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緑茶の効果とその作用

緑茶は日本人にとって身近な飲み物です。緑茶に含まれるポリフェノールのカテキンには、高コレステロール値の改善やがん予防などの効果があるとして研究が進められています。緑茶の効果・効能や美味しく飲むためのコツ、高濃度カテキン製品の安全性などについてまとめました。

緑茶とは

緑茶とはチャノキと呼ばれる植物の葉や芽を乾燥させて、湯や水を使って抽出した飲料です。茶葉そのものを緑茶と呼ぶこともあります。

チャノキから摘まれた茶葉はすぐに熱が加えられ、葉に含まれる酵素のはたらきをストップさせます。その後、水分の量を調節するために熱を加えながら揉みこみ、乾燥させると茶葉になります。

チャノキの葉は、発酵の状態により「緑茶」「烏龍茶」「紅茶」に分けられます。緑茶は不発酵茶です。

緑茶の種類には、煎茶・玉露・抹茶・ほうじ茶・番茶などがあります。

  • 煎茶:一般的に飲まれている緑茶
  • 玉露:高級品として知られる緑茶
  • 抹茶:茶葉を粉状にしたもの。茶道でおなじみ
  • ほうじ茶:茶葉を焙煎した緑茶。香ばしさが特徴
  • 番茶:煎茶やほうじ茶をつくる過程ではじかれたものや春先以降の茶葉を使ったもの

緑茶には以下の成分が含まれています。

  • カテキン
  • カフェイン
  • タンニン
  • テアニン
  • ビタミン
  • ミネラル

これらの有効成分は、健康維持に効果があるとして研究が進められ、健康食品や特定保健用食品に利用されています。

緑茶の効果・効能

緑茶には以下のような効果・効能があるといわれています。[※1]

■コレステロール値の改善

緑茶カテキンは悪玉コレステロールを抑制して、コレステロール値を改善してくれます。

■血圧の正常化

緑茶を飲むと高血圧・低血圧どちらにも効果があるといわれています。

■子宮内膜がん・卵巣がん予防

緑茶を飲むことで、子宮内膜がんや卵巣がんの発症リスクを低下させることが期待できます。その他のがんへの効果にかんしては、科学的なデータが不十分です。

■口腔内を清潔に保つ効果

緑茶には抗菌効果があるため、虫歯菌や悪臭のもととなる菌にアプローチできます。また、歯茎に白い斑点があらわれる口腔白板症(はくばんしょう)の症状が改善します。

■骨粗しょう症の予防・改善

緑茶は骨の密度や強度を高めてくれるため、骨粗しょう症の予防や改善につながります。

■パーキンソン病の予防

緑茶カテキンが神経細胞を保護・修復することでパーキンソン病の予防につながります。

■リラックス効果

緑茶に含まれるテアニンは筋肉をゆるませ血管を広げるはたらきがあるため、リラックス効果があります。

また、アメリカでは緑茶が配合されている軟膏が陰部イボの治療に使用されています。[※1]

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

緑茶がもつ作用を見ていきましょう。

緑茶を摂取すると、茶カテキンがコレステロールを体内へ取り込むはたらきを阻害します。ラットを使った実験では、胸管リンパへのコレステロール取り込みが阻害されたことが確認されました。

ヒトを使った臨床試験では、コレステロール値が高めの人に2~3か月緑茶カテキンを摂取してもらったところ、総コレステロールと悪玉コレステロール値が減少しました。[※2]

緑茶ポリフェノールはドーパミン神経細胞を保護することがわかりました。パーキンソン病は神経伝達物質であるドーパミンをやり取りするドーパミン神経の減少によって発症することから、緑茶はパーキンソン病の予防に良いといわれています。[※3]

緑茶の抗がん作用は、カテキンによるものだといわれています。カテキンはがん細胞の転移を助ける酵素の「マトリックスメタロプロテアーゼ」の活性を阻害して、がん細胞の転移を防ぎます。そのため、緑茶には抗がん作用があるといわれています。[※4]

緑茶の骨粗しょう症に対する作用をみてみましょう。骨は「骨芽細胞」と「破骨細胞」により、「つくる・分解する」を繰り返しています。

量細胞のバランスが整っていれば、骨は弱くなりません。しかし、骨芽細胞のはたらきが弱まったり破骨細胞が増えて骨の分解作用が有意になると、骨がもろくなっていきます。

緑茶には、破骨細胞を減らすはたらきがあるとされ、骨粗しょう症の予防や改善につながるといわれています。[※5]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

緑茶にはコレステロール値を改善する効果があるため、コレステロール値が高めの人やメタボリック症候群の人におすすめです。

また、骨を強くするはたらきがあるため、骨粗しょう症の予防・改善をしたい人も摂取すると良いでしょう。

緑茶に含まれるカテキンには抗酸化作用があるため、健康を保ちたい人や美容に気を使っている人も摂取してみてはいかがでしょうか。

緑茶の摂取目安量・上限摂取量

緑茶の摂取目安量や上限量は設けられていません。しかし、緑茶にはカフェインが含まれているため、摂りすぎは良くないともいわれています。

緑茶に含まれているカフェインは、100mlあたり20mg。玉露は120mgです。日本ではカフェインの摂取量も設けられていませんが、海外では以下のようになっています。

■世界のカフェイン摂取量の目安/1日あたり[※6]
イギリス カナダ WHO
妊婦/200mg 成人/400mg 妊婦/カップ3~4杯(コーヒー量)
妊婦/300mg
13歳以下/体重1kgあたり2.5g

緑茶のエビデンス(科学的根拠)

埼玉県立がんセンターの今井一枝氏と中地敬氏は緑茶と心血管疾患・肝障害の関係について、横断研究を行いました。

40歳以上の1371人の男性に緑茶を飲む習慣があるかどうかアンケートを取った後、血液検査を実施。アンケート結果と血液検査の結果を照らし合わせると、緑茶の摂取量が多いほど血中コレステロールや中性脂肪の値が低いことがわかりました。

血中コレステロールや中性脂肪は血栓や動脈硬化の原因となるため、緑茶の摂取は心血管や肝臓障害を予防する効果があると考えられています。[※7]

台湾にある国立成功大学のYang YCらは緑茶や烏龍茶が血圧に及ぼす影響について、1507人の被験者を対象に調査しました。

その結果、お茶の摂取量が1日120ml~599mlの人は、摂取しない人に比べて高血圧リスクが46%低いことがわかりました。

さらに、600ml以上を飲んでいた人たちは高血圧リスクが65%低いことがわかりました。調査結果から、お茶を飲む習慣は高血圧のリスクを低減させることがわかりました。[※8]

金沢大学の篠原もえ子任准教授らは、緑茶・紅茶・コーヒーが認知機能に与える影響を調べました。調査期間は平成23年から25年の2年間。対象者は490人(60歳以上)の認知機能正常者です。

調査の結果、緑茶を1日1杯以上飲んでいた人は、そうでない人に比べて認知機能が低下する割合が少ないことがわかりました。

コーヒーと紅茶では、認知機能に関連が見られなかったことも合わせ、緑茶には認知機能低下のリスクを下げる効果があると示唆されています。[※9]

研究のきっかけ(歴史・背景)

緑茶は奈良・平安時代から飲まれていたといわれています。お茶の存在が初めて記されたのは、平安初期に書かれた「日本後記」です。

15世紀の後半には「侘茶(わびちゃ)」と呼ばれる茶道の原型が生まれ、千利休らが「茶の湯」として広めたことで、たくさんの人たちにお茶が浸透していきました。

それから1980年代に入り、サントリーが初めて缶入りのお茶を販売。今に続く「手軽に飲めるお茶」の始まりとなりました。

缶からペットボトルへと容器が変わり、各社からさまざまなコンセプトの緑茶が販売されるようになりました。

そして、茶カテキンの健康効果に注目が集まるようになり、健康飲料としても認知されるようになりました。今では海外でもグリーンティーの効果が認知され、緑茶は世界に愛される飲み物へと広まっています。

専門家の見解(監修者のコメント)

緑茶はさまざまな健康効果がうたわれていますが、専門家の中には疑問を呈している人もいます。

国立健康・栄養研究所の梅垣敬三氏は、茶カテキンの効果が人間の体内で得られるのかは疑問が残るとしています。

「血液や組織中における茶カテキンの作用については、茶カテキンの摂取後の腸からの吸収、体内分布、肝臓における代謝、体外排泄を考える必要があります。

茶カテキンが腸から吸収されて血液や組織中の濃度が、効果を示す濃度までにならなければ、試験管内の実験で認められた茶カテキンの抗酸化作用は期待できるとは言えません」

(yomiDr. 「[茶カテキン]体脂肪改善うたうも、体内に吸収されにくい」より引用)[※10]

緑茶やサプリメントなどで摂取したカテキンの効果を得るには、血中のカテキン濃度を上げる必要があります。しかし、梅垣氏の見解では、カテキンは吸収されにくい性質があるため、効果が得られるかどうかは疑問が残るのだそうです。

「茶カテキンは腸から吸収されにくく、たとえば、緑茶を多量に摂取しても血液中のEGCg濃度は1マイクロモル/L以下です(1マイクロモル/Lとは、EGCgでは458.37マイクログラムが1リットルに溶けている状態。

1マイクログラムは100万分の1グラム)」

(yomiDr. 「[茶カテキン]体脂肪改善うたうも、体内に吸収されにくい」より引用)[※10]

※EGCgとは、茶カテキンの主成分であるエピガロカテキンガレートと呼ばれる成分のこと

梅垣氏によると、茶カテキンのさまざまな効果は試験管内での結果から導き出されていることが多く、それが体内で再現できるかは疑わしいとのことです。

しかし、緑茶の研究は現在も進められているため、今後これらの説を覆す結果が得られるかもしれません。

おいしい緑茶の淹れ方

急須を使ってお茶を美味しく淹れるポイントは3つあります。ここでは、煎茶の淹れ方を紹介します。

・お湯の温度
90度~100度くらい。ひと手間加えられている上級煎茶の場合は70度~80度くらいです。
・茶葉と湯の量
茶葉:4g(ティースプーン約2杯)
湯:200ml
・浸出時間
30秒ほど(茶葉が開ききる前までが目安)

■煎茶の淹れ方

  1. 急須に茶葉を入れる
  2. 沸かした湯を急須へ入れる(上級煎茶を使う場合は、一度湯呑に注いで冷まして使う)
  3. 30秒待って湯呑に注ぐ。最後の1滴まで注ぎきる

相乗効果を発揮する食べ物

緑茶と一緒に摂ると相乗効果が期待できる食べ物を紹介します。

■くるみ
緑茶とくるみを一緒に摂取することで、糖や脂肪の代謝がアップするといわれています。[※11]
■みかん
緑茶とみかんに含まれているポリフェノール類の効果が高まり、がん発症リスクが低下するといわれています。[※12]

緑茶の副作用

緑茶にはいくつかの副作用があります。[※1]

緑茶を摂取すると、まれに胃の不調や便秘をおこす可能性があります。また、有効成分が凝縮されている緑茶エキスを摂取して、肝疾患や腎疾患を引き起こしたという事例があります。

また、カフェインの過剰摂取においても注意が必要です。カフェインには不安障害や失血疾患のリスクを上げるおそれがあります。妊娠中にカフェインを摂りすぎると乳児に悪影響を与えるおそれがあるので摂取量には注意しましょう。

緑内障の患者は、緑茶を飲むとカフェインの作用で眼圧があがるおそれがあるため、飲み過ぎに注意してください。

注意すべき相互作用

緑茶と併用することで、相互作用が確認されているものは以下のものになります。[※1]

・薬の効果を弱めるおそれのあるもの
ナドロール(高血圧薬)/ボルテゾミブ(分子標的治療薬)/ミダゾラム(麻酔導入薬・鎮静薬)/ワルファリンカリウム、その他肝臓で代謝される薬
・薬の作用や副作用を強めるおそれのあるもの
ニカルジピン塩酸塩(血圧低下薬)

その他、肝臓を害する恐れのある医薬品との併用も控えるほうが良いでしょう。対象となる成分にはアセトアミノフェン・アミオダロン塩酸塩、カルバマゼピンなどがあります。

また、緑茶に含まれるカフェインとの相互作用が懸念されている医薬品は以下です。[※13][※14]

・薬の効果が弱まるおそれのあるもの
ジアゼパム(抗不安薬)/クロナゼパム(抗てんかん薬)/ゾピクロン(催眠鎮静薬)
・薬の効果が強まるおそれのあるもの
アミノフィリン(強心剤)/テオフィリン(気管支拡張剤)/アスピリン(解熱鎮痛、抗血栓薬)/強心・気管支拡張薬/キサンチン系薬/解熱鎮痛薬、抗血栓薬/サリチル酸系薬
・中枢神経刺激作用がでるおそれのあるもの
フルボキサミン(抗うつ・不安薬)/テオフィリン(気管支拡張剤)/選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)/精神神経薬
・カフェインの分解を抑制するおそれのあるもの
エノキサシン・ジプロフロキサシン(合成抗菌剤)/抗菌薬/キノロン系薬

高濃度茶カテキンの安全性

最近は、高濃度のカテキンを配合した特定保健用食品や健康食品が多数販売されています。

カテキンには交感神経を活発化させる作用によって、脂肪燃焼効果があるとされています。しかし、交感神経を活発化させる作用は、血圧上昇や神経興奮を引き起こす要因でもあります。

脂肪を燃焼させるほどのカテキンのエネルギーは、体に負担をかけるのではないかという懸念が飛び交っているようです。

2007年のカナダでは、高濃度カテキンサプリメントを使用していた人が肝障害をおこしています。また、2009年にはイタリアでも同様の症状を訴える人が出ています。

そうした背景から、海外では高濃度カテキンを配合している商品の販売が禁止されたり注意書きが必須になったりしています。

日本では特定保健用食品として高濃度カテキンが配合された飲料が販売されていますが、特定保健用食品だからと安易に大量に摂取してしまうと、思わぬ被害を被ってしまうおそれがあることを知っておきましょう。

参照・引用サイトおよび文献

  1. 田中平三ほか『健康食品・サプリメント[成分]のすべて 2017 ナチュラルメディシン・データベース』(株式会社同文書院 2017年1月発行)
  2. 【PDF】卯川 裕一 提坂 裕子 「緑茶カテキン(ガレート型カテキン)の機能性研究と特定保健用食品の開発」(日本生物工学会 生物工学 93巻 p634-p636)
  3. News Medical 「パーキンソン病のための緑茶」
  4. 【PDF】静岡県 「~緑茶と健康のメカニズム~機能効用ナビゲーション」
  5. 太陽化学株式会社 「Vol.18 骨の健康と緑茶カテキン」
  6. 厚生労働省 「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~」
  7. Imai K, Nakachi K. Cross sectional study of effects of drinking green tea on cardiovascular and liver diseases. BMJ. 1995 Mar 18;310(6981):693-6. PubMed PMID:7711535; PubMed Central PMCID: PMC2549094.
  8. Yang YC, Lu FH, Wu JS, Wu CH, Chang CJ. The protective effect of habitual tea consumption on hypertension. Arch Intern Med. 2004 Jul 26;164(14):1534-40. PubMed PMID: 15277285.
  9. 【PDF】沢大学ニュースリリース 「緑茶を飲む習慣と認知機能低下との関連を発見!」
  10. yomiDr. 「[茶カテキン]体脂肪改善うたうも、体内に吸収されにくい」
  11. マイナビニュース 「くるみと緑茶がいい?食べ合わせの意外な健康効果」
  12. FYTTE 「飲むだけで嬉しい効果!奇跡の飲み物と呼ばれる「緑茶」のすごさ」
  13. 沖縄県薬剤師会 「食品と相互作用のある医薬品」
  14. くすりの適正使用協議会 「くすりと食品の相互作用」