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リモネンの効果とその作用

リモネンは柑橘類や樹木などに含まれる香気成分です。100年以上前から研究されているため、さまざまな効果がわかっており、アロマオイルや食品添加物、洗剤など幅広い用途に使われています。ここではリモネンの効果・効能について解説。リモネンの種類や副作用などもまとめました。

リモネンとはどのような成分か

リモネンとは、主に柑橘類の皮に入っている成分です。透明な液体で、柑橘類の皮100gあたりに0.3~1g含まれています。柑橘類以外にも入っており、およそ300種類の植物にリモネンがあるといわれています。

d(R)-リモネンとl(S)-リモネンの2種類が存在しており、この2つは鏡写しの構造であることがわかっています。それぞれ香りも異なり、d-リモネンはフレッシュなシトラスの香り、l-リモネンは樹木のような香りが特徴です。柑橘類にはd-リモネンが多く含まれているため、甘酸っぱく爽やかな香りを感じられるのです。

リモネンをかぐと、リラックス効果を得られるといわれています。

また、ゆずやミカンなどを入浴時に湯船に入れることで、胃腸を活発にし、感染症を予防してくれるとのこと。最近では抗がん作用もわかっており、多くの健康効果が期待できます。

リモネンはアロマオイルを中心に、塗料・樹脂の溶剤や台所洗剤などに配合されています。油を溶かす性質から、換気扇の掃除やコンロ、シンク周りなどにこびりついた油汚れの掃除に最適です。

食品の香りづけや食品添加物に使われているくらいですので、安全性は担保されています。ただし精油は刺激性が強いため、直接さわるとかぶれてしまう可能性があります。

リモネンの効果・効能

リモネンには以下の効果・効能があるとされています。[※4][※5][※6][※7][※8][※9][※10][※11]

■リラックス効果

リモネンには鎮静作用があり、心身をリラックスさせるといわれています。また、リモネンを体に取り入れることで、多幸感を感じるドーパミンの放出が促進されるという研究結果が出ています。

■消化吸収を助ける

リモネンには消化吸収を助ける作用があり、胃腸の健康維持に役立ちます。

■ダイエットの手助けをしてくれる

リモネンには脂肪を分解するはたらきがあり、ダイエットに効果があると考えられています。

■髪の毛や頭皮を維持する

頭皮の皮脂中に含まれる酵素の作用を阻害し、脱毛を防いでくれます。また、髪の毛の細胞を活性化させて発毛を促すとの報告があります。

■血行促進

血液をサラサラにして、血の巡りを良くする効果が期待できます。

■抗菌作用

リモネンには抗菌作用が期待できます。しかし、抗菌作用を得るには高濃度のリモネンが必要だといわれており、ハッキリした効果は明らかになっていません。

■抗がん作用

動物実験では、リモネンには抗がん作用があるという結果が報告されています。しかし、人体で同じ作用が得られるかについては検証が不十分です。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

リモネンは長年の研究から多くの作用がわかっている成分です。

実験では、リモネンの香りに鎮静作用や多幸感を与えるドーパミンの放出促進作用があると報告されています。[※5]そのため、リラックス効果が得られると考えられています。

ほかにも、頭皮の皮脂に含まれる5αリダクターゼという酵素のはたらきを阻害して脱毛を防ぎ、髪の毛の細胞を活性化して発毛を促すことが知られています。[※8]

リモネンには交感神経を刺激する作用があるとされており、ノルアドレナリンの分泌を促して脂肪燃焼にかかわる褐色脂肪細胞を活発にするはたらきが期待できます。

褐色脂肪細胞が活発化すると熱が生まれ、脂肪の分解が促進。動物試験ではダイエット効果があることも報告されています。[※8]

リモネンの作用として古くから発見されているのが抗がん作用です。これは、リモネンをはじめとするいくつかのテルペン類が新たながん細胞の形成にかかわる酵素のはたらきを阻害し、分裂や増殖を抑えるからだと考えられています。[※7]

また、リモネンをはじめとするテルペン類は、空気中の酸素と反応して殺菌効果のあるオゾンをつくることがわかっています。テルペンだけでは弱い抗菌作用しかもちませんが、酸化すると非常に強い抗菌力を示すのが特徴です。[※6]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

リモネンは緊張しやすい人、寝つきが悪い人が使うのに適しています。鎮静作用があるため、高ぶった気を鎮めてリラックスさせてくれます。

血行促進や消化吸収の手助けをしてくれるため、生活習慣病の予防にも役立ちます。

このほかにも発毛促進に役立つことから、薄毛が気になってきた人は試しにリモネンを使ってみると良いでしょう。

リモネンの摂取目安量・上限摂取量

WHO(世界保健機関)が定めたリモネンの摂取目安量は、1日あたり0.1mg/kg体重となっています。

リモネンは食品から摂取することがほとんどです。食品に含まれる量のリモネンが健康を害するとは考えられていないため、上限量は設定されていません。

リモネンのエビデンス(科学的根拠)

リモネンの作用を裏付けるエビデンスとして、いくつかの研究結果が報告されています。

岡山大学大学院自然科学研究科の藤岡佳代子氏は、リモネンの抗菌性について研究を行っています。

研究では複数の植物に発生するうどんこ病の菌を採取し、専用の容器で実験。2グループに分け、菌が成長するかどうかを観察しました。一方は同じ容器にリモネンを含むいよかんやグレープフルーツといった柑橘類の皮を入れ、もう片方は何もせずに密閉しています。

結果、何もしなかった容器の中では菌が増えていたのに対し、柑橘類の皮を入れた容器では菌の増殖が妨げられたことがわかりました。

また、菌に直接皮が触れていなくても抗菌作用が確認されたと報告されています。

このことから、柑橘類に含まれるリモネンには抗菌作用があると考えられています。[※12]

研究のきっかけ(歴史・背景)

リモネンは強い生理機能をもつテルペン(炭素と水素が5組くっついた構造が連なった物質)の一種です。テルペンの研究は100年以上前から行われており、さまざまな作用が明らかになっています。

柑橘類が発する香りの主成分であるリモネンは、1997年に乳がんや胃がんなどのがん細胞を抑えるはたらきが報告され、それ以降も抗菌や脂肪燃焼の効果が解明されてきました。未だに多くの研究に使われており、新たな効果が期待されています。

また、リモネンは柑橘系や樹木系の香りとして、アロマセラピーとしても古くから使われています。

現在では副作用や薬との相互作用もわかってきており、安全に利用するための知識が広く知られるようになりました。

専門家の見解(監修者のコメント)

リモネンは多くの効果・効能をもつ成分ですが、近年の研究から副作用があることもわかってきています。

日本アロマ環境協会の認定を受け、アロマセラピスト兼アロマテラピーインストラクターとして活動している中山真澄氏は、リモネンを多く含む柑橘系の精油は皮膚に刺激を与えやすいと注意を促しています。

「柑橘系精油には、以下のようなトラブルを引き起こす可能性があります。

・皮膚刺激

柑橘系精油に多く含まれる『リモネン』という成分が、酸化することによって生じるもの。柚子湯に入れたゆずを身体にこすりつけた時、ピリピリと刺激を受けた経験はありませんか? それがリモネンによる皮膚刺激です」(ウーマンエキサイト「肌のシミに要注意! 柑橘系精油の「光毒性」とは」より引用)[※13]

冬にゆず湯の入浴をする人もいると思いますが、ゆずを体にこすりつけたり長湯したりするとリモネンの作用で皮膚が刺激を受け、炎症や肌荒れの原因になります。ゆず湯を楽しむ場合は、あまり長風呂にならないように気をつけましょう。

リモネンを多く含む食べ物

リモネンはミカンやグレープフルーツなどの柑橘類の皮に多く含まれています。柑橘類の中で特にリモネンの含有量が多いのはゆずとスダチ。ほかの柑橘類と比べて10倍以上のリモネンが入っていることがわかっています。くわしい分析結果は以下の通りです。 [※14]

  • 材料
  • 温州ミカン果汁
  • 清見果汁A
  • 清見果汁B
  • サンフルーツ果汁
  • ゆず果汁
  • スダチ果汁A(徳島県産)
  • スダチ果汁B(徳島県産)
  • 温州ミカン果皮粉末
  • いよかんマーマレード
  • 見とスダチは提供されたもの2種類を分析しています

相乗効果を発揮する成分

リモネンを摂取する際には、血液をサラサラにする効果があるピネンや、毛細血管をしなやかにする効果を持つヘスペリジンを合わせて摂ることにより、相乗効果で血行促進作用が得られるといわれています。

これらの成分を一緒に摂取することで血の巡りが良くなり、冷えや血栓などが原因で起こる関節の痛みをやわらげる作用が期待できます。

リモネンに副作用はあるのか

摂取期間が1年以内であれば、医薬品としてリモネンを経口摂取しても問題ないとされています。[※9]

ただし妊娠中や授乳期は安全性が確認されていないため、リモネンを含む医薬品の摂取を避けましょう。

また、リモネンは皮膚に対する刺激が強いことがわかっています。くわえて、リモネンが酸化した物質は、皮膚に触れるとアレルギーを引き起こすようです。[※3]アレルギー症状は動物実験で報告されている内容ですが、人でも同じことが起こる可能性があるため、使用時は注意が必要です。

注意すべき相互作用

リモネンは肝臓で分解されると考えられているため、換気納に影響する薬剤や肝臓で代謝される薬と併用すると、健康に悪影響を与えるおそれがあります。

■ほかの成分の代謝を早める薬

リモネンが分解されやすくなり、効果を弱めると考えられています。

■ほかの成分の代謝を抑制する薬

リモネンの代謝が阻害されて作用が強まり、副作用を引き起こしやすくなります。

■肝臓で代謝される薬

リモネンが肝臓での代謝を促進するため、肝臓で代謝される薬を併用すると、作用や副作用が変化する可能性があります。

リモネンの活用法

リモネンは爽やかな香りからアロマセラピーに使われることが多い成分です。特に柑橘類の精油には必ず入っており、リラックス効果をもたらしてくれます。

アロマセラピーでリモネンの効果を得たい場合は、コップやディフューザーを使った芳香浴をするのがおすすめ。ストレスや不安を鎮め、リラックスしながらゆったり過ごせます。

ただし、精油は刺激性が強いので直接肌につけないように気をつけてください。

また、リモネン活用法として適しているのが掃除。洗剤の成分としても使用されており、汚れを落とすのに効果的です。柑橘類の皮に多く含まれているので、ミカンやグレープフルーツの皮を用意して汚れをこするだけでOK。

掃除用品として知られる重曹やクエン酸と合わせると汚れを落としやすくなるので、より掃除がはかどりますよ。

参照・引用サイトおよび文献

  1. 日本分析化学専門学校 編集『知っておきたい化学の豆知識』(株式会社化学同人 2004 p34-35)
  2. 一般財団法人 日本食品検査「リモネン、ミルセン試験について|ニュースリリース」
  3. 【PDF】※3世界保健機関「No.5 Limonen (1998)|国際簡潔評価文書」(2001年発行 p2-3)
  4. フロリダ グレープフルーツ公式サイト「フロリダ グレープフルーツのカラダにいい成分|美容・健康・ダイエット」
  5. 【PDF】※5 横越英彦、福本修一「脳の働きをよくする食べ物― 柑橘香気成分の脳神経機能と抗ストレス効果機構の解明 ―」(静岡中部都市エリア産学官連携促進事業 平成17年度研究成果)
  6. 井上重治『微生物と香り』(フレグランスジャーナル社 2002年8月発行 p231)
  7. 沢村正義『ユズの香り-柚子は日本が世界に誇れる柑橘-』(フレグランスジャーナル社 2008年11月発行)
  8. 【PDF】前田憲寿「健康茶に含まれるヒアルロン酸促進成分に関する研究」(アサヒグループ学術振興財団 2010年度 研究紀要)
  9. 田中平三ほか『健康食品・サプリメント[成分]のすべて 2017 ナチュラルメディシン・データベース』(株式会社同文書院 2017年1月発行 p1000-1001)
  10. 亀岡弘『エッセンシャルオイルの科学-精油の正しい知識と理解を深めるために-』(フレグランスジャーナル社 2008年8月発行)
  11. 【PDF】姚 群「アロマテラピーに関する研究第一報 慣用精油10種類の成分と作用に関する知見」(愛国学園大学人間文化研究紀要第13号31~54頁2011年3月号)
  12. 【PDF】藤岡佳代子「リモネンによる病原糸状菌の病原性制御と宿主植物における誘導抵抗性に関する研究」(岡山大学博士論文 2016年3月)
  13. ウーマンエキサイト「肌のシミに要注意! 柑橘系精油の『光毒性』とは」
  14. 【PDF】四国地域イノベーション創出協議会 地域食品・健康分科会「食品中の健康機能性成分の分析法マニュアル」(2010年3月 p7)