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メリロートの効果とその作用

メリロートはむくみ改善のサプリメントに含まれる成分で、血行改善によって下半身のむくみや痛みを解消する効果があるといわれています。ここではメリロートの効果・効能について紹介。効果を示すエビデンスや副作用、過剰摂取による健康被害の事例などをまとめています。

メリロートとはどのような植物か

メリロートはマメ科の二年草で、別名セイヨウエビラハギやスイートクローバーなどと呼ばれる植物です。独特な香りや少し苦い味が特徴。有効成分を多く含むことから、サプリメントの原料として利用されています。

メリロートはリンパの流れを良くするフラボノイドのクマリン類やケンフェロールなどを含み、余分な水分と老廃物を体の外へ排出するはたらきがあります。[※1][※2]そのため、水分や老廃物が原因で起こるむくみの改善に効果的です。

メリロートを発酵させると、血液の凝固を抑えるジクマロールが生成されます。その抗凝固作用から、抗凝固剤であるワルファリンの材料として用いられています。

海外では静脈の血流不全による疾患を改善する効果があるとして、医薬品に指定されています。[※3]日本では薬効をうたわない限り食品として扱えるため、むくみを軽減するサプリや健康食品に使用されています。

ただし、メリロートを使った健康食品で肝機能障害が起こった事例も報告されている[※4]ため、過剰摂取には注意する必要があります。

メリロートの効果・効能

メリロートには以下のような効果・効能があるといわれています。[※5][※6]

■むくみを改善する

メリロートは血液の流れを改善することで体に溜まった水分や老廃物を排出し、むくみを改善してくれます。

■炎症を抑える

動物実験の結果から、メリロートを原料とする医薬品には抗炎症作用があると認められています。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

メリロートを摂取することでむくみが改善されるのは、メリロートの含有成分「クマリン」が静脈やリンパ管の血圧を改善し、血液の巡りを良くするからだと考えられています。クマリンは香料成分のひとつで、抗酸化物質であるポリフェノールの一種です。

むくみは静脈圧が下がり血行が悪くなることで起こる症状です。長時間同じ姿勢を続けると静脈の血行が悪くなり、血液中の水分が細胞に浸みだします。この水分が溜まることで脚がふくらみ、むくんでしまうのです。

リンパ管でも同じようなことが起こります。老廃物を運ぶリンパ液が下半身に溜まると、皮下組織にある脂肪細胞に老廃物が入り込み、セルライトに変化。セルライトができると血管やリンパ管がますます圧迫され、さらに血行が悪くなるという悪循環を生みます。

メリロートは静脈とリンパ管の流れを改善し、血液やリンパ液が正常に体内を巡るようにしてくれます。[※5]そのため、老廃物がきちんと体外に排出されるようになり、むくみ改善につながるのです。

また、医薬品では動物を使った実験で抗炎症作用が確認されており、むくみに対して効果的であることが報告されています。[※6]炎症を抑えることで血行を改善し、腕や足など末端まで血液を行き渡らせることで、水分の代謝が良くなるのです。そのため、むくみが改善されます。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

メリロートはむくみ改善のために使う商品として販売されていることから、足がむくみやすい人に最適です。長時間同じ姿勢をとることが多い人は、むくみ予防として摂取すると良いでしょう。

また、医薬品は痔の治療薬としても利用されています。

ただし長期間服用しないと効果が薄いので、根気強く継続摂取していく必要があります。

メリロートの摂取目安量・上限摂取量

メリロートの摂取量は、むくみの改善に使う場合300~3,000mgとなっています。[※5]服用すると肝機能障害が起こるという見解もありますが、1 日の摂取量を守れば問題ないようです。

ただし、濃度の濃いエキスや錠剤などは、摂取量に気を付けなくてはいけません。以下に注射や医薬品としての使用目安量をまとめました。[※7]

■注射

クマリン1~7.5mg(1日分)を含むメリロートのエキスを注射します。

■医薬品

錠剤の場合は、1日3~12錠(75~350mg)を3回に分けて飲んでください。

メリロートのエビデンス(科学的根拠)

メリロートの効果は、以下のエビデンス(科学的根拠)によって証明されています。

(株)SOUKENは、メリロートエキスとウラジロガシエキスを含む栄養補助食品のむくみ改善効果を調べるため、臨床試験を実施。

むくみや冷え性の症状が出ている25~50歳の女性11名を対象に、4週間連続でメリロートエキスとウラジロガシエキスを含む栄養補助食品を摂ってもらいました。なお、栄養補助食品は1日2回、3粒ずつ飲ませ、観察しています。

その結果、尿の量が増え、一時的なむくみを予防するという結果が得られました。合わせて便の量も多くなったことから、メリロートエキスを含む栄養補助食品に、むくみ改善と便通改善効果が示唆されています。[※8]

研究のきっかけ(歴史・背景)

メリロート(スイートクローバー)は栄養が少ない土地でも栽培できる、気候に左右されないといった特徴から、アメリカやカナダでは牧草として利用されていました。

しかし1920年代、メリロートの牧草としての使用量が増えるにつれて、これまで元気だった牛の出血症状が増え、死んでしまう現象(スイートクローバー病)が頻発します。

この症状は、腐ったメリロートに含まれる「ジクマロール」によるものであることが研究によって判明。その後メリロートの研究が進み、スイートクローバー病が改善されました。

また、メリロートに含まれるジクマロールの作用を活かして、抗凝固薬(血液を固まりにくくする薬)となるワルファリンがつくられました。

ワルファリンは初め、ねずみ駆除剤として使われていました。しかし、自殺目的で大量のワルファリンを摂取した人が死ななかったことから、現在ではねずみ駆除剤ではなく血栓関連の医薬品として使われています。

専門家の見解(監修者のコメント)

メリロートはむくみを改善する効果が知られている植物で、サプリメントや医薬品にも使用されています。ただしゆっくり効いてくるため、症状の改善には長期間の服用が必要です。

オーダーメイドサプリメント会社「ファルラ」の代表で薬剤師・サプリメントアドバイザーの資格を持つ川口てるこ氏は、メリロートについて以下のようにまとめています。

「このメリロートは、静脈やリンパの流れを良くする働きがあるんですね」

「実はこの『メリロート』、お医者さんが処方する医薬品としても認められているのです」

「『また医薬品としても認められているのならメリロートはすぐ効果でるの?』と思う方もいるかもしれませんが、それほどすぐ体感できるものでもありません。論文では、4~6ヶ月で良くなったとのものも。まずはじっくりと取り組んで下さい」

(「メリロート | 薬剤師てるちゃんのサプリメント日記」より引用)[※9]

また、最近ではメリロートを使ったダイエット関連のサプリメントが販売されており、川口氏は注意を促がしています。

「ダイエット関連の商品とされていることがあるので、もしかしてダイエット目的で摂る方もいるかもしれませんが、体脂肪を減らしたり…というような働きはありませんのでご注意を!」

(「メリロート | 薬剤師てるちゃんのサプリメント日記」より引用)[※9]

メリロートはあくまでも血行を良くする・炎症を抑えるハーブなので、脂肪燃焼や体重の減少には役立ちません。それどころか過剰摂取すると血が止まりにくくなる抗凝固作用が起こります。ダイエット効果を期待して摂取するのは止めましょう。

メリロートの利用方法

メリロートは牧草や肥料として使用されるほか、甘い香りから香料として利用されているようです。成分を濃縮したエキスは医薬品や化粧品などに配合されており、多分野で用いられています。

また、むくみや痛みなどの症状を改善したいときにハーブティーとして摂取したり、湿布として使ったりすることがあります。

■お茶(内用)

茶さじ1~2杯のメリロート(細かく刻んだもの)を熱湯150mlに浸してつくったお茶を1日に2~3杯摂取します。

医薬品としては足の痛みやむくみ、だるさ、血行不良による静脈炎、痔やリンパの詰まりの治療をサポートするために使われます。民間療法では、利尿剤としてのはたらきを期待して用いることもあるようです。

■湿布(外用・部分的な投与)

有効成分クマリン3~5mgを含有する半固形エキスを医療用ガーゼにくるんでから、熱いお湯に浸して痛む箇所やいぼ痔などの患部にあてます。

半固形エキスを塗る、または傷にあてる場合は、打ち身や擦り傷、ねんざ、出血の治療に使用。動物実験の結果では、傷の治りを早める効果が確認されています。

一緒に摂るべき成分

メリロートにはむくみを解消する効果があることから、水分代謝を良くする、血行を促進するなどの効果を持つハーブと併用するのがおすすめです。

ジュニパーやローズヒップなどに少量のメリロートをブレンドし、ハーブティーとして摂取すると良いでしょう。

メリロートの副作用

メリロートは適量を摂取する場合、ほとんどの人に安全だとされています。ただし過剰摂取すると肝障害や出血性疾患、知覚麻痺を引き起こすことも。サプリメントで摂取している人は、摂り過ぎていないか確認する必要があります。

2週間以内に手術を受ける予定がある人は、出血しやすくなるのでなるべく摂取しないほうが良いでしょう。また、肝臓障害を引き起こすリスクがあるため、肝臓の疾患を持っている人はメリロートを服用しないでください。

妊娠中・授乳中の摂取については十分なデータが示されていません。安全性が確認できないため、体に影響を与えないようにメリロートの摂取を避けましょう。

注意すべき相互作用

メリロートは以下の医薬品と併用すると、相互作用を起こすおそれがあります。

■抗血栓薬(抗凝固薬・抗血小板薬)

メリロートに含まれるクマリンには血液が固まるのを防ぐ作用があることから、同じ作用を持つ抗凝固薬や抗血小板薬と併用すると出血や紫斑が生じる可能性が高まります。

■肝機能を低下させる薬

メリロートの過剰摂取は肝機能障害を引き起こすケースがあります。そのため、肝機能を低下させる薬の服用時にメリロートを摂取しないでください。

メリロートによる健康被害事例

メリロートは摂取量や体質によって、副作用が強く出る植物です。メリロート摂取によって起こった健康被害事例は次のようなものがあります。

20代の女性が、メリロート、ロベリア、シナモンなどを含むハーブティーを約2か月間大量に摂取したところ、機能性子宮出血が起こりました。ハーブティーによる出血性疾患と診断されています。

多発性硬化症の既往歴がある23歳の女性が、ルテインサプリメントとメリロートサプリメント (クマリン 10 mg/日含有) を3年間摂取したところ、三叉神経痛が再発。

肝臓の異常を改善するためのインターフェロンβ1b療法を受けたところ、14日後に肝臓異常の指標である血中AST値およびALT値が上昇。

インターフェロンβ1b療法とメリロートサプリメントを止めると回復したことから、サプリメントと治療法の併用によって起こった重度の肝機能障害だと診断されました。