黒糖の効果とその作用

黒糖は主に沖縄県、鹿児島県で作られている砂糖類の一種です。一般的に使用されている砂糖とは異なり、黒褐色で独特の風味が特徴。ミネラルを多く含み、コレステロールの上昇抑制や血糖値への効果があると言われています。ここではさまざまな働きを持つ黒糖の特徴や効果、作用などをまとめました。研究論文や実験などのエビデンスも合わせて掲載しています。

黒糖とはどのような成分か

黒糖とはサトウキビの搾り汁を煮詰めて作った砂糖です。黒砂糖とも呼ばれており、黒褐色で独特の風味があります。ミネラルが多く含まれている糖蜜を抽出せずに煮詰めるため、カルシウムやカリウムなどを豊富に含んでいるのが特徴です[※1]。沖縄県や鹿児島県などで生産されており、特産物として販売されています。

黒糖は純黒糖と加工黒糖の2種類に分けられます。純黒糖は製造工程で混ぜ物をせずに作ったもので、加工黒糖は原料糖と糖蜜、純黒糖をブレンドしたものです。

黒糖の効果・効能

黒糖を摂ることで、以下の効果が期待できると言われています。

■生活習慣病の予防効果

黒糖に含まれるフェニルグルコシドは糖の吸収を抑えるだけでなく、血糖値の上昇を緩やかにする作用が期待できる成分です。また、ミネラルが含まれていることから、上白糖やグラニュー糖に比べて糖質が吸収されにくくなっています。
他にもコレステロール値の上昇抑制などの効果があり、生活習慣の乱れからくる生活習慣病の予防に役立つと言われています。[※2]

■抗酸化作用

黒糖は他の糖類と比べて、高い抗酸化力を持つとの報告があります。
愛知県食品工業試験所で行った実験では、11種類の糖類と16種類のショ糖を使い抗酸化力を測定。その結果、酸化を促進する糖類が多い中で黒糖だけは著しい抗酸化力を示したことがわかっています。[※3]

さらに、黒糖に含まれる糖類やミネラルには以下の効果が期待できます。[※4]

■疲労回復効果

■骨粗しょう症の予防効果

■血圧を下げる作用

■貧血予防

■皮膚・粘膜を健康に保つ

どのような作用があるか

糖類は摂取される酵素によって分解され、体内に吸収されます。吸収された糖は体のエネルギー源として利用され、疲労回復効果をもたらします。[※5]

しかし、摂りすぎると体内の糖がエネルギーとして使う量よりも多くなってしまい、余った分が中性脂肪に変換。中性脂肪が増えると肥満の原因になり、生活習慣病を引き起こしやすくなります。[※6]

黒糖は一般的に使われる上白糖やグラニュー糖よりも糖の純度が低く、ミネラルやビタミンを内包しているため体内にゆっくりと吸収がされていきます。加えて小腸での糖吸収を阻害する働きがあることから、血糖値の上昇を緩やかにして脂質を作り出さないようにする効果が期待できます。[※2]

また、黒糖に含まれる黒色物質を摂取することで、血中の脂質が酸化した過酸化脂質を減少させる働きも報告されました。

実験でわかった糖や血中脂質の抑制効果から、生活習慣病に対する改善効果があると考えられています。

どのような人が摂るべきか、使うべきか

黒糖はミネラルを豊富に含んでいるため、日常生活でミネラルをあまり摂らない方におすすめです。黒糖だけで1日に必要なミネラルの補給は難しいものの、通常の食事と合わせて摂取すれば、不足している分を摂取できるでしょう。

普通の砂糖に比べて分解吸収されにくく腹持ちが良いので、少量でも満足感が得られます。そのため、休憩中の間食やダイエット時のおやつとしても適しています。小腹がすいたときは、砂糖を使ったデザートではなく黒糖を活用しましょう。

黒糖の摂取目安量・上限摂取量

黒糖は食品なので1日の上限摂取量は定められていません。しかし、吸収がゆっくりといっても糖類なので、食べ過ぎると体内に蓄積されてしまいます。摂りすぎた糖は中性脂肪に変換され、肥満の原因に。[※6]

黒糖にはブドウ糖の吸収を抑える物質が入っているとはいえ、摂り過ぎは禁物です。黒糖を摂取する場合は、1日40gまでに控えましょう。[※9]

黒糖のエビデンス(科学的根拠)

黒糖は1980年代から研究されている成分で、国内・海外問わずさまざまなエビデンスが報告されています。生活習慣病を予防する効果や抗酸化作用などが示唆されており、今後の研究にも注目が集まっています。
現在知られているエビデンスとしては以下の研究報告があります。

日本薬学会の研究として、愛媛大学医学部の木村善行らは黒糖中の黒色物質(精製時に分離したもの)が糖および脂質代謝に及ぼす影響を調べています。

高濃度の糖を含んだエサを投与したラットを対象に、黒糖中の黒色物質を食べさせて実験しました。黒色物質を食べさせたラットは、他のラットに比べて血清中の脂質と糖を抑えるインスリンの濃度が上昇しなかったという結果が出ています。

また、黒色物質を与えることで、血中の脂質を酸化させた血清脂質過酸化物を減少させ、小腸内のグルコース吸収を阻害する働きも確認されました。このことから、糖の吸収やコレステロールの上昇抑制の効果が期待されています。[※2]

Ranilla LGらの実験では試験管モデルを使用し、2型糖尿病と高血圧に関連する酵素の阻害物質を調査しました。サトウキビ由来の甘味料を調べたところ、褐色糖は白色糖よりも高い抗糖尿活性が出ています。しかし、どちらからも糖や血圧に関連する酵素の阻害は見つかりませんでした。

また、実験で黒糖は実験対象の中で最も高いフェノール含有量を示しており、ブドウ糖を分解するグルコシダーゼを阻害する機能がわかっています。分解酵素を阻害して糖を吸収しにくくすることから、黒糖には糖尿病のリスクを下げる効果が示唆されました。[※7]

愛知県食品工業試験所の山口直彦らが行った実験では、11種類の糖と16種類のショ糖の抗酸化力を測定。加えてリノール酸を使った酸化安定性への影響を調べました。

その結果、グラニュー糖は酸化を促進させたものの、黒糖は著しい抗酸化作用を示したことが報告されています。このことから、黒糖は白色糖にはない抗酸化作用が得られることがわかりました。[※3]

研究のきっかけ(歴史・背景)

日本に初めて黒糖が持ち込まれたのは奈良時代で、唐の僧侶である鑑真が来日したときに持ち込んだと言われています。当時は甘味料ではなく薬として使われていました。

製造が始まったのは1610年頃。奄美大島で直川智(江戸時代の殖産家)が初めて国産の黒糖を製造しています。その後、本格的に黒糖の製造が行われるようになり、18世紀には江戸幕府の政策によって生産量が増大していきました。

黒糖が安定して生産できるようになった1980年以降は成分についても研究されるようになり、抗酸化性や脂質代謝への影響など、さまざまな効果がわかってきました。

専門家の見解(監修者のコメント)

農業研究センターの農業システム開発班では有用成分を多く含む黒糖について、栄養学的な面から研究対象として注目。沖縄県内に分布する7種類の黒糖について分析を実施し、ミネラルやビタミンなどの含有率を報告しています。分析の結果、サトウキビの品種や産地によって含有量は異なるものの、栄養豊富な成分ということが示唆されました。[※8]

他にも黒糖の効果について、愛媛大学名誉教授の奥田拓道氏は以下のように述べています。

「黒糖の黒い部分にはベンゼン環という物質があり、ブドウ糖の吸収を遅らせる作用があります。ブドウ糖の吸収がおそくなれば、血糖値の上昇を防ぐことができます。」(『血糖値がムリなく下がる100のコツ 決定版』より引用)[※9]

奥田氏によると黒糖に含まれているベンゼン環がブドウ糖の吸収を遅らせ、血糖値を上げないようにするとのこと。血糖値が保たれると糖尿病のリスクが下がるため、適量の黒糖を摂取することで糖尿病が予防できるでしょう。

黒糖をうまく摂取する方法とは

黒糖はそのままおやつとして食べられるほか、さまざまな料理に甘味料として使われています。

スープやシチューなどの煮込み料理に黒糖を入れるとコクが増すため、味に深みを出すことが可能です。他にも揚げ物の下味として活躍するほか、タレや油みその味付けに使われることもあります。

お菓子を作る際も上白糖やグラニュー糖の代わりに使うと、深い甘みのお菓子になります。黒糖を使ったお菓子で代表的なものは、かりんとうや蒸しパン、サーターアンダギーなど。黒糖を煮詰めた黒蜜も、あんみつやわらびもち、ところてん(おもに関西)などに利用されています。

コーヒーや紅茶などに入れて楽しむこともできるので、上白糖の代わりに日常の色々な場面で活用するのが良いでしょう。

一緒に摂るべき成分

ミネラル豊富な黒糖は、他の成分と組み合わせることで多くの効果を得られます。特に黒糖との組み合わせで知られているのがショウガ。黒糖とショウガを一緒に摂ることでスパイシーな風味が和らぎ、摂りやすい味になります。

ショウガには体を温める作用があるため、温かい飲み物に黒糖とショウガを加えることで体の芯から温まるドリンクができます。ミネラルも合わせて摂取できるため、栄養バランスの良いホットドリンクになります。

黒糖に副作用はあるのか

黒糖は食品のため、摂取するだけで副作用が現れることはありません。ただしショ糖の一種なので、摂りすぎると中性脂肪が増えて肥満の原因となります。中性脂肪の増加は生活習慣病のリスクを上げることも知られています。1日の摂取量が定められていないとはいえ、健康に影響するような大量摂取は避けたほうがい良いでしょう。

また、黒糖に多く含まれているカリウムは血圧降下に役立つ成分ですが、慢性腎臓病を発症している場合は、1日のカリウム摂取量が制限されることもあります。[※4]腎機能に不安がある方は医師と相談のうえで摂取しましょう。

黒糖の製造工程

黒糖はサトウキビが糖分を蓄える12~4月ごろに刈り取り、工場で加工します。刈り取ったサトウキビは時間が経つと品質が落ちるため、毎日の製造量を踏まえて適切な量を収穫。トラックに積んで工場へ出荷します。

黒糖の製造工程は以下のようになっています。[※10]

1.切断・圧搾
収穫したサトウキビは2m以上のものが多いため、小さく分割します。切断したサトウキビを数回圧搾機にかけ、黒糖の原料となる汁を搾ります。

2.濾過
搾り汁を放置し、ゴミやアクなどの不純物を沈殿させます。不純物が完全に分離したら濾過し、液体のみに分けます。

3.加熱・濃縮
濾過した液を数段階に分けて加熱し、濃縮させます。

4.冷却
加熱が終わったら混ぜながら空気を入れ、冷やしていきます。

5.成形
黒糖が完全に固まる前に成型、または箱詰めを行います。

黒糖を生産する地域によって多少の違いはありますが、ほとんどが同じ製造工程で作られます。