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ナットウキナーゼの効果とその作用

納豆に含まれる有効成分のナットウキナーゼは、血液にかかわる効果を持つ成分です。血栓予防や血圧低下などさまざまな作用があり、健康に役立つ成分として研究されています。ここでは医師監修のもと、ナットウキナーゼの効果・効能や特徴についてまとめました。

こすぎレディースクリニック 椎名邦彦先生 監修

納豆に含まれる有効成分のナットウキナーゼは、血液にかかわる効果を持つ成分です。血栓予防や血圧低下などさまざまな作用があり、健康に役立つ成分として研究されています。ここでは医師監修のもと、ナットウキナーゼの効果・効能や特徴についてまとめました。

ナットウキナーゼとは

ナットウキナーゼは、大豆の発酵食品である納豆に含まれる酵素です。納豆中の菌によって生成されます。納豆をつくるときの発酵によってできるため、納豆以外の大豆製品には含まれていません。[※1]

ナットウキナーゼはたんぱく質分解酵素としてのはたらきを持っており、血栓(血管中にできる血のかたまり)を溶かす効果があります。

ほかのたんぱく質分解酵素は体内のたんぱく質を分解しますが、ナットウキナーゼは血栓だけを分解するのが特徴です。[※2]

ナットウキナーゼにはほかにも体に良い効果があり、摂取することで健康維持に役立ちます。

ただしナットウキナーゼは熱に弱い成分です。水分の多さによって異なりますが、50℃以上ではたらきがかなり弱くなることがわかっています。[※2]

十分な効果を得たいときは加熱を避け、常温で摂取してください。

ナットウキナーゼは納豆として食べるだけでなく、サプリメントとしても販売されています。中でも、日本ナットウキナーゼ協会が定めた品質基準をクリアした製品には「JNKAマーク」と呼ばれる証票がついています。[※3]

JNKAマークの取得には、安全性や含有量などの厳しい検査が必要になるため、マークがついたサプリメントや健康食品は品質が保証された製品といえるでしょう。

ナットウキナーゼの効果・効能

ナットウキナーゼには次のような効果が確認されています。[※2][※4][※5][※6][※7]

■血栓症の予防

ナットウキナーゼが持つ血栓溶解作用によって、血管が詰まる血栓症を予防できます。また、血栓溶解作用を持つほかの酵素を助けるはたらきがあります。

■高血圧症を防ぐ

ナットウキナーゼを摂取することで血圧を下げられるという実験結果があります。

■血行促進

ナットウキナーゼは血小板が血を固めるのを阻害するため、血行促進の効果が期待できます。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

ナットウキナーゼは血栓を溶かす効果や高血圧の予防など、血液にかかわる作用が多くあります。

ナットウキナーゼが血栓を溶かす作用は、酵素のたんぱく質を分解する作用に関係しています。

血管内で血小板が固まったものが血栓です。血栓は血液中のフィブリンというたんぱく質を引き寄せるため、次第に大きな血栓になっていきます。大きな血栓ができると血液の流れが妨げられ、細胞への酸素供給が途切れて細胞が死んでしまうこともあります。

ナットウキナーゼはフィブリンを分解するので、血栓が溶けて血の巡りがもとに戻ります。また、ナットウキナーゼには血小板がくっつくのを阻害するはたらきもあるため、血栓ができるのを予防してくれます。

これらの作用により、血栓が原因で起こる心疾患や脳の病気を予防することが可能です。[※2][※8]

また、人を対象にした実験ではナットウキナーゼを摂取することで、血圧を低下させられるという結果が出ています。

血栓やドロドロ血液などがいつもある状態だと、血液を流すために圧がかかります。そのため、血圧が高くなってしまうのです。

ナットウキナーゼが血栓を溶かしてドロドロ血液の原因であるたんぱく質を除去すると血液がサラサラになり、血管に圧をかけなくても良くなります。

そのため、ナットウキナーゼを摂取することで血圧が下がる効果が期待できるのです。[※9]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

ナットウキナーゼは血栓を溶かす作用があるため、ドロドロ血液の人や、普段から血が固まりやすい体質の人に適した成分といえます。

定期的に納豆やサプリメントで摂取しておくと、固まりやすい血液を流れやすくしてくれるでしょう。心疾患や脳梗塞などのリスクを低下させられるので、積極的に摂取するのをおすすめします。

ナットウキナーゼの摂取目安量・上限摂取量

ナットウキナーゼの科学的情報を提供している日本ナットウキナーゼ協会では、1日の推奨摂取量を2000FU(酵素のはたらきを示す単位・多いほど酵素がよくはたらく)としています。[※10]

市販の納豆には1パック(50g)あたり平均1500FUのナットウキナーゼが入っています。そのため、1~2パックの納豆を食べれば1日に必要なナットウキナーゼを補えるでしょう。

ただし、納豆の種類によっては1パックが小さかったり、入っている量が少なかったりします。また、賞味期限が近いものはナットウキナーゼの量が減ってしまうので、1パック以上摂取する必要があります。

また、飛行機での長距離移動の際に起こりやすい深部静脈血栓症対策として、ナットウキナーゼ150mgにピクノジェノールを加えたカプセルを搭乗前に2つ、その6時間後に2つ摂取するのが良いとされています。[※1]

ナットウキナーゼのエビデンス(科学的根拠)

ナットウキナーゼの効果は、研究報告や論文によって科学的な根拠があると証明されています。

倉敷芸術科学大学の須見洋行教授は、ナットウキナーゼの血栓溶解作用を調べる実験を行っています。

実験では専用の容器内につくった血栓に市販の糸引き納豆を加え、37℃の気温でどのように変化するかを観察しました。18時間後、納豆の周りの血栓が溶けていたことから、納豆に含まれる酵素(ナットウキナーゼ)には、血栓を溶かす作用があると示されました。[※11]

Yonsei UniversityのResearch Institute of Science for Agingに所属するJong Ho Leeらが行った研究では、ナットウキナーゼが高血圧に与える影響を調査。

対象者を何も与えていないグループとナットウキナーゼを与えたグループに分け、8週間で血圧が低下するか研究しています。

この結果、ナットウキナーゼを与えたグループでは、何も与えていないグループに比べて血圧が明確に減少したことがわかりました。

この実験から、ナットウキナーゼが高血圧予防に役立つことが明らかになっています。[※5]

研究のきっかけ(歴史・背景)

ナットウキナーゼはたんぱく質を分解する酵素で、倉敷芸術科学大学の須見洋行教授により1980年に見つかりました。[※1]納豆から発見されたことによりその名が付けられています。

須見教授が心疾患の原因となる血栓を溶かす物質を探していた実験で発見されたため、血栓溶解薬としての効果がわかっています。

1,000年以上大豆を食べ続けてきたアジアでは、心疾患の発生率が少ないことがわかっています。

このことから大豆製品が欧米諸国で注目されはじめ、ナットウキナーゼを含む健康食品・サプリメントが注目を集めているようです。

日本では2003年に「日本ナットウキナーゼ協会」が設立され、納豆の有益成分の情報を提供しています。

専門家の見解(監修者のコメント)

ナットウキナーゼは血栓を溶かす作用があるとして知られる成分ですが、正しく摂取しないと十分な効果を得られません。ナットウキナーゼの摂取方法について、医師や栄養士などがコメントしています。

東京慈恵会医科大学附属病院管理栄養士の赤石定典氏は、納豆をアツアツごはんにかけるのはおすすめできないと述べています。

「ナットウキナーゼの働きは、50℃を超えると徐々に失われ、70℃で消失します。しかし、熱々のご飯の温度は70℃を超える。納豆をのせるとナットウキナーゼの効果が消えてしまうのです」
(介護ポストセブン「『納豆』最強の食べ方4つの極意!熱々ご飯にのせるのはNG」より引用)[※12]

ナットウキナーゼは熱に弱いことから、熱いごはんにかけるとはたらきが弱まってしまい、十分な効果が得られないそうです。納豆ごはんを食べるなら、少し冷めてからのほうが栄養を摂取できるでしょう。

また、明石氏は冷蔵庫から出した納豆をすぐに食べるのも良くないとコメントしています。

「納豆菌は常温で発酵が進み、同時にナットウキナーゼも増えます。冷蔵庫から出してから20分置いて、納豆菌を繁殖させ、ナットウキナーゼが充分に増えた状態が食べ頃です」
(介護ポストセブン「『納豆』最強の食べ方4つの極意!熱々ご飯にのせるのはNG」より引用)[※12]

冷蔵庫でしっかり冷やされた納豆は菌のはたらきが鈍く、あまり多くのナットウキナーゼを摂取できないのだそうです。そのため、冷蔵庫から出して20分ほど放置し、納豆菌が活発になってから食べるのが良いとされています。

明石氏は、常温の納豆のほうが混ぜたときにねばりが出やすく、おいしく食べられると解説しています。

ナットウキナーゼを上手に摂取するには

ナットウキナーゼの健康効果を実感するには、1日に納豆を1~2パック食べる必要があります。しかし納豆の風味はクセが強いため、苦手な人が毎日1~2パックの納豆を食べるのは難しいでしょう。

その場合は、サプリメントでナットウキナーゼを摂取するのがおすすめです。サプリメントでナットウキナーゼを摂取する場合、味の面のほかに胃酸の影響を受けにくくなるため、ナットウキナーゼを効率よく吸収できるというメリットもあります。[※10]

また、ナットウキナーゼの血栓溶解作用を最大限に得られるのは、夕食後か寝る前だといわれています。[※4]血栓ができやすい深夜~早朝に備えて、なるべく早いタイミングで摂るのが大切です。

一緒に摂るべき成分 

焼酎には血栓をつくりにくくする物質が含まれていることが研究で明らかになっており、ナットウキナーゼと焼酎を合わせて摂ることで、より高い血栓溶解作用が見込めます。

作用を高めるには、焼酎を120mlほど摂取するのが良いそうです。血液をサラサラにしたい人は納豆をおつまみに焼酎を楽しんでみてください。

ナットウキナーゼに副作用はあるのか

ナットウキナーゼの副作用については、くわしくわかっていません。

ただし血栓を溶かす作用がある[※1]ことから、出血障害が悪化する可能性もあります。2週間以内に手術を受ける予定がある人は使用しないでください。

妊娠中や授乳期に使用した場合の十分なデータは確認されていないので、安全性を考えるならナットウキナーゼ含有食品を摂取するのは控えたほうが良いでしょう。

また、ナットウキナーゼを含む特定の製品において、2回分の摂取までは安全だとされていますが、3回以上使用する場合の安全性は確認されていないようです。

注意すべき相互作用

ナットウキナーゼはその作用から血液凝固を抑えると考えられており、同じ効果を持つ抗血栓薬を服用している場合は出血や紫斑などが起こりやすくなるおそれがあるといわれています。[※1]
抗血液凝固剤・抗血栓薬を処方されている人は、なるべく納豆やサプリメントの併用を避けましょう。