ソルビトールの効果とその作用

食品添加物として幅広く使用されているソルビトールは、いろいろな食品に含まれる甘味料です。ここでは利用実績が多く安全性が高いといわれるソルビトールについて、効果・効能や作用をまとめています。効果に関する科学的根拠や専門家の見解も掲載しています。

ソルビトールとは

ソルビトールはブドウ糖からつくられる糖アルコールの一種で、砂糖の60%ほどの甘味を持っています。自然界ではリンゴやプラムなどのバラ科植物に含有。特にドライプルーンのなかに入っているソルビトールの含有量は全体の20%にものぼります。

低カロリーでスッキリとした甘みから、さまざまな用途に使われているのが特徴です。[※1] 国内で最初に食品添加物として指定された成分でもあります。

水分を吸収しやすく水によく溶けることから、甘味料や食品添加物として、食品の水分量や味を調整するために配合されます。[※2][※3]

最近では歯磨き粉や化粧品、サプリメント、便通を良くするための薬などにも使われています。

ソルビトールは発音が似ていることから、食品添加物のソルビン酸と混同されることがありますが、まったくの別物です。

ソルビン酸は脂肪酸の一種であり、微生物に対して抗菌作用を持つため、保存料として食べ物に添加されます。腸内細菌に影響を及ぼすことが考えられるため、摂りかたによっては健康を害する可能性があるようです。[※6]

ソルビン酸はソルビトールのような甘味を持っていないため、同じ用途で使用することはできません。

ソルビトールの効果・効能

ソルビトールには以下の効果があることが確認されています。[※7][※8]

■血糖値の上昇を抑える

ソルビトールは体内で消化できないため、血糖値を上昇させずに保つことができます。

■虫歯になりにくい

糖アルコールは虫歯をつくるミュータンス菌の栄養にならないので、虫歯になりにくいと考えられています。

■便通を良くする

ソルビトールは強い緩下(便通を良くする)作用を持つことから、下剤として用いられます。

■抗菌作用

実験により、ソルビトールには特定の菌に対する抗菌作用があることがわかっています。

■肌の保湿に役立つ

肌を保湿する効果が期待できることから、化粧品に配合されています。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

ソルビトールには強い緩下作用があることが知られています。

ソルビトールは体内に入り腸に到達すると、周りの水分を保持したまま便と一緒に排出されます。そのため、腸内の水分が不足して起こる便秘を改善することが可能です。

レントゲンの撮影時には、便秘を引き起こしやすい造影剤(胃や腸のレントゲンを撮りやすくする製剤)である、硫酸バリウムを飲用することから、ソルビトール製剤が補助剤として使われます。[※9]

また、ソルビトールは糖アルコールなので糖代謝にかかわることがなく、食べ物を口にしたときに起こる血糖値の上昇を防げます。そのため、糖尿病の治療にも用いられているようです。[※8]

虫歯の原因となるミュータンス菌の栄養としても利用されないので、虫歯の予防に効果的であるとされています。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

便通を良くする効果があるため、便秘の人に適しています。食品添加物として多くの食品に含まれているため、便通が良くない場合は、ソルビトール入りの食品を摂取するのがおすすめです。

また、血糖値を上げない効果が期待できることから、糖尿病の方にも適しています。実際に糖尿病の治療に使われている実績があるので、安心して使える成分といえるでしょう。

ソルビトールの摂取目安量・上限摂取量

ソルビトールは数十年間食品添加物として利用されていることから、体に害を与えにくく、毎日摂取しても健康に被害をもたらさないことが知られています。

そのため、FAO(国際連合食料農業機構)とWHO(世界保健機関)が合同で実施している食品添加物専門家会議(JECFA)では、ソルビトールの1日摂取許容量が定められていません。

厚生労働省が定める最大無作用量(身体に影響がない量)によると、男性0.15g/kg(体重)、女性0.3g/kg(体重)となっています。[※10]

ただし過剰摂取すると、強い緩下(下痢や軟便)作用や腸の病気を引き起こすおそれがあります。大量に使用するのは控えてください。

ソルビトールのエビデンス(科学的根拠)

ソルビトールの効果については、以下のエビデンスが報告されています。

財団法人田附興風会医学研究所 北野病院救急部の新谷裕らは、急性薬物中毒の治療としてソルビトールを使っています。患者に毒素を吸収するための活性炭30gとソルビトール100gを2回与え、排便が促されるかどうかを観察しました。

活性炭30gとソルビトール100gを与えたうえで6時間後まで排便が促されなかった8名を対象に、再び活性炭とソルビトールを同じ量与えています。

観察の結果、8名のうち5名に排便が見られたことがわかりました。このことから、ソルビトールによる緩下作用が示唆されています。[※11]

また、京都女子大名誉教授の坂田由紀子 らによる研究では、ソルビトールをはじめとする糖アルコールが菌の繁殖を防ぐことが明らかになりました。

複数の糖アルコールを使った実験で、2種類の菌に対して糖の割合を変え、それぞれ糖アルコールを50%、60%の濃度にした培地(菌を育てる場所)を用意。12日間における菌の成長速度を観察しました。

実験から、ソルビトールだけを配合した培地では1種類の菌の繁殖が抑えられることがわかっています。

このことから、ソルビトールには食品の品質を維持する作用が期待できます。[※12]

研究のきっかけ(歴史・背景)

ソルビトールは今や広く使われている甘味料ですが、利用されるまでには60年近くかかったことがわかっています。

1872年にフランスでナナカマドの実(sorbe)から発見され、ソルビトールと名付けられました。しかし発見された当時は生産が難しく、高価な物質だったといわれています。その後、工業が発達したことで合成可能になり、大量生産できるようになったのです。

安定して生産できるようになったことから研究も進み、徐々に効果や副作用などが知られるようになりました。現在では虫歯をつくる菌の栄養にならないことがわかり、歯の健康を維持する効果が期待されています。

日本で最初に食品添加物として指定され、食品に保湿性を持たせるはたらきを活かして広く使われています。甘味があるため、味をととのえる目的で配合されることも多いようです。

専門家の見解(監修者のコメント)

ソルビトールについては、専門家がそれぞれの見解をまとめています。

株式会社ビギーバックスの代表取締役で化粧品技術者を務める大川明伸氏は、

「砂糖でも無く、人工甘味料でもなく、甘さは砂糖の半分ぐらいであることから、糖尿病患者の甘味料として、またキャンディーをはじめ、多くの食品にも活用されています」
「ただ、原料に保湿力があるため、食べ物で摂り過ぎますと、腸に水分をためてしまうことも。日本では、厚生労働省で規制や指導をされていますが、下痢をしないように注意をしたいですね」
(「ソルビトールという原料|年齢を重ねることが楽しくなるエイジングケア化粧品技術者のやさしい化学」より引用)[※13]

とコメント。広く活用されていることを示したうえで、使い方には気を付ける必要があると述べています。

ソルビトールは消化管から吸収されない天然の甘味料ですが、糖アルコールとしての性質から、摂りすぎると下痢や軟便の原因になります。摂取する際は、厚生労働省の指導に沿って適量を口にするのが良いでしょう。

また、イタリアでは2012年に食用ソルビトールを摂取した女性が死亡したという事例があります。しかし、この製品にはソルビトールだけでなく亜硝酸ナトリウム(発がん性があるとされる毒性の強い食品添加物)も含まれていたため、ソルビトールが実際に悪影響をおよぼすかどうかはわかっていません。

ソルビトールの摂取問題について、高尾病院の理事長である江部康二医師は以下のように述べています。

「ソルビトールは1930年代から世界中で広く低カロリー甘味料として使用されてきて、すでに人類として80年間の使用経験があります。従いまして、ソルビトールそのものに毒性があるとは考えにくいです」
(ドクター江部の糖尿病徒然日記「ソルビトールとエリスリトールと安全性」より引用)[※14]

江部医師は、ソルビトールには80年間の使用経験があり安全性が証明されていることから、毒性はほとんどないと考えているようです。

ソルビトールの安全性に関しては世界各国の機関で検証されていて、緩下作用以外の副作用はほとんど見つかっていません。このことから、摂取量に気を付ければ安全に使用できる食品添加物といえるでしょう。

ソルビトールを多く含む食品

ソルビトールはリンゴやプラムなどのバラ科の果物に多く含まれるほか、食品添加物としてさまざまな食べ物に利用されています。

つくだ煮や漬物など保存期間が長めのものや、甘納豆、カステラといったお菓子に入っており、ソルビトールの持つ保湿性と焦げにくさが品質を維持するのに役立っているようです。[※4][※15]

コンビニのおにぎりやお弁当にも添加されており、保湿性を高めています。コンビニのおにぎりが長時間置いていても硬くならないのは、ソルビトールの効果によるものです。

パンや魚介のすり身製品などにも添加物として含まれていますが、お菓子やつくだ煮の製造に比べるとコストがかかるため、あまり積極的には使われていません。

現在はタブレットやサプリメントの甘味料としても配合されています。

相乗効果が期待できる成分

ソルビトールと一緒に摂ることで効果が期待できる成分として、食物繊維が挙げられます。どちらも血糖値の上昇を抑える成分です。

個人差はありますが、量によっては下痢や軟便を引き起こしやすくなります。特にソルビトールは大量摂取すると腹痛や消化機能の低下を引き起こす可能性もあるため、適量摂取が大切です。

ソルビトールに副作用はあるのか

ソルビトールは糖アルコールなので、一度に大量摂取すると腸で水分が吸収されにくくなり、下痢や腹痛などを引き起こすケースがあります。一時的な副作用ですが、過剰摂取を繰り返すと消化機能が低下する可能性もあるため、注意してください。[※10][※15]

海外では食用ソルビトール添加物を摂取した人が心疾患で死亡したことから、販売や摂取を禁止しているところがあります。

添加物にはほかの成分も入っていたため、ソルビトールが心疾患を招いたとは言い切れませんが、安全性を考えるなら毎日の摂取量には気をつける必要があります。

また、薬として用いられているD-ソルビトール製剤は、人によって腸に穴が開く腸穿孔や粘膜や組織が傷つく腸潰瘍など、重大な副作用を起こすという報告があります。[※16]

連続服用すると腸が壊死してしまうリスクが高くなる強力な製剤なので、激しい腹痛や下痢、嘔吐などの症状が現れたときは服用を止め、かかりつけ医の適切な治療を受けることが大切です。

参照・引用サイトおよび文献

  1. 東京都福祉保健局「用途別 主な食品添加物 甘味料|食品衛生の窓」
  2. 一般社団法人 日本洋菓子協会連合会「ソルビット(ソルビトール)」
  3. 日経ヘルス編『サプリメント事典』(日経BP社 2007年10月発行 p199)
  4. 農畜産業振興機構「ソルビトール調製品流通実態調査結果」
  5. 小薮浩二郎監修『食品添加物用語の基礎知識 意味不明な原材料名表示の正体がすべて解ります!!』(マガジンランド 2016年4月発行)
  6. 神奈川県ホームページ「かながわ食の安全・安心相談ダイヤルに寄せられた相談と回答」
  7. 【PDF】物産フードサイエンス株式会社「第一世代の糖アルコール」
  8. 三菱商事フードテック株式会社「糖アルコールとは」
  9. 【PDF】興和創薬株式会社「D-ソルビトール経口液75%『コーワ』 医薬品インタビューフォーム」
  10. 【PDF】東京都福祉保健局「平成 26 年度 収集情報」
  11. 【PDF】新谷裕、木内俊一郎「ソルビトール2回目投与の効果」(中毒研究 Vol.24 No.4 2011)
  12. 【PDF】坂田由紀子、太田馨「糖蔵に関する研究 (第3報) : 糖アルコールによるカビの生育阻害効果について」(京都女子大学食物学会 1974-11-25)
  13. 年齢を重ねることが楽しくなるエイジングケア化粧品技術者のやさしい化学「ソルビトールという原料」
  14. ドクター江部の糖尿病徒然日記「ソルビトールとエリスリトールと安全性」
  15. 【PDF】東京都健康安全研究センター『暮らしの健康』(第28号 2014年12月発行)
  16. 【PDF】独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「D-ソルビトール経口液75%『コーワ』添付文書」