桑の葉の効果とその作用

桑の葉は、日本で古くから漢方薬として用いられており、1-デオキシノジリマイシン(DNJ)という糖尿病予防に効果的な成分が含まれています。桑の葉の健康効果や主な効能、効果的な摂取方法、副作用について解説します。桑の葉を健康維持に役立てたい人に必要な情報を掲載しています。

桑の葉とはどのような食品か

桑は、クワ科クワ属の落葉樹で、ヨーロッパやアジアに広く分布しています。日本でも古くから養蚕のために栽培されてきました。

桑は、葉、桑枝、根の皮(桑白皮)、桑の実(マルベリー)などに薬効があるとされ、漢方薬として利用されています。

桑の葉特有の有効成分としては、DNJ(1-デオキシノジリマイシン)があります。[※1]DNJには糖尿病予防効果が確認されています。

DNJは他の植物にも微量に含まれますが、桑の葉は特にDNJの含有量が多いことが特徴です。[※2]

また、桑の葉は、亜鉛やカルシウム、ビタミンCやカロテン(カロチン)といったミネラルやビタミンを豊富に含んでいます。

桑の葉にはγアミノ酪酸やフラボノイドの一種であるルチンやイソクエルシトリンも含まれており、高い健康効果が注目されています。

桑の葉の効果・効能

桑の葉には以下の健康効果が挙げられます。

■糖尿病予防

桑の葉や茎から抽出される1-デオキシノジリマイシン(DNJ)は、糖の吸収を抑制し、血糖値の上昇を抑える効果があります。

また、DNJ以外にも、桑の葉に含有されるフラボノイドが、高脂血症に効果があるという研究報告もあります。[※3]

■便秘症の改善

桑の葉に含まれるDNJの働きや、食物繊維により、便秘症の改善に効果があるとされています。

■免疫調節作用

桑の葉には人体に有益なミネラルやビタミンが含まれており、カルシウムの含有量はキャベツの60倍、カロテンの含有量はほうれん草の約10倍にもなります。[※3]

ミネラルやビタミンには体の機能を健全に保つ作用があるため、桑の葉を摂取することで、免疫を適切に保つ効果があるとされています。

■抗酸化作用

桑の葉にはポリフェノールやフラボノイドといった抗酸化物質が含まれ、有害な活性酸素を除去してくれます。細胞の酸化を防ぎ、老化を防止する効果があります。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

■DNJによる糖尿病予防

有効成分1-デオキシノジリマイシンは、ブドウ糖(グルコース)に酷似した化学構造をしています。[※5]

通常、糖質は腸で、マルターゼやスクラーゼといった消化酵素によって、二糖類から単糖類へ分解されます。そして小腸から単糖の形で吸収されます。

しかし、DNJは糖質によく似た化学構造のため、糖質の吸収に関わるマルターゼやスクラーゼを拮抗阻害し、単糖類への分解を妨げます。

DNJにより分解が阻害されると、糖は小腸で吸収されなくなります。したがって、食後の血糖値の急激な上昇を抑えることができます。

■便秘症の改善

DNJによって吸収を阻害され、小腸を通過した糖質は、大腸で細菌によって分解されます。その際には、ガスや有機酸が生成されます。

これらの物質に加えて、桑の葉の食物繊維が大腸を刺激します。これにより、便通の改善が起こります。

■フラボノイド類による高脂血症予防

桑の葉に含有されるフラボノイド類は、LDLコレステロールの酸化を防ぐと考えられています。[※3]

LDLコレステロールは、高脂血症の状態が続くと血管壁に付着し、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞の原因になります。

桑の葉のフラボノイドは、抗酸化作用により、LDLコレステロールの血管への付着を防ぐ効果があると考えられています。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

甘いものが好きで、糖分を取りすぎてしまう傾向がある人や、食生活が乱れがちで糖尿病や肥満が気になる人に向いています。また、便秘気味の人にも効果的です。

また、豊富なミネラルやビタミン類が含まれているので、風邪を引きたくない人、体の状態を健康に若々しく保ちたい人にも向いています。[※2]

桑の葉の摂取目安量・上限摂取量

現時点では、桑の葉の摂り過ぎにより、特に問題となるような有害な事象は知られていません。[※8]

トヨタマ健康食品(株)の実験では、5名の被験者に1日6gの桑葉エキスを1週間継続摂取してもらい、その後血液検査や尿検査、心電図の検査を行いました。[※2]

その結果、検査項目に異常は認められませんでした。

また、OECDのガイドラインに基づく限界急性中毒試験においては、マウスを用いた2週間の継続投与実験においても異常は見られませんでした。

桑の葉のエビデンス(科学的根拠)

■食後血糖値の抑制効果

トヨタマ健康食品(株)は、健康な男女5名の被験者にショ糖50gを飲用してもらい、同時に桑の葉粉末を0.8g、または1.6gを摂取してもらう実験を行いました。[※2]

被験者の食後2時間までの血糖値を測ったところ、桑葉粉末を摂取することにより、血糖値の上昇が有意に抑えられたことが確認できました。

抑制率は、桑葉粉末0.8g摂取の場合は23%、1.6g摂取の場合は42%でした。

また、(株)東洋新薬が健康な男女10名を対象に行った二重盲検クロスオーバー試験においても、血糖値上昇抑制効果が確認されています。[※11]

この実験では、桑若葉末1.8 gをショ糖水(水300mlに対し30g)に混ぜたものを摂取した群は、桑若葉末を摂取しなかった群と比較して、摂取30分後の血糖値上昇が有意に抑制されました。

■糖尿病予防及び糖尿病の症状の改善

トヨタマ健康食品(株)では、糖尿病のラットに対し、桑葉粉末を飼料に5%混ぜ、54週間継続投与する研究を行いました。[※2]

その結果、桑葉を与えない群については、46週目には空腹時血糖値が上昇し、糖尿病状態であることが確認されたのに対し、桑葉を継続投与した群は、血糖値の上昇がほとんど認められず、糖尿病状態も確認されませんでした。

また、糖尿病の特徴として、糖分を摂取した際のインスリンの分泌能力低下があります。これについても、桑葉粉末を継続投与したラットでは、血中インスリン濃度が正常のラットと同じように、ブドウ糖の摂取に伴って上昇する事が確認されました。

研究のきっかけ(歴史・背景)

古来より、桑の葉には薬効があるとされていました。2世紀には中国の書「神農本草経」において、桑葉を日陰干しした「神仙茶」と呼ばれるお茶のことが記述されています。[※2]

神仙茶は、風邪・百日咳・中風・利尿作用を始め、高血圧や滋養強壮にも効果があるとされていました。

また、日本の鎌倉時代の書である「喫茶養生記」には、桑粥桑湯は飲水病(糖尿病)に効くとの記述もあります。

江戸時代以降、養蚕業が盛んになると、各地で桑の木が栽培されるようになりました。しかし、二次大戦以降、人工繊維の発展と普及により、養蚕業は衰退し、桑畑も姿を消していきました。

しかし、平成2年から6年にかけて行われた「神奈川県の機能性食品に関する共同研究事業」により、桑の葉に含まれる1-デオキシノジリマイシン(DNJ)の糖尿病予防効果が科学的に証明され、桑の葉は健康食品として脚光を浴びることになりました。

専門家の見解(監修者のコメント)

j-stageに掲載された論文である、島根県産業技術センターの勝部拓矢先生、島根県農業技術センターの杉山万理先生、農業生物資源研究所の小山郎夫先生らによる「クワの健康機能性研究の最前線」には、以下のように記されています。

「国内でもクワの葉はお茶に加工され,大手ドラッグストアー等の店頭にも並ぶようになった。クワ葉は健康機能性食品の素材として,実用化を一層進めるべき段階に達しているものと判断される。
日本では養蚕に利用するためのクワの栽培および育種技術に関する長年の研究の蓄積がある。
クワ葉の健康機能性の研究解析が進み,実用化により大量生産が必要となった場合でも,養蚕のために培われてきた桑栽培技術が,新たな用途のためのクワ栽培にも応用できるものと考えられる。
(中略)クワ葉の機能性利用に関しては,日本が世界をリードしていくことができる可能性は十分にあるものと考えられる。」[※14]

桑の葉の健康効果に関しては、日本がリードして、より一層研究が進んでいくことが期待できます。

桑の葉の効果的な摂り方

桑の葉の成分1-デオキシノジリマイシンは、熱に強い特徴があります。[※1]

桑の新芽や、若い柔らかい葉は、サラダ、おひたし、炒め物などにしておいしく食べることができます。葉が硬くなってきても、天ぷらにすれば食べられます。

時期を選ばず摂取するためには、青汁やお茶、錠剤、粉末のサプリメントなどを上手に活用しましょう。

血糖値の上昇を抑制する目的でお茶やサプリメントを飲む場合、食事の少し前、ないし食事と共に飲用するのが効果的です。

1-デオキシノジリマイシンは水に溶けやすい性質があります。お茶として飲む際は、ヤカンにティーパックをいれて火にかけ、4~5分ほど煮出すと、成分が引き出されます。[※16]

桑の葉茶を美味しくいれるためには、ミネラル分の少ない軟水でいれるのがポイントです。

桑の葉の茶にはカフェインが含まれていないため、就寝前でも引用することができます。

相乗効果を発揮する成分

桑の葉は、前述しましたようにビタミン、ミネラル、食物繊維などの有効成分が豊富で、これらの成分と併用することで、DNJとの相乗効果が期待できます。

ほとんどのサプリメントにはDNJ以外にも桑の葉の成分が含まれています。[※3]

桑の葉の副作用

(株)医学と看護社「ヘルシーエイジングに役立つサプリメント・健康食品―科学的根拠に基づいた適正使用のための情報」によれば、医薬品との相互作用による有害事象は報告されていません。[※8]

しかし、現在、糖尿病の薬物治療を受けている方は、薬との併用で血糖値が下がりすぎてしまうおそれがあります。飲用の際は必ず医師または薬剤師に相談して下さい。

また、妊娠中・授乳中の方も、念のため医師や薬剤師にご相談下さい。

また、桑にアレルギーがある方は、飲用を控えた方が良いでしょう。

参照・引用サイトおよび文献

  1. 一般社団法人日本サプリメント協会:「サプリメント健康辞典」(集英社)
  2. トヨタマ健康食品株式会社: 桑葉とは
  3. 一般社団法人日本サプリメント協会: 桑葉とは
  4. トヨタマ健康食品株式会社: 桑葉とは
  5. 株式会社医学と看護社「ヘルシーエイジングに役立つサプリメント・健康食品―科学的根拠に基づいた適正使用のための情報 (元気と美しさをつなぐヘルシー・エイジング・シリーズ No. 3)」
  6. 東洋新薬 東洋新薬 『桑若葉末』の食後血糖値上昇抑制作用を臨床試験により確認
  7. 【PDF】j-stage : 勝部拓矢、杉山万理、小山郎夫著「クワの健康機能性研究の最前線」
  8. 桜江町桑茶生産組合: 桑茶の美味しい飲み方