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ラクトトリペプチドの効果とその作用

血管年齢を若く保つことのサポートに有効であるとされる成分のひとつ、ラクトトリペプチドについて詳しく解説。
ラクトトリペプチドが含まれる商品の中には特定保健用食品としても認められているものや機能性表示食品許可を受けているものもあり、そこでは血圧上昇の抑制作用があることが報告されています。

ラクトトリペプチドとはどのような成分か

ラクトトリペプチドは、脱脂乳を乳酸菌や酵母などを主な構成菌として、乳酸発酵させてできた酸乳に含まれるペプチドのことです。主要成分はVal-Pro-Pro(VPP)と、Ile-Pro-Pro(IPP)という2つのペプチドです [※1]

体内で血圧を調整する役割を果たす物質は幾つかありますが、中でもアンジオテンシン変換酵素(ACE)という物質は、血管を収縮させたりすることで血圧を上げる働きを担っている存在です。

ところがラクトトリペプチドに含まれる2つのペプチド(VPPとIPP)が、アンジオテンシン変換酵素(ACE)の働きを阻害する作用があることが解明され、これによりアンジオテンシンⅡが働かなくなり、血圧が低下する、と感がえられています。

高血圧症は多く人が悩まされている生活習慣病のひとつです。そのためラクトトリペプチドのような機能性成分を使った血圧のコントロールが注目を集めているのです。

また近年ではラクトトリペプチドには血圧の調整だけではなく、高血圧を原因とする循環器の病気予防にも有用であると考えられています。[※2]

ラクトトリペプチドは体の中、特に血管のしなやかにキープしてくれる「年齢ペプチド」として研究がすすめられる注目の健康成分なのです。

ラクトトリペプチドの効果・効能

ラクトトリペプチドには次のような効果・効能が報告されています。

■血管をしなやかに保つ

ラクトトリペプチドは血圧の上昇を抑えて血管をしなやかに保つ効果があります。[※2]

人の体には自分で血圧をコントロールする仕組みがあり、その仕組みの中で重要な鍵を担っている物質の一つがアンジオテンシン変換酵素(ACE)です。

アンジオテンシン変換酵素(ACE)には血圧を上昇させる作用がありますが、ラクトトリペプチがそれを阻害することで血圧の上昇を抑えます。また、正常な血圧は下げないため、高血圧の人にラクトトリペプチドはおすすめの健康成分とされるのです。

この働きについてはトクホ商品や機能性表示食品として販売されているものも多くあります。

■動脈硬化を防ぐ

ラクトトリペプチドには、血管の内皮細胞を正常にして血管のトラブルを防ぐ働きにも注目が集まっています。

動脈硬化の進行や血栓の生成を抑制する働きがある一酸化窒素(NO)を生み出すように誘導する作用があるため、循環器疾患への効果も期待されているのです。[※3]

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるか

ラクトトリペプチドにはアンジオテンシン変換酵素(ACE)の働きを抑制するとともに、血管内皮細胞から一酸化窒素(NO)の分泌を増やす作用があります。[※2][※3]

ちなみに血管内皮細胞とは血管の最内層にある細胞で、一酸化窒素(NO)やエンドセリンなど血管に働きかける物質を放出して血管壁を伸ばしたり、縮めたりしています。[※4]

この血管内内皮の機能は、高血圧やメタボリックシンドローム、糖尿病を原因として機能が低下します。血管内皮機能が低下した状態が続けば、動脈硬化へ進展することもあります。[※4]

そのため、血管内皮機能の低下を早期発見するか、血管内皮機能の低下を防ぐことが重要な課題と考えられています。
ラクトトリペプチドが血管内皮細胞に作用することで、一酸化窒素(NO)の産生を促すということが国内の研究で報告されています。[※3]

どのような人が摂るべきか、使うべきか

血圧が高めの人に有効な成分です。血圧が高い状態を放置すると動脈硬化が進み、脳梗塞や脳卒中、心筋梗塞などの心疾患、慢性腎臓病などの大きな病気を引き起こす可能性が高くなります。[※5]

ラクトトリペプチドは先に述べたように、血圧の上昇を抑えて血管をしなやかに保つ働きがあります。
ただし、薬物療法や医師による治療が必要な人の場合、製品に期待をし過ぎて利用しないよう、注意が必要です。

また、ラクトトリペプチドは血圧が気になる人だけでなく、運動の効果をさらに高めたいという人におすすめです。介護を必要とせずに自立して暮らせる健康寿命を延ばすためには、日常生活の運動機能を維持する運動習慣の確立が必要になります。

ラクトトリペプチドを含んだたんぱく分解物が、運動時の心拍の上昇を抑制し、運動による筋肉の損傷を軽減させることを京都大学とカルピス株式会社の共同研究で発表しています。

特に年齢を重ねた人が運動をする時の肉体的負担を減らし、運動習慣を根付かせるためのサポートとしてもおすすめです。[※6]

ラクトトリペプチドの摂取目安量・上限摂取量

ラクトトリペプチドの摂取目安量や上限摂取量は決まっていませんが機能性表示食品の届け出等を確認していくと、多くの製品でラクトトリペプチドを「VPP」換算し、1日3.4mg〜4.8mg摂取が妥当であるとしています。

ラクトトリペプチドは大量に摂取したとしても健康増進効果が高まったり、血圧が急激に下がったりするわけではありません。

安全性試験については、1日4.8mg(VPP換算)の5倍量までの試験で安全であることが確認されていると報告していますが[※11]、過剰摂取や大量摂取はしないよう、商品に示された摂取目安量を守りましょう。

また医薬品を摂取している方は必ず医師に相談してください。人によっては、飲むことで咳が出たり、お腹が緩くなってしまったりする事例も報告されています。

ラクトトリペプチドのエビデンス(科学的根拠)

ラクトトリペプチドの効果はさまざまな実験によっても明らかにされています。

血圧が高めの人を30人集め、ラクトトリペプチドを含む飲料を飲むグループとラクトトリペプチドを含まない飲料を飲むグループに分けて12週間の血圧の変動を測定したところ、2つのグループに8週間で差が出ました。[※2]

ラクトトリペプチドを含む飲料を飲んだグループは、そうでないグループに比べて最大血圧は約10㎜Hg、最小血圧も約5㎜Hg低くなっています。[※2]

さらに、ラクトトリペプチドを含むサプリメントを飲んだグループと、ラクトトリペプチドを含まないサプリメントを飲むグループで血管の柔軟性を比べる実験もおこなわれています。

すると8週間毎日ラクトトリペプチドを含むサプリメントを摂取したグループで血管がしなやかになり、血管柔軟性が改善しています。[※2][※7]

これらの結果を踏まえた現在も新たな可能性を求めて、ラクトトリペプチドを含めた機能性ペプチドの研究は進められています。

研究のきっかけ(歴史・背景)

腸内細菌研究の歴史はあまり古くありません。腸内細菌が人間の健康や病気に深く関係していることが知られ始めたのは1960年代のことです。

一方でカルピス社は1919年に日本で初めて乳酸菌飲料を製造販売していました。1970年代に先んじて腸内細菌を研究していたカルピス社理化学研究所と共同研究が始まり、その過程でカルピス酸乳の健康効果など多くの発見をしてきました。その発見のひとつがラクトトリペプチドです。

乳酸菌が牛乳を発酵する過程でラクトトリペプチドは発見されています。カルピス社が保有している独自の乳酸菌ラクトバチルス・ヘルベティカスはラクトトリペプチドを作り出す力に長けています。

ラクトトリペプチドは牛乳を原料にカルピス菌を発酵させることでカルピスを作ってきたカルピス社だから発見できた成分ということもできるでしょう。

カルピス社は、腸内細菌やその長寿効果についての研究をさらに重ねています。さらにトクホ飲料やサプリメントとして商品化することで、多くの人の健康維持をサポートしたい、としています。[※2]

専門家の見解(監修者のコメント)

動脈硬化を防いで血管事故を予防するには、血管を若々しく保ち続けられるようにケアすることが重要です。

血管事故の原因について、「血管年齢」という指標を考案した血管研究の第一人者である高沢謙二先生は以下の通り述べています。

「血管事故の要因となるのは、高血圧、糖尿病などの生活習慣病です。[中略]生活習慣病が積み重なると、血管が硬く、厚く、狭くなる動脈硬化を引き起こします。この動脈硬化こそが血管の老化をもたらし、血管事故の原因となるのです。」(高沢謙二,「カルピス」由来健康情報室)[※8]

また、高沢先生は、血管事故を防ぐ働きが期待される年齢ペプチド(ラクトトリペプチドの別名)の効果の実験結果について、以下のように述べています。

「「年齢ペプチド」4.8mgを含むサプリメントを8週間摂取することで、「年齢ペプチド」群ではPWV:脈波伝播速度(血管の硬さの指標)が低下し、血管柔軟性が改善されることが確認されました。これはつまり「年齢ペプチド」の摂取により血管が若返ったということなんです。

さらに「年齢ペプチド」はACE(アンジオテンシン変換酵素)の働きを阻害することで、血管を傷つける物質(アンジオテンシンⅡ)を減らし、柔らかくするNO(一酸化窒素)を増やす効果があります。

この一連のメカニズムによって血管内皮機能を改善し、血管をしなやかに拡張することで血圧も下げてくれるのです。

血管の詰まりは、血管の一番内側にある内皮細胞が傷つき、“プラーク”と呼ばれるこぶが原因となって血栓ができてしまうことが原因です。

「年齢ペプチド」には、このような血管のプラーク形成を抑制する働きがあることもわかっています。」(高沢謙二,「カルピス」由来健康情報室)[※8]

ラクトトリペプチドを多く含む食べ物

ラクトトリペプチドは乳酸菌が牛乳を発酵する過程で発見された健康成分です。そのため、発酵食品に多く含まれています。発酵食品の中でも多く含まれているのがブルーチーズやゴーダチーズ、米麹などです。[※9]

また、ラクトトリペプチドは専用の乳飲料やサプリメントでも摂取することができます。毎日の習慣として摂取するのであれば、ラクトトリペプチドが含まれた乳飲料やサプリメントが手軽です。

相乗効果を発揮する成分

ラクトトリペプチドは機能性食品として、「血圧が高めの人に」という表示で販売されています。しかし、ラクトトリペプチドだけ摂っていれば血圧の心配がいらないというわけではありません。

ラクトトリペプチドの効果を発揮させるためには、アルコールを控えてバランスが良い食事を摂取するようにしましょう。[※7]

ラクトトリペプチドを摂取するだけでなく、運動を併用することで効果か倍増したという結果も報告されています。

また、ラクトトリペプチドを摂取することで運動時の心拍の上昇を抑えるとともに、運動による筋損傷が改善することも確認されています。[※6]

ラクトトリペプチドに副作用はあるのか

ラクトトリペプチドは発酵過程で産生される天然成分で、食品として販売されているため、決まった時間に飲むなどの制限はありません。

しかし、ラクトトリペプチドにはアンジオテンシン変換酵素(ACE)の働きを抑制する効果があり、ACE阻害剤と同じ作用があります。

そのため、ACE阻害剤との併用は避ける必要があるとともに、ACE阻害剤の副作用である咳(空咳)が起きることがあります。[※10]

特に気管支ぜんそくなどの呼吸器系疾患がある人は注意したほうが良いでしょう。

またカリウム製剤やカリウムを含む利尿薬との併用や、高齢者、腎機能が低下している人は、ラクトトリペプチドの摂取によって高カリウム血症が起こる恐れもあります。[※10]

妊婦や妊娠の可能性がある人も避けるようにしてください。摂取に不安がある場合はかかりつけの医師に相談しましょう。