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昆布の効果とその作用

動脈硬化や高血圧の予防、免疫力の向上など、さまざまな効果が期待できる昆布。古い時代から食用としてだけでなく献上品としても使用されており、歴史がある食材です。
近年は医療分野からも注目を集めている昆布の効果・効能や作用のメカニズム、副作用などをまとめました。

昆布とは

昆布とは、コンブ目に属する海藻の総称。5~7mの深さの海中で光合成を行いながら成長していきます。成長した昆布の長さは、通常2mほどから10m以上のものまであり、幅は60cm以上まで成長するとされています。[※1]

日本で採れる昆布の約9割は北海道産で、ほかにも東北の青森県や岩手県、宮城県などの三陸海岸沿いで採れます。

採れる場所によって昆布の種類が異なり、函館沿岸で採れる真昆布にはミネラルであるカリウムが豊富に含まれています。また、利尻や稚内沿岸などで採れる利尻昆布にはビタミンB1が多いなど、それぞれの種類によって栄養価の違いもみられます。[※2][※3]

昆布はミネラル類や食物繊維などが豊富で、別名「海の野菜」ともいわれています。その豊富な栄養素によって、さまざまな効果・効能が生みだされています。

また、昆布は古くから「よろこぶ」という語に通ずるとして、縁起物の1つに数えられています。

昆布の効果・効能

昆布には、以下のような効果・効能が報告されています。[※4][※5][※6][※7]

■コレステロール値の上昇を抑制

脂質や糖質の吸収を抑制して、コレステロール値が上がるのを防いでくれます。

■消化力を高める

糖質や酵素を分解するはたらきを高め、消化機能を向上させます。

■免疫力の向上

昆布に含まれるフコイダンにより、免疫力が高められます。

■疲労回復効果

豊富に含まれているビタミン類によって、疲労回復の効果が得られます。

■高血圧の改善

昆布に含まれるカリウムやアルギン酸、ラミニンなどの成分には、血圧の上昇を抑える効果があります。

■血流の改善

血液の流れを改善してくれるので、冷え症や腰痛の改善・予防に効果的です。

■貧血の予防

昆布は鉄を含有しているため、貧血予防に効果があります。

■動脈硬化の予防

コレステロールの代謝を促すことから、動脈硬化の予防が期待できます。

■血糖値を安定させる

糖分の吸収や消化をゆるやかにして、血糖値を安定させてくれます。

■新陳代謝を高める

昆布に含まれるヨウ素には新陳代謝を活発にする効果があります。

■成長促進効果

新陳代謝を活発化させて、成長を促す効果があります。

■骨を丈夫にする

カルシウムを含有しているため、歯や骨を丈夫にする効果が期待できます。

どのような作用(作用機序・メカニズム)があるのか

ヨウ素やカルシウムなどのミネラル、フコイダンやアルギン酸といった水溶性の食物繊維が豊富に含まれています。また、うまみ成分のグルタミン酸や色素成分であるフコキサンチンなども含有している栄養価の高い食材です。[※4][※5][※7]

アルギン酸やフコイダンは昆布やワカメといった海藻に含まれる水溶性の食物繊維で、昆布を煮詰めたときに出てくるねばり成分です。

アルギン酸はカリウムと結合した状態で食品中に含まれており、摂取して体内に取り入れると、胃酸でカリウムが分離します。その後アルギン酸は腸でナトリウムイオンと結びつき、体の外へと排出されます。

分離したカリウムは体内でカリウムイオンに変化して腸から吸収され、血液中のナトリウムを排出してくれます。このアルギン酸とカリウムのはたらきによって、血圧の上昇が抑えられるのです。

ほかにも、アルギン酸には消化酵素のはたらきを活発化させる作用があることから、消化を良くする効果が期待されています。

一方同じ水溶性食物繊維であるフコイダンは、ウイルスや細菌などに感染した細胞を取り除く細胞を活性化させる作用がわかっており、免疫力を高める効果があると考えられています。

免疫細胞のはたらきを高めてがん細胞を排除したり、がん細胞の成長を妨げる作用があることも認められていることから、がんの予防に一役買っている成分といえます。

昆布にはミネラル類が豊富に含まれていて、体に必要なミネラルのほとんどを摂取できます。とくにカリウムが多く含まれており、体内のナトリウム吸収を抑えて血圧の上昇を防いでくれます。

また甲状腺ホルモンの材料となるヨウ素も多く含んでおり、新陳代謝を調節して成長を促してくれます。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

さまざまな効果が期待できる昆布。以下のような人におすすめです。

■コレステロール値の上昇を抑えたい人
■血圧が高くて困っている人
■貧血を起こしやすい人
■動脈硬化を予防・改善したい人
■免疫力を高めたい人
■歯や骨を丈夫にしたい人
■糖尿病予防を行いたい人

昆布の摂取目安量・上限摂取量

食事に含まれる通常の量を食べるぶんには、おそらく問題ないでしょう。ただし、昆布はヨウ素の含有量が多いため、食べ過ぎてしまうと別の病気を引き起こす可能性があります。

厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2015 年版)」によると、男女ともに成人の場合ヨウ素の摂取推奨量は1日あたり0.13mgとなっており、許容上限摂取量として3mgが設定されています。また妊婦さんの場合は、許容上限摂取量は2mgとされています。[※8]

昆布の佃煮(5~10g)には、約10~20mgのヨウ素が含まれている[※9]とされており、1食で十分なヨウ素を摂ることができます。しかし、過剰摂取や長期的な摂取は、甲状腺機能低下症や甲状腺腫が発症するおそれがあるので、摂取量には十分気をつけましょう。

昆布のエビデンス(科学的根拠)

近年、昆布のなかでもガゴメ昆布の研究結果が注目されています。

タカラバイオ株式会社では、ラットを使ってガゴメ昆布に含まれるフコイダンについての動物実験が行われました。[※10]

実験では、ラットにガゴメ昆布に含まれるフコイダンを溶かした水を30日にわたって摂取させました。その後、頸動脈に血栓がつくられるようにしてから、血栓がつくられる時間や血栓の重さ、血栓が頸動脈の血の流れを完全に止めるまでの時間を測定しています。

結果として、フコイダンを溶かした水を飲んだラットは1時間たっても血流が止まることがありませんでした。このことから、フコイダンには動脈で血栓がつくられるのを防ぐ効果があると示唆されています。

研究のきっかけ(歴史・背景)

昆布の歴史は古く、明確な記録は残っていないとされていますが、縄文時代の頃から食べられていた、または支配者に対しての献上品や大陸間での交易で利用されていたのではないかと考えられています。

昆布という名前の由来もくわしくはわかっていません。一説ではアイヌの人々が「コンプ」と呼んでいたところ、この呼び名が中国を経由して、日本へ逆輸入されたといわれています。

平安時代では昆布は神事や仏事などに利用されていました。鎌倉時代中期頃からは北海道と本州間を盛んに昆布の交易船が行き交うようになり、北海道から江戸や九州など日本各地に昆布が広まっていったことがわかっています。その際に昆布を運んだルートは、「昆布ロード」と呼ばれています。

さらに昆布ロードは九州から琉球王国(現在の沖縄県)へ。琉球王国が薩摩藩と清(中国)の昆布貿易の中継地として重要な役割を担い、中国へとその規模を拡大していきました。

流通によって昆布を食べる地域が増えていき、それぞれの土地で独自の料理法や食べ方が生まれたようです。[※11]

1982年には、日本昆布協会によって毎年11月15日は「こんぶの日」と定められています。この日は七五三の日でもあり、お祝いとして子どもが栄養たっぷりな昆布を食べて健康に育ってほしいという願いが込められています。

また、その年に収穫された新昆布が市場に出回る時期でもあるため、「海からの贈り物」として感謝する日にもなっています。[※12]

専門家の見解

近年では、昆布のなかでもガゴメ昆布に含まれるフコイダンは免疫機能を活性させる作用や抗がん作用、血栓の形成を抑える作用などがあることから、がんの補完代替医療においても注目を集めています。

金沢大学大学院医学系研究科 臨床研究開発補完代替医療学講座の特任教授である鈴木信孝先生は、ガゴメ昆布に含まれるフコイダンについて、以下のように述べています。

「ガゴメ昆布フコイダンの安全性は遺伝毒性試験、薬物代謝酵素試験、ヒト試験によって確認されている。また、機能性については免疫賦活作用を中心に詳細な作用機序が解明されてきている。今後、さらにヒトを対象とした科学的検証を重ねるとともに、その情報を正しく発信することにより、有効な補完代替医療の一つになり得ると考えられる」(『がんの補完代替医療とガゴメ昆布フコイダン』より引用)[※13]

さまざまな方法で試験が実施され、高い機能性が報告されているガゴメ昆布のフコイダン。今後さらに行われるであろうヒトを対象にした研究によって、フコイダンの新たな可能性が期待できそうです。

昆布を上手に摂取するには

昆布を調理する際、水洗いを行っていませんか。昆布は水で洗ってしまうと、含まれているうまみ成分も一緒に流れ出てしまいます。乾燥した昆布を使用する際は、表面を濡れふきんでサッと拭く程度で大丈夫です。

まれに乾燥した昆布についている白い粉のようなものは、昆布から出たうまみ成分が結晶になったもの。通称「マンニット」と呼ばれています。マンニットがついていても品質に影響はないので、安心して食べられます。[※14]

また、だしとして利用した昆布にも、食物繊維やアルギン酸などの栄養素が豊富に残っています。捨てるのではなく、佃煮やふりかけなどにすることで、上手に昆布の栄養成分を摂ることができます。すぐに料理で使用しない場合は、ラップに包み冷凍庫に保管しておくとよいでしょう。[※15]

相乗効果を発揮する成分

昆布と一緒に摂ることで相乗効果を発揮するのは、鰹節です。昆布にはグルタミン酸、鰹節にはイノシン酸といったうまみ成分が含まれています。うまみ成分はほかのうまみ成分と組み合わせることで強みが増すといわれており、昆布のグルタミン酸と鰹節のイノシン酸が組み合わされることで相乗効果が生まれ、うまみが一層強くなるとされています。[※16]

昆布に副作用はあるのか

昆布にはヨウ素が豊富に含まれています。

ヨウ素を過剰に摂取すると、甲状腺ホルモンを抑制してしまい、甲状腺腫や甲状腺機能低下症などを引き起こすおそれがあります。[※6][※17]

注意すべき相互作用

昆布に含まれているカリウムは、以下の医薬品と摂取することで影響を及ぼす可能性があります。[※18]

■スピロノラクトンなどのカリウムを含む利尿薬

カリウム量を増加させる成分が含まれている利尿薬と一緒に摂取すると、体内のカリウム量が過剰になるおそれがあります。

■アンジオテンシン変換酵素阻害薬などの降圧薬

カリウム量を増加させる種類の降圧薬と一緒に摂取することで、血中のカリウム量が増加する可能性があります。

■ジギタリス製剤や心不全治療薬(ジゴキシン含有)

大量のカリウムによって治療薬に含まれるジゴキシンのはたらきを強めるだけでなく、副作用も強く出るおそれがあります。そのため、ジゴキシンを服用している人は、昆布の摂取を避けてください。

■カリウムを含むサプリメント

カリウムを含有するサプリメントと一緒に摂ると、体内のカリウム量が過剰になる場合があります。カリウムを含んだサプリメントを摂取する際は、昆布の摂取は避けてください。

代表的な昆布の種類

昆布と一言でいっても多くの種類が存在し、産地によって昆布の名前が異なります。また、昆布はそれぞれ料理での使い方が異なるのも特徴です。
以下、代表的な昆布を紹介しています。[※2][※3]

■真昆布

・特徴 函館の沿岸で採れる真昆布は、幅が広く厚みがあるのが特徴。品のある甘みがあり、澄んだだしが採れる真昆布は、昆布のなかでも高級な品種とされています。 ・主な利用方法 だし、塩昆布、佃煮など ・ほかの昆布との栄養価の違い カリウムやビタミンCを多く含んでいます。

■利尻昆布

利尻・稚内・礼文の沿岸で採れる昆布。少し塩気があるのが特徴で、風味が良く澄んだ高級だしがとれます。
・主な利用方法
だし、塩昆布、湯豆腐など
・ほかの昆布との栄養価の違い
脂質のほかに、ビタミンB1を多く含んでいます。

■羅臼昆布

羅臼沿岸が産地の昆布で、別名羅臼オニコンブとも呼ばれています。やわらかい香りが特徴で、濃厚かつコクのあるだしがとれます。
・主な利用方法
だし、佃煮、おやつ昆布など
・ほかの昆布との栄養価の違い
たんぱく質やリンを豊富に含んでいます。

■日高昆布

日高昆布は別名三石昆布とも呼ばれており、北海道の日高沿岸で採れる昆布です。煮えやすくやわらかいため、だし昆布として使用されます。
・主な利用方法
だし、佃煮、おでん用など
・ほかの昆布との栄養価の違い
炭水化物やナトリウム、βカロテンやナイアシンなどが豊富に含まれています。

■ガゴメ昆布

函館沿岸で採れるガゴメ昆布は、表面にカゴの網目のような模様があるのが特徴。ねばりが強い昆布です。
・主な利用方法
とろろ昆布、松前漬け、おぼろ昆布など
・ほかの昆布との栄養価の違い
ほかの昆布に比べてナトリウムを豊富に含んでいます。