スルフォラファンの効果とその作用

肝機能のサポートやがんなどの病気の予防など、健康維持に役立つ効果が次々と見出されているスルフォラファン。精神疾患への作用や便通の改善効果などについても研究されています。スルフォラファンはブロッコリーの新芽に多く含まれ、普段の食事に取り入れやすい天然のサプリメントとして注目されています。

こすぎレディースクリニック 椎名邦彦先生監修

スルフォラファンとはどのような成分か

スルフォラファンはブロッコリーや大根、わさびなどのアブラナ科の野菜やスパイスに含まれている成分です。名前にはピンとこなくても、ピリッとする辛味成分の正体といえばイメージしやすいかもしれません。

スルフォラファンはイソチオシアネート系のイオウ化合物で、辛み成分の一種。最近の研究により、次々と健康に役立つ機能が発見されている注目の成分なのです。

スルフォラファンを摂取して体内の各細胞に取り込まれると、からだを防御する酵素の生成が促進します。活性酸素の除去や有害物質の無毒化に役立つスルフォラファンの働きは、さまざまな病気の予防効果があることが明らかにされています。[※1]

近年の健康志向により、とても多くのスーパーフードがメディアなどでも取り上げられていますが、その中でもスルフォラファンは、毎日の食事に気軽に取り入れやすく、かつ多くのエビデンスを得られている成分であると言えます。

スルフォラファンの効果・効能

スルフォラファンには、以下のような効果効能が知られています。

■肝機能を高める効果

スルフォラファンには肝臓の解毒酵素を活性化する作用があり、肝機能をサポートする効果が注目されています。大気汚染の有害物質の解毒作用については、ヒト試験においても有効とされる結果が示されています。[※2]

肝臓はエネルギーの代謝や有害物質の解毒・胆汁の生成などを行う重要な臓器です。肝臓のケアはからだ全体の健康維持や増進に直結しています。スルフォラファンは肝機能を高めることで、健康や美容への優れた効果が期待されているのです。

■がんなどの病気の予防効果

スルフォラファンは、多くの動物実験で、がんに対する予防効果が報告されています。[※1]

がん発生のメカニズムは、発がん物質や活性酸素が細胞を傷つけ、正常な細胞をがん細胞に変えてしまうというものです。ヒトのからだにはそれに対抗する「解毒力」「抗酸化力」「免疫力」という防御機能が備わっていて、普段からこれらの力を高めておくことが、がんの予防には大切です。

スルフォラファンは、上記に挙げたヒトの防御機能を高めるのに効果的な成分だと考えられています。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

スルフォラファンが肝臓で果たす役割は、肝機能の改善、強化にとどまりません。そこから派生して、がんの予防などにつながっていきます。

その理由は、スルフォラファンが、さまざまな発がん性物質や有害物質を解毒化して排出する「フェーズ2」という酵素の生成を促すためです。

フェーズ2酵素を作るためには、Nrf2(NF-E2-related factor 2)というたんぱく質が必要です。Nrf2はからだが有害物質の害にさらされるとDNAと結合し、フェーズ2酵素を生成してからだをダメージから守ります。

Nrf2は有害物質の有無に関わらず、体内で常に作られています。ですが、有害物質がない状態では、Nrf2は機能しません。

そこでKeap1というたんぱく質が、センサーとしての役割を担い、Nrf2が必要のないときには作られたNrf2を分解し、有害物質を感知するとNrf2の分解を停めてフェーズ2酵素が生成されるようにするというように、解毒代謝をコントロールしているのです。

このフェーズ2酵素の分泌を誘導するメカニズムは、“Nrf2-Keap1制御システム”と呼ばれ、細胞を酸化ストレスから守るために非常に大切です。

ただ、このNrf2-Keap1制御システムには弱点があります。それは、Keap1が有害物質を感知してからフェーズ2酵素の解毒作用が働くまでは、約8時間というタイムラグが生まれてしまうことです。

スルフォラファンにはKeap1によるNrf2の分解を停止して、フェーズ2酵素の生成を促す作用があります。そのため、スルフォラファンを摂取しておくことで、有害物質を感知したさいに、すぐにからだをダメージから守ることができるのです。[※3]

Nrf2の働きは加齢などで低下しますが、スルフォラファンを摂取することで、加齢により低下したNrf2の活性を高めることもわかっています。[※3]

さらに、Nrf2は最近の研究で、炎症を抑制する仕組みが解明されるなど、細胞をさまざまなダメージから守ってくれることも明らかになっています。[※4]

Nrf2を活性化するスルフォラファンには、健康なからだの維持だけではなく、がんなどの命にかかわる病気の予防効果が非常に期待されている成分でもあるのです。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

スルフォラファンは肝機能のサポートに有効とされ、あらゆる人の健康維持に役立つことが期待されます。

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほどに病気の自覚症状が出にくい臓器です。そのため、気づかないあいだに病気が進行していた、ということも少なくありません。

普段から飲酒や暴飲暴食、強いストレスなどで肝臓を酷使している人は、食事にスルフォラファンを取り入れ、肝臓をケアしてあげるとよいでしょう。

スルフォラファンの摂取目安量・上限摂取量

スルフォラファンの摂取量の目安や上限などは定められていません。

スルフォラファンの肝機能を高める効果は、3日間程度持続する[※5]と言われていますので、3日おきを目安に、普段の食事に取り入れて摂取するとよいでしょう。

スルフォラファンのエビデンス(科学的根拠)

ヒトを対象にしたスルフォラファンの肝機能改善効果は、東海大学医学部付属東京病院とカゴメの研究チームの実験によって得られています。

γ-GTPなどの肝機能マーカーの値が高い男性52名を対象に、スルフォラファンを10mg含むカプセルを摂取する24名とプラセボを摂取する28名に分け、1日3粒ずつを2か月間継続して摂取させました。

すると、スルフォラファンを摂取したグループでは、主要な肝機能マーカー(ALTとγ-GTP)の値の改善が認められたということです。[※6]

また、胃ガンの原因になるピロリ菌を減らし、がんを予防する効果についてはこれまでも動物実験の結果で示されていましたが、ヒトに対する検証結果も発表されています。

谷中昭典博士らの研究チームは、ピロリ菌感染者25名を対象にした試験を実施。発芽3日目の高濃度スルフォラファン含有のブロッコリースプラウト1日70gを8週間継続して摂食させたところ、ピロリ菌が8分の1に減少したという結果が得られました。[※7]

またスルフォラファンには、新たな可能性が次々に発表されています。

2015年、橋本謙二博士らの研究チームは、動物実験の結果から小児期にスルフォラファンを摂取することで、統合失調症の予防につながる可能性を示唆。今後ヒトに対する検証を進めていくということです。[※8]

2017年には便通の改善効果についての論文が発表されています。

谷中昭典博士の研究チームによると、軽度な便秘症の56名を、スルフォラファンを豊富に含むブロッコリースプラウトを摂取するグループ、スルフォラファンを含まないアルファルファスプラウトを摂取するグループに分け、毎日20gを4週間継続摂取させました。

その結果、ブロッコリースプラウトを摂取したグループに、便通の改善が認められたということです。[※9]

研究のきっかけ(歴史・背景)

アメリカのジョンズ・ホプキンス大学医学部教授であるポール・タラレー博士は、1992年、がん予防に効果が期待できる成分としてブロッコリーに含まれるスルフォラファンを発見。

研究を進める中でブロッコリーの新芽にスルフォラファンが多く含まれていることに注目し、ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームは、高濃度にスルフォラファンを含有するブロッコリースプラウトを開発しました。

1997年、高濃度のスルフォラファン研究成果が発表されると、ブロッコリースプラウトはアメリカでたちまちブームとなります。[※3]

一方、1997年に日本の山本雅之博士らの研究チームは、スルフォラファンが解毒作用を活性化するメカニズムを明らかにします。[※3]

日本の企業では、食品メーカーであるカゴメが早くからスルフォラファンの機能に注目して研究を進めていて、2014年にはヒトでの肝機能の改善効果を確認するという成果を得ています。[※6]

現在でもスルフォラファンは、世界の研究機関で、さまざまな研究が進められています。

専門家の見解(監修者のコメント)

筑波大学教授で、医学博士の谷中昭典氏は、WEBサイトのインタビューの中で、がん予防という観点からのスルフォラファンについて、次のような見解を示しています。

「生活習慣を見直し、悪い因子を取り除くことでがん発症リスクを下げることが可能ということです。しかし、そうはいっても悪い因子を、まったくゼロにすることはまず不可能です。

そこでもう一つ、悪い因子で増加する酸化ストレスを抑えるために、生体の防御系を強化することも、がん予防には重要になってきます。その観点から、最も身近で継続的に実践できる一つとして、野菜の摂取が挙げられます。

特に、抗酸化作用にすぐれた成分が豊富に含まれているものを、賢く選ぶことが望ましいでしょう。私は、その一つとして、スルフォラファンを豊富に含むブロッコリー スプラウトの可能性に期待しています」

(スルフォラファン・ラボ インタビュー INTERVIEWS.02 谷中 昭典より引用)[※10]

また、千葉大学教授で薬学博士の橋本謙二氏は、スルフォラファンの精神疾患への作用についての研究を進める第一人者です。橋本氏は

「スルフォラファンの研究を通して、ブロッコリースプラウトなどの身近な野菜に含まれている成分がこれほどまで健康に寄与する可能性を持っているのかと、正直なところ大変驚いています。

普段の食事で摂る栄養に気をつけることで予防が見込めるなら、発症してしまってから薬で治療するよりもメリットが大きいことは明白です」

(スルフォラファン・ラボ インタビュー INTERVIEWS.03橋本 謙二より引用)[※11]

と語ります。

がんや精神疾患など幅広い分野において、予防医学に役立つことが期待されるスルフォラファン。身近な食材で得られる大きな可能性は、専門家のあいだでも注目を集めているようです。

スルフォラファンを多く含む食べ物

スルフォラファンはブロッコリー、キャベツ、カリフラワー、ケールなどのアブラナ科の野菜に含まれています。ただ、スルフォラファンを豊富に含む食品といえば、ブロッコリースプラウトがナンバーワンです。[※1]

スプラウトとは、食べられる発芽野菜の総称です。発芽したばかりのスプラウトは栄養価が高い食品で、天然のサプリメントのような存在です。

その中でもブロッコリーの発芽野菜にはスルフォラファンがたっぷり含まれています。スーパーでもブロッコリースプラウトは1パック100円くらいから購入することができる身近な食材です。

ブロッコリースプラウトを選ぶさいに注意したいのは、スルフォラファンの含有量は、ブロッコリーによって大きく差があるということです。[※1]

スルフォラファンを高含有している「ブロッコリースーパースプラウト」は、日本では村上農園が、高濃度スルフォラファンの特許を持つジョンズ・ホプキンス大学とライセンス契約を結んで生産しています。[※5]

また、スルフォラファンの吸収をより高めるためには、食べ方も大切になります。ブロッコリースプラウトは、生のままよく噛んだりすり潰したりして細胞を壊すことで、効率的に摂取することができます。[※1]

ちなみに、スルフォラファンは食品中でスルフォラファングルコシノレートとして存在しています。ブロッコリーなどに含まれる酵素の力で、体内で分解されることによりスルフォラファンに変換されます。[※12]

サプリメントを利用する場合は、スルフォラファンが体内で吸収されるように作られているかをしっかりと見極めて選ぶようにしましょう。

相乗効果を発揮する成分

スルフォラファンは優れた効果をもたらす成分として知られていますが、それだけを摂取すればよいというわけではなく、バランスのよい食生活の中にうまく取り入れていくことが何より大切になります。

スルフォラファンを多く含むブロッコリースプラウトは、クセも強くないので、サラダに入れたり、冷奴や納豆にトッピングしたりと、さまざまなメニューに取り入れてみましょう。ほかの緑黄色野菜や良質なたんぱく質などと組み合わせることで栄養バランスが高まります。

生のままよくすり潰して摂取することで吸収が高まるので、スムージーの材料としてもおすすめです。

スルフォラファンに副作用はあるのか

スルフォラファンには今のところ副作用に関する報告はありません。もともと植物性食品由来の成分ですから、安全性はとても高いと考えられます。

ただ、過剰摂取など極端な摂り方をしてしまうと、どんなに優れた成分でもどこかに弊害が出てくる可能性があります。とくにサプリメントなどからの摂取であれば、必ず用法・用量を守って安全に摂取してください。