然水を飲むとバナジウムだけでなく多数のミネラルが複合的に働くため、糖尿病予防に効果的だと考えられているのです。[※3]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

現在のところバナジウムは通常の食品、あるいは伏流水から摂る分にはどんな人がとっても問題ないとされています。また伏流水はその美味しさも人気の秘訣です。バナジウムそのものは、体に必要な量はごくわずかですから、普段の食事からも十分補えています。また断定できる健康作用も認められていないことから、何か特別な体の悩みのサポート目的に飲む必要もないですし、サプリメントなどを利用する必要もありません。

バナジウムの摂取目安量・上限摂取量

厚生労働省はバナジウムに対し摂取の推奨量を提示していません。バナジウムは天然水や水道水に含まれるミネラルのため、地域により摂取量に差があります。バナジウムは岩石から流出しており、地質や火山噴出物の組織により影響されるものです。玄武岩や班レイ岩などにバナジウムは多くなっています。そのため、富士山周辺の湧き水には、高いバナジウム含有量があるのが特徴です。水道水では、新潟県の米山や富山県の小谷部に多く含まれています。[※4]

バナジウムのエビデンス(科学的根拠)

活性酸素の生成を促すCYP2E1という酵素は、糖尿病により誘発され、インスリンにより改善されることが知られています。1型糖尿病モデルの動物を用い、バナジウム化合物の影響を調べたところ、血糖値が正常に戻ることが確認されました。この実験によりバナジウム化合物には、ケトン体合成における律速酵素の阻害作用や、グルコーストランスポーターの増加作用があることがわかりました。[※5]

また、Ⅰ型糖尿病や腎機能不全、心機能不全の患者を除き、日常的にバナジウム含有の伏流水を飲んでいる方を対象にした調査も行われています。1日540mlの水を4か月継続して飲み、普段から運動療法や食事療法をしている方はそのまま継続するという方法です。その結果3か月後には血糖値の低下が認められ、HbAlcの低下も確認されました。4か月後には血糖値が上昇する例もみられましたが、心理的な影響が働いたものだと考えられています。さらに調査の途中で、本人には伝えず一般の天然水に変えたところ血糖値が上昇し、再び伏流水に戻したところ血糖値の減少がみられました。

バナジウムはⅠ型やⅡ型糖尿病において血糖値下降効果が確認されたものの、効果は補助的なもので、強力な作用が得るものではないとされています。また、効果を得るためには連用が必要との考え方が主流です。[※3]

研究のきっかけ(歴史・背景)

鉱山でバナジウムが発見されたのは18世紀のことですが、バナジウムと命名されたのは1830年のことで、スウェーデンのニルス・ガブリエル・セフストレームが発見したことがきっかけです。

糖尿病治療効果が示唆されたのは1985年のことで、この報告によりバナジウムは大きな関心を寄せることになります。この研究では誘発糖尿病ラットに投与したところ、血糖値の低下や心機能改善効果が認められたのです。その後日本でもラットを用いた研究が行われ、血糖値低下効果が確認されています。[※3]

専門家の見解(監修者のコメント)

バナジウムの効果を実感するためには、継続的な摂取が必要と言われています。

「少なくともバナジウム含有天然水の3ヶ月間連続飲用によって、Ⅱ型糖尿病モデル動物でのインシュリン受容体や糖輸送系の活性改善作用ならびに膵でのインシュリン産生の改善効果が認められている。このような成績から、バナジウム含有天然水は決して強力な血糖降下作用を有さないが連用によって「補助的」効果を期待できる。
(「バナジウム含有天然水の糖尿病改善作用における考察」より引用)[※3]

バナジウムを含む天然水を利用し糖尿病予防として活用するなら、少なくとも3か月以上飲み続ける必要があると言えるでしょう。また、糖尿病の原因は何らかの原因で膵臓の細胞が壊される1型糖尿病や、2型では過食、運動不足、肥満、ストレスなどです。

バナジウムによる血圧を下げる働きは補助的なもののため、生活習慣を変えなければ根本的な解消にはならないということですね。バナジウム含有飲料を利用する場合は、バランスのよい食事や適度な運動などを組み合わせることが求められます。[※6]

バナジウムを多く含む食べ物

バナジウムは多くの食品にも含まれています。牛乳、そば、豆腐、海老、カニ、いわし、ワカメなどの食品です。含有量が多いのは、海藻や貝類などです。

バナジウムは富士の湧き水から採取した天然水にも含まれており、市販のミネラルウォーターから摂取する方法もあります。商品のなかには、バナジウムを多く含んでいることをセールスポイントにしているものも多くあります。

また富士山の南麓に位置する、静岡県の富士、神奈川県の足柄、神奈川県の蛯名などの、高速道路サービスエリアの水道水でバナジウムが高いデータが出ています。[※3]

相乗効果を発揮する成分

バナジウムを用いた実験により、天然水に含まれるバナジウムとほかのミネラルが補助的効果を示していると考えられています。

バナジウムに副作用はあるのか

バナジウムは安全域が狭いことがわかっています。過剰摂取した場合、胃腸障害などの問題が発生する可能性があることが指摘されています。

国内では65歳の男性が高濃度バナジウムを含有するミネラルウォーターを、バナジウム量にして1日160μg摂取したところ、腕のしびれや筋力の低下が生じ、医療機関を受診したところ、血栓中のバナジウムが高値になっていて、そのがこのミネラルウォーターの摂取を中止したことで回復したにもかかわらず、また継続摂取を再開したら症状が再発したことが報告されています。[※7]

米国の研究報告(2001年)によると、19歳以上の成人のバナジウム1日上限摂取量は1.8mgとされていますが[※7]、子どもや妊婦についての安全性などは分かっていません。長期にわたり過剰な摂取を続けた場合、肝障害などをもたらすリスクがあります。