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サラシアの効果とその作用

サラシアとは、東南アジアなどの熱帯地域に自生するデチンムル科サラシア(サラキア)属植物の俗称です。世界各国で120種類以上のサラシアが見つかっています。
血糖値抑制効果などを中心にさまざまな効果が報告されますが、ここでは主に健康食品としてのサラシアの機能性・研究成果・摂取目安量などについて解説します。

サラシアとはどのような成分か

サラシアとは、インドやスリランカ、タイ、ミャンマーなど東南アジアの熱帯地域に幅広く自生している、デチンムル科サラシア(サラキア)属植物の俗称です。ツル性の多年性低木で日本語名は属名のSalacia(サラキア)の日本語読みに由来しています。

サラシアという名称のほか、コタラヒム、コタラヒムブツといった名称も知られており、こちらの名称に由来した健康食品も多数あります。

インドやスリランカの伝統医学であるアーユルヴェーダでは、サラシアは古くから利用されてきたハーブのひとつです。現地では薬用として使用されるほか、果実が食用に利用されることや、建材としての利用もあるそうです。

またスリランカでは、サラシアの木の幹をくりぬいたコップに、水や酒などの液体を入れて飲むことで、サラシアのエキスを摂取し、肥満や糖尿病の予防になる、と伝えられているといいます。

サラシアはアーユルヴェーダだけでなく中医学でもその健康効果が利用されており、こちらではサラシアの根の部分が主にリウマチや腰痛などに効果がある薬として使用されています。

またタイでは、サラシアの幹の煎じ液が緩下剤として、そして筋肉痛の緩和に利用され、糖尿病や肥満の治療には使われていないようです。

このように伝統的に人々の健康に役立てられ、食経験も長く「血糖値対策」「肥満予防」などの効果についてもよく知られているサラシアです。

しかし一般的に使用されるサラシアは野生種であるため、採取れた時期や産地によって含まれる成分や品質も異なることが指摘され、ヒトでの有効性については十分ではない、という意見もあります。

国内では特定保健用食品、機能性表示食品としてサラシアやコタラエキスなどが関与成分として含まれている商品が多数販売されています。いずれも「糖の吸収を抑える」「食後の血糖値の上昇を抑える」といった目的の商品です。

どうしても糖質の摂取が多くなりがちな現代人の食生活や健康維持をサポートしてくれる成分として、サラシアの研究やその効果効能に注目が集まっています。

[※1][※2][※3]

サラシアの効果・効能

サラシアには以下のような効果・効能が期待されます。

■糖質の吸収を抑制する効果

腸管にある糖を分解する酵素「α-グルコシダーゼ」の働きを、サラシアに含まれる成分「サラシノール」や「コタラノール」が抑制します。そのため糖が体内へ取り込まれにくくなり、糖質の吸収が抑制されることで、血糖値の上昇も穏やかになるのです。[※4]

■腸内環境を改善する効果

サラシアに含まれる「サラシノール」などの有効成分によって、吸収されずに腸にまで運ばれたオリゴ糖などは、善玉菌のエサとなり善玉菌を増やします。その結果、腸内環境が整い、便秘解消、免疫向上、美肌作用などを発揮します。[※5]

■脂肪分解効果

サラシアには脂肪の吸収を抑制し、体内の脂肪組織の分解を促す働きがあることも報告されています。[※6]

■アンチエイジング効果

サラシアには抗酸化成分であるポリフェノール類、なかでもマンギフェリン、カテキン、タンニンなどが豊富に含まれているため、過剰な活性酸素を抑制し、アンチエイジングの効果が期待できます。[※7]

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

サラシアがさまざまな効果を発揮するメカニズムについて、サラシアに含まれる独自の成分「サラシノール」や「コタラノール」といった有効成分が関与しているからだ、と考えられています。

炭水化物(糖質)は小腸で単糖に分解されたのち、体内に吸収されていきますが、サラシノールやコタラノールは摂取された二糖類(主に炭水化物)などの糖類が、単糖に分解されるのを抑えるため、糖が体内に吸収されにくくなるのです。

サラシノールやコタラノールが糖の分解を抑えるメカニズムについては、これらの成分が小腸の上皮で働く「α-グルコシダーゼ」という糖を分解する酵素の働きをブロックするから、ということもわかっています。

さらに分解されなかった糖の中でもオリゴ糖などは、腸にまで到達することで、腸内では善玉菌のエサとなり、善玉菌が増えることで腸内環境が整っていくのです。

腸内環境が整うことにより、免疫力が上がったり、便通が改善したり、肌へのよい影響も現れます。このように、サラシアには血糖値の上昇抑制効果に付随し、ほかにもさまざまな効果が現れることが解明されています。

[※4] [※5] [※7]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

サラシアには「糖の吸収」を抑制し「血糖値の上昇」を抑制する働きがあります。そのため以下のような人におすすめできるといえます。

  • 外食が多く食事のバランスが偏りがちな人
  • 炭水化物や甘いものの摂取が多くなりがちな人
  • 糖分の摂取量が気になる人
  • 血糖値のコントロールをしたい人
  • 生活習慣病を予防したい人

食生活が乱れがち、糖質過多になりがちな現代人にとって味方になってくれる成分がサラシアといえるでしょう。

サラシアの摂取目安量・上限摂取量

機能性表示食品として届出が受理されている商品を調べてみると、機能性関与成分として「サラシア由来サラシノール」が「0.2mg〜1.0mg」の範囲で含有されているものがほとんどです。

サラシアの機能性表示食品のほとんどが、システマティックレビュー(幅広く文献や論文を調査し、科学的根拠を分析する方法)によってサラシアの機能性を評価していますが、多くの論文で、サラシア由来サラシノールを1回の食事の前に0.2mg摂取することで食後血糖値の上昇が抑えられる、とされています。

そのため商品を選ぶ際には、最低でも1回のサラシア由来サラシノール摂取目安量が0.2mg以上含まれているものを選ぶとよい、といえるでしょう。[※16]

サラシアのエビデンス(科学的根拠)

サラシアのエビデンス(科学的根拠)については、以下のようなものが報告されています。

■免疫力向上のエビデンス

富士フィルム(株)、東京歯科大学、東京大学の共同研究で、「サラシア」の摂取でヒトの免疫力が向上することが示されています。

健常な50歳以上60歳未満の男性30名を対象に二重盲検並行群間比較法による試験を行ったところ、サラシア摂取群(1日あたり240mgを4週間)は、プラセボ群と比較して腸内の善玉菌数とT細胞が増加していることが見られ、この結果により、サラシアの免疫力向上機能が示唆されています。[※8]

サラシア植物エキスをパウダー状にした健康食品「コタラのおかげ®」を製造している塩水港精糖株式会社では、商品を使ったヒト試験(一部動物試験)で「血糖値抑制効果」「脂肪の蓄積抑制作用」「腸内環境改善作用」を発表しています。

■血糖値抑制効果のエビデンス

健常者19名を対象にサラシア植物エキス顆粒品である「コタラのおかげ®」1包を50mlのお湯に溶かして摂取した5分後に、50gのショ糖を含む水溶液200mlを摂取した試験で、ショ糖のみを摂取した群と比較し、サラシア植物エキス群は、血糖値、血中インスリン濃度ともに、有意に低下したことが報告されています。[※9]

■脂肪の蓄積抑制作用のエビデンス

高脂肪食群と高脂肪食にサラシア植物エキス粉末を添加した群の2群に分け、ラットを4週間飼育したところ、サラシア植物エキス粉末添加群は、体重の増加が抑制され、白色脂肪の割合が減少したことが示されています。[※10]

またヒト試験でも、サラシア植物エキス粉末を毎食ごとに8週間摂取した結果(被験者10名)、内臓脂肪の減少傾向が報告されています。

■腸内環境改善作用のエビデンス

中性脂肪、血糖値などがきになるモニター10名に「コタラのおかげ®」を毎食1包8週間摂取したもらった後と前の糞便中の細菌群を調べたところ、善玉菌であるビフィズス菌と乳酸菌の割合が有意に増加し、悪玉菌であるクロスロリジウム属菌の割合が減少したことが報告されています。[※11]

研究のきっかけ(歴史・背景)

サラシアは特定保健用食品、そしてここ数年は機能性表示食品として知名度を上げ、一般的にも知られるようになってきていますが、新しい成分ではなく、スリランカやインドなどの東南アジア、中国では5000年以上前から利用されてきた、食経験の長い植物のひとつです。

とくにインドやスリランカでは糖尿病初期の特効薬として、サラシアの幹や根の部分を煎じてお茶として利用してきた長い歴史があります。

サラシアの有効成分についてはまだまだ解明されていない部分も多く、またインド産のものとスリランカ産のもの、それ以外の地域で採取されたものとでは、含有成分や有効性分などに違いがあることもわかってきています。

特にスリランカ産のものは、シンハラ語で「コタラヒムブツ」と呼ばれ、これは「神の恵」を意味するとされます。コタラヒムブツは利用できる大きさになるまで7年もの歳月がかかるとされ、非常に貴重で、また長い間スリランカ政府によって輸出制限が行われていたため、「幻のハーブ」ともいわれています。

近年、コタラヒムブツの一定量の輸出をスリランカ政府は日本に認めており、それを使用した商品も手に入れることができるようになっています。

ここ20年ほどの研究で、サラシア全般には「血糖値の上昇抑制」の効果、「抗糖尿」の効果があることが解明されてきています。しかも糖質の吸収抑制作用については、日本人の研究によって解明されたものです。

2002年にはWHO(世界保健機構)もコタラヒムブツの有効性を認定し、世界各国で注目される成分へと進化を遂げました。

サラシアは日本には自生しない植物ですが、その健康効果は多くの健康食品やサプリメントでも利用されていて、特に生活習慣病がきになる人や、健康維持を心がけたい人に人気の高い成分になっているのです。

[※12][※13]

専門家の見解(監修者のコメント)

京都薬科大学名誉教授であり、サラシア属植物普及教会会長を務める吉川雅之先生は、サラシアの現状、サラシア健康食品の品質について以下のように話しています。

「サラシア属植物に関して、20年以上に渡る多くの日本人研究者のご努力により興味深い知見が蓄積され、現代人に必要な健康素材であることが判明いたしました。

天然物ならではの多種の成分が組み合わさったことによる顕著なαグルコシダーゼ阻害活性をはじめとした多様な機能性が見出され、糖尿病予防効果などの使用実感が十分に期待できる素材であることが研究当初から予想されました。

しかし、サラシアを抽出した際、エキス収率が悪く、また、野生種を採取して用いていたため、有効成分を安定的に含有したエキス製造が課題となっておりました。今日では各社とも安定した製品製造技術と品質規格を確立するまでになっています。」(中略)

「サラシアに関しては、会員企業より、特定保健用食品の認可取得および機能性表示食品の届出が行われており、市場での認知度も上がってきております。

このような状況では、健全な業界育成と原料確保が重要となります。協会では、原料と製品それぞれについて規格基準の制定を行っています。原材料と製品の販売者・事業者だけではなく、広く研究者も含めての協会ということでの業界団体を目指しています。

サラシア属植物の有効性については、指標として、血糖上昇抑制作用を評価するα-グルコシダーゼ活性阻害活性値(IC50値)を規格基準とすべく活動を行っています。

試薬と測定方法の統一化のため、原料販売者および製品販売者、学術関係者、試薬会社が協力して進めています。」(以上、「サラシア属植物普及協会 会長挨拶」より引用・抜粋)[※14]

サラシアの規格化が確立し、品質の保たれたサラシア製品が普及することは消費者にとっても望ましいことといえます。

サラシア属植物普及協会のサイトでは会員企業が一覧することができるので、そのような企業から開発販売されている商品を選ぶのもひとつの方法です。

サラシアに含まれる成分

サラシアは天然植物由来の成分であるため、採取された地域や、製造方法によって含有成分や有効性分、それぞれの含有量に違いがあるとされますが、葉の部分に主に含まれる有効成分としては以下のものが解明されています。

  • サラシノール
  • コタラノール
  • マンジフェリン
  • カテキン類
  • タンニン類

また幹部には

  • トリテルペン
  • セスキテペン
  • リグナン
  • プロアントシアニジン

などが含まれることがわかっています。[※15]

相乗効果を発揮する成分

サラシアと相乗効果を発揮する成分については明らかな根拠を示す研究論文などが見つかりませんが、サラシア製品に含まれている他の有効成分を調べると、カテキン、ローズマリーエキス、ウーロン茶エキスといったお茶系のポリフェノール類との相性が良さそうです。

サラシアの副作用

日本ではおよそ10年以上の食経験があるサラシア。サプリメントの他に、顆粒パウダー、お茶、ドリンクなどの形態で摂取されてきましたが、これらについて健康被害の報告はありません。

基本的に、食品として摂取するサラシアは安全性が高いとされますが、過剰摂取をした場合は腹痛や吐き気、下痢の可能性が示唆されています。

妊娠中の女性や授乳婦の安全性については情報がほとんどないため、使用を避けたほうが無難とされます。

またサラシアには血糖値を低下させる作用があるため、すでに糖尿病治療薬を処方されている人も使用すべきではありません。糖尿病のリスクがある人は医療機関での治療を行いましょう。[※1]