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タウリンの効果とその作用

体のさまざまな組織や臓器に存在するタウリン。カキやタコ、カツオなどの魚介類に豊富に含まれており、肝機能を向上させたり、コレステロール値を低下させたり、血圧の上昇を抑えたりするはたらきが報告されている成分です。ここではタウリン効果効能と作用のメカニズム、副作用、医薬品との相互作用などについてまとめています。また、摂取目安量やタウリンを多く含む食品、研究者のコメントなどもご紹介しています。

タウリンとはどのような成分か

タウリンとは、魚介類やタコ・イカなどの軟体動物に多く含まれている成分。別名「アミノエチルスルホン酸」とも呼ばれています。硫黄を含有するアミノ酸(含硫アミノ酸)の一種とされており、心臓や脳、肺など、体のあらゆる臓器に存在。なかでもタウリンが多いのは筋肉で、体内にあるタウリンの50~80%は筋肉にあるといわれています。[※1]

また、体内にあるタウリンの量は、体重の0.1%に相当するとされています。タウリンは体内で合成できる成分ではありますが、合成能力が低いため食べ物から摂取する必要があります。

体中に存在するタウリンは、環境に適応して細胞や体のバランスを正常に保つ「ホメオスタシス作用」をもっており、身体や細胞が常に正常にはたらくようにバランスをとる役目を担っています。[※2]

コレステロール値の低下や高血圧の予防、肝機能向上など、さまざまな効果・効能があるとされているタウリン。母乳にも豊富に含まれていることから、赤ちゃんの発育にかかわる栄養素だといわれています。[※3]

目の新陳代謝を促進することから、目の機能維持が期待されており、点眼薬の成分としても利用されています。また、滋養強壮に効果的との点から、栄養ドリンクにも配合されています。

タウリンの効果・効能

タウリンには、以下のような効果・効能が期待されています。[※4]

■肝機能の強化

肝細胞の再生や胆汁酸の分泌を促し、肝機能のはたらきを高めます。

■血圧の上昇を予防する

交感神経のはたらきによって起こる血管の収縮を抑えるため、高血圧の予防に効果的だとされています。

■コレステロールの値を下げる

胆汁の生成を促すはたらきによって、体内のコレステロールを消費し、コレステロールの値を正常にしてくれます。

■動脈硬化の予防

コレステロール値の上昇を抑えることから、動脈硬化を予防する効果が期待されています。

■目の機能維持

タウリンには、目の角膜の修復をサポートしたり、網膜のはたらきを守ったりする効果があります。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

タウリンは肝臓の機能を高める効果が報告されており、主に3つの作用がはたらいているとされています。

  1. 肝細胞の再生を促すはたらき
  2. 胆汁酸の分泌を促すはたらき
  3. 細胞膜の安定化

肝細胞が弱っているときにタウリンを摂取することで、肝細胞の再生が促進されて肝機能が正常化するとされています。

また、タウリン摂取で肝機能が高まることにより、胆汁酸の分泌が促進されます。胆汁酸の生合成にはコレステロールが使用されるため、胆汁酸の分泌が活発になると血液中のコレステロール値も低下します。[※5]

タウリンの摂取によりコレステロールの上昇を抑える効果があることから、動脈硬化を予防することもできるといわれています。このことにより、動脈硬化によって引き起こされる脳梗塞や心筋梗塞などの疾患の予防や高血圧の予防にもつながるとされています。[※4]

さらにタウリンは、アルコールを分解する酵素のはたらきを助ける効果があるといわれています。

アルコールが肝臓で代謝される際には、二日酔いの原因のひとつといわれている「アセトアルデヒド」が発生します。アセトアルデヒドは酵素のはたらきでさらに分解されて、最終的に水と炭酸ガスになり、呼気や尿、汗となって体外へ排出されます。[※6]この分解過程において、肝臓には大きな負担がかかってしまいます。タウリンは、アルコールを分解する酵素をサポートするはたらきがあるため、肝臓の負担を軽減してくれます。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

以下に該当する人は、積極的にタウリンを摂取することをおすすめします。

  • 肝機能を高めたい人
  • お酒をよく飲む人
  • コレステロール値が気になる人
  • 血圧が高い人
  • 目が疲れやすい人
  • 生活習慣病を予防したい人

タウリンの摂取目安量・上限摂取量

厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」において、食品から摂取する場合の1日あたりの上限摂取量は定められていませんが、一般的に約3,000~6,000mgの量を摂取するのが理想だとされています。[※7]タウリンは合成できる成分ではありますが、合成される量が少ないため、積極的に食事から補う必要があります。

タウリンのエビデンス(科学的根拠)

タウリンの作用に関する研究は数多く行われています。

静岡県立大学食品栄養科学部に所属する横越英彦教授らは、ラットを用いてタウリンのコレステロール低下作用に関する実験を行いました。ラットにコレステロールを与えて血清コレステロール濃度を上昇させたところ、肝臓に存在するタウリンの濃度が、コレステロールを摂取しないときと比較して1/8ほどに低下していることがわかりました。このことから、肝臓に流入したコレステロールを代謝するために大量のタウリンが使用されると考えられています。[※8]

また、哺乳類の母乳に多く含まれるタウリンは、子どもの成長に大きく影響していることが明らかになっています。

九州大学大学院生物資源環境科学府に所属する西川拓磨氏らが行った実験では、授乳期のマウスにタウリンとβアラニンを与えて、母乳に含まれるタウリン濃度の変化を測定しました。また、このタウリン濃度の変化が子マウスの初期成長や行動に対してどう影響するかも調べています。

実験では出産後のマウス24匹を3グループに分けて生理食塩水、タウリン、βアラニンをそれぞれ摂取させ、19日間子マウスへの授乳などを観察。出産後12日目に母乳サンプルと血液サンプルをとり、成分を分析しました。

結果、出産後マウスのうちβアラニンを与えたグループでは、母乳中のタウリン濃度が低くなったことがわかりました。加えて、βアラニンを与えたグループ子マウスは、他のグループの子マウスよりも体重が軽かったことがわかっています。このことから、妊娠中または授乳期間中にβアラニンを摂取すると母乳に含まれるタウリンが減り、子マウスの成長が阻害されることが示唆されました。[※9]

大阪市立環境科学研究所では板野一臣氏がコレステロール胆石におけるタウリンの作用に関する研究を行いました。研究では、コレステロール胆石を形成する飼料(胆汁酸とコレステロールを添加しもの)にタウリンを添加してマウスに与えた結果、コレステロール胆石の形成が減少することがわかっています。加えて、タウリンは植物油の過剰摂取によって起きる胆石の形成を抑えるはたらきもあることが確認されています。[※10]

研究のきっかけ(歴史・背景)

タウリンは1827年に、ドイツの生理学者であり解剖学者のフリードリヒ・ティーデマンと科学者のレオポルド・グメリンによって牛の胆汁中から発見されました。

タウリンという成分名は、雄牛を意味するラテン語の『taurus』から付けられたとされています。[※4]

その後タウリンの研究が進められ、硫黄を含むアミノ酸の一種であることや、ほとんどの動物の体内にタウリンが存在することが明らかになりました。また、タウリンのさまざまな作用から疲労回復効果が期待できることが知られるようになりました。日本国海軍は、第二次世界大戦時にタコの煮汁から得られるタウリンを利用して、軍人の疲労回復に役立てていたといわれています。[※11]

専門家の見解(監修者のコメント)

栄養学者であり、静岡県立大学食品栄養科学部教授を務める横越英彦先生は、タウリンについて以下のように述べています。

「タウリンは含硫アミノ酸が体内で利用されたときの最終代謝産物であり、一見、不用な成分にも思われるが、いろいろな臓器でタウリンを積極的に取り込もうとする機構(タウリントランスポーター)が存在している。このことから、タウリンは体にとって必要な成分と考えざるを得ない」(静岡県立大学 食品栄養科学部「タウリン(1) 臓器に含有、疲労回復に有効」より引用)[※12]

横越先生の見解からわかるように、タウリンは生命維持に欠かせない成分です。筋肉や心臓、肝臓、脳など、体内のさまざまな臓器に広く分布しており、体重の0.1%を占めているとされています。

タウリンは体内で合成されていますが、肝臓の代謝に使われて不足することもあるため、十分な量を得るためには体外から摂り入れる必要があります。

タウリンを多く含む食べ物

タウリンは、鳥や魚、昆虫、動物など多くの生物(植物を除く)に含まれている成分。そのなかでも、マグロやカツオ、イカ、カキ、アサリなどの魚介類に豊富に含まれています。特にカキには100gあたり1130mgのタウリンが含有されているといわれています。[※13]また、カツオやブリなどの魚では血合いの部分にタウリンが多く含まれています。

タウリンを多く含む食品100gあたりに含まれるタウリンの量をご紹介します。[※1]

  • はまぐり…1080mg
  • タコ…830mg
  • イカ…770mg
  • ホタテ…670mg
  • アサリ…380mg
  • カツオ…210mg

タウリンは水に溶けやすい成分なため、調理過程で減少してしまいます。生の状態と比較すると、煮る工程で5割、焼く工程で3割ほど減少するとされています。[※4]

タウリンが流れ出てしまった煮汁ごと摂取できるようにスープや煮漬にするか、生で食べられる刺身や寿司で食べると良いでしょう。

相乗効果を発揮する成分

タウリンは、ビタミンCと一緒に摂取することで胆石を予防する相乗効果が期待できます。

タウリンは胆汁中に最も多く含有する胆汁酸と結合し、体内の脂肪を溶かす作用をもっています。このはたらきから、コレステロールによって形成された胆石を溶かし、結晶化を予防してくれるのです。ビタミンCを一緒に摂取することで、コレステロールを溶かす胆汁酸の分泌が増えるため、胆石予防の相乗効果が生まれます。[※14]

タウリンに副作用はあるのか

タウリンはもともと体内で合成されている水溶性の成分です。そのため、過剰摂取した場合でも必要な量は体内のさまざまな部位で利用され、余ったタウリンは体外へと排泄されます。[※15]

副作用はほとんどないといわれていますが、医薬品として摂取した場合には、吐き気や下痢などの副作用が報告されています。[※16]摂取時に体調に異変を感じたら、医療機関へ相談するようにしましょう。

注意すべき相互作用

タウリンは、気分安定薬である炭酸リチウムとの相互作用が懸念されています。

タウリンは尿の量を減少させて、リチウムによる尿の排泄速度を低下させるおそれがあるとされています。このはたらきにより体内にあるリチウムの濃度を高める場合があります。[※17]

参照・引用サイトおよび文献

  1. 【PDF】ふたば薬局「もっと知りたい!栄養のはなし Vol.27 2015.3.15」
  2. 宮島薬品株式会社「タウリン」
  3. 厚生労働省e-ヘルスネット「タウリン」
  4. わかさの秘密「タウリン」
  5. healthクリック「ヘルスケアライブラリ|タウリンと脂肪肝の関係性について」
  6. healthクリック「ヘルスケアライブラリ|アセトアルデヒドとは」
  7. healthクリック「健康用語辞典|タウリン」
  8. 【PDF】横越英彦、西村直道、小田裕昭「食餌性高コレステロール血症におけるタウリンのコレステロール低下作用」(Nippon Nogeikagaku Kaishi Vol.75, No.9, pp .958~960, 2001)
  9. 【PDF】西川拓磨、長町さつき 他「授乳期間中の母マウスへのタウリン及びβーアラニン投与が仔マウスの初期成長と行動に及ぼす影響」(日本ペット栄養学会誌 第20巻 2017)
  10. 【PDF】板野一臣「魚介類に含まれる成人病予防物質(2)タウリン」(生活衛生(Seikatsu Eisei)32,21~24(1988))
  11. 静岡県立大学 食品栄養科学部「タウリン(1) 臓器に含有、疲労回復に有効」
  12. 静岡県立大学 食品栄養科学部「タウリン(10) 血液の働きをサポート」
  13. 静岡県立大学 食品栄養科学部「タウリン(2) サバやカキ…魚介類に豊富」
  14.  『正しく知れば体が変わる! 栄養素の摂り方便利帳』(中村丁次 PHP研究所 2017年12月発行 p16)
  15.  静岡県立大学 食品栄養科学部「タウリン(8) 臓器の機能 維持に必要」
  16. KEGG MEDICUS「タウリン」
  17.  『健康食品・サプリメント成[成分]すべて ナチュラルメディシン・データベース』
    (一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター編 同院書院 2017年1月:p573「タウリン」)