葛(くず)の近縁種にあたるプエラリアミリフィカには女性ホルモンに似た作用のある植物性エストロゲンが含まれています。その植物性エストロゲンのはたらきによって、肌への効果や閉経後の女性に起きやすい症状を緩和させる効果があるといわれています。
ここでは、プエラリアミリフィカの効果・効能や副作用、摂取目安量についてまとめています。
プエラリアミリフィカとは、タイやミャンマーに分布するマメ科植物で、葛(くず)の近縁種にあたります。別名白ガウクルアとも呼ばれています。根が大きな円形の塊状になっているのが特徴です。
根塊には、女性ホルモンに似たはたらきをもつ植物性エストロゲンが含まれており、タイやミャンマーでは古くから美容食や健康食として食されてきました。[※1]
プエラリアミリフィカには、植物性エストロゲンであるミロエストロールやデオキシミロエストロール、イソフラボン類のゲニステイン、ダイゼイン、プエラリンなどの成分が含まれています。
そのなかでも、植物性エストロゲンのミロエストロールやデオキシミロエストロールは、イソフラボン類の1,000~10,000 倍もの強いエストロゲン活性があることがわかっています。[※2]そのため、美肌効果やシミ・シワの改善などが期待されています。
プエラリアミリフィカには、以下のような効果・効能があります。[※3][※4][※5]
■美白効果
プエラリアミリフィカの根から抽出したエキスにはメラニン生成を抑えるはたらきが期待されていることから、美白効果があるとされています。
■美肌効果
植物性エストロゲンを含むプエラリアミリフィカは、美肌効果が期待できます。
■シミやシワ、たるみの改善
プエラリアミリフィカには女性ホルモンに似たはたらきをもつ植物性エストロゲンが含まれているため、美容効果が期待できます。
■脂質代謝異常改善
プエラリアミリフィカには、コレステロール値や中性脂肪値が上昇する脂質代謝異常を改善する効果があることが報告されています。
■更年期障害を和らげる
植物エストロゲンを含むプエラリアミリフィカには、閉経後女性の更年期障害を緩和する効果があることが報告されています。ただし、適量でないと副作用を引き起こすおそれがあります。
ほかにも、以下のような効果があるといわれています。
■バストアップ効果
■生活習慣病予防・改善
プエラリアミリフィカに含まれる植物性エストロゲンの作用をみてみましょう。エストロゲンは女性ホルモンの1種。植物に含まれる成分のため、植物性エストロゲンと呼ばれています。[※1]
エストロゲンには、女性らしい体をつくるはたらきに加え、脂質や糖質の代謝を調整する作用や中枢神経にはたらきかける作用などがあります。
エストロゲンが不足している女性がプエラリアミリフィカを摂取することで、ホルモンバランスの乱れによって生じる脂質代謝異常や更年期障害の症状などがやわらぐと考えられています。
しかし、安易にプエラリアミリフィカを食したり、プエラリアミリフィカ配合のサプリメントを摂取したりするのは危険です。
プエラリアミリフィカには、作用が強すぎる植物性エストロゲン(ミロエステロールやデオキシミロエステロール)も含まれるため、摂取量によってはホルモンバランスを整えるどころか、エストロゲンの作用が強くなってしまう懸念があるため、適量を越えた摂取は体調を崩すおそれがあります。[※2]
プエラリアミリフィカは、以下に該当する人におすすめです。
■美肌になりたい人
■シミやシワを改善したい人
■閉経後に起きやすい症状を予防・改善したい人
■更年期障害を緩和したい人
■生活習慣病を予防したい人
■バストアップしたい人
プエラリアミリフィカは、栽培された地域・収穫時期・生育年数などによって成分含有量が変わることが報告されています。そのため、プエラリアミリフィカを含む製品の成分含有量にバラつきがあり、現在プエラリアミリフィカの1日の摂取量は明確に定まっていません。
原産国のタイにおいては、食用における安全性のデータが十分ではないことから、健康食品などでプエラリアミリフィカを摂取する場合、1日の摂取上限量を100mgに制限しています。[※2][※6]
製品によってプエラリアミリフィカの含有量が異なるため、購入する際は、パッケージに記載されている成分表示を確認するようにし、1日100mg程度の摂取に抑えるようにするのが望ましいでしょう。
プエラリアミリフィカにはエストロゲンのようなはたらきをする成分が含まれていることから、閉経後に起こる症状の改善ができると考えられています。
女性は、閉経後に体質が変化して脂質異常症を引き起こしやすくなります。脂質異常症は、血中のHDL(善玉)コレステロール量の低下、LDL(悪玉)コレステロール量の上昇などの症状が起こり、放置すると動脈硬化や脳梗塞などの病気につながります。
群馬大学の岡村信一准教授らは、閉経後に起こる脂質代謝の異常に関して、プエラリアミリフィカが改善効果を示すという研究を発表しました。
試験では19名の閉経後女性を2グループに分け、一方にはプエラリアミリフィカの粉末を、もう片方にはプラセボ(偽薬)を2か月間与えています。
その後、血中のHDL(善玉)コレステロールおよびLDL(悪玉)コレステロール、脂質代謝を手助けするアポリポたんぱく質の濃度を測定。
結果、プエラリアミリフィカの粉末を摂取したグループではHDLコレステロールとアポリポたんぱく質の濃度が高くなったと報告されています。
また、血中コレステロール濃度が変化し、全体的にLDLコレステロールの割合が下がったことがわかりました。このことから、血中の脂質代謝が改善されたと考えられます。
この試験では、血管の詰まりやドロドロ血液を引き起こすLDLコレステロールの量が下がったことから、プエラリアミリフィカには動脈硬化や脳梗塞などのリスクを下げる効果が期待できます。[※7]
プエラリアミリフィカは、古くからタイ北部やミャンマー北部で若返りの秘食として用いられてきました。かつては若者の使用が禁じられていた時代もあるようです。
1920年代にビルマ(現ミャンマー)の旧首都Paganにある寺院で秘蔵されていた古文書が発見されました。その古文書にはプエラリアミリフィカについて記載があり、それから現地の人々に知られるようになりました。
現在でも現地の人々は美容食や健康食としてプエラリアミリフィカを重宝しています。
1935年ごろに発見された古文書が英訳され、世界に民間伝承の存在が広まり、プエラリアミリフィカが注目されるようになりました。その後、1960年にはプエラリアミリフィカの根から抽出された成分・ミロエステロールの構造に関する論文が、イギリスの総合学術雑誌「Nature」に発表されました。
その後現代にいたるまで、プエラリアミリフィカに関する研究が進められ、主成分中に女性ホルモン様作用をもつ種々のイソフラボン誘導体群があることが確認されています。
プエラリアミリフィカのサプリメントには健康被害事例があります。
食品会社研究所や民間調査会社などに勤めていた経験を活かし、現在は消費生活コンサルタントとして活躍している森田満樹氏は、プエラリアミリフィカを含むサプリメントの被害について次のように解説しています。
「プエラリア・ミリフィカは、タイで栽培されるマメ科のクズ(葛)の一種です。女性ホルモン作用をもつ植物性エストロゲンを多く含むとして、これを原料とするサプリメントが豊胸やスタイルアップ等の健康食品として各種販売されています。ヨーロッパや韓国では販売が禁止されていますが、日本では禁止されていません」(FOOCOM.NET「専門家コラム|プエラリア・ミリフィカを含む健康食品 なぜ販売を禁止できないのか」より引用)[※8]
「厚労省は2017年7月13日に注意喚起を行った際、全国の自治体に依頼してどの程度の被害があるのか調査を行ったところ、これまでに健康被害事例が233件あったことがわかりました」(FOOCOM.NET「専門家コラム|プエラリア・ミリフィカを含む健康食品 なぜ販売を禁止できないのか」より引用)[※8]
「今後は事業者に指導を徹底させるということで、販売はかなり制限されることになります。しかし、禁止されたわけではありません」(FOOCOM.NET「専門家コラム|プエラリア・ミリフィカを含む健康食品 なぜ販売を禁止できないのか」より引用)[※8]
「プエラリア・ミリフィカを長期摂取することで何が起こるのかはわかりません。利用者が自ら体を張って人体実験をしているようなものだと思います。何かあっても、体は元には戻らない。そのことをもっと広く知ってもらいたいと思います」(FOOCOM.NET「専門家コラム|プエラリア・ミリフィカを含む健康食品 なぜ販売を禁止できないのか」より引用)[※8]
プエラリアミリフィカは、副作用があらわれても、摂取を止めれば元の状態に戻るとされています。しかし、プエラリアミリフィカの安全性に関するデータは不十分です。必ずしも服用を中止するだけで元の状態に戻るとはいい切れません。
プエラリアミリフィカ配合のサプリメント摂取には、そのような危険性がともなう可能性があることを覚えておきましょう。
プエラリアミリフィカに含まれる成分のなかでも注意が必要なのは、強いエストロゲン活性がある「デオキシミロエストロール」と「ミロエストロール」です。作用が強すぎることから、人によっては健康被害や副作用があらわれる可能性があります。[※6]
プエラリアミリフィカに含まれる植物エストロゲンの量は、産地や収穫時期によって大きく異なります。そのため、プエラリアミリフィカを含んだ製品の成分含有量にもバラつきがみられます。成分量が多ければ多いほど良いという認識で安易に購入し摂取すると、大量摂取になる危険性があります。
プエラリアミリフィカを含有する製品を購入する際は、きちんと成分表示に記載されているプエラリアミリフィカの成分量を確認して購入するようにしましょう。
プエラリアミリフィカを含むサプリメントには、一緒にプラセンタが配合されていることが多いようです。プラセンタには美肌効果のほか、更年期障害の症状を改善する効果があるといわれています。そのため、プエラリアミリフィカとの相乗効果が期待できそうです。
プエラリアミリフィカには、イライラや頭痛、吐き気、嘔吐、乳房痛、膣出血などの副作用が報告されています。
また、強い女性ホルモン(エストロゲン)様物質を含んでおり、生体内に影響をおよぼすおそれがあります。そのため、特に妊娠中・授乳中の人、小児は使用を避けてください。
ほかにも、女性ホルモンに影響する治療を行っている、または医薬品を摂取している人も、安易に自己判断で使用せず、医師に相談しましょう。
プエラリアミリフィカを摂取するときは、女性ホルモン薬や抗がん剤など、エストロゲン作用をもつ薬剤やサプリメントなどとの併用は避けてください。
また、同科のマメ科植物である葛(くず)もエストロゲン様作用があり、以下のような医薬品やハーブ、健康食品、サプリメントとの相互作用があります。[※9]共通すると思われるため、合わせて注意するようにしましょう。
■経口避妊薬
経口避妊薬のなかにはエストロゲンを含むものがあります。併用すると、避妊薬の効果を減少させる可能性があります。
■タモキシフェンクエン酸塩(抗悪性腫瘍薬・ホルモン)
併用することで、タモキシフェンクエン酸塩の効果を弱める場合があります。
■メトトレキサート(抗悪性腫瘍薬・代謝拮抗薬)
体内からのメトトレキサートの排出を抑え、副作用を引き起こす可能性があります。
■エストロゲン(女性ホルモン剤、卵胞ホルモン)
エストロゲンには、カフェインの分解を抑えるはたらきがあります。併用することでクズに含まれるカフェインの分解が減少し、頭痛や神経過敏などの副作用を引き起こすおそれがあります。
■抗血栓薬(抗凝固薬、抗血小板薬)
併用すると出血や紫斑が生じる可能性があります。
■糖尿病治療薬
併用することで、血糖値を下げすぎてしまうおそれがあります。
■エストロゲンと似た作用をもつハーブ・健康食品・サプリメント
一緒に摂ることでエストロゲンの効果を弱める、または強める可能性があります。
■血液凝固を抑制するハーブ・健康食品・サプリメント
併用することで出血や紫斑が生じる危険性があります。
■血糖を低下させるハーブ・健康食品・サプリメント
一緒に摂ると血糖が下がりすぎてしまう場合があります。