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スッポンの効果とその作用

スッポンはアミノ酸の宝庫のような食材です。8種類の必須アミノ酸を始め、体細胞を構成するアミノ酸のほとんどをバランスよく含んでいます。そのほか、疲労を回復するタウリンやビタミンB群、美肌効果をもつコラーゲン、コレステロールや中性脂肪を減らす必須脂肪酸など、さまざまな生理機能をもつ栄養成分が充実している食品です。

スッポンとはどのような食品か

スッポンはカメ目スッポン科に属するカメの仲間で、南アメリカをのぞく熱帯から温帯にかけて広く生息しています。一般的なカメとは異なり、甲羅が柔らかく、水中で長時間活動できるのが特徴です。

スッポンは爪、甲羅、膀胱、胆のう以外はすべて食べることができます。栄養価が高く、古くから強壮剤や高級料理の食材として利用されてきました。

食用とされるのは、主に「キョクトウスッポン」「シナスッポン」と呼ばれる種類です。野生のスッポンの生息数は近年減ってきており、2016年には国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧種リスト(レッドリスト)に加えられました。[※1] 

現在、国産の食用スッポンのほとんどが養殖されている個体です。

コラーゲンや各種アミノ酸、ビタミン、ミネラル、カルシウムなどを豊富に含んでいるため、鍋や料理の食材として使われるだけでなく、乾燥粉末や抽出オイルを使った健康食品も数多く市販されています。

また、甲羅を乾燥させたものは「土鼈甲(どべっこう。土別甲とも)」といい、漢方薬の生薬として使われています。

スッポンの効果・効能

スッポンには次のような効果・効能があるといわれています。

■滋養強壮・疲労回復

スッポンには必須アミノ酸やビタミン、ミネラルが豊富に含まれています。栄養価が高く、滋養強壮や疲労回復の効果があるといわれています。

■美肌効果

良質のコラーゲンが多く含まれているため、皮膚にハリやうるおいを与え、肌を若々しく健康にたもつ効果があります。

■不飽和脂肪酸が血液を健康にたもつ

リノール酸をはじめとするさまざまな必須脂肪酸(不飽和脂肪酸)を含んでいます。不飽和脂肪酸のもつ生理機能性から、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らし血液を健康にたもつ効果が期待できます。

■カルシウムを補い骨や歯を健康にたもつ

スッポンを丸ごと粉砕したスッポン粉末食品には、カルシウムが非常に多く含まれています。そのため、不足しがちなカルシウムを補い、骨や歯を健康にたもつ効果が期待できます。

スッポンに含まれる成分とは

スッポンには、9種類の必須アミノ酸すべてがバランスよく含まれています。さらに、骨や筋肉、皮膚、内臓など体細胞を構成する20種類のアミノ酸のうち、18種類をスッポンから摂ることができます。特に、メチオニンやシステインなど、卵以外の一般食品にはあまり含まれず、不足しがちな「含硫アミノ酸」が豊富に含まれています。[※2]

そのほか、肝臓のはたらきを助け、疲労回復効果をもつタウリンや、高い抗酸化作用をもつカルノシンなども多く含まれており[※3]、まさに「アミノ酸の宝庫」。

スッポンは非常に良質なたんぱく源であり、滋養強壮や体力増強作用があるといわれるのは、スッポンのもつさまざまなアミノ酸パワーによるところが大きいといえるでしょう。[※4]

ビタミンAとビタミンB群も豊富で、B群に関してはビオチンをのぞく7種類のビタミンがすべて含まれています。[※5] 

体内のエネルギー生成や細胞の新陳代謝に深く関わりのあるビタミンB群が豊富であることも、スッポンが健康維持に役立つとされる理由のひとつであると考えられます。

スッポンは甲羅の裏側2cm程度の部分に「エンペラ」と呼ばれる軟骨があり、コラーゲンが豊富に含まれています。[※6] ビタミンAとビタミンB1、B2には皮膚と粘膜の健康維持を助けるはたらきもあります。

スッポンに美肌効果があるといわれるのは、コラーゲンとその効果を高めるビタミンを同時に摂取できるからなのです。

不飽和脂肪酸が多いこともスッポンの栄養の特徴です。動物でありながら、植物性の不飽和脂肪酸で、必須脂肪酸でもあるリノール酸を100g中910mg、α-リノレン酸を550mgも含んでいます。[※7] 

これらの必須脂肪酸は血液中のコレステロール値や中性脂肪値をさげたり、血栓を防止して動脈硬化を予防したりする作用があるといわれています。[※8][※9]

このほかスッポンに含まれる不飽和脂肪酸には、生活習慣病の予防やアレルギー症状を改善に効果があるEPA(エイコサペンタエン酸)、血管の健康を維持し、記憶力を高める効果があるDHA(ドコサヘキサエン酸)、脳細胞の生成や脳のはたらきを高める効果があるアラキドン酸、肌や血管の健康維持に役立つパルミトレイン酸などがあります。[※10][※11][※12][※13]

マカデミアナッツにも含まれ、美肌効果が高いといわれるパルミトレイン酸は、肝臓の脂質の代謝を促進してインシュリンの感受性を上げ、高血糖や高脂血症を軽減する作用があることが動物実験の結果わかっています。[※14]

ミネラルに関しては、特徴的に多く含まれている成分があるわけではありません。「スッポンは貧血によい」とよくいわれますが、鉄分の含有量はほかの動物性たんぱく質と変わりません。

しかし、豊富なアミノ酸に加えて、赤血球の生成を助け造血を促すビタミンB12や葉酸を含むことが貧血の改善につながっているのではないかと考えられます。

カルシウムは、可食部にはあまり含まれていません。ただ、スッポンを丸ごと粉砕したスッポン粉末食品には牛乳の約10倍のカルシウムが含まれているといわれています。[※15] 

丸ごと粉砕することにより、骨や甲羅に含まれている栄養も余さず抽出できるので、効率よくカルシウムを摂取することが可能です。

スッポンには骨の材料となるマグネシウムやリン、骨の形成に欠かせない亜鉛や銅などのミネラルも含まれています。

2003年には、富山医科薬科大学(現在の富山大学薬学部)により、スッポン粉末食品を使った動物実験で骨粗しょう症に対する予防効果があることが確認されました。[※16]

スッポンの機能性成分の作用機序については明らかになっていない部分も多いのですが、動物実験の蓄積データでは、肝機能障害の改善、疲労やストレスの軽減、抗がん作用などの生理機能性をもつことがわかっています。[※17]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

栄養価の高い食品で滋養強壮に効果が期待できるため、疲れ気味のかた、活力をアップしたいかた、健康で元気な毎日を送りたいかたなどにおすすめできるといえます。

コラーゲンや美肌に効果のあるビタミンをたっぷり含んでおり、美肌やアンチエイジングを目指したいかたにもぴったりです。

コレステロール値や中性脂肪値を下げる不飽和脂肪酸も豊富です。動脈硬化など生活習慣病が心配なかたは健康補助食品として摂取してみてはいかがでしょうか。

スッポンの摂取目安量・上限摂取量

料理として食べる場合はとくに設定されていません。高級食材なので、毎日食べるのは難しいでしょう。スッポンの栄養成分を手軽に摂取するなら、サプリメントがおすすめです。

健康食品・栄養食品関連の企業による業界団体である財団法人日本健康・栄養食品協会(JHNFA)は、スッポンを使った健康食品のガイドラインを次のように定めています。

■スッポン粉末食品

スッポンを原料とし、凍結粉砕もしくは熱風乾燥によって作られたスッポン粉末(スッポン原末)を加工した食品。規格成分の含有量により「スッポン粉末食品」「スッポン粉末加工食品」「スッポン抽出末含有食品」の3つがある。1日の摂取目安量は、スッポン乾燥末として660mg、抽出末として160mg。[※18][※19]

■スッポンオイル食品

スッポンを原料として得られたスッポンオイルを含有している食品。規格成分の含有量により「スッポンオイル食品」(95%以上含有)「スッポンオイル加工食品」(60%以上含有)の2つがある。1日の摂取目安量はスッポンオイルとして1.5g。[※20][※21]

スッポンのエビデンス(科学的根拠)

東京大学薬学部・斎藤洋教授の研究グループは、スッポンの疲労回復効果についてマウスを使った実験を行っています。

スッポンを丸ごと凍結粉砕した粉末をつかい、マウスを1「体重1kgあたり500mgを含むえさを与えたグループ」、2「同じく250mgを与えたグループ」、3「普通のえさだけを与えたグループ」、の3つにわけ、10日間、毎日1時間、ロープを強制的に登らせ、その後えさを与え、マウスたちの疲労の溜まり具合を調べました。

その結果、3のグループが10日目には初日の60%しかロープに登れなかったのに対し、1のグループは95%、2のグループは90%と、最後の日まで元気にロープを登ることができ、スッポン粉末に疲労回復効果があることが確認されました。[※22]

研究のきっかけ(歴史・背景)

2017年4月、福井県勝山市で世界最古のスッポンの化石が発見されました。化石が発見された「北谷層」は約1億2000万年前の地層で、白亜紀の前期にあたります。

白亜紀の中ごろ(約1億年前)になると中央アジアでも化石が見つかり始め、白亜紀後期には北米やヨーロッパからも化石が発見。当時の地球では史上最高規模の温暖化が進んでおり、その影響で湿潤化した沿岸部を中心に、スッポンは世界中に広がっていったと考えられています。[※23]

じつは、スッポンの生物としての形態は、約1億2000万年前とほとんど変わりません。現代種も化石種も甲羅の骨組織の構造が同じで、遺伝子的にトカゲやヘビより恐竜に近いことが、理化学研究所などの研究で明らかになりました。シーラカンスや古代魚と同じ「生きた化石」なのです。[※23][※24]

スッポンの健康食品としての歴史が始まったのは3000~4000年前の中国です。楊貴妃などの宮中料理として愛用されたという記録もあるといわれています。

約2000年前に編纂された中国最古の薬物書とされる『神農本草経』にはすでに、スッポンの甲羅を干した「鼈甲」の薬効についての記述があり、脂、頭、血、卵、爪、胆など、あらゆる部分が薬として用いられていたそうです。[※25][※26]

日本では縄文時代の貝塚や弥生時代の登呂遺跡でスッポンの骨が発掘されていますが、広く食用とされるようになったのは江戸時代中期であるといわれています。

スッポンには滋養強壮などさまざまな効果があるため人気となりましたが、スッポンは成長するのに時間がかかります。そのため次第に品薄となり、高級食材となっていったようです。

そうして明治33年、浜名湖の服部中村養鼈場が日本で初めてスッポンの養殖を開始しました。[※27]

その後、スッポンに関する薬理学的な研究が進み、1980年代には近畿大学薬学部の久保道徳教授、富山医科薬科大学の難波恒雄教授、東大薬学部の斎藤洋教授など多くの研究者たちが学術論文を発表。現在も機能性成分の分析や作用機序に関する研究が続けられています。

専門家の見解(監修者のコメント)

スッポンを使った健康食品が市場に出回り始めたのは1980年代のこと。それから40年近くたちますが、今でもその人気はおとろえません。

その理由について岩谷産業株式会社自然産業本部健康産業部長の庭野隆さんは

「やはり長い歴史に裏付けられた信頼できる健康食材だったからだと思います」

と述べています。[※16]

以前は「滋養強壮・勢力増大」など男性向けの色合いが強く、やや高価なイメージがあったスッポンのサプリですが、近年の傾向としては、訴求ターゲットが女性よりにシフトし、価格帯も手頃なものが増えてきているようです。

「すっぽんにはマイナスのイメージを持たれる消費者も依然として多いのですが、その一方で豊富なアミノ酸とコラーゲンが美肌づくりに良いと、女性の支持者が年齢を問わず急速に増えてきました。

テレビのグルメ番組でも、すっぽん鍋やすっぽん雑炊が取り上げられることが多くなり、静かなブームといった感さえあります」(庭野さん)[※16]

たしかに「スッポン サプリ」で検索すると、美肌効果をうたうサプリメントが多くヒットします。2017年9月には、スッポンコラーゲンを使用したスキンケア用品も誕生しました。[※28]

今後も健康と美容という2つのアプローチから、今までになかった新しい商品開発が続けられていくことと思われます。

スッポンを上手に摂取するには

料理にする場合、スッポン鍋や雑炊、焼き物、揚げ物など、フグと同じような調理方法が知られています。ぶつ切りにしたスッポンにたっぷりの酒をふり、昆布、しょうが、ネギと一緒にじっくりと煮込んで食べます。

フランス料理では、「トルチェ」というコンソメスープが有名です。クリーム煮、トマト煮などの煮込みにすることもあります。中国では薬膳料理として、スープ蒸し、姿煮などにします。[※29]

スッポンをおいしくいただくなら調理するに限りますが、なかなか家庭でスッポン鍋は…という人もいるかもしれません。そんなときにはやはり、健康成分を効率的に摂取できるサプリメントがおすすめです。

スッポン粉末を加工したもの、スッポンオイルを使ったものがあり、それぞれ含まれている成分が違います。カプセル、錠剤、パウダーなどさまざまな形状のものがあるので、摂りやすいものを選ぶとよいでしょう。

相乗効果を発揮する成分

スッポンにはビタミンCやEがほとんど含まれていません。ビタミンCやEは、抗酸化作用が高く、美肌づくりに欠かせないビタミンです。一緒に摂ることで、肌の健康や美容により高い効果が期待できます。

鉄分もおすすめです。赤血球や血液をつくる手助けをするビタミンの含有量に対して、鉄分自体はそれほど多くないので、鉄分を含んだ食品を一緒に摂ることで、貧血を予防する効果を高めることができます。

スッポンに副作用はあるのか

スッポンやスッポンをつかった健康食品に関して、重篤な副作用や健康被害などは報告されていません。ただし、スッポンエキスに含まれているリノール酸は、摂りすぎると逆に生活習慣病を悪化させる場合もあるといわれています。[※4] 

カルシウムを多く含むスッポン粉末サプリメントの場合も同様です。1日の目安量を守って適切に摂取するようにしましょう。

参照・引用サイトおよび文献

  1. 日本経済新聞「野生のスッポン、絶滅危惧種に 捕獲規制には直結せず」
  2. ナガセスッポン養殖場「すっぽんについて」
  3. 【PDF】公益社団法人 日本水産学会 日本水産学会誌45巻(1979)5号「スッポン筋肉の含窒素エキス成分に関する研究」
  4. 一般社団法人 日本サプリメント協会 サプリメントデータベース「スッポン」
  5. 【PDF】文部科学省 日本食品標準成分表2015年版(七訂) 肉類
  6. わかさ生活 わかさの秘密「スッポン」
  7. 文部科学省 食品成分データベース
  8. 日清オイリオ 植物油辞典「リノール酸」
  9. 日清オイリオ 植物油辞典「α-リノレン酸」
  10. 日経グッデイ サプリメント事典「エイコサペンタエン酸」
  11. 日経グッデイ サプリメント事典「ドコサヘキサエン酸」
  12. 一般社団法人 日本サプリメント協会 サプリメントデータベース「アラキドン酸」
  13. わかさ生活 わかさの秘密「マカダミアナッツ」
  14. Chronic administration of palmitoleic acid reduces insulin resistance and hepatic lipid accumulation in KK-Ay Mice with genetic type 2 diabetes, Central Research Laboratory, Tokyo Innovation Center, Nippon Suisan Kaisha
  15. ナガセスッポン養殖場「すっぽんサプリに含まれるカルシウム等ミネラル含有量と種類」
  16. 【PDF】日本貿易会月報オンライン ズームアップ 2007年3月号(No.646)「大昔から受け継がれてきが健康食材『すっぽん』に取り組む」
  17. CiNii 「スッポンの薬理学的研究」馮紅
  18. 日経グッデイ サプリメント事典「スッポン粉末食品」
  19. JHNFA「スッポン粉末食品 規格基準の概要」
  20. 日経グッデイ サプリメント事典「スッポンオイル食品」
  21. JHNFA「スッポンオイル食品 規格基準の概要」
  22. 栄養と料理デジタルアーカイブス 平成元年55巻9号「食生活レーダー 新聞・専門誌などに見る“食”の話題『スッポンの疲労回復効果は明らか!?』」
  23. academist Journal 研究コラム「世界最古のスッポンを福井県で発見―バラバラの化石片から証拠を得るには」中島保寿
  24. withnews IT・科学「スッポン、地味に『生きた化石』だった 世界最古の化石、福井で発見」影山遼
  25. ナガセスッポン養殖場「すっぽん健康食品の歴史」
  26. 【PDF】一般社団法人 日本調理科学会 日本調理科学会誌33巻(2000)1号「薬膳原理と食・薬剤の効用(2)―薬膳に用いる身近な食物―」
  27. (株)服部中村養鼈場「すっぽん料理について」
  28. 黒門市場発スッポンコラーゲン化粧品 クロモンコスメティック「スペリオルワン開発秘話」
  29. 小学館「FOOD’S FOOD 新版 食材図典 生鮮食材篇」