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ミノキシジルの効果とその作用

ミノキシジルは、1970年代に高血圧症の患者さんの血圧を下げる薬として開発されましたが、血圧を下げる効果はさほど見られず、全身の体毛が増えるという副作用があったために、実際の治療ではあまり使われなくなりました。製薬メーカーはこの「多毛」という作用に着目して、発毛薬として開発、販売を行い、現在にいたっています。

ミノキシジルは、高血圧症治療の内服薬の成分でしたが、治療中に多毛が認められたことから、改めて外用の発毛剤の成分として開発され、ミノキシジル配合の発毛剤が医薬品として承認されました。

ミノキシジルを使った治療薬は内服薬と、塗り薬 の2種類があり、ドラッグストアでは頭皮に塗るタイプが販売されています。

飲み薬は、AGA治療専門の病院で医師の処方が必要です。ミノキシジルは頭皮に使用することで毛包に直接作用し、発毛、育毛効果を発揮します。

すでに世界90ヶ国以上で承認され使われている有効成分です。

ミノキシジルの効果・効能

■壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防

薄毛・抜け毛は頭皮の炎症、薬剤の影響、老化などさまざまな原因が考えられます。また正常な頭皮サイクルに比べ、壮年性脱毛症の頭皮ではヘアサイクルが短くなる現象も起こっています。ミノキシジル製剤を利用することで、総毛髪数の増加の効果があります。[※1]

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

ミノキシジルは、ATP感受性K+チャネルを活性化させることにより、局所の血流を増加させると考えられています。

発毛作用の機序は、はっきりと解明されていませんが、局所投与においても、肝臓で代謝されることがわかっています。[※8]

ミノキシジルの発毛効果の本質は、成長期期間の延長による矮小化毛包(わいしょうかもうほう)の改善です。具体的な作用としては、毛乳頭細胞の増殖作用、上皮系毛組織細胞(毛母細胞)のアポトーシス抑制作用、毛組織血流改善作用が考えられます。[※9]

髪は、頭皮の毛穴から発毛し、成長したあと自然に抜け、再び同じ毛穴から新しい毛髪が生えてきます。この繰り返しをヘアサイクルといい、成長期、退行期、休止期に分かれ、通常、成長期の毛髪は全体の80~90%、休止期の毛髪は10~20%を占めています。

壮年性脱毛症は、毛根にある毛包が成長期に十分に成長しないため、毛包がどんどん小さくなっていき、髪の毛が生えにくくなってしまいます。

ミノキシジルは、毛包に直接作用して細胞を増殖させ、たんぱく質の合成を促進することで、発毛を促します。毛包を大きく深く成長させることにより、細く軟毛化した毛髪を太い毛に成長させ、サイクルを長く維持させます。

毛髪の成長をつかさどる毛包を大きく、深くするミノキシジルの作用はディープグロース効果と呼ばれ、さまざまなタイプの壮年性脱毛症に対して発毛を促進させる効果が期待できます。[※1]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

薄毛、抜け毛を感じた人、男性型脱毛症や女性で薄毛の人に向いています。ただし男女問わず、ミノキシジルの効果があるのは壮年性脱毛症のみ有効です。

壮年性脱毛症以外の脱毛症(例えば、円形脱毛症、甲状腺疾患による脱毛等)の人、あるいは原因のわからない脱毛症の人は使用を控えた方が良いでしょう。

また壮年性脱毛症の発症には、遺伝的要因が大きいと考えられ、家族、兄弟姉妹に壮年性脱毛症の人がいない人は、他の原因を考えることが必要です。必ず医師や薬剤師に相談しましょう。[※1]

ミノキシジルの摂取目安量・上限摂取量

ミノキシジル錠剤の種類は2.5㎎錠、5㎎錠、10㎎錠があります。飲み方・服用方法は1日1~2回服用。

用量に関しては通常1日5㎎で服用する方が多いのですが、薄毛の程度や期間により用量を調整することがあります。

治療開始時に医師と相談して服用量を決めるようにしてください。またミノキシジルの飲み忘れは期待される発毛効果が得られなくなります。服用する時間を決めて飲み忘れないようにしましょう。[※2]

外用の場合、ミノキシジルの使用方法(塗り方)は用法・用量を守るようにしましょう。用法・用量の範囲より多量に使用しても、あるいは頻繁に使用しても効果に違いはありません。

またミノキシジルの発毛剤さえ使えばよいというわけではありません。発毛剤の効果を最大限発揮させるためには、頭皮環境と生活習慣を整えることも大切です。[※1]

ミノキシジルのエビデンス(科学的根拠)

男性型脱毛症診療ガイド(2010年版)ではミノキシジルの外用は有用か?という内容で調査しています。

男性症例に対して5%ミノキシジル外用液を外用療法の第一選択薬として、また女性症例に対して1%ミノキシジル外用液を治療の第一選択薬として用いました。

2%および3%ミノキシジルを用い、約150例の男性患者を対象とした12週までの3件のランダム化比較試験と、それに引き続き長期投与(24か月)の前後比較試験を実施。

2%および3%ミノキシジルは、プラセボと比較して、1年以上の長期投与において有意義に発毛を促進させ、重篤な副作用は生じませんでした。

さらに2%および5%ミノキシジルを用いた12か月及び24か月までの2件のランダム化比較試験において、5%ミノキシジルは2%ミノキシジルと比べて有意に発毛を促進させ毛髪量は増加したが、全身的な副作用は生じませんでした。

さらに国内における男性患者を対象とした1%及び5%ミノキシジルの24週までのランダム化比較試験では、1%と比較し5%ミノキシジルの有意な発毛効果が示され、副作用発現率に有意差はありませんでした。

また成人女性の男性型脱毛症患者に対しては、国内で24週までの1件のランダム化比較試験が行われ、1%ミノキシジルがプラセボに対して有意な発毛促進効果を示しました。

国外では約300例の女性患者を対象とした32週までの2件のランダム化比較試験が行われ、2%ミノキシジルの有効性が確認されました。

一方、副作用の発現に注目した1件の非ランダム化比較試験があり、男女合わせて20000例を超える症例に2%ミノキシジルあるいはプラセボを1年以上外用させたところ、有害事象の発生頻度に有意差は認められませんでした。

以上のように、ミノキシジル外用の発毛効果に関して良質な根拠があるので、男性症例に対して5%ミノキシジル外用液を外用療法の第一選択薬として推奨。

また女性症例に対して1%ミノキシジル外用液を男性型脱毛症治療の第一選択薬として強く推奨するという結果が発表されました。[※3]

研究のきっかけ(歴史・背景)

研究のきっかけに、ジアリルメラミンがあります。ジアリルメラミンから、酸分泌阻害薬の開発を試みましたが、偶然降圧作用が、見つかり、その後、アップビジョン社は、ジアリルメラミン周辺化合物から、さらに優れた降圧薬物として、ミノキシジルを選択しました。[※9]

1979年、アップジョン社(現Johnson&Johnson社)はミノキシジルから、高血圧症治療剤「ロニテン」を発売し、米国で経口降圧薬として承認されました。

ミノキシジルの発毛作用は、服用者に多毛や発毛の副作用が起こることから偶然に発見されることになったのです。

その後、1985年末にFDA(米食品医薬品局)に認可申請を行い、1988年、アップジョン社のミノキシジル外用剤「ロゲイン」は、発毛剤を名乗る当時では唯一の医薬品として認可されました。この薬は、現在に90ヵ国以上で次々と発売されています。[※1]

専門家の見解(監修者のコメント)

大分県別府市で髪と肌と美容の専門医院を営む倉田荘太郎医師によると、ミノキシジルなどがどのように毛包細胞に吸収されるのかという研究をすすめ、高い効果があることを確認したとき、

「薄毛は治療できる」(引用 :アデランス研究開発)

と確信したとコメントしています。

ただし薬剤の効き方は人によって個人差があることも事実であり、重症の患者が、いきなり10代のころの状態を取り戻せるかとなるとは、限りません。
また、ヘアサイクルには時間がかかるため、薬を使えばすぐに毛が生えてくるわけでもないことも事実です。

さらに、治療効果に対する期待や頭髪の外観イメージも人によって違いがあり、薬剤を塗布・服用した人の効果満足度にはばらつきがあります。

「こうした事情を、薬局や医師がしっかり説明して、患者さん自身が納得しながら治療を進めていくことが大切だ」

と倉田氏は説明しています。[※4]

ミノキシジルとプロペシアの違い

ミノキシジルはもともと高血圧症の薬から開発されたもので、血管拡張や血行促進の作用があり、結果的に発毛も促進します。

プロペシアは「フィナステリド」という有効成分を含んでおり、日本皮膚科学会ガイドラインが策定している「男性型脱毛症診療ガイド」でも許可されている医薬品です。

ミノキシジルの発毛促進と異なり、プロペシアは長く太い毛に成長することを阻害するDHT(ジヒドロテストステロン)の生成に重要な5α―還元酵素を阻害。

その結果毛髪の成長期が伸び、毛髪にコシができ、毛穴からも毛髪が生えてきます。そのため男性の薄毛対策に効果があります。[※6]

ただしAGA治療に使用される女性はプロペシアを服用できません。特に妊婦の場合、胎児に深刻な副作用が出るため、女性に処方されることはありません。

ミノキシジルの値段は?

ミノキシジルは保険適用外の医薬品のため、クリニックによりまちまちです。処方量によりますが1か月分で5000円から7000円程度が多いようです。

製薬会社から市販されている外用商品は、60mlくらいの量で7000円前後です。[※1]

ミノキシジルに副作用はあるのか

ミノキシジルはもともと血圧の薬だったため、使用する際には血圧低下、動悸、頭痛、むくみどの副作用に注意が必要です。医師薬剤師に相談しましょう。[※]

■初期脱毛

全ての薄毛、発毛治療に認められる副作用です。休止期にあった毛根が、急激に活性化した毛母細胞により成長期に入ることにより新しい毛に押し出される形で抜け落ちる現象です。通常1か月程度でおさまります。[※5]

■多毛症

頭皮以外の部分の毛根にもミノキシジルの効果が及ぶことにより、全身の多毛が起こる場合があります。[※5]

■動悸・頭痛・だるさ

ミノキシジルは血管拡張作用により高血圧の治療薬として処方されてきました。末梢の血管が拡張すると心臓の血液の拍出を急ぐ働きがおこる場合があり動悸や頭痛、だるさを稀に感じる方がいます。[※5]

また、ミノキシジルは、心血管系に対する、傷害・抑制作用、直接的平滑筋弛緩作用を有し、中毒例も報告されている。[※7]

ミノキシジルは女性の薄毛にも有効か?

女性の薄毛の原因は男性と異なり、甲状腺疾患が関与するほか、女性ホルモンのバランスの崩れ、食生活、ストレス、頭皮の硬化、妊娠時や授乳期、ヘアケアやヘアスタイルなどさまざまです。[※5]

40歳前後から女性ホルモンが減ることによって、女性における薄毛(FAGA)は現れてきます。

気になり始めたら、まずは専門医に相談をすることが良いと考えられます。

製薬会社から販売されている製品ではミノキシジルの臨床試験が行われ、女性専用のミノキシジル配合の毛髪剤を使用することで、毛髪数の増加、太い毛髪の増加が実証されています。[※1]

またクリニックの治療ではミノキシジルの内服や外用を行っているようです。