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オレガノの効果とその作用

オレガノは日本でも栽培されているハーブです。一般的にはスパイスとして、料理の香りづけに用いられています。ピザやパスタ、アヒージョなどに乗っているスパイシーな香りの緑色の葉です。目にする機会が多いこのハーブには、実はあまり知られていない効果・効能があります。

このページでは、オレガノの効果・効能、作用のメカニズムを詳しく解説しています。また、オレガノの効果に関する研究データ、摂取する前に確認しておくべき副作用や相互作用の情報もまとめています。

オレガノとはどのような植物か

オレガノ(学名:Origanum vulgare)は、ハーブや観賞用の草花として栽培されているシソ科ハナハッカ属の多年草植物です。別名、ワイルドマジョラムとも呼ばれています。[※1]

耐寒性・耐暑性に優れており、主にヨーロッパから中央アジアにかけて生産されています。害虫がつきづらく、病気にもなりにくい多年草植物なので、比較的育てやすい植物です。 [※2]

茎は直立に30~90cmほど成長し、薄紅や白の小さな花が6~8月にかけて咲きます。葉の収穫期は4~10月、花の収穫期は6~8月です。 [※1]

スイートマジョラムやポットマジョラム、ゴールデンオレガノやケント・ビューティーなどと混同されることもありますが、基本的には別物です。[※3]

オレガノの効果・効能

オレガノの代表的な効果・効能は以下です。[※4][※5]

■シミ・くすみ・たるみ予防効果

オレガノに含まれる成分には、活性酸素の刺激から皮膚細胞を守ってくれる働きがあるとされ、シミ・くすみ・たるみ予防効果があるとされています。

■炎症を抑える効果

ウイルス性の炎症やアレルギー反応を抑える効果があると考えられています。ただし、オレガノ精油には皮膚刺激の強い成分が含まれているので、原液で使用すると炎症反応が起こる可能性があります。

■ストレス性の症状を和らげる効果

オレガノの香りには興奮を鎮め、自律神経のバランスを整える効果があるとされています。神経バランスが整うことでストレスやストレス性の頭痛への効果を発揮する仕組みです。

■菌やウイルスから体を守る効果

古代エジプトではミイラの保存剤として用いられていたオレガノ。抗菌・抗ウイルス作用をもつ成分として科学的に評価され、「天然の抗生物質」と呼ばれています。体を菌やウイルスから守り、免疫細胞の防衛反応を強化する働きがあるため、風邪やインフルエンザの感染予防、食中毒予防などに適しています。

そのほか、以下のような効果効能があるとされています。[※4][※6]

  • 消化不良を改善する効果
  • 咳を鎮める効果
  • 腸内のガス排出を促す効果
  • 抗リウマチ効果
  • 月経痛を和らげる効果
  • 生活習慣病予防
  • 駆虫効果

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

オレガノには芳香成分・βカロテン・ビタミン・ポリフェノールなどが含まれており、以下のような作用があるとされています。

■芳香成分の作用について

オレガノから抽出される精油には、芳香成分のフェノール類(チモール・カルバクロール)が含まれています。カルバクロールとチモールは、強力で安定化した抗ウイルス作用をもつモノテルペン誘導体です。
オレガノから抽出した精油や製剤を使用することで、フェノール類がもつ抗ウイルス作用が働き、殺菌効果や免疫細胞の防衛反応を高める効果が得られます。

また、カルバクロールの香りは、興奮状態を鎮めて神経系を強化させる働きがあるとされており、ストレス症状の緩和に繋がるとされています。
フェノール類はオレガノによく似たマジョラムにも含まれていますが、含有量はオレガノのほうが多いようです。
現在はオレガノから抽出できる精油の収量が少ないことから、薬用として用いられるケースはほとんどありません。[※4][※13]

■βカロテン・ビタミン類・ポリフェノールの作用について

オレガノにはβカロテン、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール(ロスマリン酸)など、活性酸素から肌を守る成分が豊富に含まれています。
活性酸素による肌細胞の酸化や色素沈着を防ぎ、若々しい肌を維持できるのは、これらの成分による作用だと考えられています。
また、ポリフェノール(ロスマリン酸)は抗炎症作用も併せもっており、皮膚炎やアレルギー症状を抑えてくれます。[※5][※7][※8]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

オレガノはさまざまな分野で利用されており、何から摂取するかによって使うべき人が異なります。

オレガノ精油を使用している化粧品やハーブティー、入浴剤は、感染症やアレルギーを予防したい方におすすめです。
香料にオレガノを使用している香水やアロマ、ポプリはイライラや興奮、不安などを抑えたい方に適しています。[※4]

オレガノの摂取目安量・上限摂取量

オレガノは料理の香りづけ、またはビネガーやオイルなどに配合されています。大量に食する機会は基本的にないため、摂取目安量や上限量はとくに設けられていません。

日本人の食事摂取基準(2015 年版)に記載されている摂取目安量とオレガノ100gあたりの成分含有量を比較してみました。

オレガノに含まれる成分量と摂取目安量の比較[※5][※9]

オレガノ100gあたり 摂取目安量・推奨量(30~49歳)
男性 女性
2.6mg 7.5mg 6.5~10.5mg
亜鉛 0.7mg 10mg 8mg
ビタミンE(α-トコフェロール) 約6mg 6.5mg 6.0mg
0.7mg 1.0mg 0.8mg
マグネシウム 79mg 370mg 290mg
リン 81.5mg 1,000mg 800mg
カリウム 589.4mg 2,500~3,000mg 2,000~2,600mg
カルシウム 132.6mg650mg
ビタミンC 約60mg100mg
ポリフェノール(ロズマリン酸) 約1500mg-
β-カロテン 約10mg-

オレガノ100gあたりの成分量は、各成分の摂取目安量に近い数値でした。耐容上限量はさらに大きな数値となるため、オレガノだけで成分の過剰摂取にはならないでしょう。

オレガノのエビデンス(科学的根拠)

日本では、オレガノがハーブや香辛料として親しまれてきた期間が長く、含有成分や効果効能に関する研究は残念ながらあまり進んでいません。

そんな中、オレガノの抗酸化作用に関する研究を進めたのは、名古屋女子大学家政学部に所属する藤江歩巳氏の研究では、オレガノ葉に含まれるポリフェノール化合物が抗酸化作用をもつ「ロズマリン酸」であることが明らかになりました。

オレガノ葉に含まれるロズマリン酸の量は、これまで高含有だといわれてきた赤シソ葉の1.5倍という結果でした。この研究結果から、オレガノが優れた抗酸化作用をもつ植物だと分かります。

また、加熱調理したオレガノ葉と生のオレガノ葉を比較したところ、加熱調理をしたオレガノ葉のほうがロズマリン酸の抽出量が多くなり、抗酸化作用が高くなったというデータが報告されていました。[※10]

藤江氏の研究によって、確かな抗酸化作用が認められたオレガノですが、まだ研究途上のハーブであるといえそうです。

オレガノの歴史・背景

オレガノの名前の由来はギリシャ語の「origanum(山の喜び)」です。

オレガノについて、古代ローマの学者プリニウスの著書「博物誌(全37巻)」の記述、医学の父と呼ばれた医師「ヒポクラテス」が抗ウイルス・抗菌・抗炎症・防腐などの目的で使用していた歴史などから、薬用としての歴史が深い植物だと分かっています。

現在でも西洋では、風邪や消化不良、胃の不調などの伝統薬とされています。

オレガノが日本に伝わったのは、江戸時代末期頃。当時は観賞用として栽培されていました。現在でも日本では薬用として用いられるより、香りづけや観賞用のハーブとして知られています。[※4]

専門家の見解(監修者のコメント)

オレガノについて、NHK学園ハーブ講座とジャパン・ハーブスクールの講師、英国園芸療法協会指導員などを務めている右京裕子氏は次のようにコメントしています。

「このハーブには悪寒や消化機能を高める働きがあるといわれます。乾燥した葉と花芽を袋に詰めたものを温湿布するとリウマチ痛に効き目があります。ハーブティーにしたものは船酔いを防いだり、神経痛を和らげてくれます。」(「ドクターイワオの地中海式ダイエット/地中海料理とハーブ オレガノ」より引用)[※11]

「葉から採れる精油には、チモール、オリガネン、カルバクロールなどを含み、リウマチ痛、頭痛、歯痛、不眠、消化不良などに効き目があります。」(「ドクターイワオの地中海式ダイエット/地中海料理とハーブ オレガノ」より引用)[※11]

右京氏は、神経痛を和らげる目的ならハーブティーでの摂取が良いと語っています。またオレガノの精油は、さまざまな痛みを和らげる効果をもっているとの見解です。慢性的な神経痛・頭痛・歯痛などに悩まされている方は、試してみて損はないでしょう。

オレガノの摂取方法については、以下のように述べています。

「食用には葉を利用し、生のままよりも普通は乾燥したものをスパイスとして利用します。オレガノには臭み消し作用がありますので一般的には肉料理に向いています。単独で使用するよりも、セージ、タイム、バジル、マジョラムなどとブレンドするとよいでしょう。」(「ドクターイワオの地中海式ダイエット/地中海料理とハーブ オレガノ」より引用)[※11]

またロングアイランド大学では前立腺がんのアポトーシス誘導に関する研究も進められており、料理で活躍するハーブとは異なる活用法が生まれる可能性もあると思われます。

オレガノの利用方法

オレガノの効果をしっかりと感じたい方は、有効成分を抽出した精油から作られるオレガノオイルを摂取しましょう。

日本では、主に香りづけのスパイスとして用いられますが、その殺菌効果や消化促進作用などの有用性を活かし、さまざまなメニューに使ってみましょう。
トマトやチーズを使ったイタリア料理や肉料理はもちろんのこと、スープやサラダ、蒸し鶏などに使っていただきたいハーブです。[※1]

相性のいいハーブ・スパイス

オレガノと同様の効果をもつハーブ・スパイスをブレンドすることで、相乗効果が期待できます。同様の効果をもつハーブ・スパイス[※]の中でも、オレガノと香りの相性が良いものをまとめています。

■ストレス低減の相乗効果を期待できるハーブ・スパイス

  • アンジェリカ…漢方の生薬「当帰(トウキ)」の近縁種。女性の強壮剤である

■消化促進の相乗効果を期待できるハーブ・スパイス

  • フェンネル…漢方の生薬「茴香(ウイキョウ)」。胃薬に配合される
  • バジル…食物繊維を豊富に含むため、消化不良に有効
  • クミン…アーユルヴェーダでは消化促進のスパイスとして知られている

■感染症予防の相乗効果を期待できるハーブ・スパイス

  • レモングラス…殺菌作用をもつ香草
  • マートル…消毒・抗菌作用をもつフトモモ科の常緑低木

オレガノに副作用はあるのか

オレガノに含まれる芳香成分(チモール・カルバクロール)は強力な皮膚刺激をもっているため、精油を原液で使用してはいけません。

また高濃度のオレガノオイルを長時間使用する場合も、皮膚や粘膜の炎症を招くおそれがあります。

オレガノオイルを使用する場合は、濃度1%以下のものを使用して皮膚の変化を確認するのがベターです。皮膚に異変が起こらなければ、少しずつ使用時間と量を増やしていきましょう。[※14]

注意すべき相互作用

現在までの臨床では、オレガノに関する相互作用は報告されていません。
ただしオレガノには、ビタミンAに変換されるβ-カロテンが豊富に含まれています。オレガノオイルを摂取する際は、安全性を考えて、ビタミンAとの相互作用がある医薬品を把握しておくのがベストです。

ビタミンAとの相互作用がある医薬品は以下の4種類。[※12]

  • 血液凝固防止薬
  • テトラサイクリン系抗生物質
  • 角化症治療剤
  • 抗悪性腫瘍薬

併用によって、血液凝固防止薬の凝固防止作用増大、激しい頭痛、ビタミンA過剰症(ビタミン毒性)によく似た副作用などを引き起こす可能性があります。
上記の医薬品を服用中の方は、医師に相談したうえでオレガノを摂取しましょう。