バレリアンの効果とその作用

バレリアンは独特な香りを持ち、古くからハーブティーや精油、香料などに利用されてきた成分です。セイヨウカノコソウとも呼ばれるハーブの一種で、不眠や緊張状態を改善する作用があることが知られています。メディカルハーブであるバレリアンについて、効果・効能や副作用、専門家の見解などをまとめました。

バレリアンとはどのような植物か

バレリアン(セイヨウカノコソウ)はオミナエシ科の多年草で、小さな白っぽい花が特徴的な植物です。バレリアンという名前は、ラテン語の「健康である・強い」という意味を持つ「valere」が由来。

同じ属の植物には日本で薬用として使われるvaleriana fauriei(カノコソウ)や、香水原料であるAlpine valerianなどがあります。

バレリアンは古くからリラックス効果や鎮痛作用を持つハーブとして利用されており、欧米では医薬品として認定しているところもあります。[※1][※2][※3]不眠やてんかんの治療、月経促進などにも活用され、さまざまな分野での効果が期待されています。

また、バレリアンはその独特な香りから、香水の原料や香料として用いられます。

乾燥した根は香りが強く、悪臭と感じる人がほとんどですが、犬や猫には好まれやすいようです。これはバレリアンの香り成分の構造が、陶酔感をもたらすマタタビと似ているからだといわれています。[※4]

バレリアンを使う際は、ハーブティーとして飲むのが一般的ですが、精油やサプリメントとしても利用できます。特に不眠や強い不安感などを持っている人は、サプリメントで摂取するのが良いという報告もあります。

バレリアンの効果・効能

バレリアンには次のような効果・効能があるといわれています。[※2][※5]

■リラックス効果

バレリアンの香りには中枢神経にはたらきかけ、不安や緊張をやわらげてくれます。鎮静作用もあり、興奮状態を鎮めてリラックスさせてくれる効果が期待できます。

■睡眠の質を上げる

バレリアンは精神を落ち着かせ、眠りやすい状態に整えてくれます。実験ではバレリアンの摂取によって睡眠の質や寝つきの悪さが改善されたとの報告もあります。

■痛みを軽減する

鎮痛作用を持っており、緊張からくる頭痛や腹痛などを改善するのに役立ちます。

■けいれんを抑える

筋肉の収縮やけいれんを抑える効果があり、筋肉のこわばりからくる肩こりや疲れなどの解消に効果的です。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

バレリアンの効果は、体内でさまざまな作用が起こることによって得られます。

バレリアンを摂るとリラックス効果が得られるといわれています。これはバレリアンに含まれる有効成分が、脳内の神経伝達をつかさどる「GABA」という物質にはたらきかけ、精神を安定させることで期待できる効果です。

中枢神経の作用を抑えて高ぶった気分を鎮めるため、リラックス状態になるとされています。[※3][※4]

また、GABAの生成を助けて精神安定のはたらきを強めることから、緊張による不眠を改善する作用があると考えられます。

海外でもバレリアンを摂ることで睡眠の質が改善されたとの報告があり、不眠への効果が示唆されています。[※5]

ほかにも、バレリアンの香りのもととなる3-メチルブタン酸は、抗けいれん薬のフェノバルビタールと同じはたらきがあり、 [※4]、筋肉のこわばりで起こるけいれんを抑えるために役立ちます。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ストレスや不安感をやわらげる効果があるので、緊張して気が張っている人に適しています。緊張していると筋肉がこわばり、肩こりや頭痛などさらなる負担がかかることも。バレリアンを摂取することでリラックス効果を得られるので、加えて筋肉のこわばりも解消できるでしょう。

また、中枢神経を調整する作用があるので、自律神経が乱れがちな更年期や、疲れがたまっているときのイライラや不安を改善するのにもおすすめです。

バレリアンの摂取目安量・上限摂取量

バレリアンには摂取目安量は以下のようになっています。[※3][※5]

  • 根を乾燥させたもの:2~3g/日
  • エキス:300~400mg程度/日

摂取上限量は不安やストレスなどが原因で寝つきが悪くなったときに効果があるとされる量で、日中のストレス緩和に使用する場合は半分ほどの量(150~200mg)が適しています。[※5]

サイトによっては400~900mgほどの摂取が良いとしているところもありますが、バレリアンは海外では医薬品として扱っている国もある[※6]ほど効果が高い植物です。

過剰摂取にならないよう、目安量を守って摂取してください。

バレリアンのエビデンス(科学的根拠)

バレリアンの効果を証明しているエビデンスから、古くから利用されている不眠効果と、鎮痛効果に関するものをまとめています。

Leathwood PD は、バレリアンの根を抽出した液体に睡眠の質を改善する効果があると発表しています。

試験では128名の対象者をプラセボ(偽薬)、バレリアン抽出物400mg、市販のバレリアン製剤を与える3グループに分け、睡眠状況を観察。

結果として、バレリアン抽出物とバレリアン製剤を摂ったグループでは、寝つきの良さと睡眠の質に改善が見られています。

ただしバレリアン製剤のグループは翌朝にいつもより眠気が強くなるという報告も挙がっているため、製剤での摂取には注意が必要です。[※7]

バレリアンの鎮痛効果については、Islamic Azad UniversityのMirabi Pらが100人の学生を対象に実験しています。

この研究では、痛みを伴う月経困難症を患っている人を対象に、鎮静効果を持つバレリアンとプラセボ(偽薬)をランダムに投与し、2グループの痛みの重症度をスコアで表しました。

バレリアンとプラセボ(偽薬)はそれぞれ月経周期に合わせ、月経前の3日間に255mgを毎日3回ずつ摂取させています。

実験の結果、バレリアンとプラセボの両方で、飲む前よりも痛みが抑えられたことがわかりました。ただしバレリアンを飲んだグループのほうではより痛みの重症度スコアが小さくなったことが明らかになっています。

このことから、鎮痛効果があることが示されています。[※8]

研究のきっかけ(歴史・背景)

バレリアンは、ヨーロッパを中心に紀元前から使われてきたという記録が残っています。精神や神経の高ぶりを鎮めて眠りを誘うハーブとして知られており、中世では修道院の薬草園でも盛んに栽培されていたようです。

ドイツの童話である「ハーメルンの笛吹き男」にもねずみ退治の薬として出てくることから、欧米では非常にメジャーな植物だったことがうかがえます。

18世紀には精神を安定させるための治療や誘眠剤、整腸剤としての利用方法が提案されました。この方法は現在でも広く用いられています。

日本では1800年頃にオランダから伝わったのが最初ですが、もともと同族のカノコソウが北海道~九州に自生しており、香料や薬用として利用されていたことがわかっています。

専門家の見解(監修者のコメント)

バレリアンは古くから効果や使い方が知られるハーブですが、ほかのハーブと組み合わせることでより多くの効果を得られるようになります。

バレリアンの効果や使い方について、アロマセラピストとして活動するリエコ・大島・バークレー氏はこうまとめています。

「緊張や不安、不眠、イライラ、神経過敏時などに用います。単品でも十分な働きを見せてくれますが、パッションフラワーやリンデン、ホップやカリフォルニアポピーとブレンドできます。パニックに襲われそうな気分のときには、少し多めに使用してください」(リエコ・大島・バークレー『英国流メディカルハーブ』より引用)[※9]

「また、ストレス性の高血圧、動悸にも使われます。高血圧にはホーソーンやリンデンと、動悸にはマザーワートとブレンドしても良いでしょう」(リエコ・大島・バークレー『英国流メディカルハーブ』より引用)[※9]

バレリアン単体だと不眠や緊張などを鎮めるために使われることが多いものの、組み合わせによっては高血圧や動悸などさまざまな症状に効果を発揮するようです。

リエコ氏はほかにもストレス性・緊張性の頭痛、生理痛、過敏性腸症候群など幅広い用途に使えるとしており、優秀なメディカルハーブであることがうかがえます。

バレリアンを使う際は用途によってほかのハーブと組み合わせてみると、より症状を改善しやすくなるでしょう。

バレリアンを上手に摂取するには

バレリアンの効果を十分に発揮させたいなら、サプリメントで補うのが良いでしょう。必要な量を摂取できるだけでなく、煮出したりディフューザーを使ったりといった手間もなく、手軽に効果を実感できます。

特に不安やストレスで寝つけなくなったときは、即効性のあるサプリメントが最適です。[※5]

また、定期的にハーブティーを飲むのもおすすめです。

熱湯で煮出したバレリアンのハーブティーを1日3回+寝る前に摂ると、安眠や自律神経の乱れを改善する効果が期待できます。[※4]

以下にハーブティーのレシピを2つまとめました。熱湯でつくるレシピが一般的ですが、時間をかければ水出しも可能です。

■安眠効果

・材料(1杯は2.5~5g)

  • バレリアン:1/4杯
  • ジャーマンカモミール:1杯
  • オレンジピール:1杯

上記のハーブをブレンドし、熱湯150mlに10~15分ほど入れてハーブティーをつくります。

■自律神経の乱れによる症状の軽減

・材料(1杯は2.5~5g)

  • バレリアン:1杯
  • ラベンダー:1杯

上記のハーブをブレンドし、熱湯150mlに10~15分ほど浸すとできあがりです。

相乗効果を発揮する成分

バレリアンの広く知られるはたらきに、睡眠促進作用があります。これはレモンバームやカモミールなど鎮静効果のあるハーブを併用することで、より効果を高められます。[※4][※5]

寝つきが悪い、眠りが浅いなどの悩みがある人は、寝る1時間前にこれらのハーブをブレンドして使うと良いでしょう。

バレリアンの副作用

バレリアンは短期間の使用ならほとんどの人に安全だとされています。

ただし過剰摂取によって、頭痛や不安感、吐き気、ふらつきなどの副作用が起こります。[※5]人によっては摂取目安量の範囲でも副作用を起こすことがあるので、不安感やふらつきなどの症状が見られた場合は摂取を中止しましょう。

また、アルコールと併用することで過度の眠気を引き起こす恐れがあります。[※3]

妊娠中の人や子どもは安全性がハッキリしていないため、使用を避けてください。[※2][※3]

注意すべき相互作用

バレリアンは以下の薬と併用する場合に相互作用を起こすおそれがあると報告されています。[※3][※5][※6]

  • 向精神薬(睡眠薬、抗不安薬)
  • 抗ヒスタミン薬
  • 肝臓で代謝・分解される医薬品

バレリアンには肝臓の代謝酵素のはたらきを抑制する作用がある[※3]ため、使用前に肝臓で代謝・分解される医薬品を服用していないかの確認が必要です。