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パセリの効果とその作用

ステーキやサラダに添えられることが多いパセリは、実はとても栄養価が高い植物です。抗酸化作用があり、貧血や口臭予防などに効果があるといわれています。そんなパセリの効果・効能や副作用などについて解説しています。

パセリとはどのような植物か

パセリはセリ科の二年草です。葉や根を野菜として利用するほか、地上に生えている部分からパセリ油を抽出したり、種子から精油を抽出したりします。

パセリには複数の種類があります。レストランで見かける葉が縮れたパセリは、和名をオランダゼリ、漢名を香芹(こうきん)といい、葉っぱの形からカーリーパセリとも呼ばれます。[※1]

一方、葉が開いているパセリはイタリアンパセリです。ヨーロッパではこちらのほうが一般的。パクチーによく似た外見をしていて、オランダパセリよりも苦味が少なく柔らかいのが特徴です。 [※2]

パセリは、日本で料理の飾りとして添えられることが多い植物ですが、栄養価は野菜の中でもトップクラスです。

パセリには以下の栄養分が含まれています。

ビタミン
A(β-カロテン)、B1、B2、C、葉酸 など
ミネラル
カルシウム、マグネシウム、鉄、カリウム など
その他
食物繊維、葉緑素 など

パセリの爽やかで独特の香りは、アピオールやミリスチシンといった精油成分によるものです。アピオールは月経周期をととのえる作用、ミリスチシンには向精神作用があります。[※3]

パセリの効果・効能

パセリには健康や美容に役立つ効果・効能があります。[※4][※5]

■生活習慣病の予防

パセリには抗酸化作用があります。とくに血中の脂質の酸化を防ぐはたらきが強いため、循環器系の生活習慣病予防に効果があります。

■美肌効果

パセリの抗酸化作用や高い栄養価は、美肌作りをサポートしてくれます。

■むくみの改善

パセリの利尿作用や体を温めるはたらきによって、むくみ改善効果が期待できます。

■食欲不振・消化不良の改善

パセリには食欲を刺激する効果や腎臓や胃のはたらきをサポートする効果があります。

■貧血予防

パセリに含まれる鉄分とビタミンCのはたらきにより、ヘモグロビンが増え貧血の予防につながります。

■抗菌効果

パセリに含まれるアピオールという香り成分は口腔内の雑菌の繁殖を抑えるため、口臭予防になります。また、ピネンという香り成分は腸内の雑菌の繁殖を抑え、腸内環境をととのえます。

■イライラ防止

パセリに含まれるカルシウムやミネラルは神経伝達を助けるため、イライラや興奮状態を抑えます。

■抗がん作用

パセリの抽出物がラットのがん細胞の増殖を抑えたという研究結果があるため、抗がん作用が期待できます。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

パセリには、抗酸化作用を持つβ-カロテンと葉緑素(クロロフィル)が含まれているため、高い抗酸化力を発揮します。

これらの成分は、血中の脂質の酸化を抑制するほか、血管の壁が活性酸素によって傷つかないようにしてくれます。血液や血管の健康が保たれると血流がよくなり、生活習慣病の予防につながるでしょう。

また、β-カロテンは体内で皮膚や粘膜の状態を良好に保つビタミンAに変化するため、美肌効果も期待できます。

パセリに含まれる鉄とビタミンCは、貧血予防に効果的です。本来、植物由来の鉄(非ヘム鉄)は体内に吸収されにくいのですが、ビタミンCを同時に摂取すると体内に吸収されやすい形になるため、鉄の吸収率が高まります。

パセリには鉄とビタミンCの両方が含まれているため、貧血の予防に良いとされているのです。

パセリに含まれる精油成分のアピオールやピネンには抗菌作用があります。雑菌は、口腔内で増えると口臭の原因になり、腸内で増えると腸内環境が悪くなります。

すると、下痢や便秘、おならを引き起こします。また、腸内環境の悪化は免疫力の低下や肌トラブルにもつながります。

パセリの精油成分は雑菌の繁殖を抑えてくれるため、口臭や下痢、便秘、おならなどの症状をまとめて予防・改善できるでしょう。

ラットを使った実験ではありますが、パセリの抽出物が結腸がん由来の細胞が増殖するのを抑えたという研究データもあります。

また、腸のけいれんを抑えるはたらきも確認されています。[※6]

そのほか、パセリは腎臓の水分調整機能にはたらきかけて、余分な水分の取り込みを阻害します。取り込まれなかった水分が体外へ排出されるため、むくみの改善効果があります。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

パセリは以下のような人におすすめです。

  • 生活習慣病を予防したい人
  • 食欲がない・消化不良の人
  • 美肌を目指している人
  • 貧血を予防・改善したい人
  • むくみが気になる人
  • 口臭が気になる人

パセリの摂取目安量・上限摂取量

パセリの摂取目安量は決まっていません。上限も設けられていませんが、200mg以上の摂取で過剰摂取とみなされるようです。

過剰摂取した場合、精油成分が持つ毒性が高まる恐れがあるため摂りすぎには注意が必要です。

パセリのエビデンス(科学的根拠)

パセリの効果を示すエビデンスとして、動物実験による抗腫瘍効果や整腸効果などが示されています。

Medicinal,Aromatic and Poisonous Plants Research CenterのAl-Howiriny Tらはパセリの抽出物による胃潰瘍の予防効果を調べています。

実験では低体温かつ拘束状態にしたラットに胃潰瘍を起こさせたうえで、1~2g/kg体重のパセリ抽出物を与えました。その結果、パセリ抽出物を与える前よりもラットの胃粘膜が回復したことがわかっています。このことから、パセリ抽出物に胃潰瘍を改善する効果が示唆されました。[※7]

また、Institut za fiziologijuのBranković   Sらはパセリが腸障害を改善するための伝統薬として用いられていたことをふまえて、パセリと腸のはたらきについて実験しました。

研究ではラットを使用。回腸部分を取り出して腸の間の膜を掃除したあと、水とエタノールで抽出したパセリ液をそれぞれ投与しました。その後、腸の動きを観察しています。

実験の結果、水で抽出したパセリよりもエタノールで抽出したパセリのほうが、回腸の動きを低下させることがわかりました。この実験により、エタノール抽出パセリには鎮痙(腸の動きをゆっくりにする)作用があり、下痢を予防する効果が期待できることが示されました。[※8]

研究のきっかけ(歴史・背景)

パセリは地中海原産の野菜で、その歴史は紀元前までさかのぼります。主に薬用や香味野菜として利用されていたほか、花輪や葬礼の飾りとしても用いられていた記録が残っています。

パセリが各地域に広まったのは中世で、薬草・香草としてヨーロッパの中部から北部、イギリスまで伝わりました。17世紀にはアメリカに広まり、多くの改良品種がつくられたことがわかっています。

日本には17世紀ごろにオランダから伝わり、江戸時代中期の文献『大和本草』にオランダセリ(オランダゼリ)として紹介されたようです。

明治時代以降は西洋野菜として、日本各地で栽培が進められました。パセリには生理周期を正常にする作用があることから、古くから女性薬として使われてきた歴史があります。

ほかにも泌尿器の感染症や結石、痛風などに効くとして研究が進められ、現在ではパセリの効果について数々の論文が発表されています。

専門家の見解(監修者のコメント)

パセリは栄養価が高く、精油成分も多く含むことからハーブとしての効果も見込める植物です。その栄養と効果については、数々の専門家が見解を述べています。

JA信州諏訪パセリ専門部会会長を務める林作雄氏は、豊富なパセリの栄養についてコメントしています。

「残念なことにあまり広く知られていませんが、パセリの栄養価は、まさに緑黄食野菜の王様といえる存在。主な成分を栄養の専門書やインターネットで調べるだけで、β−カロチン、フラボノイドのアピゲニンやケンフェロール、食物繊維、芳香成分のピネンやアピオール、カリウム、カルシウム、ビタミンC、ビタミンAなどなどずらずらっと出てきます」

(JA長野県「ひとつパセリの名人に話を聞こうじゃないか|長野県のおいしい食べ方」より引用)[※9]

ビタミンやミネラルだけでなく、フラボノイドや芳香成分など、体に良い効果をもたらす成分が多いそうです。栄養が多いパセリを摂ることで、健康維持につなげられるでしょう。

ただし、パセリに含まれる成分は、使い方によって副作用をもたらすものもあります。

東邦大学薬学部の二階堂保名誉教授は、パセリの薬効と使い方について以下のようにコメントしています。

「香りはアピオール、ミリスチシン、ピネンなどの精油成分によるもので、アピオールで整腸効果が、又ピネンには消臭効果など色々の効果が期待できますが、精油を経口摂取したり、皮膚に直接塗るのは光過敏性の皮膚炎を起こす可能性があるので避ける必要があります」

(漢方薬のきぐすり.com「パセリ | 二階堂先生の『食べ物は薬』」より引用)[※10]

パセリに含まれる香り成分には、整腸効果・消臭効果があります。しかし、精油のように濃度が高い製品を飲んだり皮膚に塗ったりすると、肌が光を感じやすくなり、日光による炎症を起こしやすくなるようです。

精油を飲むことはまずありませんが、パセリを大量に摂取すると同じような症状を引き起こすおそれがあります。パセリを食べる際は、過剰摂取にならないよう気を付けましょう。

パセリを使ったレシピ

栄養豊富なパセリは多くの料理に応用しやすく、添え物としても役立つ野菜です。

魚や肉の臭み消し、スープ、パスタやサラダの風味付けなどさまざまな活用法があるので、パセリを買った際は一度試してみてください。以下にパセリを使った料理のレシピを紹介します。

■パセリのおひたし

【材料】

パセリ3株ほど、塩昆布大さじ1〜2、醤油小さじ1、ごま油小さじ1、塩(茹で用)ひとつまみ

【つくりかた】

  1. パセリをよく洗い、水気を切ります
  2. 鍋にお湯を沸かしてから塩をひとつまみ入れ、パセリを1~2分茹でます
  3. パセリをざるに入れてお湯を切り、粗熱を取ってぶつ切りにします
  4. 塩昆布、醤油、ごま油を和えて完成です

相乗効果を発揮する食品

パセリと一緒に摂ることで、相乗効果が期待できる食品をまとめました。

肉、ほうれん草、牡蠣など
これらの食材には鉄分とビタミンが含まれるため、パセリと一緒に摂ると貧血の予防・改善につながります。
人参、エビ、ピーマンなど
人参やピーマンにはビタミン類が、エビにはタウリンが含まれるため、パセリと一緒に摂取すると免疫力アップが期待できます。
乳製品
パセリにはイライラを抑制する効果があり、乳製品には抑うつ作用があるため、一緒に摂ると気持ちを落ち着かせられるでしょう。

パセリの副作用

パセリは適量の摂取であれば、安全性は高いでしょう。しかし、1日200g以上を摂取すると危険です。

パセリには、アピオールやミリスチシンといった香り成分(精油成分)が含まれています。これらは少量であれば、有効な効果を示しますが、大量に摂取すると毒性を示します。

アピオールの毒性
血液疾患(溶血性貧血、血小板減少)・腎毒性・肝毒性
ミリスチシンの毒性
めまい・難聴・幻覚・低血圧・徐脈(脈が遅い)・錯乱・肝臓や腎臓の脂肪変性

パセリを過剰摂取したり、高濃度の精油を誤って口にしたりしないように注意が必要です。

■妊娠中のパセリ摂取について[※1]

パセリとドンクアイなどを含むハーブ調剤を妊娠初期に摂取すると、重篤な先天性疾患のリスクを高めてしまうおそれがあります。ドンクアイはホルモンバランスをととのえるとされるハーブです。

また、パセリの種は堕胎作用や月経を促す刺激を与える作用があるため、妊娠中の過剰摂取は危険です。パセリの薬効や健康効果を期待して大量摂取しないでください。

■アレルギーについて

パセリは人によってはアレルギー反応が出る場合があります。シラカバ花粉にアレルギーを持っている人は、パセリでも反応が出る可能性があります。[※11]

注意すべき相互作用

パセリは以下の医薬品との相互作用が考えられます。[※1]

・ワルファリンカリウム

パセリと併用すると、ワルファリンカリウムの血液凝固抑制作用が低下するおそれがあります。

・利尿薬

パセリには利尿作用があるため、利尿薬と併用すると体内の水分が排出され過ぎてしまうおそれがあります。

・糖尿病治療薬

パセリには血糖値を低下させる効果があるため、糖尿病治療薬と併用すると過度に低下するおそれがあります。

・アスピリン

報告例は1件だけですが、パセリアレルギーの人がアスピリンを使用すると、アレルギー症状が過剰になるおそれがあります。併用は避けるのがよいでしょう。

参照・引用サイトおよび文献

  1. 旬の食材百科 「パセリ/オランダゼリの特徴や旬の時期」
  2. 旬の食材百科 「イタリアンパセリの特徴や旬の時期」
  3. 田中平三ほか『健康食品・サプリメント[成分]のすべて 2017 ナチュラルメディシン・データベース』(株式会社同文書院 2017年1月発行)
  4. ヘレン・ファーマー=ノウルズ『ヒーリング植物バイブル』(ガイアブックス 2010年8月1日発行 p222-p223)
  5. KAKEN 「統合オミクス解析によるパセリの抗腫瘍効果の作用機序解析」
  6. Branković S, Kitić D, Radenković M, Ivetić V, Veljković S, Nesić M. [Relaxant activity of aqueous and ethanol extracts of parsley (Petroselinum crispum (Mill) Nym. ex A. W Hill, Apiaceae) on isolated ileum of rat]. Med Pregl. 2010 Jul-Aug;63(7-8):475-8. Serbian. PubMed PMID: 21446133.
  7. Prevention of experimentally-induced gastric ulcers in rats by an ethanolic extract of "Parsley" Petroselinum crispum. PubMed- Am J Chin Med. 2003;31(5):699-711.
  8. [Relaxant activity of aqueous and ethanol extracts of parsley (Petroselinum crispum (Mill) Nym. ex A. W Hill, Apiaceae) on isolated ileum of rat]. PubMed- Med Pregl. 2010 Jul-Aug;63(7-8):475-8.
  9. JA長野県「ひとつパセリの名人に話を聞こうじゃないか|長野県のおいしい食べ方」
  10. 漢方薬のきぐすり.com「パセリ | 二階堂先生の『食べ物は薬』」
  11. 中野区医師会「口腔アレルギー症候群」