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プラセンタの効果とその作用

プラセンタとは哺乳類の胎盤のことです。母体の子宮の中に形成され、母体と胎児とをつなぐ臓器です。ヒト由来のプラセンタは医療用に限定して使用され、健康食品や化粧品で使用されるプラセンタは豚や馬由来がほとんどです。ここではプラセンタの効果効能・研究成果・摂取目安量などについて詳しく解説していきます。

プラセンタとはどのような成分か

プラセンタとは哺乳類の「胎盤」のことです。胎児と母体をつなぎ、胎児を成長させるためにあらゆる栄養素を胎児に供給する臓器です。

胎盤は妊娠中の母体だけに臨時に作られ、出産とともに体外に排出されます。胎盤は胎児に栄養を送り込むはたらきのほか、妊娠中は胎児のあらゆる臓器代行の役割を担います。胎児が母体の中で成長している間、胎児の命を守るために不可欠な臓器なのです。

胎児に栄養を送る臓器であることからわかるように、プラセンタには豊富な栄養が含まれています。アミノ酸、たんぱく質、糖質、ビタミン類、核酸、ペプチドなどの栄養素が特に豊富に含まれ、特定の細胞の増殖を促す「成長因子」が含まれていることも特徴です。

ヒトの赤ちゃんはたったひとつの小さな受精卵から生命がスタートしますが、わずか10か月という短期間で立派な「人」に成長する神秘と驚異は、このプラセンタがあるからだと考えられています。

そして人間以外の哺乳類は、出産直後に母親がこの胎盤を食べる習性があるそうです。この行動を「胎盤食」といいますが、母体の産後の体力回復に役立つからだと考えられています。

日本でも昔は胎盤食の慣習が残っている地域があったようですが、いまではないようです。ただ海外ではにわかにブームになったこともありました。

小さな赤ちゃんを育てるだけのエネルギーと栄養素を持つ胎盤は神秘に満ちていて、「特効薬」として使えないかと着目した人たちが当然古代にもたくさんいたようです。

ヨーロッパでは紀元前4世紀ごろの古代ギリシヤのヒポクラテスによって、当時すでに治療にプラセンタが用いられたという記録が残されています。中国でも秦の時代、日本では江戸時代に民間薬として使用されていたとされています。

現在、人間のプラセンタエキスは注射薬として医療の現場で用いられ、豚や馬などの哺乳類動物から抽出されたプラセンタエキスは健康食品や化粧品に利用されています。

植物由来のプラセンタ、植物プラセンタと称される成分もありますが、植物には胎盤はないので、正確にはプラセンタではなく、まったく異なる成分です。[※1][※2][※3]

この植物性プラセンタは種を包む「胎座」といわれる部分を使用しており、栄養素が凝縮されている成分。動物性プラセンタとの違いは「成長因子を含まない」点です。

プラセンタの効果・効能

プラセンタには以下のような効果・効能が期待されています。

■更年期障害の改善効果

プラセンタは更年期障害の治療に用いられることがあります。治療の場合はヒト由来のプラセンタが原料となる医薬品「メルスモン」という薬剤を用います。これによってホルモンバランスが整い、更年期障害の症状が緩和すると報告されています。[※4]

■乳汁分泌不全の改善効果

母乳が出にくい「乳汁分泌不全」という症状にも医薬品「メルスモン」という薬剤が用いられることがあります。更年期障害、乳汁分泌不全と診断された場合、プラセンタによる保険適用治療が可能です。[※4]

■肝機能障害の改善効果

肝機能障害の治療薬「ラエンネック」はヒトプラセンタ由来の薬剤で、B型肝炎、C型肝炎、飲酒で減少した肝細胞などを、肝細胞増殖因子が増やしてくれることによって、肝機能を回復させます。[※5]

■美肌効果

プラセンタに含まれる成長因子がコラーゲンやエラスチンなどの肌の線維芽細胞を活性させ、肌トラブルを緩和させると考えられています。[※6]

■美白効果

プラセンタは厚生労働省が認めた美白成分のひとつで、シミの原因やメラニンの生成を抑制することが認められています。[※6]

■疲労回復効果

プラセンタには5大栄養素がすべて含まれているため、新陳代謝が促進されることで体力や疲労回復に効果があるとされています。[※6]

■アンチエイジング効果

プラセンタには抗酸化作用を示す成分が豊富に含まれているため、活性酸素の除去や過酸化脂質の除去が若返りに有効とされています。[※6]

■抗アレルギー効果

プラセンタには抗アレルギー作用があり、免疫細胞の働きを整えることで、アトピー性皮膚炎の改善効果が期待されています。[※7]

■創傷治癒効果

傷の部分にプラセンタを注射すると炎症が抑制され、治癒が促進されるため、美容外科や形成外科でも使用されています。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

プラセンタにはさまざまな有効成分が含まれていることがわかっていますが、活性成分の本体や、それらが体内に吸収された後の動態については解明されていないことがほとんどです。

現時点で明らかにされていることは、すでに解明されている有効成分と未知の成分が複合的に作用することで、さまざまな効果を発揮しているのではないか、ということです。[※8]

現時点で推測されているプラセンタのメカニズムとしては、以下のようなものがあります。

■豊富な栄養素による働き

プラセンタに含まれる豊富な栄養素が、バランスよく体内に取り込まれることで、体が自然治癒力を高め、さらに自律神経を整え、多様な疾患に効果を発揮する可能性が検討されています。

■免疫調整による効果

プラセンタに含まれるどの成分かは特定されていませんが、プラセンタが免疫機能を調整するため、多様な疾患に効果を発揮する可能性が示唆されています。

■エクソソームの関与

がん治療のバイオマーカーとして注目されている「エクソソーム(細胞外小胞)」が、プラセンタにも含まれています。このエクソソームが生理作用に関与している可能性が示唆されています。[※9]

プラセンタについて、厚労省が承認している効果は「更年期障害」「乳汁分泌不全」「慢性肝疾患における肝機能の改善」のみです。

ただしそのほかにも保湿、細胞増殖、コラーゲン生成、抗炎症、抗アレルギー、自律神経調整、代謝向上、創傷回復、解毒、血行促進、血圧調整、歯科領域の効果などの有用性について国内外の学会発表や動物試験データが存在します。

ただいずれも小規模な研究であるため、信頼に足るデータはない、というのが国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所の見解です。

[※10][※11]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

プラセンタといえば美容のイメージが強いですが、肝機能、更年期障害などの治療で用いられた結果として「肌の調子が良くなる」「疲労回復効果が得られる」といった体感が多く報告されたのがきっかけで、現在では後者の効果についてよく知られるようになっています。

ただプラセンタは本来、美容やアンチエイジングに興味のある女性だけでなく、男性にも役立つ作用がいくつもあります。

年齢による体力の低下、見た目の老化、体質や体調の変化を感じている男女におすすめできる成分といえるでしょう。

医療機関では保険適用によるプラセンタの治療と、保険適用外のプラセンタ治療の両方がありますので、肝臓障害や更年期に当てはまらない人でもプラセンタ治療を受けることは可能です。ただし一度でもヒト由来のプラセンタ注射を受けた人は献血できない、と厚労省から指示がでていることを知っておきましょう。

注射や点滴と比較してサプリメントは効果が薄い、と思い込んでいる人もいますが、サプリメントでも有効性が報告されているものはいくつもあります。

クリニックで販売されているものや、医師が監修したもの、医薬品メーカーが製造しているプラセンタサプリや、プラセンタ入りコスメもあります。

宣伝で「プラセンタ原液100%」などとうたっている製品をよく見かけますが、品質は玉石混交。もともとかなり希釈されたプラセンタエキスの原料を「100%使用している」というだけの製品もあるので、ご注意ください。

プラセンタの摂取目安量・上限摂取量

プラセンタについて、標準1日容量は定められていませんが、1日300〜500mgで「肌の改善効果」が期待できるというのが通説です。

プラセンタエキス純末なら100mgでも十分とされますが、商品ごとに由来原料や希釈率もさまざまなで、なかにはかなり薄いプラセンタエキスしか含まれていないものもあるとされます。まずは商品選びが大切です。

プラセンタによるトラブルを避けるために、商品ごとに推奨している摂取目安量や最低量から摂取し、様子を見ながら使用するとよいでしょう。

プラセンタのエビデンス(科学的根拠)

■化粧品としてのプラセンタエキス

化粧品としてのプラセンタについて、その活性のメカニズムについては不明とされてきましたが、東京工業大学では以下のような研究発表を行っています。

「プラセンタエキスにはFGF(線維芽細胞増殖因子)活性を促す物質が含まれており、プラセンタエキスの有効性の一部もこのFGF活性によるものであることが示唆されている」[※12]

まだ解明されていない部分も多くありますが、プラセンタの美肌作用には美白・シミ・シワ・たるみの解消・保湿など複数の効果があるのも特徴です。

■アルツハイマーモデルラットへの記憶障害改善作用

肝機能改善を効能としてプラセンタ製剤「ランエネック」をアルツハイマーモデルラットに投与した試験では、ランエネック投与マウスにおいて記憶障害の改善作用と、脳神経の樹状突起部分の密度の回復が見られたことが報告されています。[※13]

■更年期症状の改善作用

豚プラセンタエキスを用いた人臨床試験で、更年期症状の改善作用があることが報告されています。

スノーデン(株)によれば、更年期障害の女性50名を「豚プラセンタエキス」を300mg/日投与する群とプラセボ群に振り分けた試験を行ったところ、プラセンタ摂取群は8週及び12週で、摂取前より有意に症状の改善が見られた、と報告しています。[※14]

更年期障害の症状緩和については保険適用ということもあり、プラセンタの薬剤によるものが主流ですが、豚由来のプラセンタエキスでも効果が見られた、というのは意義のある研究といえるでしょう。

研究のきっかけ(歴史・背景)

プラセンタの歴史は非常に古く、古代ギリシヤの名医ヒポクラテスやクレオパトラも使用していたという話もありますが、確かな文献証拠は見つかっていないようです。

中国では秦の始皇帝が不老不死の薬として使用していたことや、明の時代に作られた薬学書「本走網目(ほんぞうこうもく)」では「紫河車(しかしゃ)」の名前で滋養強壮の漢方薬として紹介されていたことが記録として残っています。

このほかにもマリー・アントワネット、現代ではマリリン・モンローやオードリー・ヘップパーンなどが、若返りや美容の目的でプラセンタを使用していたという話もあります。

プラセンタが治療に用いられるようになったのは、1930年代の旧ソ連でのことでした。オデッサ大学教授の眼科医であるフィラトフ博士が、埋没療法という治療法を確立します。

これは冷凍保存した胎盤を皮下に埋め込む治療法で、高い成果をもたらしたそうです。

この治療法が日本に伝わり、日本の医師も「組織療法研究会」を発足させ、同時にプラセンタエキス注射剤を開発します。

これが1950年に「メルスモン製薬株式会社」となり、現在の厚労省(当時の厚生省)から医薬品の認可を得て、更年期障害と乳汁分泌不全の注射薬「メルスモン」の製造と販売がはじまりました。

これとは別に久留米大学医学部の稗田憲太郎博士という人物が、プラセンタ研究に情熱を注ぎ、肝機能改善のプラセンタ注射薬「ラエンネック」を1959年に開発、この薬は現在もなお、使用されています。

一方、京都大学医学部三林隆吉教授は戦中戦後の貴重な栄養源として、プラセンタ製剤「ビタエックス」を開発し(1943年)、これは現在森田薬品工業(株)事業をひきついでいます。

そして秋田大学の初代学長であった九嶋勝司博士は更年期障害を対象に組織療法を研究。1977年に(株)スノーデンが設立され、現在もプラセンタエキスの研究開発が進められています。

プラセンタエキスは、健康食品や化粧品だけでなく、医療においても古くから利用されてきました。それだけ多くの人を魅了する有効成分であるといえるでしょう。[※15] [※16]

専門家の見解(監修者のコメント)

野本真由美スキンケアクリニックの野本真由美先生は、クラシエが監修する「Kampoful Life」の中でプラセンタの選び方について、以下のように解説しています。

「商品によってプラセンタの配合量の差が大きいなど問題点がないわけでありません」(中略)

「商品によっては、純末にする前段階のエキスの量で表示をしている商品も見受けられます。単純に記載されている数字で比べることができないので、しっかりと純末量で表記されているものを選ぶと良いと思います」(中略)

「含有量を明確に表記しているという点で信頼のおけるものであると思います」(中略)

「美容クリニックで扱うことの多い豚由来のプラセンタドリンクを飲んだことがありますが、漢方薬の製薬企業が販売する濃縮プラセンタドリンクは、豚臭さがなくて飲みやすかったですね」

(「Kampoful Life」より引用・抜粋)[※17]

いろいろなプラセンタ商品が市販されているため、プラセンタ選びは容易ではありませんが、野本先生は「純末量が明記されていてい」「その他必須アミノ酸の含有量も明記されていて」「続けやすい味」であることを、プラセンタ選びの3つのポイントとしています。

プラセンタに含まれる成分

プラセンタの魅力は豊富に含まれる栄養素にあります。たんぱく質、アミノ酸、糖質、ビタミン、核酸、ミネラル、そしてさまざまな生理活性成分を含むことが判明しています。

含まれるアミノ酸としては

  • アスパラギン酸
  • アラニン
  • チロシン
  • トレオニン
  • バリン
  • フェニルアラニン
  • セリン
  • メチオニン
  • リジン
  • グリシン
  • グルタミン酸
  • イソロイシン
  • プロリン
  • アルギニン
  • ロイシン

など、20種類のアミノ酸が含まれており、プラセンタの効果の源は、このアミノ酸にあると言っても良いでしょう。

豊富なアミノ酸と同様に注目される成分が「成長因子」です。これはたんぱく質でありながら、特定の細胞の増殖や分化を促進するはたらきをもっています。

プラセンタに含まれる成長因子は

  • HGF(肝細胞増殖因子)
  • EGF(上皮細胞増殖因子)
  • NGF(神経細胞成長因)
  • FGF(線維芽細胞増殖因子)
  • IGF(インシュリン様成長因子)

などがあります。

プラセンタは母体と胎児をつなぐ役割を持つので、生命維持と成長に必須な栄養素がぎゅっと詰まっていると考えられています。[※18]

相乗効果を発揮する成分

プラセンタと相乗効果を発揮する成分については、どのような目的でプラセンタを摂取するかに応じて考えるとよいでしょう。[※19]

■疲労解消や肩こり解消

ニンニク注射(ビタミンB1製剤)にプラセンタを混ぜる(カクテルともいいます)と相乗効果を発揮して、即効性が高いと感じるようです。

■美肌目的

肌の新陳代謝を亢進するビタミンB群やビタミンCとの相乗効果が期待できます。

■シミ改善

肝斑(かんぱん)の場合はトラネキサム酸、そのほかのシミであればビタミンCやビタミンB群との相乗効果が期待できます。

■アンチエイジング

抗酸化作用の高いαリポ酸やビタミンEとの相乗効果が期待できます。

プラセンタに副作用はあるのか

プラセンタの副作用はほとんどないといわれますが、まったく副作用が報告されていないわけではありません。

プラセンタエキスを含む健康食品の摂取でアトピー性皮膚炎が悪化した事例や、プラセンタ注射が原因と考えられる薬剤の性肝障害などがいくつか報告されています。

また、たんぱく質などにアレルギー反応がある人も注意が必要です。

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報では、プラセンタについて

「理論上、食肉由来の人獣共通感染症リスクが否定できない」

としています。プラセンタの由来や衛生的に製造されていることを消費者が確認することも必要です。[※11]

医薬品との相互作用のリスクも低いとされていますが、医薬品を摂取している人がプラセンタエキスのサプリメントや健康食品を摂取する場合や、医薬品を摂取している人がプラセンタ注射を検討している場合は当然医師に相談しましょう。

妊婦・授乳婦・小児がサプリメントなどで摂取する場合の安全性に関しても情報がないため、使用は避けるべきです。