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エゴマの効果とその作用

種子や葉、種子から抽出されたエゴマ油が食用として利用されるエゴマ。エゴマ油にはオメガ3脂肪酸のαリノレン酸が豊富に含まれ、“健康にいい油”として注目を集めています。αリノレン酸は生活習慣病の予防や、脳機能の向上、アレルギーの抑制効果などが期待される成分です。

エゴマとはどのような成分か

エゴマはシソ科の植物で、インドや中国など東南アジアが原産といわれています。おなじシソ科の青シソ(大葉)によく似た葉を持ち、種子や葉が食用として用いられます。種子から抽出したオイルはエゴマ油として販売されています。

エゴマは古くから日本人が食べてきた、日本最古の作物のひとつといわれています。昔から「10年食べると10年長生きする」といわれ、その健康効果から「ジュウネン」の異名もあるほどです。

エゴマ油にはαリノレン酸が豊富に含まれていることから、“健康にいい油”として注目されることが増えています。

αリノレン酸とは、体内でEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)に変化する、オメガ3系の脂肪酸です。体内で作られることができない必須脂肪酸で、食品から摂取しなくてはなりません。[※1]

おなじ必須脂肪酸にαリノール酸に代表されるオメガ6脂肪酸があります。αリノレン酸に生活習慣病の予防やアレルギーを抑制する効果があるとされる一方、αリノール酸は摂り過ぎると生活習慣病やアレルギーを引き起こす原因になるといわれています。

健康のためにはオメガ6脂肪酸を控えて、オメガ3脂肪酸を積極的に摂ることが必要[※2]ですが、αリノレン酸をはじめとしたオメガ3脂肪酸は、現代の日本人の食事では不足しがちな栄養素です。

αリノレン酸を豊富に含むエゴマ油を摂取することで、αリノール酸に偏りがちな食生活のバランスを改善することが期待されているのです。

エゴマの効果・効能

エゴマの種子やオイルには、以下のような効果・効能が期待されています。

■生活習慣病の予防効果

エゴマに含まれるαリノレン酸には、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの生活習慣病のリスクを減らす効果が期待できます。

αリノレン酸には、血小板の凝集を防ぎ、血液をサラサラにする作用などが知られています。

■脳の機能を高める効果

エゴマに含まれるαリノレン酸はEPAに変換されてからDHAにも変換されますが、DHAは脳の機能を高める効果があるとされています。

DHAは乳児の脳の発達に必要な成分です。母乳に含まれ、ベビーミルクにも配合されています。また、アルツハイマー型認知症との関連も示唆されています。[※3]

■アレルギーを抑制する効果

エゴマに含まれるαリノレン酸を摂取することで、アレルギーを抑制する効果があるとされています。

アレルギーを引き起こす原因のひとつとされているのが、αリノール酸に代表されるオメガ6脂肪酸の過剰摂取です。αリノレン酸はαリノール酸に対して競合的に作用し、アレルギー症状を抑制する働きをします。[※2]

■そのほかの効果

エゴマの葉には生活習慣病の予防やアンチエイジングの効果が期待できます。エゴマの葉には抗酸化成分が多く含まれ[※4]、活性酸素の害からからだを守ってくれる働きがあるとされています。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

エゴマの種子やオイルには、αリノレン酸が豊富に含まれています。αリノレン酸は肝臓で吸収されると、まずEPAに変化し、次にDHAに変換されます。

EPAやDHAには、血流を改善し、生活習慣の予防や脳の機能を向上させる効果などが知られています。

またαリノレン酸は、αリノール酸と互いに競合的に働くため、どちらかが多くなるともう片方の作用が抑えられます。[※5]

そのためαリノレン酸は、αリノール酸の過剰摂取によるアレルギーや生活習慣病などの発症リスクを抑えるように働いてくれるのです。

αリノレン酸には上記のようなすぐれた働きが知られていていることから、αリノレン酸を豊富に含むエゴマが注目を集めているのです。

■エゴマ油とアマニ油の違いは?

おなじαリノレン酸を豊富に含む油に、アマニ油があります。

アマニ油とは、アマニの種子から抽出された油で、アマニ油とエゴマ油は成分がとてもよく似ています。[※6]αリノレン酸の量は、エゴマ油が58,000mg/100g、アマニ油が57,000mg/100g[※7]と、ほかの食品に比べてとくに多く含まれています。

αリノレン酸の摂取のためには、どちらを選んで問題ありません。味や風味が若干異なるので、自分の好みに合い、継続しやすいものを選ぶとよいでしょう。

どちらも熱に弱く酸化しやすい特徴があるため、揚げものなどの加熱料理には向いていません。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

エゴマは、食生活や生活習慣の乱れ、強い疲労やストレスを感じる人、生活習慣病を予防したい人や、アレルギーを抑えたい人におすすめです。

オメガ3脂肪酸はエゴマのほかにも青魚などに豊富に含まれますが、若い人や、忙しくてコンビニのお弁当や外食などが多くなってしまう人ほど魚は不足しがちです。

普段青魚を食べる習慣がない人や、魚が苦手な人などは、積極的にエゴマからαリノレン酸を摂取するようにしましょう。

エゴマの摂取目安量・上限摂取量

厚生労働省による「日本人の食事摂取基準2015年」[※8]では、αリノレン酸を代表とするオメガ3脂肪酸の摂取目安量は成人の場合で、1.6g~2.4g/1日となっています。

エゴマ油のαリノレン酸の含有量は約60%[※4]とされているので、1日の摂取量の目安は小さじ1杯(約5g)程度となります。

エゴマ油は“健康にいい油”といわれているものの、過剰摂取ではカロリーオーバーとなり、体重が増えてしまう可能性があります。

1日の目安量は小さじ1杯を目安にして、摂り過ぎには気をつけましょう。

また、オメガ3脂肪酸はオメガ6脂肪酸との対比が非常に大切です。厚生労働省はオメガ3:オメガ6のバランスを1:4としていますが、専門家によっては1:2や1:1まで近づけることを推奨しています。

[※9][※10]

αリノール酸は調理油としてメジャーなサラダ油に豊富に含まれています。さらに油を使った冷凍食品などの加工品全般、菓子パン、インスタント食品など身近な食品にたっぷりと含まれているため、気がついたら食事のほとんどがαリノール酸だったという場合も少なくありません。

αリノール酸の過剰摂取は、アレルギーやアルツハイマー型認知症との関連が示唆されています。中高年はもちろん、若いうちからαリノレン酸を意識して摂取することで、生活習慣病などの予防効果が期待できます。[※11]

エゴマのエビデンス(科学的根拠)

岡山大学が行った臨床試験では、エゴマ油の摂取により、気管支喘息の症状を改善する可能性が示されています。

実験では5人の気管支喘息患者に対して、エゴマ油を使った食事療法を行いました。食事療法の内容は、ほかの植物油の代わりに、サラダにかけるドレッシングやマヨネーズとして毎日15gのエゴマ油を摂取させるというものです。

2週間の食事療法後に、5人のうち3人に明らかな症状の改善が認められました。検査の結果、エゴマ油の摂取により、気管支喘息発作を発症させる化学物質のロイコトリエンの産生を抑制することが分かっています。

また、この食事療法による血中脂肪酸濃度を調べたところ、オメガ3脂肪酸のαリノレン酸、EPA、DHAの増加が認められました。一方、n-6脂肪酸(リノール酸、アラキドン酸)に変化は認められませんでした。[※12]

研究のきっかけ(歴史・背景)

エゴマの歴史は古く、日本では縄文時代から食べられてきたといわれています。

食用として以外にも、油紙、雨傘、提灯、合羽などの塗布油としても盛んに利用されてきましたが、江戸時代後期からエゴマ油に代わって菜種油が全国的に広がり、日本のエゴマの栽培は急激に減少します。[※13]

しかし近年の健康志向の高まりとともに、油に対する認識に変化がみられはじめ、αリノレン酸を豊富に含むエゴマ油は、テレビや雑誌などでもたびたび紹介されるようになりました。

生活習慣病やアレルギー、認知症などの病気が深刻な問題とされる現代において、αリノレン酸を豊富に含むエゴマは、ふたたび注目され、家庭で使用する食品としても認知度を高めています。

専門家の見解(監修者のコメント)

郡山女子大学植物栄養学科教授の広井勝氏は、食品としてのエゴマを以下のように評価しています。

「エゴマ種子の油に60%前後のα-リノレン酸が含まれている。α-リノレン 酸の生理機能において癌の抑制効果があることがほぼ定説になっている。(中略)α-リノレン酸は人体内では作られない上に、これを多く含む油は限られている。このような機能性からエゴマは注目されている作物と言える」

「エゴマは古くから食されてきた食品であるが、新たな見方で現代の食生活に積極的に取り入れて 行きたい食品の一つと考えられる」

(日本特産農作物種苗協会 情報誌『特産種苗』油糧作物「エゴマの成分と利用」より引用)[※4]

と述べ、エゴマの種子、葉ともに食事に上手く取り入れていくことをおすすめしています。

エゴマを上手に摂取するには

摂取できるエゴマの状態にはオイル、種子、葉があり、それぞれ特徴や利用の仕方が異なります。

■エゴマ油の利用方法

エゴマ油は非常に酸化しやすい油です。開封後はしっかりと密閉して冷蔵庫で保存し、1か月以内に消費するようにしましょう。

エゴマ油を選ぶさいには、遮光性のあるビンが使用され、早めに使いきれる小さめの容量のものがおすすめです。エゴマ油は熱に弱い特徴があるため、ドレッシングやマリネなどに利用されます。

揚げものや炒めものなどには不向きですが、180℃以下の温度ではαリノレン酸が90%以上残ることが分かっています。[※14]そのため、火を止めたあとの味噌汁や、炒めものの最後に火を弱めて回しかけたりするぶんには、ほとんど影響がないといえます。

■種子の利用方法

エゴマは種子の状態であれば、油より長く保存することが可能です。栽培に使用するためには2年は大丈夫だとされていますが、食用にする場合はもう少し早めに使用しましょう。食べきれない場合は、冷凍保存もできます。[※15]

種子には殻があるため、そのまま食べると消化されにくく、栄養の吸収がよくありません。すり鉢などですってから使用すると、効率よく栄養を吸収することができます。[※15]

すったエゴマの種子は、サラダに混ぜたり、焼いた肉にまぶしたりすることで、独特の香ばしい風味や食感が味のアクセントになります。

岐阜県飛騨地方の郷土料理である五平餅に絡めるタレには、軽く炒ってからすり潰したエゴマの種子が使われています。

■葉の利用方法

韓国料理の焼肉によく添えられているエゴマの葉は、肉料理やキムチなどとの相性がよいことで知られています。

エゴマの葉を醤油やみりん、ニンニクやエゴマ油などを合わせたタレに漬けた“エゴマの葉の醤油漬け”は、白いご飯のおともにぴったりです。

エゴマの葉はシソよりも葉がしっかりとしていて扱いやすいので、さまざまな料理に活用してみましょう。

相乗効果を発揮する成分

納豆や卵かけごはんにエゴマ油をかけることで、脳機能などへの相乗効果が期待できます。

エゴマに含まれるオメガ3脂肪酸と、卵や納豆に含まれるたんぱく質は、どちらも脳の機能を向上させるために大切な栄養素です。たんぱく質は脳内の神経伝達物質の原料となります。

さらに、卵黄や大豆に含まれるリン脂質のレシチンには、記憶力の向上や学習能力を高める効果も知られています。

また、エゴマ油は魚との相性もよいので、醤油と混ぜてお刺身にかけることで、不足しがちなオメガ3脂肪酸をたっぷりと摂取することができます。

エゴマの副作用

エゴマに副作用の報告は今のところありません。食事から適切な量を摂取する場合は、問題はないでしょう。

ただし酸化した油には、活性酸素による健康への悪影響があるとされています。[※16]エゴマ油として摂取する場合は、熱による酸化や長期保存による劣化に気をつけましょう。