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ローズヒップの効果とその作用

ローズヒップはバラの花の果実です。豊富なビタミンCを含むことで知られ、「ビタミンの爆弾」とも呼ばれています。美肌・アンチエイジングなどの美容面への期待が高く、女性を中心に日本でも愛用されています。食用としてハーブティやジャムなどに、オイルは化粧品にも利用されています。そんなローズヒップの、効果効能や含まれる成分とその作用、副作用などについて紹介します。

ローズヒップとはどのような果実か

「ビタミンの爆弾」とも称されるローズヒップ。美肌・アンチエイジングなどの美容面への期待が高く、女性を中心に日本でも愛用されているハーブとして有名です。

ローズヒップはバラ科バラ属の果実の総称です。バラの種類によって実の色などは異なりますが、ハーブとして多く利用されているのは、Rosa canina(和名はイヌバラ)という品種です。Rosa caninaはヨーロッパ北部などに分布する落葉低木で、果実は楕円形でやや黄色がかった赤色です。

ローズヒップのハーブティというと、鮮やかな赤色や強い酸味をイメージする人も多いかもしれませんが、それはローズヒップとよくブレンドされるハイビスカスの特徴です。

ローズヒップ単体のハーブティはさっぱりとした酸味で、色は琥珀色のような淡い赤色になります。味の好みが分かれるため、市販されているローズヒップのハーブティは、飲みやすいようにブレンドされているものがほとんどです。

生のローズヒップには、レモンの数十倍のビタミンCが含まれているといわれていますが、ハーブティの飲用でその全てを摂取できるわけではありません。

とはいえ、ビタミンCの吸収を高めるビタミンPを含有していることや、ビタミンCのほかにも豊富な栄養素を含んでいることからもローズヒップの美容や健康に対する期待は高く、ローズヒップティは「アンチエイジングティ」として美容通の間でも浸透しています。

ローズヒップの効果・効能

ローズヒップには、以下のような効果効能が知られています。

■美肌・アンチエイジング

ローズヒップが多く含まれるビタミンCは、コラーゲンの生成に欠かせない成分です。コラーゲンはハリのあるみずみずしい美肌づくりをサポートします。また、活性酸素によるシミやシワなどの肌の老化を予防してくれる効果も期待できます。

■便秘の解消

一般的に、便秘の解消にハーブティなどのお茶は効果的といわれますが、中でもローズヒップのハーブティは、とくに高い効果が期待されています。ローズヒップは水溶性の食物繊維であるペクチンを含み、豊富なビタミンCとともに腸内環境を改善してくれる効果が期待できます。

■ダイエット効果

ローズヒップ由来のポリフェノールであるティリロサイドには、脂肪を燃焼させる効果があるといわれていて、機能性表示食品にも利用されています。[※1]

またローズヒップには、ダイエット効果が注目されるリコピンや、腸内環境を整えるビタミンCやペクチンなども含むため、太りにくく痩せやすい体づくりをサポートしてくれると考えられます。

■貧血の予防

ローズヒップには日本人に不足しがちな鉄分も豊富に含まれています。鉄分補給のためには、ハーブティを飲むだけでなく、実も食べるとより効果的でしょう。

■免疫力アップ

「風邪のときはビタミンCを」と、一度は耳にしたことがある人も多いと思います。ビタミンCには、抗酸化作用によって免疫機能を改善したり、抗ウイルス作用のあるインターフェロンの生成を促したりと、免疫力をアップさせる高い効果があるとされています。[※2]

また、ローズヒップに含まれるβカロチンは体内でビタミンAに変換されます。ビタミンAには喉や鼻などの呼吸器の粘膜の免疫力向上をサポートする作用があり、風邪などのウイルスの感染を予防してくれます。

■ストレスの緩和

人がストレスを感じると、体内で神経伝達物質の一種であるアドレナリンや副腎皮質ホルモンが分泌され、ストレスに対抗しようとします。

ローズヒップが多く含むビタミンCは、アドレナリンや副腎皮質ホルモンの生成に深く関与しており、ビタミンCを摂取することでストレスの抵抗力を高める効果が期待されます。

■関節痛の症状の緩和

ローズヒップには抗炎症作用があり、関節痛の症状の緩和に効果的という研究があります。[※3]

ローズヒップに含まれる成分

「ビタミンの爆弾」とも呼ばれるローズヒップには、ビタミンC以外にも、普段の食生活で不足しがちなさまざまな栄養素を含んでいます。

・ビタミンP

・食物繊維

・鉄分

・カルシウム

・ポリフェノール

・リコピン

・βカロチン

ビタミンCは熱に弱く、ハーブティなどでの摂取は難しい場合が多いのですが、ローズヒップにはビタミンCの吸収を助けるビタミンPが豊富に含まれているため、熱を加えても壊れにくく、通常より効率よく体内で作用してくれます。[※4]

ローズヒップには上記のほかにも、ビタミンA、B、Eなどの栄養素も含まれています。

美容と健康に役立つ成分として注目されているのは、ローズヒップ由来ポリフェノールであるティリロサイドです。

ティリロサイドはローズヒップの種子に多く含まれ、内臓脂肪を減らし、脂肪をつきにくくする効果があるとされています。[※5]

また、種から抽出したローズヒップオイルには肌の健康維持に必要な必須脂肪酸であるリノール酸とリノレイン酸なども含まれています。

保湿効果も期待されているため、シードオイルは化粧品やアロマテラピーなどにも利用されます。[※6]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ローズヒップは、美肌やアンチエイジングが気になる人はもちろん、風邪を引きやすい人、便秘気味の人、喫煙する人などにもおすすめのハーブです。

ローズヒップが含むビタミンCは、ビタミンCの吸収を助けるビタミンPの作用で、通常より効率的に体内で作用することがわかっています。そのため、高い抗酸化作用によって若々しい美肌づくりサポートし、免疫力のアップや、腸内環境を整える効果も期待できます。

ビタミンCは体に吸収されやすい反面、体外にも排出されやすいため、1日のうちでもこまめに摂取する必要がある成分です。

仕事や家事の休憩に、ローズヒップのハーブティやサプリメントを取り入れてみるのもよいでしょう。ローズヒップを含むブレンティが目の疲れに有効とされるデータもあり[※7]、デスクワークで疲労を感じている人にもおすすめです。

ローズヒップはカフェインを含まないので、就寝前などにも安心して摂取することができます。

また、ビタミンCはタバコを吸うと多量に消費されることがわかっていて、タバコを吸う人ではタバコを吸わない人の2倍のビタミンCの摂取が必要といわれています。[※8]

ビタミンCを効率的に摂取できるハイビスカスは、喫煙者の健康サポートにも役立ちます。百害あって一利なしの喫煙習慣は辞めることが一番なのですが、すぐには難しい場合、せめてビタミンCを意識的に摂ることを心掛けましょう。

ローズヒップの摂取目安量・上限摂取量

ローズヒップの摂取目安量や上限摂取量などはとくに定められていません。ローズヒップに豊富に含まれるビタミンCには、体外に排出されるのが早いという特徴があるので、多く摂ったからといって過剰摂取になるリスクは低いといえます。

ハーブティなどの通常の食品としての摂取では、あまり神経質になる必要はありませんが、ローズヒップから抽出された成分を含むサプリメントや機能性表示食品などを摂取する場合は、商品に記載されている摂取量を必ず守るようにしましょう。

ローズヒップのエビデンス(科学的根拠)

ローズヒップには抗炎症作用があり、関節痛などの緩和効果が期待されています。

カナダで変形性関節症の男女94名を対象に行った実験では、ローズヒップを含む食品5 gを3ヶ月間摂取させたところ、関節症の疼痛が軽減されたという報告があります。[※3]

また、ローズヒップ由来のティリロサイドには、以下のような臨床データが報告されています。

肥満気味の健康な成人男女を、ティリロサイドを含む食品1日0.1 mgを摂取させる16名のグループ、ティリロサイドを含まない食品を摂取する16名のグループに分けて、12週間後に結果を調べたところ、ティリロサイドを摂取したグループで、お腹まわりの脂肪面積の減少とBMI値の低下が認められました。[※9]

ローズヒップ由来のティリロサイドはエビデンスにもとづき、機能性表示食品の機能性関与成分として利用されています。

研究のきっかけ(歴史・背景)

ローズヒップは、薬効のあるハーブとして利用されてきた長い歴史があります。中国では金桜子(きんおうし)と呼ばれ、利尿剤や肝機能の不調に効く漢方薬として伝わっています。

ヨーロッパでも古くから代替療法に用いられ、イギリスでは、飢饉が起こった際にローズヒップがビタミンを補給する貴重な食糧として利用されたともいわれています。[※2]

ローズヒップが含む豊富な栄養素は今や世界中で知られていて、美容や健康に効果的なハーブとして親しまれています。

また、最近になってローズヒップ由来のポリフェノール、ティリロサイドの脂肪燃焼効果が発見されるなど、今後のさらなる研究成果も期待されます。

専門家の見解(監修者のコメント)

アントシアニン色素の研究の第一人者である崇城大学の大庭理一郎教授がローズヒップについてまとめた研究レポートでは、

「アントシアニンにビタミンC・ビタミンEやβカロチンが加わると相乗作用が起こり、各々の抗酸化能より強い作用を発揮する」[※10]

と述べられています。

アントシアニンは、植物が実を紫外線などから守るために蓄える天然の色素で、実の赤色からもわかるように、ローズヒップにも多く含まれています。ローズヒップはアントシアニン、ビタミンC、ビタミンE、βカロチンを含有しているため、アンチエイジングや美容面で高い効果が期待できます。

また、ローズヒップが含む必須脂肪酸であるリノール酸とリノレイン酸、リコピン、ポリフェノールなどにも注目し、

「ローズヒップは健康維持成分すなわち美容効果成分を多く含んでいる」[※10]

と結論づけています。

ローズヒップはビタミンCを多く含むだけではなく、相乗効果を発揮する成分を含むことで、さらに高い効果が得られることが、この研究レポートからも明らかです。

ローズヒップの摂取方法

ローズヒップはハーブティとして摂取することが一般的です。ローズヒップ単体では味の好みが分かれるため、市販されているものはハイビスカスなどとブレンドされているものが多数です。酸味が気になる場合は、ハチミツなどを加えると飲みやすくなるようです。

ただし、ローズヒップに含まれる豊富な栄養素を摂取するためには、ハーブティを飲むだけはじゅうぶんではありません。水に溶けにくいビタミンEなどの成分はお茶では抽出できないため、残ったローズヒップの実も食べることが必要になります。[※6]

そのまま食べてももちろんよいのですが、ヨーグルトと一緒に食べたり、シロップ漬けにしたり、細かく刻んでジャムやスムージーにするなど、工夫することでより食べやすくなります。

ローズヒップティはお風呂に入れて半身浴を楽しむのもおすすめです。

相乗効果を発揮する成分

ローズヒップのハーブティとのブレンドで一般的なのが、ハイビスカスです。ハイビスカスにはビタミンCのほかにクエン酸なども含まれ、美容や疲労回復、代謝を促進する効果などが期待されます。

ローズヒップとハイビスカスは効能や成分に近いものがあり、この2つをブレンドさせることで美容や健康のさらなる相乗効果が期待されます。

また、ローズヒップに含まれるビタミンP(別名ヘスペリジン)は、抗アレルギー作用もあるとされる成分です。そのため花粉症に効果的されるエルダーフラワーやネトルなどのほかのハーブとブレンドして、花粉症対策のハーブティとして利用されることもあります。

ローズヒップに副作用はあるのか

ローズヒップに今のところ重大な副作用の報告などはなく、通常の食品として摂取する場合は安全といえるでしょう。

ローズヒップが豊富に含むビタミンCは体外に排出されやすく、副作用のリスクは少ないと考えられますが、過剰な摂取で一時的に吐き気や下痢などの症状が起こる可能性があります。

ローズヒップにはビタミンや鉄分、カルシウムなどの豊富な栄養素が含まれますが、それだけで必要な栄養素をすべてカバーできるものではありません。普段からバランスのよい食事を心掛け、美容や健康のサポートとしてハイビスカスのハーブティなどを利用するのがおすすめです。