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ローヤルゼリーの効果とその作用

ローヤルゼリーとは、ミツバチの中でも、若い働き蜂が女王蜂のために作り出す物質です。おもにたんぱく質、ミネラル、果糖、脂肪、ビタミン、ミネラルなどが豊富に含まれ、健康食品や化粧品としても利用されています。ここではローヤルゼリーの効果効能、研究成果、摂取目安量などについて詳しく解説していきます。

渋谷DSクリニック林 博之先生監修

ローヤルゼリーとはどのような成分か

ローヤルゼリーとは、働き蜂がさまざまな植物の花粉や蜜を体内で消化・分解・合成し、蜂の大あご腺などから分泌する物質です。乳白色で酸味が強く、同じミツバチから生成されるはちみつやプロポリスとはまったく異なります。

女王蜂も、卵の段階では働き蜂のメスの卵と変わりません。しかし蜂の巣の中でも「王台」と呼ばれる特別な場所に産みつけられた幼虫だけが、孵化後にローヤルゼリーを食べて女王蜂となります。そして生涯ローヤルゼリーを食べ続け、他のものは摂取しない、という女王蜂としての運命をたどります。

ローヤルゼリーだけを食べ続けた結果、女王蜂の体の大きさは働き蜂の2〜3倍と大きくなり、寿命も30〜40倍に。働き蜂は卵を産めませんが、女王蜂は毎日約1500個の卵を産み続けるという、大きな違いを持つ蜂になるのです。

ローヤルゼリーはミツバチの中でも特別に選ばれた1匹だけが食べることのできる「特別食」といえるでしょう。ちなみに、ローヤルゼリーの中に含まれるロイヤラクチンという物質が、蜂が女王蜂に成長するのに関与する重要な成分であるということも近年になって解明されています。[※2]

ローヤルゼリーには非常に多くの栄養素が含まれることが判明しています。たんぱく質(アミノ酸)やビタミン、ミネラルが豊富に含まれるほか、ローヤルゼリーにしか含まれない「デセン酸」という特有の成分にも注目が集まっています。

1950年ごろから、このローヤルゼリーが私たち人の健康にも役立つことが知られるようになり、健康食品や化粧品などに利用されるようになりました。

しかし小さなミツバチが生産できるローヤルゼリーの量はごくわずかで、1つの王台から摂取できるローヤルゼリーの量はたったの300mg程度といわれます。

現在では、人工的に作られた「人工王台」を巣箱にセットすることで、ローヤルゼリーが安定して採取できるようになっています。そしてローヤルゼリーを含むさまざまな商品が市販されていますが、大きく3つの種類に分けることができます。

■生ローヤルゼリー

人工王台から採取したままの状態のローヤルゼリーです。移虫後72時間以内に採取したものでなければならない、とされています。生ローヤルゼリーは栄養素が一番豊富とされますが、鮮度を保つのが難しく、劣化しやすいというデメリットがあります。

■乾燥ローヤルゼリー

生ローヤルゼリーから水分だけを乾燥させ粉末にしたものです。瓶詰めタイプやカプセルタイプがあります。

■調整ローヤルゼリー

生ローヤルゼリーや乾燥ローヤルゼリーに副原料を加えて調整をしたものです。これは100%ロ-ヤルゼリーとはいえませんが、ローヤルゼリーの使用量が全体量の1/6を占める、という規定があります。

上記のガイドラインを示しているのは「一般社団法人全国ローヤルゼリー公正取引協議会」です。ローヤルゼリーの品質や公正な取引を守るため、そして不当表示を避けるために厳格なルールが課せられています。

ローヤルゼリーの商品を選ぶ際には、公正マークがあるかどうかもひとつの目安にするとよいでしょう。[※1]

ローヤルゼリーの効果・効能

ローヤルゼリーの効果効能については以下のようなものが期待されています。

■女性の更年期障害緩和効果

メカニズムは解明されていない部分も多くありますが、女性の更年期障害については「有効性が示唆されている」とされており、これはローヤルゼリーに含まれるアセチルコリン(神経伝達物質)とデセン酸による部分が多いと考えられています。[※3]

■高血圧・高コレステロール予防効果

ローヤルゼリーに含まれるペプチド(2~50程度のアミノ酸がペプチド結合したもの)により高めの血圧の改善と、脂質異常章の改善効果がヒト試験によって示唆されています。[※4]

■耳鳴り

耳鳴りの自覚症状がある人へ行ったヒト試験でローヤルゼリーを8週間摂取してもらったところ、ローヤルゼリーの摂取で耳なりが改善する可能性が示唆されています。特に高容量摂取することで改善が顕著という結果になっています。[※4]

■女性の肩こり

20代女性を対象に行った試験で、酵素分解ローヤルゼリーを含む錠剤を摂取するグループとプラセボ錠を摂取するグループとで比較した場合、首すじのはりが大きく改善し、肩こりの軽減に役立つことが示唆されています。[※4]

■美肌効果

ローヤルゼリーを8週間飲用した後に、頬の確執の水分量が飲用前に比べて有意に増加したことがヒト試験で報告されています。さらに12週間の継続摂取でシワの深さ、たるみ、くすみが改善したことも報告されています。[※4]

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

ローヤルゼリーが体内でどのように消化吸収され、どのようなメカニズムでさまざまな効果効能を発揮するかについて、解明されていない部分がほとんどです。現時点では、ローヤルゼリーに含まれる特徴的な3つの成分が関与しているからではないか、と認識されています。

■デセン酸による効果

ローヤルゼリーにしか含まれないデセン酸は、ホルモンの司令塔ともいえる脳の視床下部に働きかけ自律神経やホルモンバランスを整える可能性が示唆されています。[※5]

■アピシンによる効果

ローヤルゼリーに最も多く含まれるたんぱく質で、アピシンには細胞増殖や細胞生命力の維持作用があると報告されています。[※5]

■パントテン酸

食品の中でいちばん多くパンテトン酸を含んでいるのがローヤルゼリーです。パンテトン酸は体内で活性型に変化し、エネルギー代謝などに関与します。[※6]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ローヤルゼリーにはビタミンB群が豊富に含まれるため、なかでも疲労がたまっている人や、たまりやすい人、風邪をひきやすい人や、美容面でいつまでも若さを保ちたい人におすすめできます。ビタミンB群は代謝に必須のビタミンなので、疲労回復効果が期待できます。

またローヤルゼリーに含まれるデセン酸やアミノ酸にも疲労回復や免疫力を向上させる作用があります。

また抗酸化作用を持つフラボノイド類も含まれているので、エイジングケアをはじめたい人にもぴったりです。

栄養価が豊富で、バランスが良いことから

  • 健康維持をしたい人
  • 病中・病後の回復に役立てたい人
  • タバコやお酒を好む人
  • 食生活が乱れがちな人

には、とくにおすすめできます。長年の愛用者が多いことからも、みなさん効果を実感しているのでしょう。

ローヤルゼリーの摂取目安量・上限摂取量

「一般社団法人全国ローヤルゼリー公正取引協議会」では、ローヤルゼリーの摂取目安量について

「この量を飲まないといけないという決まりは特にございません。各社の商品によってそれぞれ1日の目安量が表示されていると多います。その量を参考にご自身の体調に合わせて引用量を調整していただくことをおすすめします」

としています。また摂取期間や摂取タイミングについても決まりはないとしています。

一般的に市販されている商品を確認すると、1日の摂取目安量は500〜2000mg前後を設定しているものが多くなっています。

ローヤルゼリーのエビデンス(科学的根拠)

■女性の更年期障害の緩和

日本ハム(株)中央研究所と(株)丸和(日本ハムの100%子会社)は、豚プラセンタエキスとローヤルゼリーの併用摂取により、多くの中高年女性が悩まされているといわれる更年期症状を緩和させる機能があることを発表しています。

この試験では、プラセンタ100mgとローヤルゼリー69mg(生ローヤルゼリーとして200mg相当)、グリセリン脂肪酸エステル11mgを入れたカプセル剤を1回5粒1日2回、8週間の摂取をモニターテストとして行いました。

すると更年期障害の不定愁訴だけでなく、肌水分量の増加、免疫力の向上、血圧の改善なども見られたことが報告されています。[※7]

■ローヤルゼリーの骨粗鬆症緩和作用

山田養蜂場と静岡県立大学、そして福岡医療短期大学の共同研究で、ローヤルゼリーが骨密度の減少を抑え、骨の中のカルシウムを増やすことをラットの試験で確認しています。

このことは国際学術誌「eCAM」に掲載され、非常に注目を集めています。[※8]

更年期障害と骨粗鬆症には密接な関係があるため、更年期に入って不定愁訴や骨密度が気になる女性には注目してほしい成分のひとつといえるでしょう。

研究のきっかけ(歴史・背景)

ローヤルゼリーがその存在を知られるようになったのは非常に古く、アリストテレスの時代にさかのぼるとされます。

アリストテレスは『動物誌』という有名な書物を残していますが、この本の中にもローヤルゼリーに記述が残っているとされます。ただし、この当時は「ローヤルゼリー」という命名はされていなかったようです。

ローヤルゼリーという名前で呼ばれるようになったのは、1900年代のことで、スイスのミツバチ研究者であるフランソワ・ユベール氏によるものが最初とされています。[※9]

成分としてローヤルゼリーが研究されるようになったのは、ローマ法皇ピオ12世(1876〜1958)が1954年に老衰(肺炎という説もあり)で危篤に陥った際に、主治医たちがローヤルゼリーを投与したことで回復したことがきかっけとなったようです。

このエピソードについて1958年にローマで開催された第12回国際養蜂会議で、法皇が自らミツバチや養蜂家を讃えるスピーチを送ったことで、ローヤルゼリーが世界中に知られるようになったのです。[※10]

日本では、1889年に農学博士の玉利喜造氏がローヤルゼリーを自らの書物で紹介したのが最初とされています。

1957年に日本養蜂研究会の会長が人工王台を用いてローヤルゼリーを量産することに成功し、その後ローマ法皇のスピーチによる追い風を受けて、1960年ごろからローヤルゼリーが本格的に生産されるようになりました。

専門家の見解(監修者のコメント)

ローヤルゼリーの脂肪燃焼作用について研究している東北大学 生物学部 寺尾晶教授は、ローヤルゼリーを摂取した肥満モデルマウスにおいて体脂肪の減少・インスリン抵抗性指標の改善を確認し、以下のように話しています。

「今回の研究でローヤルゼリーが褐色脂肪細胞を活性化することが分かりました。将来的にはローヤルゼリー中の有効成分をつきとめ、その成分をサプリメントとして商品化できればと考えています。体調が悪くなってから病院で薬を処方してもらうのではなく、日ごろから良い健康状態を保つことで健康寿命を延伸できれば、国が抱える医療費圧迫の問題も少なからず改善されるでしょう。今後は睡眠と肥満を結びつけた研究にも取り組み、国民一人ひとりのQOL(Quality Of Life)の向上に役立つ成果につなげたい」

(以上、東海大学ニュース 2018年3月24日より引用・抜粋)[※11]

この研究成果は、ローヤルゼリーが国民の大きな問題である生活習慣病にも有効である可能性を示唆しているともいえるでしょう。

ローヤルゼリーに含まれる成分

ローヤルゼリーは女王蜂、あるいは女王蜂になる幼虫だけが食べることのできるまさに「特別食」です。女王蜂だけが体も大きく、たくさんの卵を産むことができるのもローヤルゼリーによるものだと考えられています。

そんなローヤルゼリーには以下のような栄養成分が含まれています。

■アミノ酸

ローヤルゼリーは9種類の必須アミノ酸がすべて含まれ、「アミノ酸スコア100」(必須アミノ酸の含有バランスを示す指標)という非常に良質な食品です。

■ビタミン類

ビタミンB群を多く含みます。ビタミンB1、B2、B6、B12、ビオチン、パントテン酸、ナイアシン、葉酸などのほか、コリン(リン脂質の構成成分であるビタミン様物質)、イノシトールなども含まれます。

■ミネラル類

カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、亜鉛、リン、銅、マンガンなどの主要ミネラルが含まれています。

■糖質

グルコースやオリゴ糖も含まれます。

■特有の成分

デセン酸、ビオプテリン、パロチン様物質、ルクレオチドなどの特有成分が含まれます。このほかにもまだ解析が完了していない、未知の成分を総称して「R物質」と呼び、いまでも研究が進められています。[※12]

相乗効果を発揮する成分

ローヤルゼリーと相乗効果を発揮する成分に関する有力な研究論文などはほとんどありませんが、市販されているローヤルゼリー商品には、単体のものだけでなく、さまざまな機能性成分と組み合わせたものが多くあります。

例えば、プロポリス、セサミン、マカ、田七人参、ヒアルロン酸、コラーゲン、プラセンタ、青汁、乳酸菌などで、いずれも滋養強壮、アンチエイジング効果などが期待される成分です。そのような成分とは相性がよいといえそうです。

手作り石鹸や、はちみつに関する多くのベストセラー書籍を手がけているエッセイストの前田京子氏は、自身の書籍『はちみつ日和』(マガジンハウス)の中で、ローヤルゼリーについて以下のように解説しています。

「ローヤルゼリーは胃液で変質するという研究があり、そのため、飲み込む前に口中にゆっくりと含み、舌の裏に広げて、そこから時間をかけて吸収させるようにするとよい、と言われることがあるのだ。」(中略)

「はちみつと混ぜたローヤルゼリーは胃液による変質を免れるというのだ。しかも、ローヤルゼリーをはちみつと合わせて摂ると、その効能の相乗効果があるという研究もあるという」(中略)

「はちみつ+ローヤルゼリーに、『花粉』も練り合わせて発酵させると、最強の抗菌栄養剤ができあがる」

(以上、前田京子著『はちみつ日和』より引用・抜粋)[※13]

はちみつとローヤルゼリーが配合された製品は多く市販されているので、これらの成分を配合している理由は、相乗効果を期待したものだといえそうです。

また東北大学の研究によれば、ローヤルゼリーにノビレチン(柑橘類に含まれるフラボノイドの一種)を混合したものがアルツハイマー病治療に有効であるという研究論文を発表しています。こちらも今後の更なる研究に期待が持てます。[※14]

ローヤルゼリーに副作用はあるのか

ローヤルゼリーは世界中で愛用されており、健康食品としての利用は基本的には安全だと考えられています。ただし、医薬品のような効果を期待して過剰摂取をすると、お腹がゆるくなるといった報告はあります。

またアレルギーに関する注意は必要だとされており、免疫力や抵抗力の弱い乳幼児、喘息がある人、蜂のアレルギーがある人も使用は避けるべきです。とくに乳幼児は蜂蜜も与えてはいけないことになっています。

ローヤルゼリーを摂取した場合のアレルギー反応としては、目のかゆみや充血、鼻づまり、咳などが起こることが報告されています。

ローヤルゼリーにはミネラルが豊富に含まれます。お茶でローヤルゼリーを摂取するとミネラルのひとつである「鉄分」の吸収が阻害されるので、お茶との摂取は控えましょう。

妊娠中・授乳中人についても安全性が不明であるため使用は避けるべきとされています。

医薬品との相互作用については、降圧剤や降圧作用のあるハーブとの併用で低血圧のリスクが増える可能性が示唆されているため、これらの医薬品に限らず、薬を処方されている人は医師に相談するか、使用を避けるようにしましょう。[※15]