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レスベラトロールの効果とその作用

レスベラトロールはブドウの果皮やアーモンドなどのナッツ類、多年草のイタドリなどに含まれるポリフェノールの一種です。とくにおなじみなのはブドウで、赤ワインにはレスベラトロールが豊富に含まれています。
抗酸化作用や抗炎症作用などの効果が期待できるほか、サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)を活性化させてくれるという研究報告をもとにNHKの番組で特集が組まれるほど注目を集めました。
このサーチュイン遺伝子とは、2000年にマサチューセッツ工科大学(米国)のレオナルド・ガランテ教授によって発見されたもので、健康寿命を延ばすことのできる“夢の遺伝子”とも言われ大きな話題を呼びました。
そんなレスベラトロールの効果や効能やその作用、相乗効果を発揮する成分などについて詳しく説明していきます。

椎名邦彦先生監修

出産や高度不妊治療、若年層の月経に関するトラブル、婦人科疾患・ガンの治療と多岐に渡り、長年女性の一生に向き合う中で、健康や外見面の美しさ、内面的な充実、そしてアンチエイジング医療など、トータルな女性医療の重要性を実感。

レスベラトロールとはどのような成分か

レスベラトロールはポリフェノールの一種です。ブドウの皮やリンゴベリー、イタドリなどに含まれています。赤ワインは植物や果実に比べると、ブドウを皮ごと使用するためより多くのレスベラトロールを含有しています。

フランス人は日常的に赤ワインをよく飲みますが、脂っこい食事をしているのにフランス人の心疾患罹患率が低いのは、赤ワインに含まれているレスベラトロールが貢献しているのではないか、とする研究も行われています。

レスベラトロールは植物がストレスから身を守るために生成される化合物で、代表的な効果としてはその抗酸化作用が知られています。レスベラトロールは分子構造の違いにより、シス型とトランス型に分けられるのですが、特に健康や美容に良いといわれているのは、分子構造が安定している「トランス型レスベラトロール」です。

トランス型のレスベラトロールには、サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)を活性化させ、若返りの効果があるといわれ、注目を集めました。この話題はNHKの番組で特集されたことから、日本でも広く知られるようになったのです。

レスベラトロールが活性化させるサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)には、細胞のエネルギーを作るミトコンドリアを活性化させたり、傷付いた遺伝子を保護・修復したりするはたらきがあります。保護・修復される遺伝子のなかには、「テロメア」という物質も含まれます。

遺伝子に含まれているテロメアは、細胞分裂の度に徐々に短くなっていくのですが、テロメアの長さこそがヒトの寿命を決めているとされています。テロメアは細胞分裂の回数券のような役割を持っていて、券を使い終わってしまうとそれ以上分裂できなくなるのです。

サーチュイン遺伝子は、テロメアを保護するとされ、分裂によって短くなったテロメアをも修復するはたらきがあるとされています。

レスベラトロールの効果・効能

レスベラトロールには以下のような効果・効能があるとされています。ただし、科学的根拠といえるようなデータは不十分であるというのが実情です。[※1][※2]

■若々しさを保つ効果

レスベラトロールには、抗酸化作用があるため肌や血管などの活性酸素を除去し、若々しさを保つサポートをしてくれます。また、サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)の活性化作用があるとされています。

■女性らしい体をつくる効果

レスベラトロールは女性ホルモンのエストロゲンと似たはたらきをするといわれているため、女性らしい体作りに役立ちます。

■シミ・そばかすの予防・改善

レスベラトロールがメラニンの生成を抑え、シミ・そばかすの予防や改善に役立ちます。

■がんのはたらきを抑制する効果

レスベラトロールの抗炎症作用があります。体内で起きた炎症を抑えるほか、がん細胞の増殖を抑えるはたらきがあるといわれています。

■抗菌・抗ウイルス効果

ニキビの原因菌であるアクネ菌、ヘルペスやインフルエンザなどのウイルスにたいしてはたらきかけ、活動を阻害します。

■血流改善効果

レスベラトロールには血管拡張作用があるため、脳の血流が改善し、認知症の予防に役立つのではないかとされています。また、血管拡張作用は勃起不全にも効果があるといいます。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

レスベラトロールによる効果はどのようにして発揮されるのか、そのメカニズムをみてみましょう。[※2][※3]

レスベラトロールはサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)を活性化させ、細胞のエネルギーをつくるミトコンドリアの機能を回復させたり、遺伝子を修復したりします。そのため、若々しさを保つ効果があると示唆されています。

また、体内の活性酸素類を除去するはたらきを高めてくれます。活性酸素によって細胞が傷付くと、シワやたるみの原因になったり健康な細胞ががん化したりしてしまいます。さらに、レスベラトロールにはメラニンの生成を抑えるはたらきもあります。また正常な細胞が傷付きにくくなることから、肌のコンディションを維持し、若々しさを保つ作用も期待できます。

レスベラトロールには、女性ホルモンのエストロゲンに似た作用があります。エストロゲンには、女性らしい体をつくるはたらきや動脈硬化の防止といった作用があることから、レスベラトロールにも同様のはたらきが期待できます。

レスベラトロールは抗炎症作用があります。炎症を起こす体内因子NF-kBのはたらきを阻害して、症状が広がるのを抑制します。NF-kBはがん細胞の増殖にもかかわっている因子であることから、レスベラトロールにはがん抑制の効果も期待されています。

レスベラトロールは、ニキビの原因菌であるアクネ菌の増殖を抑えます。アクネ菌を培養した培地に、濃度300 mg/mLのレスベラトロールを添加したところ、アクネ菌の増殖が抑えられました。

レスベラトロールには血管を柔らかくして血流を増加させる効果や血小板が固まるのを防ぐはたらきがあります。血流が脳で増えることで認知症やアルツハイマー病の予防、男性器で増えると勃起不全の改善につながるのではと研究が進められています。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

レスベラトロールは以下のような人におすすめです。

  • 若々しくいたい人
  • 美肌を目指す人
  • 血流を改善したい人
  • 風邪をひきやすい人

レスベラトロールの摂取目安量・上限摂取量

レスベラトロールの摂取目安量や上限は設けられていません。赤ワイン1Lあたりのレスベラトロール量は約1mg~10mgとされているので、赤ワインや果実などの食品から過剰摂取につながることはほぼないでしょう。

スイスで栄養補助食品や医療機器を手掛けるDSM社は、レスベラトロールの1日許容量を体重1kgあたり7.5mgとしています。体重50kgの人であれば、1日375mgまでが目安となります。[※4]また別の研究グループでは、体重1kgあたり1日2mgとDSM社の基準よりも少ない値に設定しています。

ただし、サプリメントは商品によってレスベラトロールの含有量が異なりますし、成分が凝縮されているものでは過剰摂取が起きやすいため、注意が必要です。

健康な人を対象にした臨床試験では、レスベラトロール2.5gを数日摂取した人に下痢や腹痛といった副作用がみられました。また骨髄腫の患者に5gのレスベラトロールを摂取してもらった試験では、24人中5人が腎障害を発症しているので、副作用のリスクもあります。[※4]

レスベラトロールサプリを摂取する際には、含有量を確認した上で、同時にほかのレスベラトロールも摂取していないかなど、チェックする必要があります。

レスベラトロールのエビデンス(科学的根拠)

レスベラトロールで注目されている効果のなかに、サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)の活性化があります。その実験について紹介します。

アメリカのバイオモル・リサーチ・ラボラトリーズのHowitz KTらが酵母菌を使って行った実験では、レスベラトロールによってサーチュイン遺伝子が活性化し、酵母菌の寿命が70%伸びたことが示されました。[※5]

同様に寿命が伸びる効果を、哺乳類であるマウスを使って示した実験もあります。

本来、サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)を活性化させるためには、カロリー摂取を抑える必要があります。また、高カロリーな食事をしているとサーチュイン遺伝子は活性化しないとされていました。

そこで、ハーバード大学やLaboratory of Experimental GerontologyなどのBaur JAやPearson KJらは、マウスを「A:標準食」「B:高カロリー食」「C:高カロリー食とレスベラトロール」をそれぞれ与えた3つのグループに分け、生存率を比べる実験を行いました。

いちばん短命だったのはBグループです。さらに、BグループとCグループでは同じように体重が増加していきましたが、生存率に差があらわれました。AグループとCグループの生存率はほぼ変わらない結果となりました。[※6]

本来、摂取カロリーが低くないと活性化しないはずのサーチュイン遺伝子が、高カロリー食を食べていてもレスベラトロールによって活性化したと示されたのです。レスベラトロールには老化を防ぐはたらきがあるのではと、注目されることとなりました。

なかには、レスベラトロールが直接的にサーチュイン遺伝子へはたらきかけるのではないという研究結果もあります。[※7]しかし、レスベラトロールの有用性を否定するものではありません。

レスベラトロールの可能性は今後の研究でますます広がっていくでしょう。

研究のきっかけ(歴史・背景)

レスベラトロールは、1939年に日本人が発見した成分であることをご存知でしょうか。北海道帝国大学の高岡道夫教授がバケイソウというユリ科の植物から見つけました。ただ一般の人が知るようになるまでには時間がかかりました。

実際に注目を集め始めたのは、最初の発見から50年余り経ってから。ワインからレスベラトロールが見つかった1990年代にはレスベラトロールブームが巻き起こります。その話題の中心にあったのが「フレンチパ・パラドックス」という考え方です。

赤ワインを好んで飲むフランス人は、喫煙率が高く脂っこい食事をしているのに、心臓病を発症する人が少ないという、このような矛盾を指して、「フレンチ・パラドックス」と呼んだのです。高脂質食や喫煙で高血圧にも心疾患にもならない理由、それがレスベラトロールではないか、と考えられたのです。レスベラトロールの効果に関する研究は以降、活発に行われるようになりました。

長年研究を続けた結果、よく知られる抗酸化作用や抗炎症作用などのほか、がんやアルツハイマー病への有効性なども示され、有益な成分として認知が広まりました。

レスベラトロールの美容・健康効果だけでなく遺伝子にたいする有効性も示唆されるようになったことは先ほども説明しましたが、レスベラトロールが老化を防ぐことは確認できても、遺伝子に直接はたらきかけるものではない、とする説も有力です。今後の研究によって明らかになることを待ちましょう。

専門家の見解(監修者のコメント)

レスベラトロールには痛みの緩和作用があるようです。この作用について、ファンケル研究開発部の久保田喜子氏は以下のようにコメントしています。

「食品由来のポリフェノールの一種であるレスベラトロールが、痛みを感じる閾値の上昇により痛みを緩和することがわかりました。さらには炎症が起きてから1日目よりも2日目のほうがより痛みを緩和していることがわかりました。
また、神経活動の記録を取ると、レスベラトロールが、機械刺激による神経細胞の興奮、即ち痛みの伝達を抑制していました。これらの結果は、レスベラトロールを連続して摂取することで炎症性の痛みを緩和できる可能性を示しています。」
(ファンケル研究開発 研究レポート 「食品素材による痛みの緩和に関する研究」より引用)[※8]

レスベラトロールには抗炎症作用が認められています。それに加え、炎症による痛みを抑えるはたらきがあるため、久保田氏はレスベラトロールの継続摂取は痛みにより低下していた生活の質の向上につながるとしています。

レスベラトロールを多く含む食べ物

レスベラトロールはブドウや赤ワインから摂取できますが、実は含有量はあまり多くありません。赤ワインには1Lあたり約1~10mgのレスベラトロールが含まれています。赤ブドウは160g(1サービング)あたり0.24~1.25mgほどのレスベラトロールを含有しています。

多くのレスベラトロールを摂取しようと赤ワインを大量に摂取してしまうと、アルコールの過剰摂取につながってしまいます。

フルーツではブドウのほかに、ラズベリー、ブルーベリー、マルベリーなどにも含まれます。レスベラトロールを多く含むイタドリは、日本では医薬品成分として登録されているため、健康食品としては摂取できません。

効果的にレスベラトロールを摂取するのであれば、成分が凝縮されているサプリメントを使用するのがいいでしょう。ただし、1日2.5g以上の摂取は副作用のおそれがあるため、食品からレスベラトロールを摂取している人は、過剰摂取にならないようにサプリメントのレスベラトロール含有量に注意が必要です。

相乗効果を発揮する成分

レスベラトロールと一緒に摂ることで、効果が上がるとされている成分はメトホルミンです。糖尿病治療薬として利用されている成分です。

レスベラトロールはメトホルミンという糖尿病治療薬と一緒に摂取すると相乗効果を発揮して、抗がん作用はがん細胞の成長を抑制する効果が高まり、寿命が延びるなどという説もありますが、薬物療法をうけている人は、必ずかかりつけ医に相談してください。[※9]

レスベラトロールの副作用

レスベラトロールの相互作用試験中に、同成分が原因と思われる副作用が報告されています。

  • 下痢
  • 胸やけ
  • 食欲の亢進
  • 気分の変容

ただしこれらの副作用は一過性のものです。

また、レスベラトロールの摂取が禁忌となっている対象は以下のような人です。[※1]

・ホルモン感受性疾患の患者

レスベラトロールにはエストロゲンに似た作用があるため、乳がん・子宮がん・子宮内膜症・子宮筋腫といった疾患を持っている人は摂取を控えるようにしましょう。

・外科手術を控えている人

レスベラトロールには血小板のはたらきを抑制する作用があるため、血が止まりにくくなってしまします。外科手術を控えている人は、手術2週間以内はレスベラトロールを摂取しないようにしてください。

注意すべき相互作用

レスベラトロールには以下の薬品やハーブ、サプリメントや健康食品との相互作用があります。[※1]

■肝臓で代謝される薬

シトクロムP4503A4(CYP3A4)の基質となる医薬品とレスベラトロールを併用すると、薬の作用・副作用が増強されるおそれがあります。ロバスタチン・ケトコナゾール・イトラコナゾールなどが該当します。

■抗凝固・抗血小板効果を持つ薬やハーブ、サプリメント

レスベラトロールには、血液凝固を抑えるはたらきがあるため、同様の効果を持つ薬やハーブ、サプリメントと併用すると紫斑や出血しやすくなるおそれがあります。