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非変性2型コラーゲンの効果とその作用

主に軟骨に多く含有されている成分・非変性2型コラーゲン。コラーゲンの一種で、私たちの関節軟骨の約15~20%を占めている成分でもあります。ひざ関節の機能をサポートするはたらきをもつほか、関節炎の予防・改善に効果があるとされています。ここでは、非変性2型コラーゲンの効果・効能や作用のメカニズムなどを解説。一緒に摂りたい成分や研究のきっかけについてもまとめました。

非変性2型コラーゲンとはどのような成分か

非変性2型コラーゲンは、主に軟骨に多く含まれている成分です。人間の関節軟骨の約60~80%は水分で構成されていますが、その次に多いとされているのが非変性2型コラーゲンです。関節軟骨のうち、15~20%の割合を非変性2型コラーゲンが占めています。

コラーゲンはたんぱく質の一種ですが、数あるたんぱく質のうち、約30%はコラーゲンが占めています。人間の体内には約30種類のコラーゲンが存在し、それぞれ1型、2型…と分類されています。

1型は主に皮膚や腱、骨などに含まれ、2型は軟骨に多く含まれているのが特徴です。

2型コラーゲンはひざ関節の曲げ伸ばしや柔軟性をサポートしてくれます。しかし、熱に弱い性質があり、加熱や酸素で分解されると性質が変わって(変性)しまうのが難点です。また、体外から摂取しても、消化吸収される際に分解されて性質が変わってしまうため、2型コラーゲンのままでは本来の機能が発揮できません。

「非変性2型コラーゲン」は、2型コラーゲンと同じ構造をもつ成分で、特殊な製法によって熱を加えず抽出されているため、本来の機能を保っています。また、2型コラーゲンよりも分解されにくい性質があり、体外から摂取した際にも非変性2型コラーゲンとして吸収されます。

ある程度の大きさのコラーゲン分子を維持したまま腸管まで届くため、体内に存在する成分を攻撃しないという免疫機能がはたらくと考えられています。

そんな非変性2型コラーゲンには、関節の可動性・柔軟性をサポートするはたらきや、関節炎を改善する効果があることがわかっています。

現在は、機能性関与成分に登録されており、関節やひざのトラブルを予防・改善したい人に向けた健康食品やサプリメントに利用されています。

非変性2型コラーゲンの効果・効能

非変性2型コラーゲンには、以下のような効果・効能があります。[※1]

■関節炎の予防・改善

非変性2型コラーゲンを摂取することによって、関節炎を改善するという研究結果が報告されています。また、関節炎からくる痛みを抑える作用があることもわかっています。

■関節の機能性をサポートする

非変性2型コラーゲンを摂取することで、関節の可動性・柔軟性が高まるという研究結果が報告されています。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

非変性2型コラーゲンが体内にどのように入り作用するのかを解説します。[※2]

食品やサプリメントから摂取した非変性2型コラーゲンは小腸へと運ばれます。そして、小腸にあるパイエル板という器官から、体内へと吸収されます。

パイエル板は、小腸内に入ってきた物質に対して免疫機能を発動させるべきかどうか見極めることで、免疫機能をコントロールしている器官です。体内へ入れていい栄養か、体にとって害となる物質なのかを判断している門番のようなイメージといえばわかりやすいかもしれません。

一般的なコラーゲン製品の場合、加工の過程でコラーゲンがバラバラになり、「エピトープ」という抗原が壊れてしまいます。するとパイエル板は、エピトープが壊れてしまったコラーゲンを危険物質とみなし、体内へ通してくれません。

エピトープはパイエル板を通過するための通行証のような役割です。通行証がなければ、パイエル板はコラーゲンのことを体内に入れて良い「栄養」と認識できません。

「非変性2型コラーゲン」は、熱を加えない特殊な方法で抽出されるため、エピトープが壊れずにきちんと残っています。エピトープという通行証をもっているので、パイエル板もすんなりと体内へ通してくれます。

普通のコラーゲンと違い、非変性2型コラーゲンは形を保ったまま吸収されるため、体内のコラーゲンと同じ成分であると認識され、異物を排除しようとする免疫の機能がストップ。結果的に関節軟骨の産生が促進されるというものです。

樹状細胞(体内に存在する免疫細胞)は、異物の情報をキャッチするとその情報を他の免疫細胞に伝えて、免疫細胞全体のはたらきを促します。

ウイルスが体内に入った際には、樹状細胞がウイルスの情報を集約。攻撃型の免疫細胞にその情報を伝え、害のない異物には攻撃しないように伝える役割があります。

非変性2型コラーゲンは、この樹状細胞のはたらきを利用して、自分たちコラーゲンは害がないと伝えることで過剰な免疫反応を抑制します。このはたらきを「(経口)免疫寛容」といいます。

関節で起きている炎症は免疫反応によって生じているため、過剰な免疫反応を抑える非変性2型コラーゲンのはたらきは関節炎抑制・関節痛緩和につながるのです。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

非変性2型コラーゲンは、以下のような人におすすめです。

  • 関節炎を予防・改善したい人
  • 階段の上り下りがつらい人
  • いつまでも元気に自分の足で歩きたい人
  • ひざに負担がかかる仕事をしている人
  • よくウォーキングや散歩をする人
  • スポーツをする人
  • 高齢の人

非変性2型コラーゲンの摂取目安量・上限摂取量

非変性2型コラーゲンは、1日に10mg以上摂取することが推奨されています。

そのため、非変性2型コラーゲンを含むサプリメントや健康食品などには、1粒あたり10mgの非変性2型コラーゲンを配合しているものが多いようです。

グルコサミンやコンドロイチンといった関節系の成分と比較すると、かなり少量です。中高年になると薬やほかのサプリも並行して摂取するので、量が少ないという点はメリットともいえます。

非変性2型コラーゲンのエビデンス(科学的根拠)

非変性2型コラーゲンを使った臨床試験のエビデンスをご紹介します。[※3]

臨床試験とは動物実験などで安全性が確認されたのちに行われる人を対象とした試験で、人に対して効果が期待できるかどうかが試されます。

アメリカやカナダで、デビッドC.クローリーらが行った試験では、非変性2型コラーゲンとグルコサミン+コンドロイチンを用いて、骨関節炎に対する効果を比較しています。

対象となったのは、骨関節炎と診断された40歳から75歳の男女52人です。対象者らは、ランダムに「非変性2型コラーゲン」「グルコサミン+コンドロイチン」のどちらかのサプリメントを摂取するグループにわけられました。ちなみに、グループの人数は半々(26人ずつ)となっています。

試験開始当日・30日目・60日目・90日目に対象者を診察し、サプリメントを服用する前と後の違いをアンケートで調査して、その結果を比較しました。

その結果、非変性2型コラーゲンを摂取していたグループのほうが、グルコサミン+コンドロイチンを摂取していたグループよりも骨関節炎の症状が改善しました。

痛みや歩きにくさ、階段の上り下りのしにくさといった項目において、非変性2型コラーゲンを摂取していたグループは20~40%改善。対するグルコサミン+コンドロイチンの改善率は6~15.4%でした。

このことから、非変性2型コラーゲンには骨関節炎の症状を和らげる効果があり、グルコサミン+コンドロイチンよりもその効果が高いということがわかりました。

研究のきっかけ(歴史・背景)

非変性2型コラーゲンの研究開発が進められるようになったきっかけは、アメリカの科学者であるユージン・ムーア博士の娘が若年性関節リウマチを発症したことです。

若年性関節リウマチによって歩くのもままならない娘の姿をみたユージン・ムーア博士は、なんとか娘の症状を改善させたいという一心で若年性関節リウマチの研究・調査を行いました。その結果、デビッド・トレンタム博士が所属するハーバード大学医学部で調査・研究が行われていた鶏胸部軟骨に含まれる成分(2型コラーゲン)にたどりついたのです。

その後、研究が進められ、熱や化学処理で変性しやすい2型コラーゲンの分子構造を変えることなく抽出することに成功しました。それが現在の「非変性2型コラーゲン」です。

非変性2型コラーゲンは現在機能性関与成分として認められ、サプリメントや健康食品の素材として使用されています。

専門家の見解(監修者のコメント)

順天堂大学医学部生化学・生体防御学の長岡功教授は、非変性2型コラーゲンが含まれている健康食品の医学的効果に関する質問に対して、以下のようにコメントしています。

「現在の機能性表示食品制度において、届出可能な効果は、疾病に罹患していない人の健康の維持および増進に役立つもの、あるいは適するものに限られています」

「『診断』『予防』『治療』『処置』など、医学的な表現は使用することができず、治療効果、予防効果を暗示する表示も使えません」

「ご質問のように機能性表示食品制度において、『関節痛に効果がある』と謳うことや『各種関節疾患で認められた医学的効果』について表示することは難しいと考えます」

(日本医事新報社「非変性Ⅱ型コラーゲンは関節に作用を及ぼすか?【関節の可動域や柔軟性をサポートするが、あくまでも健常人対象の研究に基づく」より引用)[※4]

現在、非変性2型コラーゲンを配合した機能性表示食品が数多く販売されています。その際は、パッケージに非変性2型コラーゲンの含有量が明記されているか、しっかり確認することをおすすめします。

非変性2型コラーゲンを手軽に摂取するには

非変性2型コラーゲンは、食品に含有されている量が少ないため、サプリメントで摂取するのが一般的です。

サプリメントには、カプセル・錠剤タイプなどがありますので、飲みやすい形状や大きさのものを利用すると良いでしょう。

また、販売しているメーカーによって商品価格や1日あたりの摂取量が異なります。1日に服用する量が何粒なのか確認したうえで、毎日飲み続けられる量のものを選びましょう。

一緒に摂るべき成分

非変性2型コラーゲンと一緒に摂ると良いとされているのは、関節軟骨の主成分「プロテオグリカン」です。プロテオグリカンの役割はコラーゲンとは異なります。

そのため、非変性2型コラーゲンを摂取するときは、プロテオグリカンを一緒に摂ると、関節のはたらきをサポートする効果が高まるでしょう。

プロテオグリカンを知らない人のために、プロテオグリカンを構成する3つの成分の特徴と役割について簡単にご紹介します。

グルコサミン
プロテオグリカンの主な構成要素であるアミノ糖。ヒアルロン酸やコンドロイチンの材料にもなります。
コンドロイチン(コンドロイチン硫酸)
ムコ多糖類の1種でプロテオグリカンの一部として存在する成分。関節のクッションとしてはたらきます。
ヒアルロン酸
ムコ多糖類の1種で保湿に優れています。関節軟骨のうるおいを保ち、動かしやすくしてくれます。

非変性2型コラーゲンの副作用

非変性2型コラーゲンにおける副作用はほとんど確認されていません。また、機能性関与成分として非変性2型コラーゲンを含んだ食品・サプリメントを販売しているさまざまな会社が過剰摂取の臨床試験を行い、安全性に問題ないことが確認されています。

このことから、非変性2型コラーゲンは比較的安全性が高い成分だといえるでしょう。